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発展途上国の子どもを救う「ゴールデンライス」、期待の裏で続く議論

2022.07.28

2021年、遺伝子組み換え米「ゴールデンライス」の商業栽培がフィリピンで初めて認可され、話題になりました。ゴールデンライスは、発展途上国の子どもたちの健康を守るために開発された作物ですが、環境への負荷や人体への影響を巡る議論が続いています。この記事ではゴールデンライスが生まれた経過から、商業栽培認可の各国動向までを解説します。

ビタミン不足を防ぐ遺伝子組み換え米

ゴールデンライスは、ビタミンAを強化した遺伝子組み換え米です。発展途上国では、「ビタミンA欠乏症」による子どもの失明や死亡が相次いでいます。ビタミンAには目などの粘膜を正常に保つ働きがあるとされています。ビタミンAが慢性的に不足した状態が続くと、目が見えなくなり、最悪の場合は死に至ることもあります。ビタミンAを含む食品は数多くあり、先進国では不足しづらい栄養素です。しかし、世界では5歳未満の子どもの約3分の1は、ビタミンAの不足により失明の危険性があると言われています。

この問題を解決するために生まれたのが、ゴールデンライスです。ドイツのフライブルグ大学の教授とスイスの植物科学研究所の職員によって、約8年間の研究を経て生まれました。アジアの貧困地域では、おかずなしでごはんだけを食べるケースが少なくないため、ビタミンAを多く含む食材として米が選定されたのです。

議論を呼ぶ中、商業栽培認可へ

発展途上国の子どもたちを救う目的で開発された、ゴールデンライス。その一方で実用化に至るまでには、自然環境や地域住民への影響、安全性などの面からさまざまな議論がありました。一般的に遺伝子組み換え作物の栽培には、農薬や化学肥料が必要であり、土の質が悪くなる場合があります。また、種子を入手するために多額の費用がかかることから、農家にとっては負担が大きく、生活が厳しくなる場合があります。さらに、ゴールデンライスを食べた場合の人体への影響についても懸念の声が挙がっています。

こうした状況の中で、フィリピン政府がゴールデンライスの商業栽培を世界で初めて認可しました。バングラデシュも認可を目指していて、その動向に注目が集まっています。オーストラリアや米国、カナダの食品安全規制当局ではゴールデンライスを安全と評価しているものの、商業栽培の認可はしておらず判断が分かれています

私たちの食事は世界の問題、そして人間の健康と深く関わっています。簡単に答えを導くことのできるような課題ではありませんが、ゴールデンライスの事例はそのことを私たちに示してくれています。