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食品企業がサステナビリティを考えなくてはいけないわけ【食品企業のためのサステナブル経営(第1回)】

はじめまして、サステナブル経営アドバイザーの足立直樹(株式会社レスポンスアビリティ代表)と申します。このたびシェアシマinfoで、「食品企業のためのサステナブル経営」というタイトルで連載をすることになりました。どうぞよろしくお願いいたします。今回が初回ですので、まず簡単に自己紹介を、そしてなぜこのような連載をするのかをお話ししたいと思います。

生態学研究者から環境経営コンサルタントへ

私は元は生態学という学問分野の研究者でした。学生時代から環境問題の解決に貢献したいと思っていたのですが、そのためには科学的なアプローチが有効だろうと考え、大学院で植物生態学を専攻しました。博士課程を修了した後は国立環境研究所というところに就職して、マレーシアの熱帯林の生態の研究プロジェクトに参加しました。熱帯には日本など温帯とは異なる独特の生態系があり、珍しい動植物もたくさんいます。その生態を研究することはとても楽しかったのですが、研究用に保護されている森の外ではどんどんと木が伐採され、またオイルパームのプランテーションも次々に拡大していました。このまま研究を続けていただけでは、研究は進んで熱帯林の仕組みがより詳しくわかるようにはなるだろうけれど、肝心の熱帯林がなくなってしまう。そんなことが心配になり、日本に帰国したのを機に、独立して企業向けにコンサルティングをすることにしました。2002年のことです。

当時すでに大手製造メーカーは「環境経営」を標榜するようになっていましたが、実際には海外の生態系まで配慮するような企業はほとんどありませんでした。その後わりとすぐにオイルパームのプランテーションの乱開発が国際的に問題視されるようになり、欧州の企業を中心に国際的な取り組みが進みました。けれども残念ながら日本企業の関心は低く、取り組みも遅れがちでした。そんな腰の重い日本の企業に国際的な流れを紹介しながら、なんとか取り組みを進めてもらった20年間でした。その間に国際企業の関心や取り組みはずいぶん進みましたが、問題の方もいよいよ抜き差しならなくなって来ているというのが現状です。

食品産業が環境に与える負の影響とは


実は食品産業も、環境問題に大きな影響、しかもマイナスの影響を与えている産業の一つなのですが、国内ではまだ取り組みがほとんど進んでいないのが現状です。意外だと思う方も多いかもしれません。食品工場は重工業などと比べればあまり環境問題の原因にはなりそうに見えませんし、上流の農業はさらにのどかな感じがします。しかも、基本的には人間が食べるもの、緑の植物を作っているのですから、むしろグリーンな産業であるイメージがあるでしょう。しかし、実際によく調べてみると、農業や水産業を含めた食品産業は環境への負の影響が非常に大きなセクターなのです。

これに関連して、2021年秋に国連はフードシステムサミットを開催しました。その際にグテーレス事務総長は、こう言いました。「気候変動の原因になっている温室効果ガスの4分の1から最大3分の1、生物多様性の喪失の80%、淡水資源の消費の70%の原因はフードシステムにある。」 なんと、食品産業が主要な環境問題の原因だったのです! しかしこれは、食品産業がものすごく有害な化学物質を垂れ流しているとか、そういう理由からではなく、80億人の世界人口を支えなくてはいけないので、その負荷の総和がとても大きくなるということなのです。

100億人の地球、サステナブル経営は必須の時代に

けれど、世界人口はこれからさらに増え続けます。2050年までには95億人に達すると言われますが、それを支えるのは今のフードシステムでは無理なのははっきりしています。なので、「これからフードシステムを大きく変革する必要がある」とグテーレス事務総長は呼びかけました。けれど、それは可能である。フードシステムは問題の原因であるだけでなく、問題の解決方法になることもできるのだ。そう事務総長は付け加えました。
この言葉が、この連載が必要な理由をすべて説明しています。日本ではまだあまり知られていませんが、世界的にはフードシステムを持続可能にすることが最大の課題の一つであり、そのためにすでに様々な取り組みが始まっています。今や食品企業がサステナビリティを考えないことはあり得ません。また、食品企業が自社を生き残らせるためにも、サステナビリティを十分に考えた経営を行わないわけにはいかないのです。
この連載ではこれから、どうしたらサステナブルな食品企業の経営ができるかを、いろいろな角度から解説していきたいと思います。どうぞご期待ください。

