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食品ロス削減の切り札、アップサイクルとは?食品や日用品など具体事例を紹介

2022.12.08

SDGsや食品ロスの削減に関心が高まる中、「アップサイクル」という言葉を目にする機会が増えています。本来捨てられてしまうはずだったものを加工して、新たな価値あるものへと生まれ変わらせる「アップサイクル」ですが、そもそもリサイクルやリユースとはどう違うのでしょうか?この記事では、アップサイクルという言葉の意味や話題となっているその背景から、食品業界における実際の事例まで、食品業界におけるアップサイクルの主なポイントをおさえました。

アップサイクルとは(言葉の意味や由来)

アップサイクルとは、本来捨てられてしまうようなものを加工して、新たな価値あるものへと生まれ変わらせること。特に食品を使ったアップサイクルについては、アップサイクルフード、アップサイクル食品と言われることもあります。ここでは、アップサイクルという言葉のそもそもの意味と由来について、深掘りしていきます。

リサイクル・リユースとの違い

持続可能な循環型社会を目指し、リサイクルやリユースが活発化しています。リユースは、使用済みの製品やその部品などを捨てずに、繰り返し長く使うことで、これに対しリサイクルは、ある製品を別の製品の原料にして別の製品を生み出すことを意味します。
リサイクルでは、古紙が再生紙になるように、どちらかと言えば価値の低い製品に変換されるケースが大半です。古いタオルやシャツを雑巾として再利用するのも同様で、これらは「ダウンサイクル」と呼ばれます。これに対し、産業から出る副産物や廃棄物などを新たな価値を持った製品に生まれ変わらせるのがアップサイクルです。「創造的再利用」とも呼ばれるアップサイクルは、これまではアートやファッション、インテリアの分野が主でしたが、今や食品の分野にもこのアップサイクルの波が来ています。

食品のアップサイクルの流れはアメリカから

アメリカでは、コーヒーの果実の皮を原料にした紅茶飲料や、ビール醸造の際に出る穀物廃棄物を原料としたプロテインバーなど、食品廃棄物を活用したアップサイクル食品への関心が高まっています。
米国企業を中心に70社ほどが参加して設立された業界団体「アップサイクル食品協会」(本部=コロラド州デンバー)は、こうしたアップサイクルの市場拡大を受け、2020年5月にアップサイクル食品の定義を定めました。「本来は人間の食用とならなかった食材を使用して、検証可能なサプライチェーンにより調達・生産され、環境に良い影響をもたらす食品」ということで、実際に食品廃棄物の削減につながるものだけを「アップサイクル食品」と定義しました。これには、アップサイクル食品という言葉の持つ良いイメージだけを利用して売り込む偽物との差別化を図り、フードロスを削減し持続可能な社会を実現したいという強い意図が感じられます。

世界では100兆円超す期待のマーケット

食品廃棄物による世界経済のロスは年間で100兆円を超えるという試算もあります。アップサイクル食品への取り組みにより、この膨大な経済損失を削減できる可能性があるのです。
日本には昔から「もったいない」という言葉がある通り、廃棄物削減の意識は比較的高いと言えるでしょう。しかし米国は廃棄物に寛容な風潮があり、供給された食料のうち3〜4割がロスとなっているとも言われているのです。
ただ、米国でも時代は動いてきているようで、ミレニアル世代(1980年代~1995年生まれ)やZ世代(1996年~2012年生まれ)は消費者としての意識が高く、芯のある理念やメッセージを発する企業・ブランドの商品を購入する傾向があるのだそう。今後、世代交代が進むにつれて、フードロス削減を掲げるアップサイクル食品市場はさらに拡大していくことが予想されます。

SDGs・食品ロスとの関係性

SDGs 12 「つくる責任 つかう責任」

日本語で「持続可能な開発目標」を意味するSDGsは、2015年の国連サミットで掲げられた、国際社会の環境問題、差別、貧困などのあらゆる問題と向き合い、解決していくための17の目標のことです。
2030年までの達成を目指しているSDGsですが、そのうちの12番目の目標「つくる責任 つかう責任」には、作る人=生産者も、使う人=消費者も、未来の地球を守れるように行動に責任を持っていきましょうという狙いがあります。限りある地球の資源を無駄にすることのないよう、少ない原料からより多くのものを作り出せるよう持続可能なやり方を追求していくことが求められています。

