シェアシマが発信する「食品開発者のための専門メディア」
業界情報や製品・サービス紹介などの食にまつわる情報をお届け!

menu icon

人気のタグはこちら

“ シェアシマ海外レポート ”

NEW 2022.11.30

規格外野菜を売る「闇市」とは。社会を動かした仏スーパーの好事例

規格外野菜の活用方法について、世界中でさまざまな取り組みが行われています。ヨーロッパ最大手のスーパー「カルフール」は、規格外野菜が欧州で「違法」に当たることを逆手にとって、これらの野菜を販売する「ブラックマーケット(闇市)」を開催して注目を集めました。スーパーが社会を動かした好事例を紹介します。 97%の野菜が規格外、厳格な基準の欧州 規格外野菜とは、傷があったり曲がっていたりして、大きさや形、色、品質が規格に適合しない野菜のことです。生産される過程で一定数発生し、そうした野菜の多くは廃棄されているという現実があります。 農作物の規格は、日本だけなく他の国にも存在します。ヨーロッパの厳格な規格「GAP(Good Agricultural Practice)」では、生産された97%の青果が違法扱いとなっていて、深刻なフードロスが生じている現実がありました。 こうした現状を改善しようと、2017年9月、パリ近郊に本社を置きヨーロッパ各地に進出している大手スーパーマーケット「カルフール」は、規格外野菜を販売するブラックマーケット(闇市)を開催すると発表しました。 スーパーのキャンペーンで議会が動いた カルフールが仕掛けたブラックマーケットでは、過激とも思われるプロモーションが注目を集めました。白を基調としたスーパーの一角が黒一色に変わり、黒い棚に当時「違法」とされていた品種の青果やシリアルが陳列。どれも通常のスーパーでは見かけることの少ない、ふぞろいながらおいしそうな食材ばかり。このほか、農家が採取した600種類の伝統的な品種の種や、笑みを浮かべる農家の人たちのポスターが展示されました。 ブラックマーケットの店員は、スーパーの利用者にこれらの食材の試食を促し、そのおいしさだけでなく、伝統的な農業を守る意味を説明しました。この試みは数多くのテレビやラジオ、新聞で取り上げられ、大きな話題を呼びました。 併せて、法律改正呼び掛ける署名活動を行ったところ、短期間で8万5千人以上の署名が集まりました。こうした一連の動きによって、EUの法律改正に至りました。 大手スーパーの大規模なキャンペーンによって農家とスーパー、消費者のつながりができ、多くの人たちの情熱が議会を動かしました。規格外野菜の活用という視点だけでなく、さまざまな主体が共感・協力し合うことで大きな成果に結びつくことを示したという意味でも、注目すべき事例と言えそうです。
規格外野菜を売る「闇市」とは。社会を動かした仏スーパーの好事例
2022.11.09

ウイスキーが温暖化を左右する?世界が見習うべきスコッチ業界の誠実さ

泥状の炭が積み重なる湿地帯のことを「泥炭地(でいたんち)」と呼びます。膨大な二酸化炭素を土壌に固定している泥炭地の保全は、地球温暖化対策にとって欠かせない重要な問題です。そこから採取される泥炭(ピート)は、​​伝統的なスコッチウイスキーの製造過程に欠かせない材料の一つでもあります。今、多くのスコッチウイスキー生産者が泥炭地の保全に貢献するため、カーボンニュートラルなウイスキー生産に取り組んでいます。 ピートは使わない、伝統を超える挑戦 ​​スコットランドで何百年も前から蒸溜されてきた「モルトウイスキー」は、原料の麦芽を乾燥させる際にピートをたくことで、芳醇なスモーキーフレーバーを醸します。高熱にさらすと不活性化する麦芽の糖化酵素ですが、ピートはこの酵素の働きを損なわせることなく適度な火力を保つため、伝統的にウイスキー造りの燃料として重宝してきました。 ピートを掘り出す泥炭地は、分解途中の植物が非常に長い時間をかけて堆積して形成されたもので、二酸化炭素の吸収源としてはもちろん、多様な動植物の生息地として貴重な役割を担っています。ウイスキー造りのためにこの貴重な資源を消費すれば、地球に炭素を放出させ、泥炭地の多様な生態系にも影響を及ぼすことになります。 この泥炭地を守るため、ピートを使わない持続可能なウイスキー造りに取り組むウイスキー生産者が増えています。スコットランドで最も古い蒸留所の一つである「フェッターケアン」では、地元のオーク材を使ったたるで熟成するという方法で、ピートを使わずとも香りを損なわない製造方法を試みています。依然としてピートの独特でスモーキーな風味を愛する根強いファンがいるものの、近年はウイスキー愛飲家たちの嗜好が多様化し、ピートを完全に排除したウイスキーが受け入れられやすくなっています。 2050年を見据えたスコッチ業界の選択 ​​スコットランド西海岸で2017年に設立された「ノックニーアン蒸留所」も、ピートを使わない持続可能なウイスキー生産に挑んでいます。創業者の女性、アナベル・トーマスは、スコッチウイスキーの価値観を根本から変えようと、自然に調和したウイスキー造りを明確に打ち出しています。 ノックニーアン蒸留所は、ピートを完全に使わないという選択を始めとし、バイオマス発電を主とした蒸留所の設計など、あらゆる環境に配慮した取り組みに徹し、イギリスの蒸留所として初めてカーボンゼロ認証を獲得しました。 こうした流れの中、2021年にスコットランド・グラスゴーで開催されたCOP26(気候変動枠組条約締約国会議)でも、泥炭地の保全が議題に上がりました。スコッチウイスキー生産量の95%以上を占めるスコッチ・ウイスキー協会(SWA)は、スコットランドの泥炭地を積極的に保全し、2035年までに回復させることを約束しています。SWAでは2009年以降、温室効果ガスの排出量を34%削減。イギリス政府は2050年のカーボンニュートラル達成を掲げていますが、SWAは10年前倒しで目標達成することを目指しています。 スコッチウイスキー業界の誠実な姿勢が、世界中のファンを魅了し続ける、一つの要因になっているのでしょう。 
ウイスキーが温暖化を左右する?世界が見習うべきスコッチ業界の誠実さ
2022.11.02