次回の記事を読む:パームオイルにまつわる問題【食品企業のためのサステナブル経営(第2回)】

執筆者プロフ
足立直樹

サステナブル経営アドバイザー。株式会社レスポンスアビリティ代表取締役。東京大学理学部卒業、同大学院修了、博士(理学)。植物生態学の研究者としてマレーシアの熱帯林で研究をし、帰国後、国立環境研究所を辞して独立。その後は、企業と生物多様性およびサステナブル調達の日本の第一人者として、日本の食品会社、飲料会社、流通会社、総合商社等の調達を持続可能にするプロジェクトに数多く参画されています。2018年に拠点を東京から京都に移し、地域企業の価値創造や海外発信の支援にも力を入れていて、環境省を筆頭に、農水省、消費者庁等の委員を数多く歴任されています。

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テクノロジーで食にイノベーションを!「フードテックビジネスコンテスト」第二回受賞者のアイデアを一挙ご紹介

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サステナブル経営のための3つの疑問【食品企業のためのサステナブル経営(第13回)】

先日1月30日にオンラインで、「食品企業のためのサステナブル経営入門」セミナーが開催されました。190名の方にご参加いただき、その半分以上が食品原料の取り扱いに関わる企業の方でした。参加者の4分の1弱が経営層でしたが、環境・SDGs関連や研究・開発の方が次に多く、次いで営業、マーケティング、事業開発という順番でした。タイトルに「サステナブル経営」とあるので、経営層や環境部門の方が多かったのは当然としても、それ以外の事業活動の本流に関わる方々に多数ご参加いただいたことが特徴的だったように思います。サステナビリティやサステナブル経営が、食品企業においてもいよいよ重要な経営課題となってきたことを感じます。セミナーの開催レポートはこちら:【開催レポート】シェアシマ特別セミナー「食品企業のためのサステナブル経営入門」(1/30)サステナブル経営入門セミナーを振り返って実際、私が講演の冒頭でもお話ししたように、これは食品業界もSDGs(持続可能な開発目標)の達成に何か少しでも貢献しましょうというレベルの問題ではなく、サステナビリティを考えないことには、原材料が安定的に調達できなくなる、取引が継続してもらえなくなる、お客様の嗜好もどんどん変わっている、という事業の継続性に関わる問題なのです。それがゆえに、農水省の中世古さまがご説明くださったように、行政も「食品企業のためのサステナブル経営に関するガイダンス」を発表して、事業者に取り組みを促したり、行政としてそれを後押しする政策を次々に打ち出しています。あるいは日本マクドナルドの牧さまのご発表にあったように、企業も持続可能な原材料の確保のための体制を整え、さらにはお客様にも情報提供をしながら進めています。そして重要なのは、これがグローバル企業や大企業に限った話ではなく、規模の小さな会社や、農業・水産業の現場にとっても考えるべき課題であるということです。具体的に注意すべき内容やその対策については本連載でしっかりカバーしていきますので、ご興味のある方は連載の過去記事を読んでいただいたり、これからの記事もフォローしていただければと思います。連載をはじめから読む:食品企業がサステナビリティを考えなくてはいけないわけ【食品企業のためのサステナブル経営(第1回)】今回は、このセミナーの際にいただいたいくつかのご質問に、この場所をお借りして回答したいと思います。と言うのも、いずれも質問者の方だけでなく、関係するすべての方々に知っていただきたい内容だからです。それでは早速まいりましょう。質問:2050年に世界人口95億人、今のフードシステムでは養えないとのことですが、これはカロリーベースで養えないというこということでしょうか?回答:カロリーベースで足りなくなるという意味もありますが、残念ながら今のままですともっと悲惨なことになりそうです。まず、生産量を増やそうとすると畑を増やす必要がありますが、新しく畑を作る場所はもう残っていません。それどころか既存の畑が劣化していることから、下手をすると今より生産量が大幅に落ちる地域もあるでしょう。水資源もどんどん足りなくなります。また気候変動の影響も厳しくなりますので、農作物の質が低下したり、収量が減る場所が多くなります(寒い地方など、ごく一部例外はあります)。