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海藻が世界を救う?ヨーロッパで養殖産業化の流れ

2022.07.27

アジアでは食べ物としてなじみ深い海藻ですが、ヨーロッパでは日常的に海藻を食べる習慣はありませんでした。しかしながら、健康志向の高まりや食生活の変化を受けて、栄養豊富な海藻がヨーロッパの食卓に広まりつつあります。気候変動により地球上の資源がますます逼迫していくことが懸念される中、ヨーロッパでは養殖産業化の機運が高まっています。

ヨーロッパで高まる海藻ニーズ

ヨーロッパの海藻の売上は今、急成長しており、欧州連合(EU)や国連食糧農業機関(FAO)でも、世界の食糧安全保障のために海藻を含む海産物の重要性が唱えられています。今後、ヨーロッパでの海藻の売上高は2030年までに20億ユーロから30億ユーロにまで増加するという見込みもあります。

平均余命が伸び続ける中、消費者は年齢を重ねながらも健康を維持するための方法を求めています。ヨーロッパでこうした健康志向が高まると共に、サプリメントなどの栄養補助食品の需要が増加。今あらためて、海藻の栄養価の高さが注目されています。海藻は、ビタミン、ミネラル、抗酸化物質、タンパク質などの必須栄養素を豊富に含むことから、それを使ったサプリメントがヨーロッパの消費者に浸透しつつあります。

ヨーロッパでの海藻需要の高まりは、肉食からタンパク質代替への転換という流れも、大きく後押ししています。現在、ヨーロッパのビーガンと菜食主義者は推定7500万人とされ、ここ数年での世界の代替肉のおよそ4割がヨーロッパで消費されています。環境への負担が大きい肉食を避けたいヨーロッパの人々にとって、栄養も豊富で環境に優しい海藻がヨーロッパの日常の食生活になじむのにそう時間はかからないでしょう。

また、海藻は人の食料だけにとどまらず、家畜や養殖魚のえさ、化粧品や医薬品、バイオ包装、バイオ燃料、繊維、洗剤、建材にも活用されます。海藻産業が環境への負担を減らす効果は大きく期待されており、海藻製品の活用により、ヨーロッパの人々の年間最大80万人分の温室効果ガス排出を相殺できるとする報告もあります。

採取から養殖へ:持続可能な海藻産業へのシフト

世界の海藻生産量の99%がアジアで生産されており、ヨーロッパは全体の1%程度というのが現状です。しかも、そのほとんどが天然海藻の採取によるもので、持続可能な収穫量は限界を迎えつつあります。そこで、将来を見据えた海藻の養殖への移行が、ヨーロッパの海藻産業には求められています。

冷たくて栄養豊富なヨーロッパの海水は、実は海藻にとって理想的な生育条件であり、ヨーロッパの海藻産業は今後成長する可能性が大いにあります。投資、生産技術、政策などをうまく組み合わせることで、ヨーロッパの海藻生産は現在の約30万トンから10年以内に約800万トンにまで拡大すると言われています。

ヨーロッパでの持続可能な海藻養殖が普及すれば、これまでの採取とは違って海洋環境に害を与えずに、海藻の生産量を増やすことができます。海藻は魚のえさになり住みかにもなるので、海藻養殖は海の生態系をより理想的なものにします。

また、海藻は植物と同じように大気中の二酸化炭素を吸収します。主に太陽光と海水があれば育つ海藻の養殖は、陸での農業と違い、広大な開墾された農地や水といった限りある資源を過剰に必要としません。ポルトガルの3倍の広さの海藻栽培で、世界のタンパク質需要がまかなえるとの話もあるほどです。

今後ますます懸念される気候変動と人口増加による土地と水の不足、そこから引き起こされる食糧不足という脅威が差し迫る中、持続可能な海藻の養殖はこれらの問題解決にも一役買うのではと期待が高まっているのです。