パリ市、学校給食を「100%サステナブル」へ

2022年5月、パリ市は「学校給食を100%サステナブルまたはオーガニックにする」と発表しました。パリ市では、これまでにもサステナブルな給食の実現に向けた取り組みを進めてきました。この記事では、パリ市の過去の取り組みと共に、今回の発表の詳しい内容について紹介します。 2027年までに実施、パリ市議会で決定 2022年5月、パリ市議会は2027年までの新しい計画として「学校の食堂で提供する食事を100%サステナブルあるいはオーガニックにする」と発表しました。 この計画の中には、「学校給食に使われる食材の75%はオーガニックなものにする」「100%は季節の食材を取り入れた食事にする」「50%を市から250キロメートル以内で生産された食材にする」などの取り組みが含まれています。 パリ市が学校給食のサステナブル化に向けた取り組みは、2009年に始まりました。さまざまな試行錯誤により、サステナブルな食材の使用率は2008年の8%に対して、2019年には53%に到達。こうした経緯を踏まえて、今回の計画が発表されました。 ベジタリアンメニューの選択肢も全員に 2027年に向けて、多様な視点から取り組みが盛り込まれていることも、今回の計画の大きな特徴です。 例えば、常にベジタリアンメニューを選べるようにすることや、週2回はベジタリアンメニューを提供するという計画もあります。また、肉や乳製品、卵やアニマルウェルフェア(動物福祉)に配慮した生産者から購入し、魚などの魚介類は責任ある漁業で採集されたもの、チョコレートはフェアトレードのものを使用することが定められています。 他にも、健康に配慮したメニューづくりとして、食事に含まれる塩分や糖分の削減や健康に被害を及ぼす添加物を使わないこと、食品に触れる部分にはプラスチックを使用しないことも規定されています。 給食は栄養を摂取するだけでなく、地域の食文化を学ぶきっかけにもなります。給食を通してサステナブルな食習慣を身に付けておくと、その後の人生に大いに役に立つでしょう。しかし、サステナブルと呼ぶ基準があいまいであるという指摘や、ベジタリアン食について子どもの発育への影響から心配の声も出ています。 2027年に向けて、どのように取り組みを推進していくのかー。その革新的な取り組みに、世界中から注目が集まっています。
パリ市、学校給食を「100%サステナブル」へ
2022.10.26

世界一のティラミスを再現。食の新時代を拓く最新3Dプリンター

設計データに基づいて3次元の物体を作ることができる3Dプリンター。スペイン・バルセロナを拠点とするフードテック企業のNatural Machines社は、この先端技術を利用して世界的コンテストで優勝したティラミスを完ぺきに再現しました。『料理の3Dプリント』を極めようとする同社が見据える未来の食卓とは? 見た目、感触、味をすべて忠実に再現 Natural Machines社は昨年、欧州連合(EU)の支援を受けて、イタリアで偉業を成し遂げました。同社の看板商品の3Dフードプリンター「Foodini(フーディニ)」を使い、ティラミスの世界大会「ティラミス・ワールドカップ」で優勝したティラミスを、見た目、感触、味においてすべて忠実に再現したのです。これは、料理の世界に3Dプリントが完全に対応し、理想のレシピを誰もが作れる世界を示してくれました。 フーディニは、43cm×45cmという大きさで、価格6000ドルで調理家電として販売されています。ユーザーフレンドリーな設計で、操作は非常にシンプルです。まず、タッチパネルを操作し、作りたい物のデザインや形状などを選択します。次に、専用のスチール製カプセルに素材となる具材を詰めれば、準備は完了。あとは機械がソフトクリームのようにノズルから食材を押し出し、1層ずつ積み上げるように仕上げます。 具材を入れるカプセルは最大5つ収容でき、必要に応じて自動で切り替えて複雑なレシピを再現することができます。スマートフォンなどの端末と連動するFoodini専用アプリに自分のとっておきのレシピを保存して、繰り返し作ることも可能です。 Natural Machines社は今回、ティラミス・ワールドカップ優勝者のパティシエと協力し、さまざまな配合で試作を重ねた末、完ぺきなコピーを完成させました。 3Dプリンターで人々の食卓を変える フーディニは、機械に収まるサイズであれば、何でも複製できるため、ピザやパスタなどの料理はもちろん、ケーキや皿にチョコレートでデコレーションを施すことが可能です。付属する部品は、食器洗い機やオーブンに対応しています。完成した料理を焼いたり冷凍させたりと、加工することもできます。 既に一部の一流レストランでフーディニはその地位を確立しつつあり、ゆくゆくは学校や病院、福祉施設など、利用される場が増えていくことでしょう。Natural Machines社は、保存料や添加物で食品の賞味期限を長引かせるより、新鮮な食材をその場で加工して作る料理の方が健康的であると考えます。 家庭の台所で、料理が3Dプリントされる日が来るのも、そう遠くないのかもしれません。
世界一のティラミスを再現。食の新時代を拓く最新3Dプリンター
2022.10.19

バナナの皮をバイオ燃料に。廃棄物利用で脱炭素社会目指す

動物や植物などから生まれた有機性資源の「バイオマス」。具体的には森林の間伐材や食品廃棄物などから得られるバイオマスエネルギーは、カーボンニュートラルかつ再生可能であるという点から、気候変動対策への効果が期待されています。そうした中、スイスの研究者たちが、バナナの皮から再生可能なバイオマス燃料を抽出する方法を発見しました。本来なら廃棄されてしまう物を利用して再生可能エネルギーを生み出すという画期的な方法です。 光の照射でバナナの皮から水素を取り出す 2022年1月、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)に拠点を置く科学者チームは、バイオマスエネルギーの画期的な抽出法を発表しました。それは、乾燥したバナナの皮の粉末から、水素やバイオ炭などの資源を抽出するというものです。乾燥バナナの皮1kgから約100リットルの水素と330gのバイオ炭が生成されます。 特に水素は、使用過程で二酸化炭素を排出せず、多様な資源から得られるという供給源の安定性から、脱炭素社会の鍵とされるエネルギーです。研究チームが発表した水素抽出法は、実にシンプルなものです。まず、炭素、水素、酸素など有機物をたくさん含むバナナの皮を、105度で24時間乾燥させ、粉末にします。これを不活性ガスで満たしたステンレス製の容器に入れて光を照射。わずか数ミリ秒という速さで分解は完了します。 ポイントは、写真撮影のフラッシュにも使われている「キセノン閃光ランプ」で照射することです。極めて短時間に明るく照らすこの白い光は、強力なエネルギーで物質の化学反応を促進します。光と熱で一瞬にして1000℃以上という高温に達することで強力なエネルギー変換が起き、これまでなかった水素抽出法が実現しました。 真のカーボンニュートラル、画期性が評価 欧州連合(EU)は、2050年までに二酸化炭素の排出量と除去量を差し引きゼロにする脱炭素化(カーボンニュートラル)の施策を強化しています。ただ現実には、バイオエネルギーの生産工程で、二酸化炭素が排出されるケースは珍しくありません。それは、高温の加熱処理をしてエネルギーを分解・抽出する場合、大量の化石燃料が必要となるからです。 生産工程に生じるこの矛盾は、バイオマスエネルギーの生産にとってのネックでした。しかし、光を照射してバナナの皮から水素を抽出する方法は、この問題をクリアーした画期的な方法です。それどころか、水素と共に得られる副産物のバイオ炭は、二酸化炭素を吸収して閉じ込める「炭素貯留効果」があります。バイオ炭は、酸化した土地を中性化するなど土壌改善効果も確認されていて、農業資材としての活用も期待されています。 原料のバイオマスはバナナの皮以外に、トウモロコシの芯、オレンジの皮、コーヒー豆、ココナッツの殻なども応用できる見込みがあると言われています。将来的には、タイヤなどの産業廃棄物を利用するなど、さらなる発展の可能性も秘めています。
バナナの皮をバイオ燃料に。廃棄物利用で脱炭素社会目指す
2022.10.12