そして、台風やサイクロン、洪水、旱魃などの異常気象によって、その年の収穫が激減するという事象も今より多く発生するようになるでしょう。一方、病害虫による被害は、気温の上昇により増えると考えられます。そしてそもそも、このペースで異常気象による被害が増えると、2050年には経済そのものがまったく回らなくなることすら危惧されているのです。これ以外にも、水産資源の枯渇や花粉媒介者の激減など深刻な問題は山積みであり、このままでは95億人どころか、今より少ない人口すら支えることができなくなると懸念されています。質問:食品ロス、廃棄、代替肉への転換、農法の改善など、いくつかのフードシステムの改善がありますが、日本の食品産業が実施する場合に1番効果があるフードシステムの改善はどれでしょうか?回答:どれがもっとも効果があるかではなく、すべてに取り組む必要があります。できることすべてに取り組まなければならないのです。その上で言えば、手をつけやすいのは食品ロスの削減ですが、これもできる範囲で少しすればいいのではなく、徹底的にすることが重要です。その次に進めていただきたいのは、使用する原材料について、サプライチェーンと協働して負荷を減らしていくということです。農法の改善などについても、需要家が求めたり、協力することで進みやすくなります。そして食習慣を変えていくことも必要ですし、影響は大きいのですが、これは一番時間がかかるかもしれません。消費者の方の意識を変える必要があるのと、そもそも代替となる食物や調理方法を考え、作り出していく必要があるからです。しかし、ビジネス的には新しいマーケットになりますので、こちらにもぜひ力を入れて取り組んでいただきたいところです。質問:最後のスライドにあった「ビジネスとして」という観点、サステイナブルやSDGsというからみになるとなぜか そのビジネスという観点が抜けてしまい、独り歩きしてしまうのですが、どうするのがビジネスとサステイナブルが共存できますでしょうか?回答:それについてはぜひこの連載を毎回お読みいただきたいと思うのですが(笑)、一つだけ大切なことを言うと、今のビジネスのやり方を続けて、それにサステナビリティやSDGsの取組を付け加える形にはしないということです。そうではなく、すべてのビジネスの前提として、サステナビリティを考えるようにする必要があります。そうしないとサステナビリティと両立するようなビジネスにはなりません。あるいは、ビジネスの観点があるサステナビリティにはなりません。なお、以下の質問は日本マクドナルドの牧さまに対してのものなのですが、本質を捉えたとても良い質問なので、私からもお答えしたいと思います。質問:マクドナルドだけの話ではないが、脱プラに伴って紙資材の利用が増加していると思いますが、 紙の原料はもちろん木材です。プラスチックは減った一方で森林も減ってしまっては元も子もないと思いますが、環境負荷に対する本質的な評価はどのようにしているのでしょうか。回答:とても良いところに目をつけられました。でも、安心してください。紙は再生可能な資源であり、きちんと再植林をしながら使っていれば森がなくなることはありません。そして、マクドナルドが使用しているFSC認証紙はそのような形で生産されていることを第三者が確認しているものですから、心配する必要はまずないと言っていいでしょう。ただし、認証紙だからと言って無駄遣いするのはよくありません。他の環境負荷もあるからです。なるべく節約したり、リサイクルした方が良いことは言うまでもありません。一方で、ある負荷を下げることで、別の負荷を増やしてしまうという二律背反、いわゆるトレードオフは、いろいろな場面で起こります。なので、そこに目をつけたこの質問はとても良い質問なのです。そういう場合、そもそも問題の性質が異なったりすると直接的に比較しにくいので判断に困ることも多いのですが、それでもどう考えたら良いのか、きちんと整理することは可能です。ただし、説明すると少し長くなるので、詳しい説明は今後の宿題とさせてください。くれぐれも、一つの問題だけしか見なかったり、経済的な軸だけで判断したり、ということは避けてくださいね。

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天然水産物を持続可能に利用するには?(後編)【食品企業のためのサステナブル経営(第12回)】