食品ロスの削減の必要性

「つくる責任 つかう責任」を達成するために、より具体的な目標として「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる。」というターゲットが設定されています。
まだ食べられる食料が捨てられてしまう食品ロスは、日本をはじめとした先進国で重大な問題になっています。こうした食品を捨てることなく、新たな食品や工業製品へと価値あるものに加工するアップサイクルは、食品ロス削減につながるだけでなく、その先のSDGsへの貢献にもなるのです。
出典:農林水産省公式HP

食品から食品への事例

アップサイクル食品は、日本でも続々と増えています。ここでは、食品アップサイクルの中でも、食品を食品へとアップサイクルする事例を紹介します。

余ったパンがビールなどの飲料製品に:CRUST JAPAN

2019年設立のシンガポールを拠点としたフードテック企業、CRUST Group(クラストグループ)は、まだ食べられるのに捨てられてしまう食材をビールなどの飲料製品にアップサイクルすることで、食品ロスの削減に貢献しています。クラストグループは、提携する飲食店から余ったパンや米といった穀物や、コーヒーやカカオの残りかすや殻、茶葉、野菜や果物の皮などを回収して、それらを飲料製品に生まれ変わらせてきました。主な製品には、パンやコーヒーかすを原料にした独創性あふれる風味豊かなクラフトビール「CRUST」や、果物や野菜の皮から作るノンアルコール飲料「CROP」があります。日本部門である株式会社CRUST JAPAN(クラストジャパン)では、みかんやパイナップルの皮やきのこの柄を利用したお茶やジュースの生産にも力を入れています。
参考:CRUST JAPAN公式HP

規格外野菜を食べられるシートに:VEGHEET

売れなくなった野菜をペーストにし、海苔のようなシート状に乾燥させた新食材「VEGHEET(ベジート)」へとアップサイクルしたのが、長崎県を拠点とする株式会社アイルです。地元九州の不揃いな大きさや傷などにより規格外となった野菜と寒天を使用しているベジートは、食物繊維やビタミンなどの栄養も豊富で、化学調味料や添加物を使わないアレルゲンフリーな食品であることが高く評価されています。そのまま食べても、野菜本来の味を楽しめるベジートですが、水分を含ませればジェルやスープにも応用して、様々な食べ方を楽しめます。開封前なら2年(防災用5年)という長期保存ができ、シート状で場所も取らないベジートは、非常食のような保存食として、世界の食糧危機の解決にも貢献できる見込みもあります。
参考:VEGHEET公式HP

​​食品から工業製品への事例

りんごが合成皮革に:りんごレザー

長野県のベンチャー企業である株式会社SORENAは、同県飯綱町と協力して、地元の名産品りんごを加工するときに出る副産物を利用したある取り組みが話題になっています。同社は、りんごジュースやシードル(りんご由来の醸造酒)の生産過程で得られるりんごの搾りかすから合成皮革「りんごレザー」のアップサイクルに成功し、この冬からバッグなどの商品を発売します。廃棄されるはずだったりんごの皮や芯などの原料とポリウレタン樹脂とを合成して作られる合成皮革は、アップルレザーと呼ばれ、海外では動物由来でないヴィーガンレザーとして人気を集めています。りんごレザーは、アップルレザーの製品化としては国内初ということで、地方創生やSDGsにも貢献する製品として期待が高まっています。
参考:株式会社SORENA HP

まとめ

アップサイクル食品の開発と発展は、これまでの廃棄を前提とした大量生産・大量消費の社会から、持続可能な循環型社会へと変化が生じていることの兆しとも言えそうです。本来、日本はもったいないの精神からアップサイクル含めリサイクルの文化を大切に育んできた国です。地元から出る廃棄食品を使ったアップサイクルの取り組みは、地方創生などの付加価値もあり、これからの日本でますます盛り上がっていきそうです。