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世界の食品ロス対策(1)「食品廃棄禁止法」と「連帯冷蔵庫」

2019.09.12

食品ロス削減に関する世界各国の取り組み

世界の食品廃棄量、いわゆる食品ロスは年間約13億トンにものぼります。これは、人の消費のために生産された食料の約3分の1に相当するのだとか。今や世界共通の課題ともいえる食品ロス。日本ではつい先日、「食品ロス削減推進法案」が制定されましたが、他国ではどのような対策が行われているのでしょうか。

対応を急ぐヨーロッパ各国

世界でいち早く食品ロス対策に乗り出したのはヨーロッパ。EUの立法機関である欧州議会が2014年を「ヨーロッパ反食品廃棄物年」とし、期限表示や包装の適正化、フードバンク活動の優遇などを実施しました。さらに、欧州委員会は2025年までに食品ロスの30%削減を提案しています。ヨーロッパ各国でも独自の取り組みを行っていますが、今回はその中からフランスとイタリアの「食品廃棄禁止法」、スペインの「連帯冷蔵庫」を紹介します。

フランスで2016年2月から施行された「食品廃棄禁止法(通称:反フードロス法)」。流通業者や小売業者は食品を意図的に廃棄することを禁じられ、違反した場合は罰金を支払わなければなりません。また、売場面積400平方メートル以上のスーパーマーケットは、慈善団体との食品寄付の契約を締結するよう義務付けられました。実はこれに先立ち、2013年に国の行政機関と事業者間で「2025年までに食品廃棄を50%削減する(2013年比)」といった目標を掲げる協定が策定されていましたが、より規制を強める必要があるとの声があがり、「食品廃棄禁止法」の施行に至ったといわれています。イタリアではフランスと同年に「食品廃棄禁止法」が成立しましたが、フランスと異なるのは、違反した場合でも特に罰則がないこと。それどころか食品寄付をした際には税控除を受けられるそうです。何れにしても、法制化によって国全体で食品ロス問題と向き合う姿勢が感じられます。

一方、スペインの食品ロス対策として代表的なのは「連帯冷蔵庫」。2015年5月、バスク州のガスダカオの街中に設置された冷蔵庫のことで、残り物や賞味期限切れといった今まで廃棄していたような食品を自由に入れられ、自由に持ち帰ることができるというものです。設置したのはフードバンクを運営する地元のボランティア団体。生活困窮者への食糧支援と廃棄物削減を目的としています。冷蔵庫に入れるものは生ものを除き、何でもOK。自家製の食品を入れる近隣住民や、お店で余った料理を入れるレストランのオーナーなどもいるそうです。冷蔵庫の中身はボランティアの方々が定期的にチェックしていますが、持ち帰りはあくまで自己責任。持ち帰った食品を口にして食中毒になった場合でも、設置元が責任を問われることのない特別な取り決めが設けられています。