前回の記事を読む:天然水産物を持続可能に利用するには?(前編)【食品企業のためのサステナブル経営(第11回)】ここでは世界的に広く普及しているこのMSC認証を例に、天然水産物を漁獲する漁業に関する認証について説明したいと思います。MSC認証には、漁業が持続可能な形で行われていることを認証する「MSC漁業認証」と、認証を取得した漁業で獲られたものがそうでない水産物と混じらずに管理されていることを認証するMSC CoC認証(※)がありますが、今回は漁業そのものにまつわる課題をまず説明したいので、漁業認証についてのみ紹介します。※CoCはChain of Custodyの略。水産物の水揚げ以降のサプライチェーンに対する加工・流通の管理認証。MSC漁業認証を取得した漁業で獲られた水産物をMSC認証のものとして取り扱うためには、MSC CoC認証が必要となります。持続可能な漁業のための3つの原則MSC漁業認証は、持続可能な漁業となるために3つの原則からなる要求事項を規定しています。3つの原則は以下の通りです。(出典:MSC)資源の持続可能性漁業が生態系に与える影響漁業の管理システム原則1は言わずもがなですが、過剰な漁獲を行わず、資源を枯渇させないようにしていることを意味します。資源量を把握し、資源を減らさない範囲で漁獲するということです。そして原則2は、対象となる魚種だけでなく、その漁業を行ったり、また漁業が依存する生態系を持続する形で漁業を行うことを意味しています。例えば、対象魚種以外を漁獲してしまう「混獲」と言われる問題があります。混獲と言うと、対象魚種以外のものが若干混じって獲れてしまうような印象を持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、実際には、対象魚種以外の方がはるかに多く獲られ、しかもそれが利用されずに廃棄されるようなことも多く起きています。これではたとえ対象魚種の資源量は維持できたとしても、生態系が損なわれてしまうことは容易に想像できるでしょう。そしてそれが結果的に対象魚種にも(悪)影響を与えるかもしれません。同様に、漁業によって海の環境を悪化させるようなことも、もちろんあってはいけません。そして最後に原則3ですが、原則1と2を満たすために、地域や国、あるいは国際的なルールを尊重した管理システムを持つことを求めています。きちんとした管理体制があることが重要なのです。世界の水産資源を守るための「現実解」日本では長らく、資源管理は地域に任されて来ました。1996年以降、少しずつ国が水産資源管理制度を整えるようになってきていますが、それでも欧州や北米などの地域に比べて、まだまだ不十分な部分が少なくありません。制度ととしては存在していても、科学よりもこれまでの慣習などを優先している場合もあり、十分に機能していない場合もあります。さらに、世界の海の61%(面積ベース)を占める公海について言えば、各種の条約が資源管理を定めるようになって来ているものの、こちらもまだ十分とは言えない状況です。ですので、MSC認証のような制度を自主的に利用し、関係者全員で地域の、そして世界の水産資源を保全し、公平かつ持続的な形で利用することが重要なのです。そして実際、水産資源管理がしっかりと行われ、MSC認証のような制度が普及している国々や地域では、水産資源量が維持され、漁獲高も高く、水産業は儲かる産業で若者にも人気があるという好循環ができています。食品会社は認証水産物を優先的に調達することで、水産資源管理が促進され、水産資源量を維持・拡大することに間接的に貢献することができます。なお水産業においては、漁業現場における労働安全衛生や人権の問題も近年非常に注目されています。MSC認証にも強制労働や児童労働に関する要求事項はありますが、今のところこうした課題すべてを包括的にカバーする認証制度はありませんので、いくつかの制度を組み合わせたり、自主的に調達基準を設けてサプライヤーと協働するなどの取り組みが必要です。もちろんこうした取り組みも、水産業を持続可能にすることに貢献することになりますし、その結果、食品産業そのものを持続可能にすることにもなるでしょう。このようにまだまだいろいろな課題があるのですが、今回のまとめとしては、天然水産物の場合には、資源量に余裕があるものを使うことが重要だということです。けれども、どの魚が資源量に余裕があるかは判断しにくいと思いますので、そのためには資源量に配慮した持続可能な漁業で獲られたMSC認証水産物などを材料として使うということが現実的な解になります。国際的にチェーン展開するホテルやレストランなどでは、調達の条件としてMSC認証水産物であることを指定するところも既に現れています。認証水産物を取り扱っていることが取引条件になる時代もすぐそこまで迫っていると言っていいでしょう。いきなり全面的とは言いませんが、まずはそうした材料を少しでも探して、使ってみることから始めてみてはいかがでしょうか。次回の記事を読む:サステナブル経営のための3つの疑問【食品企業のためのサステナブル経営(第13回)】

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天然水産物を持続可能に利用するには?(前編)【食品企業のためのサステナブル経営(第11回)】

