シェアシマが発信する「食品開発者のための専門メディア」
業界情報や製品・サービス紹介などの食にまつわる情報をお届け!

menu icon

人気のタグはこちら

青いトマトがおいしく大変身!液体塩こうじでつくる食品ロスのない社会〜醸造の奥深さを知るみそメーカーだからできるSDGsプロジェクト〜

2022.09.30

昨今、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けて食品業界ではさまざまな取り組みが行われています。2022年7月、ハナマルキ株式会社とイオンアグリ創造株式会社のコラボレーションによる「液体塩こうじ×青いトマトプロジェクト」がスタート。食品ロスの削減につながるだけでなく、「青いトマトがおいしく変身する」と多方面から注目を集めています。

そこで今回は、ハナマルキのマーケティング部長の平田伸行(ひらた・のぶゆき)さんとマーケティング部営業推進室でレシピ開発担当の松田有加(まつだ・ゆうか)さんへの取材から、プロジェクトの魅力や商品開発に至る経緯、目指す未来像についてお伝えします。(取材・構成=松橋かなこ)

ハナマルキが食品ロス対策に取り組む理由

1918(大正7)年に長野県で創業し、日本を代表するみそメーカーとして、食卓に欠かせない商品を提供し続けてきたハナマルキ。近年ではSDGs達成や持続可能な社会の実現に向けて、「安心・安全」や「次世代の成長支援」「自然との共生」「多様性の促進」という4つの柱を軸に活動を展開。その一つとして「液体塩こうじを使用することで食品ロス削減」の取り組みを推進しています。

食品ロスとは、本来食べられるにもかかわらず捨てられている食品のこと。農林水産省が公表した2019年度の日本の食品ロスは570万トン。世界には全人口を賄えるだけの十分な食糧がある状態でありながら、8億人が飢餓に苦しんでいると言われています。こうした状況を受けて、行政にとどまらず企業やNGOなどでも食品ロス削減のチャレンジが盛んに行われています。

ハナマルキが取り組む「液体塩こうじ×青いトマトプロジェクト」は、これまで廃棄処分されてきた青いトマトを液体塩こうじと組み合わせて、青いトマトの特徴を生かしたおいしい料理に変身させるというもの。イオン農場ECサイトにて、液体塩こうじと青いトマト、ミニレシピリーフレット付のセット販売を行っています(1セットにつき液体塩こうじ1本と青いトマト6個入りで税込1000円、送料別)。

実は、液体塩こうじを使った食品ロス削減の取り組みは、これが初めてではありません。2019年7月、国連WFP協会主催「Zero Hunger Challenge for AFRICA 食品ロス×飢餓ゼロ」に参画。SNSキャンペーンに、野菜や果物の切れ端や皮などを使った液体塩こうじのレシピ4品を披露しました。ここでの想いや経験が、青いトマトプロジェクトにつながっています。

液体塩こうじと青いトマトの出合い

液体塩こうじと青いトマトは、どのようにして出合ったのでしょうか。平田さんが出張料理人の工藤英良(くどう・えいりょう)さんに「トマトと液体塩こうじを組み合わせたメニューをPRしたい」と相談したのが、その始まりです。工藤さんは、カナダや中国、フランスの大使館で料理人を約10年間務めた経験を持っています。平田さんがおすすめのトマトを尋ねてみると、工藤さんは「イオン農場のトマトが抜群においしい」と推薦。農場に連絡すると「ぜひ見学に来てください」と、話はトントンと進みました。

2021年9月、平田さんは埼玉県久喜市の「イオン埼玉久喜農場」を訪問しました。そこで目にしたのは、山積みにされた青いトマト。これは一体どういうことだろうと思い、農場長の髙橋寛(たかはし・ひろし)さんに質問しました。

トマトは花が咲いて実を付けると、緑色から赤色に変化します。農場ではトマトを一定期間育てた後新しい苗に植え替えますが、その時にまだ緑色のトマトは出荷することができません。平田さんは、髙橋さんとのやりとりの中で「かなりの量の青いトマトが廃棄されている」という現状を知りました。

青いトマトは市場に出回りませんが、実際に目にした光景はショッキングなものでした。そして、トマト栽培に情熱を注いでいる髙橋さんにとって、「青いトマトも真心込めて育てた大切な存在に変わりない」という言葉にも心を動かされました。

平田さんの頭に、あるアイデアが浮かびました。それは、青いトマトを液体塩こうじと組み合わせて、セット販売するという企画です。その場で髙橋さんに持ちかけてみると、

「それはいいアイデアですね!」と前向きな返答が。二人は意気投合し、具体的な検討へと進んでいきました。

醸造の「プロ」の力でおいしい新商品に

ハナマルキでは液体塩こうじと赤いトマトを組み合わせたメニューをそれまでにも開発していました。しかし、青いトマトと液体塩こうじの組み合わせは実際に試したことがありませんでした。