中国で人気の「ゼロカーボン食品」、グローバル企業で開発進む

昨今の中国では、野菜や牛乳などさまざまな種類の「ゼロカーボン食品」が登場し、注目を集めています。温室効果ガス削減への効果も期待され、グローバル企業ではゼロカーボン食品を開発する動きも進んでいます。この記事では、ゼロカーボン食品の魅力と共に、グローバル企業の取り組み事例について紹介します。 温室効果ガスをゼロに抑えた食品 ゼロカーボン食品とは、食品を生産する過程で発生する温室効果ガスの排出量をマイナスまたはゼロに抑えたもののこと。温室効果ガスは、食品の研究開発の段階から原料の栽培・収穫(飼育・養殖)、加工、流通、小売、貯蔵などさまざまな工程で排出されます。 国連グローバル・コンパクト(UNGC)が2021年に発表した研究報告書「企業のカーボンニュートラルルートマップ」では、人口増加や肉食の増加などに伴い、これから数十年間で農業と食品業界のCO2排出削減のハードルが大幅に上がると示されています。 こうした状況の中、中国のスーパーマーケットでは、ゼロカーボン牛乳やゼロカーボンヨーグルト、ゼロカーボン野菜などが販売されるようになりました。食品が食卓に上るまでの一連の過程でゼロカーボンを実現。こうした食品を食べることで、CO2の排出量を減らすことができます。 中国で開発を主導するグローバル企業 中国に30年以上進出している大手食品メーカー「ネスレ」では、低炭素と環境保護を意識したコーヒー製品を展開しています。サステナブルな製品やパッケージを採用したり、コーヒーマシンに再生できる原材料の使用割合を増やしたりする取り組みを進めています。 また、フランスの食品企業「ダノン」では、2022年4月に中国の生産工場でカーボンニュートラルを実現。さらに、二酸化炭素貯留技術を持つランザテック社と提携して、化石燃料によるパッケージを徐々に減らす方針を示しました。 ゼロカーボンを推進するためにはいくつもの試練があり、ゼロカーボン食品を導入することは簡単なことではありません。その一方で、こうした転機を「チャンス」と捉えて新しい取り組みを始める企業が出てきています。
中国で人気の「ゼロカーボン食品」、グローバル企業で開発進む
2022.10.05

食べられるかの判断は消費者で、英で広がる賞味期限撤廃の動き

食品の廃棄量が増えると、生産するために消費した資源やエネルギーを無駄にすることになります。イギリスの小売業界では、食品の廃棄による環境負荷を少しでも軽減しようと、賞味期限を撤廃する企業が増えています。食の安全に関わるセンシティブな問題ですが、一部では消費期限を廃止する動きさえあります。イギリスでも、まだ正解は見出されていないようですが、食品廃棄の問題を考える上での重要な問題提起と言えそうです。 英高級スーパー、300店舗で賞味期限を廃止 ​​イギリス国内で300店舗以上展開する高級スーパーマーケット「ウェイトローズ」は、食品廃棄物を減らすための取り組みとして、店頭に並ぶ約500種類の生鮮食品に表示されている「賞味期限」を9月から撤廃する方針を発表しました。ウェイトローズの運営会社「ジョン・ルイス・パートナーシップ」は、この取り組みによって消費者自身が食べられるかどうかを判断するようになり、食品を使い切る機会が増え、食品廃棄量の削減につながることを見込んでいます。 イギリスの家庭における食品廃棄量は、毎年450万トンともされており、環境に与える影響も無視できないものです。また、消費者にとっては、食品の無駄を減らすことで食費を節約できるのも、大きなメリットになります。 同社は、安全性の観点から消費期限(Used by)は商品に残すとの見解を示しています。ちなみに、賞味期限(Best before)は、「いつまでに消費すれば、品質、味、食感が最も良い状態であるか」を示す目安です。賞味期限が過ぎた食品を食べても、必ずしも安全性に問題があるとは言えず、何の問題もない場合もあります。対して消費期限は、その食品の安全性を示しています。期限内に食べ切らなければ、食中毒などを引き起こす可能性もあり、より警告の意味合いが強い表示だと言えます。 賞味期限撤廃の流れはどこへ向かうのか ​​ウェイトローズの賞味期限撤廃の決定は、イギリス国内の他の大手小売業者による同様の動きに追随したものです。2018年、世界展開するスーパーマーケット「テスコ」は100以上の商品から賞味期限を撤廃。さらに今年7月、イギリスの老舗スーパーの「マークス&スペンサー」は300品以上の生鮮食品から賞味期限を撤廃すると発表しています。 テスコのライバル企業「モリソンズ」は今年1月、イギリスで毎年約2億8000万リットル廃棄されているとされる牛乳について、自社ブランドの商品の大半について消費期限の廃止を決めました。同社は、牛乳が飲めるかどうかを消費者自身が匂いで判断する「嗅覚テスト」を顧客に促すという少々大胆な計画も発表しています。しかしながら英国食品基準庁(FSA)は、特に食中毒を引き起こす可能性のある牛乳のような食品には、モリソンズが奨励する「嗅覚テスト」は必ずしも適切な方法ではないと指摘しています。 一方、FSAは、賞味期限と消費期限のどちらを表示するかは、食品の製造方法やリスクの高さなどの要因によって異なるため、あくまで製造者の判断に委ねるとしています。いずれにせよイギリスの大手スーパーで相次ぐ賞味期限撤廃の流れは、不可逆的なものに思えます。消費者の意識変革を迫るこうした流れが世界の潮流になるのか、遠く離れた日本にとっても無関心ではいられない問題です。
食べられるかの判断は消費者で、英で広がる賞味期限撤廃の動き
2022.09.28