前回は水産養殖にまつわる様々な問題点について、そしてそうした問題がない持続可能な養殖水産物を見分けて利用する方法として、養殖認証を活用することをお話ししました。こうした認証マークがある原料や商品を買えば、養殖に起因する様々な環境や社会問題を回避することができるので、安心であり、また食品産業の持続可能性を担保するためにも役立つのです。それでは天然水産物の場合はどうしたら良いのでしょうか? 天然水産物には養殖水産物とは異なる問題が多々あります。特に気をつけなければいけないのが、資源量が毎年減っている問題です。連載第9回(これで問題解決?!ウナギの完全養殖)で紹介したように世界の漁獲高は成長を続けているのですが、天然水産物のそれは1980年代後半からはほとんど成長していません。もうそれ以上は獲れなくなってしまったので、それを養殖水産物が補っているのです。減り続ける天然水産物、影響は日本にも国連食糧農業機関(FAO)のデータで世界の天然水産資源の状態を見てみると、50年前には世界の水産資源の約4割にまだ余裕がありました。そして当時でも5割は資源量の上限まで獲られており、それ以上に獲っている、つまりいわゆる乱獲状態にあるものも1割程度ありました。ところが近年では乱獲状態が3割以上、資源量の限界まで利用しているものが約6割、余裕があるものは1割近くにまで減ってしまっているのです。このままこの傾向が続けば、資原量に余裕がある魚種はなくなり、多くのものが乱獲状態になってしまうでしょう。天然水産物の捕獲が増えないのは当然ですし、今後さらに減ってしまってもおかしくありません。図:”The State of World Fisheries and Aquaculture 2022” (FAO, 2022)日本近海においても、連載第9回で取り上げたウナギはもちろん、サンマ、スルメイカ、サケ、スケトウダラ、マイワシなど、様々な魚が獲れなくなって来ています。いろいろな産地があるので、店頭にまったく並ばなくなるということはまだ起きていませんが、以前よりも見かけることが少なくなったり、価格が高騰していることには、きっと多くの方がお気づきでしょう。獲り過ぎを防ぐための管理の必要性漁獲量がこのように急激に減ってしまった理由はいくつか考えられます。気候危機によって水温が上昇した、海流のコースが変わった、ということもしばしば指摘されます。沿岸の開発や汚染で魚、特に稚魚のすみかがなくなったということもあるでしょう。また、世界的に需要が伸び、他国の漁船が同じ漁場で魚を獲るようになったということを挙げる方もいます。しかし、なんと言っても最大の理由は獲り過ぎです。もちろん私たちは太古の昔から魚を獲って食べて来ました。特に日本は世界でも有数の水産国でした。日本のまわりの海は豊かで、長い間、資源量は十分にあったのです。そもそも魚は大変多くの卵を生みますので、人間がある程度捕獲しても、資源量を回復しやすいという性質があります。理論的には、人間が資源を利用した方が、一定期間内の生産量は大きくなるとも考えられています。とは言え、限界を超えて捕獲してしまうと、資源量はもはや回復できなくなってしまいます。漁獲技術が進化し、支えるべき人口も増えた現在、漁獲量がその限界を超えつつあるのです。これまでと同じようなやり方で漁業を続けていることはもうできないと考える必要があります。そこで必要とされるのが、科学に基づく持続可能な水産資源管理です。そして、そのような水産資源管理を行なった漁業を行なっているかどうかを審査する認証制度や、それに基づく認証ラベルも存在しています。実は前回取り上げた養殖に関する認証よりも、漁業に関する認証制度の方が先に開発されています。代表的なものがMSC(Marine Stewardship Council:海洋管理協議会)によるMSC認証で、認証を取得した漁業で獲られた天然の水産物にはMSC「海のエコラベル」が付けられます。こうした認証制度を活用することが、天然水産物においても持続可能な利用につながるのです。詳細については次回お話ししたいと思います。次回の記事を読む:天然水産物を持続可能に利用するには?(後編)【食品企業のためのサステナブル経営(第12回)】

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持続可能な養殖水産物を使用する【食品企業のためのサステナブル経営(第10回)】