このプロジェクトを成功させるには「おいしいレシピ」が必要でした。社内に持ち帰って相談したのが、液体塩こうじのレシピ開発を担当している松田さんです。

平田さんから相談された時のことを松田さんはこう語ります。「青いトマトが食べられるということは知っていたものの、実際に扱うのは初めてでした。不安な気持ちがなかったわけではありませんが、液体塩こうじで『青いトマトでもきっとおいしくできるだろう』と思ってはいました」。

試しに、松田さんが青いトマトを刻んで液体塩こうじに漬けてみたところ、独特の青臭さが消えて、想像以上においしく食べられることを確認。それだけでなく、青いトマトだからこそ出せる「爽やかな酸味」を発見しました。青いトマトならではの強みを最大限生かすべく、液体塩こうじに漬けた青いトマトを使って、繰り返し料理の試作に取り組みました。

イオンアグリ創造側を交えて2021年11月に開催した試食会では、「確かにこれはおいしい」「ぜひ商品化しましょう」と大好評。「さわやかトマトキーマカレー」「シャキシャキトマトピクルス」など5つの料理を厳選し、レシピをまとめたリーフレットの制作を進めて、2022年7月から商品の販売が始まりました。

「青いトマトは赤いものに比べて硬さがあって水分が少ないです。通常の液体塩こうじのレシピであれば30分~1時間漬け込みますが、青いトマトは漬け込み時間をそれより長い一晩に設定しました。家庭でも手軽に実践しやすく、しかも青いトマトの特徴を生かした絶品料理が作れるようにと工夫を凝らしました」と、松田さんはレシピ集のポイントを話していました。

レシピを基に調理、実食してみると

今回の記事制作に際して、私自身も青いトマトと液体塩こうじを組み合わせた料理を試作して、食べ比べてみました。調理に使ったのは、イオン農場SHOPで販売されている液体塩こうじと青いトマトがセットになった商品です。まずは、写真左上から時計回りに「1.そのままの青いトマト」「2.青いトマトを液体塩こうじに漬けたもの」「3.2を加熱したもの」「4.2を刻んで加熱したドライカレー」と4種類を用意して、味を確かめてみました。生食ではやはり青臭さが気になるものの、液体塩こうじに半日程度浸けるとその香りが軽減し、別物に変わります。加熱すると、酸味がよりマイルドになり、ほのかな甘味が出るのが印象的でした。

松田さん考案のレシピを基に、他の具材と調味料を加えて作ったキーマカレーは、後味として青いトマトの爽やかな香りとシャキシャキとした食感が楽しめました。まさに、「青いトマトならではの一品」です。家族全員で試食しましたが、「おいしい」「キーマカレーは青いトマトで作ってほしい」という思った以上の人気ぶりでした。

青いトマトプロジェクトが目指す未来

いろいろな人との出会いと情熱によって育まれてきた青いトマトプロジェクト。最後に、この取り組みの先にどのような未来を描いているのかを平田さんと松田さんに尋ねました。

「農場を訪れた時、食品ロスの現状を目の当たりにして、食品ロスへの取り組みの必要性を強く感じました。今回のこの液体塩こうじと青いトマトの取り組みを知っていただくことで、食品ロスへ取り組む方がさらに増えていくとうれしいですね。」(平田さん)

「青いトマトは、ハナマルキと一般消費者とのコミュニケーションにも役立っています。青いトマトに限らず、食べられるのに捨てられている食材がたくさんあります。そうした食材をおいしく食べる方法を、これからも提案していきたいです」(松田さん)

実際、ハナマルキの公式Twitterアカウントで今回のプロジェクトについて投稿した時に、家庭菜園でトマトを育てている人から「青いトマトの使い方が分からずに困っていた」というリアクションがあったそうです。

実はわが家でも、「どうして今日は青いトマトなの?」と子供から尋ねられ、トマト栽培や食品ロス、食の多様性についての話になりました。「おいしい」という食体験から、家族みんなで食のあり方について考えるーー。青いトマトはそうした貴重な時間を提供してくれる、とても心強い存在です。

 

執筆者

alt

松橋かなこ

早稲田大学を卒業後、企業とNPOにてまちづくりの仕事に10年以上携わる。その間にバックパッカーとして35カ国を訪問・視察し、世界各地の風土と食文化について考察を深める。2014年に薬膳とおばあちゃんの知恵をベースに「養生キッチンふうど」を立ち上げる。現在は、風土食やエシカル、ソーシャルビジネスについての執筆活動を行っている。