自社商品への情熱ゆえ?環境配慮のマーケティングに潜むリスク

スウェーデンに拠点を置き、20か国で植物性ミルクを販売する大手企業「Oatly(オートリー)」。環境配慮をアピールする同社の広告表現が誇張されており、消費者に誤解を招きかねない内容だとして、イギリス広告基準局(ASA)が禁止措置を講じました。環境への取り組みをマーケティングに利用する企業が増える中、果たしてそれがエビデンスに基づくふさわしい内容なのか、環境意識の高い欧州で問題視されるようになっています。その背景には、日本でも浸透している「サステナブル」などの言葉の定義のあいまいさがあるようです。 植物性ミルクの最大手、100件以上の苦情が殺到 ASAは2021年9月、根拠がなく誤解を招くような環境に関する主張を宣伝する企業に対して、以前より厳しく取り締まる姿勢を明らかにしました。そうした中、自社の植物性ミルクが一般的な牛乳より優れており、肉や乳製品を摂取することが環境に悪いと訴えたオートリーの翌年1月の広告に対し、自社製品を有利にしようと環境配慮を誇張しているのではないかと、市民や団体などから100件以上の苦情が寄せられました。 イギリスの広告分野における独立規制機関であるASAは、オートリーの広告は内容を裏付けるだけの十分な根拠を示しておらず、消費者の誤解を招くものであったとし、苦情の大半を支持し、同社に対して広告の禁止を言い渡したのです。 オートリーは、この経緯を全面的に受け入れ、より科学的な根拠に基づいた分かりやすい表現を心掛けるべきだったとして、禁止を受けた広告を削除しました。ただし、苦情が寄せられた広告すべてに環境配慮を誇張した表現があった訳ではありませんでした。一部については、客観的に実証された内容であり苦情の内容に当たらないと、ASAから掲載の継続を認められています。 環境配慮を装う「グリーンウォッシュ」が問題に 気候変動対策が迫られる今、企業がマーケティングにおいて「サスティナブル」や「環境に良い」といった言葉を使う機会は急増しています。そうした中で顕在化してきた問題が、自社のブランドが「環境に優しい」ことを強調し、消費者の関心を引くやり方です。 中には環境意識の高い消費者をあざむく悪質なものもあり、「グリーン=環境に配慮した」と「ホワイトウォッシング=都合のいいようにごまかす」を合わせた造語で、「グリーンウォッシュ(グリーンウォッシング)」と呼ばれています。 うそやでまかせが横行すれば、消費者が環境配慮をうたう企業を信用しなくなるばかりか、きちんと環境問題と向き合う誠実な企業まで疑われる皮肉な状況が生まれます。実際には悪意がなくとも、商品のメリットを熱心に訴えたいがあまりに、グリーンウォッシュと捉えられてしまうケースもあります。このような事態を避けるには、情報発信の際は裏付けとなる客観的なデータに基づき、あいまいな表現は控えなければなりません。 企業側が真摯な姿勢を示すことはもちろん、消費者側が冷静に判断することも求められます。「サスティナブル」などの言葉を巧みに利用して、感情に訴えかけるグリーンウォッシュには注意が必要です。
自社商品への情熱ゆえ?環境配慮のマーケティングに潜むリスク
2022.09.14

欧米が注目する「第3の代替肉」。植物性でも動物性でもない新素材

目に見えない菌類を主原料とする​​​​新しい代替肉が欧米で注目されています。代替肉にはさまざまなカテゴリーがありますが、キノコ由来の微生物を培養して作る「第3の代替肉」は、美味しさや汎用性の高さに加え、環境への負荷が少ないのが特徴です。地球環境を守るという点において最も優れた代替肉と言えるかもしれません。  キノコ由来の菌類をベースに生成 環境への負担に配慮して作られる代替肉は、これまで大きく2種類に分けることができました。大豆などを原料とした植物由来(プラントベース)のものと、研究室で細胞を培養する動物由来のもの(培養肉)です。しかし欧米では今、これまでとは全く違う形で作られる「第3の代替肉」に注目が集まっています。それが、菌類などの微生物から作られる代替肉です。 菌類を含む微生物は、私たちの食生活にとって、とても身近な存在です。とりわけ日本はその結びつきが強く、味噌や納豆、日本酒といった発酵食品は伝統的な食文化となっています。また、ビールやパンも同じように、微生物による発酵の作用で作られる食品です。 「第3の代替肉」は、例えるなら、キノコとバイオテクノロジーを掛け合わせて製造するというようなイメージです。主な原料となるのは、キノコの根っこの部分に当たる菌糸体です。糸状菌の集合体である菌糸体は、動物の筋肉組織に非常に似ているため、応用力に優れています。好きな形状、質感、風味で調理することができ、赤身の肉と同じくらいジューシーで柔らかく美味しいという三拍子そろった逸材です。 加えて、タンパク質、鉄分、ビタミン、ミネラルといった栄養素が豊富に含まれている点も、大切なポイントです。糸状菌の集合体である菌糸体は食物繊維も豊富で、食後に満腹感が得られやすく、食事量の調節や体重管理にも向いており、健康食品としても優秀です。 最も環境にやさしい代替肉 近年、地球環境を意識してベジタリアンになる人が増えています。とはいえ、そうした流れを飲み込むような猛烈な勢いで、世界人口が増えているのも揺るぎない事実です。 第3の代替肉の原料になる微生物は、糖分をえさとして培養液の中で育ちます。この微生物と同量のタンパク質を得るには、牛であれば放牧や飼料生産のための広大な農地を必要とします。微生物のえさとなる砂糖を生産するためのコストを考慮したとしても、微生物由来の代替肉は、畜産よりもはるかに省スペースかつ省エネルギーで効率よく製造できます。 ドイツとスウェーデンの研究チームは、2050年までに人が食べる牛肉の20%を菌類由来の代替品に置き換えると、森林破壊を50%も削減できることを明らかにしています。菌類由来の代替肉を増やして、肉牛の数を減らせば、森林伐採を食い止めるだけでなく、牛が排出するメタンガスなどの温室効果ガスを削減できます。 地球環境が危ぶまれる時代に、大きな環境負荷をかけずとも、優れた栄養・食感・味を持つ自然食品を提供してくれる微生物のポテンシャルは底しれません。この新しい代替肉は、私たちの食のシステムを変えていくための重要な足掛かりになるでしょう。
欧米が注目する「第3の代替肉」。植物性でも動物性でもない新素材
2022.09.07