前回の記事を読む:これで問題解決?!ウナギの完全養殖【食品企業のためのサステナブル経営(第9回)】前回は、「養殖であれば安心というわけではない」ということをお伝えしました。一方で、天然水産物の資源量は頭打ちの中、養殖水産物の重要性と存在感はますます高まっています。どうしたら養殖水産物を持続可能にできるのでしょうか?まず大切なことは、「養殖が悪い=持続不可能である」ということではないということです。問題なのは養殖の仕方であって、養殖がすべて否定されるわけではありません。では逆に、養殖にはどんな問題があるかをまず考えてみましょう。その問題をクリアすれば、環境や社会に配慮した養殖ができるからです。持続可能な養殖へ、まずは問題点を知るまず最初の問題として、地域の生物多様性や生態系に悪影響を与えてしまうリスクがあります。たとえば日本に輸入されるエビの多くはタイやベトナムなどの熱帯域で養殖されていて、その養殖池はマングローブ林を破壊して作られることも少なくありません。海と陸の接点に成立するマングローブ林は、エビやカニだけでなく、魚の産卵や子育ての場所として、また津波や高潮などから海岸沿いの街や暮らしを守るために、重要な役割を果たしています。そうした大切な生態系やそこに棲む生物種が失われることは、大変深刻な問題です。次に餌の問題があります。海藻やホタテのように人間が餌をやる必要がないタイプの養殖もありますが、魚やエビの養殖のためには人工的な給餌が必要です。サーモンであれば、体重を1kg増やすために1.2kgの餌で済みます。つまり、魚の体重の1.2倍の重量の餌があれば良いのです。ところが、マダイですとその割合は3倍、ヒラメは4倍、ハマチは6倍、マグロに至ってはなんと15倍と言われます。これは牛肉1kg生産するのに11kgの穀物が必要という数字と比べてもけっして少なくありません。この割合を増肉係数と呼びますが、増肉係数の高い魚種は、コストが高いだけでなく、環境負荷も高いのです。さらに問題なのは、何を餌にするかです。かつてはイワシやサバなどの多く獲れる魚をそのまま餌にしていました。もちろんこれは乱獲につながり、餌の持続可能性が懸念されます。さらには、生餌は食べ残しが養殖場や周辺の水質を汚染(富栄養化)するという問題もあります。最近は栄養成分を考え、また食べ残しがないように設計された固形や半固形の餌が増えていますが、これらについても製造プロセス全体を通じての環境負荷に注意する必要があります。汚染という意味では、食べ残しだけでなく、魚の排泄物による汚染にも十分な注意が必要です。養殖は育てる魚の密度が非常に高くなるので、たとえそれが有機物であっても分解が間に合わず、周囲の生態系に悪影響を与えることがあるのです。また高密度な養殖では病気が発生しやすくなるのでそれを治療したり予防するための抗生物質やワクチンが多用されがちです。こうした化学物質による水質汚染も問題です。そして長期的には、これらが養殖場の底に堆積してしまうのです。エビなど閉じた池の中で養殖する場合には、堆積物による汚染は養殖そのものにも悪影響を与えます。定期的に養殖池の水を入れ替えるのですが、排出された水は周囲の水域を汚染します。そしてそれを繰り返すようにエビが育たなくなると、ついには養殖池を放棄し、再びマングローブ林などを伐採・開発して次の新しい養殖池を作るのです。これでは収奪的で持続不可能な養殖と言わざるを得ません。そしてもう一つ大きな問題は、地域社会への影響です。養殖が常に安定的にもうかるビジネスであれば良いのですが、販売価格は市場需要の影響を受けるのでむしろ不安定です。餌代や管理費用など、養殖は実はかなりコストがかかります。しかし、一般には天然水産物より安い価格となり、生産者が抱える経済的なリスクは少なくありません。そうしたこともあり、コスト削減のために環境対策がおろそかになったり、働く方の処遇が悪くなったり、労働安全性が軽視されるようになったり… そんなことがあっては困るのですが、現実にはそういう問題が今なお起きています。これは当事者にとって深刻な問題であるだけでなく、食の持続可能性という観点からも重大な問題です。「責任ある養殖」が持続可能性をもたらすこのように養殖には様々な問題やリスクがあります。けれどもいまや水産物の半分以上を占める養殖水産物は、今後の水産物需要、さらにはタンパク質需要を支えるためにも重要です。安易に行われる持続性のない養殖ではなく、持続可能性の高い、責任ある養殖に切り替えていく必要があります。そのためにはそれを原料や素材として使う川下側も、持続可能なものを選んで使用することが必要です。なぜなら使う側からの需要があれば、生産者も持続可能な養殖にするモチベーションが高まるからです。そのような持続可能な養殖水産物を使うとしたら、どうすれば見分けることができるのでしょうか?上に述べたようなことを一つひとつ確認することは現実には不可能でしょう。そのため、第三者が代わりに審査を行い、上記のような課題にしっかり配慮しながら養殖されたものには認証マークを付与する制度があります。もっとも代表的なものにASC(※Aquaculture Stewardship Council; 水産養殖管理協議会)によるASCラベルがあります。ASCは、環境と社会への影響を最小限に抑えた養殖場にASC認証を発行しており、そうした養殖場で育てられた水産物にはASCラベルを付与し、それが持続可能な水産物であることを消費者が簡単にわかる仕組みを構築しています。こうしたASCラベルの付いた養殖物を使用したり販売したりすることが、持続可能な養殖を推進する大きな力になるのです。なお、養殖においては、どのような配慮を行うべきかは水産物の種類ごとに異なります。ASCは現在までのところ、サケ、ブリ・スギ、淡水マス、スズキ・タイ・オオニベ、ティラピア、パンガシウス、二枚貝(カキ、ムール貝、アサリ、ホタテ)、アワビ、エビ、カレイ目の魚類、熱帯魚類、海藻の12種の魚介類を認証の対象​​としていますが、ニーズがあれば今後さらにこの種類は拡大されるでしょう。また、ASCラベルの使用にあたっては厳密なルールがありますので、ラベルのついた材料を使っているからと言って自社製品やメニューに勝手にラベルを使うことはできないので注意が必要です。※参考:https://jp.asc-aqua.org/次回の記事を読む:天然水産物を持続可能に利用するには?【食品企業のためのサステナブル経営(第11回)】

