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食品産業排水を代替小麦粉へアップサイクル。米フードテック企業の成功例

2022.08.24

​​​​廃棄されるはずのものを、価値ある新しい商品として生まれ変わらせる「アップサイクル」。このアップサイクルにより、アメリカのフードテック企業が、グルテンフリーで栄養豊富な代替小麦粉の生産を成功させました。地球温暖化対策に資する、カーボンニュートラルな製造法も話題となっています。

食品工場で廃棄される砂糖水に着目

米国のフードテック企業ハイフェフーズは、食品工場で排出される砂糖水を利用して、菌糸体由来の代替小麦粉を生産しています。これを原料とするパスタ「ハイフェパスタ」は、高タンパク、低炭水化物、アレルゲンフリーな代替小麦粉になると注目を集めています。

ハイフェフーズ共同創業者の1人、ミシェル・ルイズ氏は、アメリカの大手石油会社で化学技術者としての勤務経験があります。同氏が働いていた廃水処理施設では、有機物を食べて水を浄化する微生物のえさが常に不足しており、過剰になった大量の微生物が日々捨てられてメタンガス発生の原因となっていました。無駄な微生物の廃棄を止めれば、地球の温室効果ガス削減に貢献することもできます。同氏は、この飢えた微生物のえさを効率的に得る方法を探しました。

ルイズ氏が着目したのは、毎日数百万リットルもの排水を出す、ビールなどの大規模な醸造所、トウモロコシの製粉所や缶詰工場です。実はこの食品産業排水は、製造過程で濃縮されており、糖分を多く含んでいて栄養豊富です。しかしながら、企業は費用を払って廃棄物としてこれらを処理していました。糖分を含んだ排水は、ルイズ氏を悩ませていた廃水処理施設の微生物のえさとして利用できます。

さらに同氏は、この排水を代替小麦の原料として再利用し、価値あるものに生まれ変わらせることを考えました。微生物を扱うプロであり、排水の隠れた価値を知っていた同氏だからこそ、微生物による発酵作用で作るハイフェパスタを完成させることができました。

アップサイクルが食料問題解決の糸口に

バイオテクノロジーで開発された代替小麦粉によるハイフェパスタは、1人前で鶏のむね肉1枚分ものタンパク質を含み、食物繊維も豊富です。豆類やナッツ類から成る代替小麦粉は、炭水化物以外の栄養素に欠けるという点がネックでしたが、ハイフェパスタなら、健康を損なわずに、小麦に限りなく近い食事のメニューを楽しむことができます。

一般的な小麦粉製品とは違って「グルテンフリー」であることも特筆すべき点です。

同時に、ハイフェフーズは止まらない食品値上げへの具体的対策も提示しています。通常、米国の食品メーカーは、工場で排出される砂糖水を浄化するために課徴金を支払っています。同社は課徴金よりも低い料金で、砂糖水を食品として再利用することを可能にします。食品メーカーはその分、コストを節約することができるため、最終商品の価格として消費者に還元できるというロジックです。

ハイフェパスタは、世界中あらゆる場所で入手可能な食品産業排水を原料としています。栄養価の高い食品を確実に各地へと供給できるハイフェフーズの代替小麦粉は、今後深刻化すると言われている食料問題を解決する糸口になるかもしれません。