米国で話題!一歩先を行く「プラントベースホールフード」とは

植物性の食材から作られるプラントベースの食品は、肉や魚、卵に代わるものとして急速に広がりつつあります。アメリカではプラントベースのホールフードという考え方が登場し、味と健康を両立するとして話題を集めています。日本でも食肉代替の植物性食品が急速に広まる中、一歩先を行くアメリカの最新事情を紹介します。 プラントベースホールフードは未精製・未加工の植物性食品 プラントベースホールフードを一言で説明すると、精製・加工がされていない植物性の食品のことです。プラントベースフードの中でもより自然に近い食品を指し、素材を丸ごと食べることを意味しています。 たとえば、大豆ミートは大豆などの植物性の原料を加工した食品であり、プラントベースフードの代表的な食品です。しかし、加工しているという点から、大豆ミートはプラントベースホールフードには含まれません。 プラントベースホールフードの例としては、野菜や果物、玄米やキヌアなどの全粒穀物、豆類、ナッツなどが挙げられます。プラントベースホールフードの基本は、野菜や果物の皮や茎、種まで食べること。購入する際には、自然栽培で作られたものなど残留農薬の不安がないものを選ぶようにするようにするのがおすすめです。 日本には昔から「一物全体食」という考え方があり、白米よりも玄米を選んだり、野菜や果物は皮ごと食べたりすることが推奨されてきました。プラントベースホールフードは、一物全体食にも通じる考え方と言えるでしょう。 プラントベースホールフードは環境負荷が少なく、栄養が豊富 プラントベースホールフードを取り入れるメリットは、大きく2つあります。1つ目は、環境負荷が少なくて済むということ。食材を丸ごと食べるので食材の無駄が少なく、食品ロスの削減につながります。また、自然栽培などの食材を選ぶことにより、化学肥料や農薬の使用を減らすことができます。 2つ目は、安全な食材を選び丸ごと食べることで、栄養をしっかりと摂取できるということです。野菜や果物の皮には栄養が豊富に含まれているためです。 アメリカで人気が高まっている、プラントベースのホールフード。WHO(世界保健機関)やFAO(国際連合食糧農業機関)においてもその効果が認められていて、今後さらなる注目が予想されます。
米国で話題!一歩先を行く「プラントベースホールフード」とは
2022.08.31

異常な熱波に苦しむジンバブエ、危機を救うのはアノ農作物⁈

アフリカ南部のジンバブエ共和国。気候変動による異常な熱波が、ジンバブエ国民の生活を容赦なく襲っています。国民のほとんどが小規模農家で自給自足の暮らしをしている同国では、ここ数十年で最悪の経済状態となっています。ところが近年ある作物の栽培に力を入れ始めたことで、復興の兆しが見えてきました。 熱波に負けない農家たちの“救世主” 首都から400キロ以上離れたゴクウェ南部。以前は盛んだったトウモロコシや綿花の栽培は、熱波の影響でほぼ不可能な状態にまでなっています。干ばつになると、トウモロコシなどの通常の作物は2週間も持ちません。そこでこれらに代わる、干ばつに強い作物への移行が急がれていました。 民間の国際協力組織が状況を打開するために動きました。農業ビジネスセンター、通称ABCと呼ばれる組織です。ABCは、ドイツの世界飢餓援助機構 (WHH) が運営し、欧州連合(EU)から資金提供を受けています。 ジンバブエの農業の救世主として白羽の矢が立ったのは、ヒマワリです。ヒマワリは干ばつに強い作物で、1ヶ月もの乾期を生き延びることができます。厳しい経済状況にあるジンバブエでは、農家が必要な資材を購入することも困難ですが、ヒマワリは大量の栄養剤を与えずとも豊作が期待できます。まさにジンバブエの土地柄に適した作物でした。 当時のジンバブエではヒマワリ市場は確立されておらず、多くのヒマワリ農家は零細産業として脇に追いやられていました。そこで、ABCは地域の6000以上の小規模農家と契約を結び、ヒマワリの栽培ノウハウを提供。個別の農家の所得向上を支援しています。ヒマワリの種子からヒマワリ油を加工できることにも着目し、さらなる収益性の向上を模索しています。 ヒマワリに続く期待の作物はマンゴー 厳しい日差しのもとでよく育つマンゴーは、ジンバブエ農業にとって期待の作物です。ところがここ数年、収穫したマンゴーを捨てざるを得ないという事態が相次いでいます。 新型コロナウイルスの大流行により、ゴクウェを含む地方の農家は、都市部に果物を売りに行くことができなくなりました。そこで、ABCは生のマンゴーを農家から買い取り、工場で加工してドライマンゴーとして売り出す支援を始めました。これにより、食べられるマンゴーの廃棄を防ぐと同時に、失業者が多くを占めていた若者世代の雇用を生み出しました。 ドライマンゴーは生のマンゴーと比べて4倍の価格で売れることに加え、国内外の需要も見込める魅力的な商品です。現在、ゴクウェ南部に4つの加工センターを運営するABCは、これまで国内向けだったゴクウェ産のドライマンゴーの販売を海外に広げ、輸出市場を積極的に開拓していく考えです。 ジンバブエの人々に寄り添う一連の支援は、SDGs(持続可能な開発目標)の一つ、「パートナーシップで目標を達成しよう」にも貢献するものとなっています。
異常な熱波に苦しむジンバブエ、危機を救うのはアノ農作物⁈
2022.08.24

食品産業排水を代替小麦粉へアップサイクル。米フードテック企業の成功例

​​​​廃棄されるはずのものを、価値ある新しい商品として生まれ変わらせる「アップサイクル」。このアップサイクルにより、アメリカのフードテック企業が、グルテンフリーで栄養豊富な代替小麦粉の生産を成功させました。地球温暖化対策に資する、カーボンニュートラルな製造法も話題となっています。 食品工場で廃棄される砂糖水に着目 米国のフードテック企業ハイフェフーズは、食品工場で排出される砂糖水を利用して、菌糸体由来の代替小麦粉を生産しています。これを原料とするパスタ「ハイフェパスタ」は、高タンパク、低炭水化物、アレルゲンフリーな代替小麦粉になると注目を集めています。 ハイフェフーズ共同創業者の1人、ミシェル・ルイズ氏は、アメリカの大手石油会社で化学技術者としての勤務経験があります。同氏が働いていた廃水処理施設では、有機物を食べて水を浄化する微生物のえさが常に不足しており、過剰になった大量の微生物が日々捨てられてメタンガス発生の原因となっていました。無駄な微生物の廃棄を止めれば、地球の温室効果ガス削減に貢献することもできます。同氏は、この飢えた微生物のえさを効率的に得る方法を探しました。 ルイズ氏が着目したのは、毎日数百万リットルもの排水を出す、ビールなどの大規模な醸造所、トウモロコシの製粉所や缶詰工場です。実はこの食品産業排水は、製造過程で濃縮されており、糖分を多く含んでいて栄養豊富です。しかしながら、企業は費用を払って廃棄物としてこれらを処理していました。糖分を含んだ排水は、ルイズ氏を悩ませていた廃水処理施設の微生物のえさとして利用できます。 さらに同氏は、この排水を代替小麦の原料として再利用し、価値あるものに生まれ変わらせることを考えました。微生物を扱うプロであり、排水の隠れた価値を知っていた同氏だからこそ、微生物による発酵作用で作るハイフェパスタを完成させることができました。 アップサイクルが食料問題解決の糸口に バイオテクノロジーで開発された代替小麦粉によるハイフェパスタは、1人前で鶏のむね肉1枚分ものタンパク質を含み、食物繊維も豊富です。豆類やナッツ類から成る代替小麦粉は、炭水化物以外の栄養素に欠けるという点がネックでしたが、ハイフェパスタなら、健康を損なわずに、小麦に限りなく近い食事のメニューを楽しむことができます。 一般的な小麦粉製品とは違って「グルテンフリー」であることも特筆すべき点です。 同時に、ハイフェフーズは止まらない食品値上げへの具体的対策も提示しています。通常、米国の食品メーカーは、工場で排出される砂糖水を浄化するために課徴金を支払っています。同社は課徴金よりも低い料金で、砂糖水を食品として再利用することを可能にします。食品メーカーはその分、コストを節約することができるため、最終商品の価格として消費者に還元できるというロジックです。 ハイフェパスタは、世界中あらゆる場所で入手可能な食品産業排水を原料としています。栄養価の高い食品を確実に各地へと供給できるハイフェフーズの代替小麦粉は、今後深刻化すると言われている食料問題を解決する糸口になるかもしれません。
食品産業排水を代替小麦粉へアップサイクル。米フードテック企業の成功例
2022.08.10