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解説|TNFDフレームワークとは?LEAPアプローチについても紹介

生物多様性の保全が国際的に叫ばれる中、日本の食品メーカーも、対応を求められています。TNFDフレームワークの概要や、情報開示の手法であるLEAPアプローチを理解するには、そこに至るまでの背景から理解することが必要です。こちらの記事では、これらの概念について詳しく解説します。TCFDフレームワークとの違いや、TNFDフレームワークにおける開示推奨項目、食品業界における企業の取り組み事例についても紹介します。ぜひ参考にしてみてください。TNFDフレームワークの概要|生物多様性を保全するための国際的な枠組みTNFDは、“Taskforce on Nature-related Financial Disclosures”の略称で、民間企業や金融機関などが参加し、自然資本や生物多様性に関するリスクと機会を評価・開示するための国際組織です。日本語では「自然関連財務情報開示タスクフォース」と訳されています。TNFDフレームワークとは、自然環境の変化や生物の多様性が企業活動にどのような影響を及ぼすのかという情報を開示するための枠組みです。パリ協定やSDGsに沿って生物多様性を保全・回復する活動に資金の流れを向け、世界経済が持続的に成長し、人々が繁栄を謳歌できるようにすることを目的としています。なお、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)は、2019年1月に開催された世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)において着想されました。TCFDの情報開示フレームワークをベースにしているTNFDフレームワークのベースになっているのは、TCFDのフレームワーク(企業の気候変動に対する取り組みを可視化するための枠組み)です。TCFDは“Task Force on Climate-related Financial Disclosures”の略で、日本語では「気候関連財務情報開示タスクフォース」と訳されています。気候変動問題に積極的に取り組む企業に世界中の投資家から資金が集まり、さらなる成長に繋がる「地球環境保護と成長の好循環」を実現することを目的とした国際組織です。TNFDフレームワークにおける開示推奨項目2023年9月に公開されたTNFDフレームワークv1.0では、以下に示す項目を開示することが推奨されています(※)。ガバナンス:自然に関連する依存、影響関係、リスクおよび機会に関する組織のガバナンスを開示する。戦略:自然関連の依存、影響関係、リスクおよび機会が組織のビジネスモデル、戦略、財務計画に及ぼす影響を、そのような情報が重要である場合には開示する。リスクとインパクト管理:自然関連の依存、影響関係、リスクおよび機会を特定、評価、優先順位付け、監視するために組織が使用するプロセスについて説明する。指標と目標:重要な依存、影響関係、リスク、機会を評価および管理するために使用される指標と目標を開示する。なお、TFNDの公式資料は英文となっているため、上記文言はPwC Japanグループによる日本語訳に準拠していることにご留意ください。正式な文言(英文)は、TNFDの公式サイトなどで確認しましょう。※参考1:TNFD公式サイト"Getting started with adoption of the TNFD recommendations Version 1.0"※参考2:PwC Japanグループ「TNFDフレームワークの概要と企業に求められることを解説」LEAPアプローチとは|情報開示のための4つのフェーズTNFDは、上述した項目を分析・開示するための手法として「LEAPアプローチ」を提唱しています。LEAPアプローチとは、自然関連のリスクや機会を統合的に評価し、情報を開示するための手順です。LEAPとは、「Locate」「Evaluate」「Assess」「Prepare」という4つのフェーズの頭文字をとったものです。ここでは、それぞれのフェーズについて詳しく説明します。1.Locateフェーズ|自然との接点の発見まず、どのような場所で自社(サプライチェーンを含む)が事業活動を展開しているのかを把握した上で、自然との接点(インターフェイス)を探します。