このように各国で進んでいる食品ロス対策。日本で適用できるもの、できないものはありますが、他国の取り組みを参考にしながら問題解決に臨みたいものです。

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NEW 2021.09.13

アップサイクル食品はフードロス削減の強力な一手となるか

持続可能な循環型社会を目指し、リサイクルが活発化しています。 リサイクルでは製品を別の製品の原料にして別の製品を生み出します。しかし古紙が再生紙になる例のとおり、より良い品質と価値を持った製品に生まれ変わるわけではなく、どちらかと言えば価値の下がった製品へと変換される場合が大半です。古いタオルやシャツを雑巾として再利用するのも同様の例で、これらはダウンサイクリングと呼ばれます。 これに対し、副産物や廃棄物を新たな価値とより良い品質の製品にリサイクルするのがアップサイクリングです。創造的再利用とも呼ばれ、これまではアートやファッション、インテリアの分野が主でした。 しかし今や食品の分野にもこのアップサイクリングの波が来ています。米国での動きを中心にレポートをお届けします。 <業界団体による標準的な定義の制定> コーヒーの果実の皮を原料にした紅茶飲料やビール醸造の際に出る穀物廃棄物を原料としたプロテインバーなど、米国内では食品廃棄物を活用したアップサイクル食品への関心が高まっています。 米国企業を中心に70社ほどが参加して設立された業界団体「アップサイクル食品協会」(本部コロラド州デンバー)は、市場拡大を受け2020年5月アップサイクル食品の定義を定めました。「本来は人間の食用とならなかった食材を使用して、検証可能なサプライチェーンにより調達・生産され、環境に良い影響をもたらす食品」ということで、実際に食品廃棄物の削減につながるものだけを「アップサイクル食品」と定義しました。 アップサイクル食品という言葉の持つ良いイメージだけを利用して売り込む偽物との差別化を図り、フードロスを削減し持続可能な社会を実現したいという強い意図が感じられます。 食品廃棄物による世界経済のロスは年間でどれほどになるかご存じですか。なんとその額は100兆円を超えるという試算もあります。アップサイクル食品への取り組みにより、この膨大な経済損失を削減できる可能性があるのです。 日本には昔から「もったいない」という言葉がある通り、廃棄物削減の意識は比較的高いと言えるでしょう。しかし米国は廃棄物に寛容な風潮があり、供給された食料のうち3~4割がロスとなっているとも言われているのです。 ただ、米国でも時代は動いてきているようで、ミレニアル世代(1980年代~1995年生まれ)やZ世代(1996年~2012年生まれ)は消費者としての意識が高く、芯のある理念をもちメッセージを発する企業やブランドを購入する傾向があるのだそう。今後世代交代が進むにつれ、フードロス削減を掲げるアップサイクル食品市場はどんどん拡大していくことが予想されます。 米国の動きをお伝えしましたが、日本国内でもアップサイクル食品は続々と増えています。これまで廃棄されていた米やパン耳を使ったビール、規格外野菜や規格外フルーツを原料とした加工食品など、環境に良いから、フードロス削減につながるからといった理由がなくても味わってみたい魅力的な食品が目白押しです。 アップサイクル食品という言葉が生まれたということは、大量生産大量消費をベースにした一定の無駄には目をつぶるという社会から、より持続可能な循環型社会へと社会風潮が成熟してきていることを示します。時代は変わり、動きます。そのただなかにいるのだと思うと少し不思議な感じもしますが、この大きなうねりを楽しむ気持ちを持ちたいものですね。
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2021.08.11

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コロナ禍の心まで慰める? ローマ名物「マリトッツォ」とは

2021年になって大注目のスイーツ、「マリトッツォ」。ころんとした丸いデニッシュにたっぷりのクリームが入ったその姿はシンプルかつダイナミックでインパクトも充分。目にも舌にも嬉しく、その人気は急上昇を続けています。 タピオカ以来の大トレンドとも言われており、全国のベーカリー、カフェをはじめとしてホテルやコンビニエンスストアでも販売されるマリトッツォに迫ります。   <起源はローマ時代> 古代ローマ時代、ハチミツとドライフルーツを使ったパンが一般的に食べられていたそうです。現在のようにクリームははさまれていませんでしたが、大きく栄養満点で持ち運びしやすい食事だったこのパンがマリトッツォのルーツと言われています。 中世になると、食事用から一歩進んでスイーツに近い甘いパンになったと考えられています。パンの大きさは小さくなり、ナッツやドライフルーツがふんだんに使われていたそうです。特にキリスト教で四旬節と呼ばれるイースター前に肉を控えて粗食にする期間にも食べることができたので、さらに普及したのだとか。 イタリアでもアドリア海側のマルケ州では現在でもクリームを挟まないローマ時代の面影を残すマリトッツォが食べられています。南イタリアのプーリア州では生地を編み込んだような形、そしてローマでは小さな丸いパンの間にたっぷりのクリームを挟んだマリトッツォが知られています。 現在日本でブームになっているのは、ローマ版マリトッツォというわけですね。   <ブームの背景にはコロナ禍も?> インスタグラムで「#マリトッツォ」と検索すると7万件ほどもヒットします。シンプルにクリームがはさんであるもの、美しくフルーツを飾り付けたものなどどれも写真映えしていて見飽きません。 なぜ2021年という年にマリトッツォがブームとなったのか。 その背景にはコロナ禍に少し慣れ、しかし密を避け必要以上に人と交わらずマスク生活を続けなければならない人々の疲れ、閉塞感があるのではないかと考えられます。 かわいらしく食欲をそそるそのフォルムを見て癒され、クリームと甘いデニッシュを嚙み締めその甘味に癒され、食べ終わればその満腹感になんだか安心するという一連の流れは、単に流行りものを食べている以上の満足をもたらしていると感じませんか。 ストレートに甘く口の中でとろけるクリームパンを無心で頬張るそのときだけはコロナ禍を一瞬忘れ、幸せの波に身を任せていると言ったら言い過ぎでしょうか。 テイクアウトしやすく、店ごとに様々なラインナップが揃うマリトッツォがコロナ禍にブームになったのは偶然ではないように感じるのです。 もちろん飲食店の苦境、経済活動の落ち込みがすべてマリトッツォで挽回できるわけではありませんが、見栄えのする食べ物が大ブームとなること自体が明るい話題として歓迎されているのは間違いありません。 ワクチン接種も始まりましたが、コロナ禍の終息までにはまだもう少し時間がかかりそうな気配です。マリトッツォは息の長いブームになるのか、それとも定着するのか。今後とも注目していきます。
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