NYの公立学校でヴィーガン給食がスタート、気になるその背景とは

2022年2月、アメリカ・ニューヨーク市の公立学校では、肉や魚を使わない「ヴィーガンメニュー」の給食を提供する試みがスタート。この試みはどのような理由から始まり、現場ではどのような給食が提供されているのでしょうか。今回の記事では、ニューヨークにおけるヴィーガン給食の概要について紹介します。 ヴィーガン給食が食生活を見直すきっかけに ニューヨーク市の公立学校では、毎週金曜日にヴィーガン給食を提供する「ヴィーガンフライデー」が始まりました。アメリカでは約2割の子どもが肥満と言われていて、子どもの肥満は長年の課題になっています。特に、経済的に困窮する過程や、ヒスパニック系や黒人の子どもに肥満の割合が多いというデータもあります。 ヴィーガン給食には様々な効果が期待されていますが、そのひとつに「食生活を見直すきっかけをつくること」があります。今回の試みは、ニューヨークの新市長であるEric Adams氏が進めたものです。同氏には、ジャンクフードを止めてプラントベースの食事を実践することで、糖尿病を克服し自身の健康を取り戻したという経験があります。こうした経験に基づき「健康的な食事は生活の質を向上させる」「ヴィーガンの食事は環境保護にも役立つ」と語ります。 子どもたちにも好評のヴィーガンメニュー ニューヨーク市のヴィーガン給食では、どんなメニューが提供されているのでしょうか。ヴィーガンフライデー初日に提供されたのは、野菜を使ったタコスと、トルティーヤチップス(サルサソース付)、味付けされたブロッコリーなど。学生が事前に試食したメニューであり、好評だったのだとか。 同市の教育局によれば、金曜日以外の日であっても、ヴィーガンメニューを選ぶことができます。公立学校の生徒達はヴィーガン以外の料理を選択することもでき、牛乳やサンドイッチなどはいつも用意されているのだとか。ヴィーガンを強要し過ぎないように配慮しているのも、大きなポイントです。 以前から同市では、揚げ物をやめて生野菜や果物を提供するなどの、給食メニューの改善に取り組んできました。子ども達の食生活に大きな影響を与える、学校給食。健康的な食べ方を早い時期から身に着けておくことは、大人になってからの健康維持に大いに役立つかもしれません。
NYの公立学校でヴィーガン給食がスタート、気になるその背景とは
2022.08.03

欧米でフレキシタリアンが急増中。私たちにとって本当の持続可能な食とは

​​​​気候変動は加速しており、私たち人間が何を選んで食べるのかという食の選択も地球の存続に関わる大きな課題です。けれども地球のためとはいえ、あまりにも厳格な食事制限には躊躇してしまう人が多いでしょう。そこで今、欧米で急増しているのが、準菜食主義=フレキシタリアンという柔軟でバランスの取れた食事のスタイルです。 フレキシブル+ベジタリアン=フレキシタリアン 「柔軟な(フレキシブル)」と「菜食主義(ベジタリアン)」という言葉を組み合わせた「準菜食主義(フレキシタリアン)」。ヴィーガンは動物性食品を全く食べませんが、フレキシタリアンは、植物性食品に重点を置きつつ、肉、チーズ、卵、牛乳などの動物性食品も時折摂取します。そしてフレキシタリアンの多くは、味や食感、価格などが適切であれば、大豆などの植物性タンパク質から成る代替肉も抵抗なく受け入れます。 最新の研究によると、地球上の温室効果ガスの26%が食料生産によるもので、その中でも農業分野が排出する温室効果ガスのうち、肉や乳製品によるものが60%を占めています。肉や乳製品の消費を減らすフレキシタリアン食は、温室効果ガスの排出を確実に減らす手段です。科学誌「ネイチャー」掲載の研究によると、今後人間がより植物ベースのフレキシタリアン食に移行することで、2050年の温室効果ガスの排出が52%も削減できる可能性があるとしています。 世界人口が拡大すると共に、肉を食べる人が確実に増え続けています。そうした中、いくら肉を避けるヴィーガンが増えても、残念ながら世界全体の肉の消費量が減ることはありません。人間の食事が地球環境に影響を及ぼすことを避けるには、より大きな集団で実践しなければ意味がありません。そこでフレキシタリアンのように、多くの人が参加しやすい柔軟な考え方や手段が求められます。 地球上の全ての人が肉を全く食べないというのは、非現実的な話です。それよりも地球のためになる食事を、より多くの人が試しやすいフレキシタリアン食は、人類の未来にとって達成可能な目標と言うことができそうです。 極端なヴィーガンの限界、より現実的な選択を 動物性食品の消費を減らすことが、心臓病、がん、糖尿病のリスクを下げることは科学的に明らかになっています。実際、野菜がメインの食事はこれまで賞賛されてきました。その一方で、厳格すぎる植物性の食生活を送る人は、人間の体に必要なビタミン、ミネラル、カロリーの摂取量が足りていなかったり、栄養不足のためにうつ病のリスクが高まるとの報告もあります。 肉を完全に避けるヴィーガン食の方が、私たちの健康にとっても地球環境にとっても、フレキシタリアンに勝ると考えられてきました。しかし実際のところ、一概にヴィーガンが勝るとは言いきれません。問題はもっと複雑です。 例えば、肉の生産も全てが悪なのではなく、やり方によっては牛の飼育が土壌侵食や炭素排出の抑制につながり、森林を破壊して生産されたコーヒーやカカオ豆よりも温室効果ガスの発生を抑えるという事例があります。一方、ヴィーガンが好む牛乳の代替品のアーモンドミルク。その原料のアーモンドは、栽培に大量の水、肥料、農薬を必要とし、地球の資源を枯渇させる恐れがあり、健康上のメリットがあるとはいえ、環境保護の点においては疑問が残る食材と言えるわけです。 フレキシタリアンは、こういった食品の生産過程が環境にもたらす利害も認識した上で、食事を選びます。単純に動物性か植物性かが問題ではなく、どちらがより地球にとって持続可能な選択肢かで判断します。そう遠くない未来に、世界人口は100億人に至るでしょう。人間にとって何が重要で、どのような選択が現実的なのか、私たち自身が正しい選択をする必要があり、柔軟性に優れたフレキシタリアンの考え方はそのヒントになるはずです。  
欧米でフレキシタリアンが急増中。私たちにとって本当の持続可能な食とは
2022.07.27