そして、脆弱性の高い地域やセクターなど(たとえば、水不足によって日常生活が不便な地域)を特定します。2.Evaluateフェーズ|依存度と影響の診断次に、Locateフェーズで抽出した地域における事業活動が依存する(または、影響を及ぼす)自然資本・生態系サービスを特定してください。その上で、どのくらいの規模・程度なのか、内容がポジティブなものなのかネガティブなものなのかを診断しましょう。3.Assessフェーズ|重要なリスクと機会の評価ここまでのプロセスで把握した情報を踏まえてリスクを特定し、当該リスクに対して既に講じている軽減策や管理方法を確認してください。「リスク軽減の観点から不充分」と判断される場合は、追加的な方策を講じましょう。同時に「自社の事業活動にどのような機会がもたらされるか」も検討し、財務パフォーマンス(収益・コスト)や財務状況(資産・負債)に与える影響について分析してください。4.Prepareフェーズ|対応し報告するための準備Prepareフェーズは、「戦略とリソースの配分」「開示アクション」の2段階に分かれています。「戦略とリソースの配分」では、リスク・機会の分析結果を踏まえて、実施すべき戦略やリソース配分、目標、進捗度の定義・測定方法を決定しましょう。そして、「開示アクション」では、開示推奨事項を踏まえて「具体的に何を開示するのか」を決めた上で、報告書を作成・公表してください。SBTs for Natureとの違いSBTs (Science Based Targets) for Natureとは、生物多様性条約やSDGsなどに沿った行動を企業に促すためのフレームワークです。TNFDと似ているように感じるかもしれませんが、TNFDが「リスクおよび機会の特定」を主目的としているのに対し、SBTs for Natureは「目標設定」を主眼にしている点が異なります。食品業界における企業の取り組み事例以下、食品業界におけるTNFDフレームワークやLEAPアプローチの企業の取り組み事例を4つ紹介します。明治ホールディングス明治グループでは、TNFDフレームワークのLEAPアプローチに沿って、主要なカカオ生産地(13拠点)における自然関連リスク分析を実施し、森林減少や汚染などの回避・低減に向けて継続的に取り組む姿勢を示しています。詳細は、こちらからご確認ください。キリンホールディングスキリングループでは、キリンビール、キリンビバレッジ、メルシャン、ライオン、協和キリン、協和発酵バイオ、小岩井乳業の事業に関して、TCFDフレームワークやTNFDフレームワークに基づいて統合的な環境経営情報開示を実施しています。具体的には、従来の「キリングループ生物資源利用行動計画」に基づく活動や、国・地域で異なる水問題の解決に向けた活動に、「場所固有」「依存性」「自然への影響」という自然資本に関連する視点を加え、統合的アプローチを高度化していく姿勢を示しています。詳細は、こちらからご確認ください。アサヒグループホールディングスアサヒグループでは、2022年からTNFDフレームワークによる分析を開始しました。生物多様性の保全・回復に向けて「アサヒグループ環境ビジョン2050」を掲げ、水使用量削減に役立つアプリの開発、電気トラックでの配送、他社との共同配送、ラベルレスボトルの販売、PETボトルのリサイクルといった施策を講じています。詳細は、こちらからご確認ください。コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングスコカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングスは、環境ポリシーで「水を含めた自然資源を有効活用し、地球環境を持続可能な形で次の世代へ引き継いでいくことが重要な使命である」と定めています。2022年12月にTNFDフォーラム(TNFDでの議論をサポートする国際組織)に参画し、生物多様性保全への取り組みを強化しています。詳細は、こちらからご確認ください。まとめ近年、SDGs(持続可能な開発目標)やCSR(企業の社会的責任)、ESG経営(環境や社会、ガバナンスを考慮した経営)が重視されるようになり、TNFDフレームワークに沿った情報開示をする企業が国内でも増えてきています。今回は、TNFDフレームワークやLEAPアプローチとは何かを解説し、企業の取り組み事例を紹介しました。人類が長期的に経済的な発展を続けていくために、自然・生物多様性へのリスクを考慮し、対策を講じることはますます求められていくでしょう。