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マクドナルドがベジタリアン対応でインド人の心をつかめた訳

2022.07.13

米マクドナルドは1990年代にインドへ進出して以来、市場競争、経済危機、パンデミックなどを乗り越え、インドでのファーストフードの第一人者として信頼されるブランドであり続けています。インド市場におけるマクドナルドの成功のために重要な役割を果たしたのが、ブランドのローカライゼーション(地域化)でした。

ユニークで巨大な​​インドの市場に挑む

数百年におよぶユニークな食文化を持ち、人口の8割はヒンドゥー教徒であるインド人を米国風の食事様式に巻き込むのは、当初困難とされていました。

そこでマクドナルドは、それまで共通だった海外向けメニューを、潔く「インド化」します。ヒンドゥー教徒が神聖な動物として崇める牛肉のパティをやめて、鶏や羊の肉のバーガーをインド市場向けに提供。さらにまったく肉を食べない菜食主義者たちも利用できるようにと、ベジタリアンメニューを用意しました。

また、当時高価だったマクドナルド製品のインドでの市場価格をわずか25ルピー(およそ50セント)という低価格にしました。インドマクドナルドは、食材を地元から取り寄せ、物流管理をインド国内の会社に請け負わせることで、インドの中流家庭が気軽に利用できるような低価格を実現させたのです。

生産元や物流をインドに置くことは、海外からのインド進出を脅威とみなしていた、地元の政治家や社会運動家からの反対を回避することにも役立ちました。

家族との家での食事を重視し、外食は日常的でなかったインド家庭に合わせて、インドマクドナルドは、ファストフード店というより高級なファミレスというイメージを打ち出しました。清潔でゆったりした内装のほか、デリーの警察や消防と提携し、安全性をアピールしました。

他にも、それぞれの宗教観や信条を尊重していることをアピールするため、商品の包装や調理場のスタッフが着るユニフォームをベジタリアンとノンベジタリアンのものとで区別しました。そうした細やかな配慮により、インドの人々の信頼を着実に獲得していったのです。

ローカライゼーションで海外進出を成功に導く

ローカライゼーションとは、製品やサービスを現地で受け入れられるように最適化することを指します。マクドナルドはこの技術を最大限に活用し、インドを含む世界100カ国以上、計4万店舗にも上る、世界最大のレストランチェーンとして成功を収めています。

どの国にも、その土地の雰囲気、食べ物、それぞれの需要や興味、関心があります。宗教的な習慣やタブーなど人にはさまざまな考え方があり、同じブランドでも国や地域によって受け入れられるかどうかには違いが生じます。こと食べ物に関していえば、世界のある地域では珍味や好物とされているものが、他の国では禁忌と見なされることが起こり得ます。

マクドナルドでは、各国にローカライズの専門チームがあり、新たな国に進出するとき、その国の文化の違いを理解し、それぞれの国の方針に従うことを心掛けています。同社が海外進出に成功してきた戦略のひとつは、ビッグマックを代表とした一貫性のあるメニューですが、地元の人々の傾向によって時にメニューを大きく変更することもいといませんでした。

多国籍フードチェーンにとって、インドの巨大な市場は魅力的でありつつ、その独特な価値観や宗教観ゆえに、ハードルの高い未開の市場でした。マクドナルドは柔軟で行き届いたローカライズを可能にすることで、インドの家庭に「家族でアメリカ風の外食を楽しむ」という新しい価値観を生み出したのです。