海藻が世界を救う?ヨーロッパで養殖産業化の流れ

アジアでは食べ物としてなじみ深い海藻ですが、ヨーロッパでは日常的に海藻を食べる習慣はありませんでした。しかしながら、健康志向の高まりや食生活の変化を受けて、栄養豊富な海藻がヨーロッパの食卓に広まりつつあります。気候変動により地球上の資源がますます逼迫していくことが懸念される中、ヨーロッパでは養殖産業化の機運が高まっています。 ヨーロッパで高まる海藻ニーズ ヨーロッパの海藻の売上は今、急成長しており、欧州連合(EU)や国連食糧農業機関(FAO)でも、世界の食糧安全保障のために海藻を含む海産物の重要性が唱えられています。今後、ヨーロッパでの海藻の売上高は2030年までに20億ユーロから30億ユーロにまで増加するという見込みもあります。 平均余命が伸び続ける中、消費者は年齢を重ねながらも健康を維持するための方法を求めています。ヨーロッパでこうした健康志向が高まると共に、サプリメントなどの栄養補助食品の需要が増加。今あらためて、海藻の栄養価の高さが注目されています。海藻は、ビタミン、ミネラル、抗酸化物質、タンパク質などの必須栄養素を豊富に含むことから、それを使ったサプリメントがヨーロッパの消費者に浸透しつつあります。 ヨーロッパでの海藻需要の高まりは、肉食からタンパク質代替への転換という流れも、大きく後押ししています。現在、ヨーロッパのビーガンと菜食主義者は推定7500万人とされ、ここ数年での世界の代替肉のおよそ4割がヨーロッパで消費されています。環境への負担が大きい肉食を避けたいヨーロッパの人々にとって、栄養も豊富で環境に優しい海藻がヨーロッパの日常の食生活になじむのにそう時間はかからないでしょう。 また、海藻は人の食料だけにとどまらず、家畜や養殖魚のえさ、化粧品や医薬品、バイオ包装、バイオ燃料、繊維、洗剤、建材にも活用されます。海藻産業が環境への負担を減らす効果は大きく期待されており、海藻製品の活用により、ヨーロッパの人々の年間最大80万人分の温室効果ガス排出を相殺できるとする報告もあります。 採取から養殖へ:持続可能な海藻産業へのシフト 世界の海藻生産量の99%がアジアで生産されており、ヨーロッパは全体の1%程度というのが現状です。しかも、そのほとんどが天然海藻の採取によるもので、持続可能な収穫量は限界を迎えつつあります。そこで、将来を見据えた海藻の養殖への移行が、ヨーロッパの海藻産業には求められています。 冷たくて栄養豊富なヨーロッパの海水は、実は海藻にとって理想的な生育条件であり、ヨーロッパの海藻産業は今後成長する可能性が大いにあります。投資、生産技術、政策などをうまく組み合わせることで、ヨーロッパの海藻生産は現在の約30万トンから10年以内に約800万トンにまで拡大すると言われています。 ヨーロッパでの持続可能な海藻養殖が普及すれば、これまでの採取とは違って海洋環境に害を与えずに、海藻の生産量を増やすことができます。海藻は魚のえさになり住みかにもなるので、海藻養殖は海の生態系をより理想的なものにします。 また、海藻は植物と同じように大気中の二酸化炭素を吸収します。主に太陽光と海水があれば育つ海藻の養殖は、陸での農業と違い、広大な開墾された農地や水といった限りある資源を過剰に必要としません。ポルトガルの3倍の広さの海藻栽培で、世界のタンパク質需要がまかなえるとの話もあるほどです。 今後ますます懸念される気候変動と人口増加による土地と水の不足、そこから引き起こされる食糧不足という脅威が差し迫る中、持続可能な海藻の養殖はこれらの問題解決にも一役買うのではと期待が高まっているのです。
海藻が世界を救う?ヨーロッパで養殖産業化の流れ
2022.07.13

マクドナルドがベジタリアン対応でインド人の心をつかめた訳

米マクドナルドは1990年代にインドへ進出して以来、市場競争、経済危機、パンデミックなどを乗り越え、インドでのファーストフードの第一人者として信頼されるブランドであり続けています。インド市場におけるマクドナルドの成功のために重要な役割を果たしたのが、ブランドのローカライゼーション(地域化)でした。 ユニークで巨大な​​インドの市場に挑む 数百年におよぶユニークな食文化を持ち、人口の8割はヒンドゥー教徒であるインド人を米国風の食事様式に巻き込むのは、当初困難とされていました。 そこでマクドナルドは、それまで共通だった海外向けメニューを、潔く「インド化」します。ヒンドゥー教徒が神聖な動物として崇める牛肉のパティをやめて、鶏や羊の肉のバーガーをインド市場向けに提供。さらにまったく肉を食べない菜食主義者たちも利用できるようにと、ベジタリアンメニューを用意しました。 また、当時高価だったマクドナルド製品のインドでの市場価格をわずか25ルピー(およそ50セント)という低価格にしました。インドマクドナルドは、食材を地元から取り寄せ、物流管理をインド国内の会社に請け負わせることで、インドの中流家庭が気軽に利用できるような低価格を実現させたのです。 生産元や物流をインドに置くことは、海外からのインド進出を脅威とみなしていた、地元の政治家や社会運動家からの反対を回避することにも役立ちました。 家族との家での食事を重視し、外食は日常的でなかったインド家庭に合わせて、インドマクドナルドは、ファストフード店というより高級なファミレスというイメージを打ち出しました。清潔でゆったりした内装のほか、デリーの警察や消防と提携し、安全性をアピールしました。 他にも、それぞれの宗教観や信条を尊重していることをアピールするため、商品の包装や調理場のスタッフが着るユニフォームをベジタリアンとノンベジタリアンのものとで区別しました。そうした細やかな配慮により、インドの人々の信頼を着実に獲得していったのです。 ローカライゼーションで海外進出を成功に導く ローカライゼーションとは、製品やサービスを現地で受け入れられるように最適化することを指します。マクドナルドはこの技術を最大限に活用し、インドを含む世界100カ国以上、計4万店舗にも上る、世界最大のレストランチェーンとして成功を収めています。 どの国にも、その土地の雰囲気、食べ物、それぞれの需要や興味、関心があります。宗教的な習慣やタブーなど人にはさまざまな考え方があり、同じブランドでも国や地域によって受け入れられるかどうかには違いが生じます。こと食べ物に関していえば、世界のある地域では珍味や好物とされているものが、他の国では禁忌と見なされることが起こり得ます。 マクドナルドでは、各国にローカライズの専門チームがあり、新たな国に進出するとき、その国の文化の違いを理解し、それぞれの国の方針に従うことを心掛けています。同社が海外進出に成功してきた戦略のひとつは、ビッグマックを代表とした一貫性のあるメニューですが、地元の人々の傾向によって時にメニューを大きく変更することもいといませんでした。 多国籍フードチェーンにとって、インドの巨大な市場は魅力的でありつつ、その独特な価値観や宗教観ゆえに、ハードルの高い未開の市場でした。マクドナルドは柔軟で行き届いたローカライズを可能にすることで、インドの家庭に「家族でアメリカ風の外食を楽しむ」という新しい価値観を生み出したのです。    
マクドナルドがベジタリアン対応でインド人の心をつかめた訳
2022.06.29

食品原料高の背景に「水不足」。世界の穀倉地帯で表面化するリスク

日本で暮らしていると、「水不足」と聞いても、ピンとこないかもしれません。しかし実は今、世界の穀倉地帯が深刻な水不足に陥っています。背景には、干ばつや洪水による不作があります。ロシアのウクライナ侵攻の影響で、食品値上げのニュースが毎日のように報じられていますが、近い将来、私たちも向き合わなければならない水の問題をひも解きます。 異常気象が小麦産地を襲う アメリカ アメリカの穀倉地帯は、以前から干ばつ被害に悩まされており、2012年の中西部での大干ばつが代表的です。2021年も熱波と干ばつが重なったことで小麦が不作となりました。特に米南西部は、「メガドラウト」と呼ばれる大規模な干ばつ被害に悩まされています。 アジア アジアの小麦生産大国インドも、記録的な熱波による不作に見舞われています。ウクライナ情勢の影響を危ぶみ、一時、小麦の輸出を停止しました。アジアにおけるもう一つの小麦大国・中国も、昨年の大雨と洪水で2022年は「史上最悪」の小麦不足です。 ヨーロッパ 小麦生産高世界5位のフランスも、熱波や干ばつで収穫量が減少しています。専門家の調査によると、土壌の水分レベルは過去10数年の中で「最低」。ウクライナ情勢のあおりで小麦不足が懸念される中東・北アフリカからも頼られているだけに、この問題は深刻です。 中東・北アフリカ 中東トップの小麦生産国はイラン、そして、アフリカ最大がモロッコです。ここも同様に干ばつの影響で小麦の生産を大きく落としています。地理的に干ばつ傾向の強いアフリカですが、近年はインド洋の温暖化によって引き起こされる洪水被害も目立ちます。 水不足を起こす要因 水不足の直接的要因としては、干ばつや熱波といった気候変動が目立ちます。しかしこの問題を掘り下げると、背景に人口増加と産業活動があり、それらが密接に関わり合っています。 水の需要が増したのは、産業革命によって工業化が急速に進んだ18世紀半ばから19世紀にかけて。人口が集中する都市が各地に生まれ、世界中で水が求められるようになりました。日本は世界の中で最も早く少子高齢化に直面し、すでに人口減少の局面に入っていますが、世界では人口が増え続けています。 人口の増加は、水を汚染します。生活排水の他、工場など産業活動に伴う水の汚染は公害問題を引き起こしました。私たちが生きることと水を汚染すること、それらは決して切り離すことのできない関係性にあります。 干ばつや熱波、洪水といった気候変動が2050年までに世界農業にもたらす経済的損失は、16%に上るという試算もあります。
食品原料高の背景に「水不足」。世界の穀倉地帯で表面化するリスク
2022.06.22

世界最大規模の米トウモロコシが危機に。気候変動のはらむリスクとは

アメリカ中西部で東西へとベルト状に広がるトウモロコシの農業地帯は「コーンベルト」と呼ばれています。ここでのトウモロコシ生産高は米国全体でのおよそ8割を占め、世界総生産高の3分の1に達します。米エモリー大学の新たな研究によると、​​​​気候変動による気温の上昇により、2100年までにアメリカのコーンベルトはトウモロコシ栽培にそぐわなくなる可能性があると報告されました。食だけにとどまらない、私たちの暮らしに及ぶ影響とは─。 19世紀から続く大産地に変化の兆し 大規模農業が盛んなアメリカでは、​​​​本土の3分の2が農作物の栽培に利用されており、農地のおよそ8割は、トウモロコシ、大豆、小麦、綿花、牧草、アルファルファの6つの商品作物の耕作に占められています。 エモリー大学の研究では、特に産業活動による人為的な温室効果ガスに焦点を当て、農地と人間の介入に関するデータを分析し、主要な作物の栽培への影響を予測しました。その結果、3段階のうち中程度の排出シナリオ(​​人間活動に伴う温室効果ガス等の大気中の濃度が、将来どの程度になるかを想定したもの​​)であっても、トウモロコシ、大豆、アルファルファ、小麦の理想的な栽培条件はいずれも北に移動するということでした。 この研究により、2100年までに中西部のコーンベルトがトウモロコシの栽培に適さなくなることが示唆されました。1800年代から肥沃な土壌と技術革新に支えられ、安定した穀物生産を可能にしてきたアメリカ農業の主戦場のひとつが近い将来危機にさらされるという衝撃的な事態です。トウモロコシは他の作物に比べてもなお影響が大きく、生産場所が国境を越えてカナダに移ってしまうことになります。 様々な分野で活用されるトウモロコシ アメリカで生産されるトウモロコシのうち、ポップコーンなどの形で直接消費されるのは10分の1以下です。食用で使われるうちの多くは甘味料の原料となっていて、例えば世界の甘味料市場の9%を占める高果糖コーンシロップなどに加工されています。肥満の原因とされる甘味料のひとつですが、コカコーラなどをはじめとした世界中で販売される多くのソフトドリンクに使用されています。 また、アメリカのトウモロコシの4割は、乳牛、鶏や豚といった家畜の飼料に使用されています。それはつまり、牛乳や乳製品、卵、ソーセージなど、日々の食卓に並ぶ多くの食料品にトウモロコシが間接的に関係しているということです。他にも、サケなど養殖魚の餌の主原料にもトウモロコシが使われています。 これだけ見ても、私たちの食生活に与える影響の大きさは計り知れません。さらには日用品でも、歯磨き粉の主成分であるソルビトールはコーンシロップに由来していますし、コーンスターチは汗を吸収するデオドラント剤に使われる成分のひとつなのです。 バイオマス燃料への期待が増す昨今。トウモロコシは燃料としても活躍の場を広げています。石油燃料の削減のため、米政府は原油価格が高騰した2000年代初頭からコーンエタノールの開発に力を入れてきました。現在、国内生産量のうちの4割がこのエタノール燃料に回っています。 日本は世界トップクラスのトウモロコシ輸入国で、年間消費量1500万トンのうち3分の2に当たる1000万トンをアメリカから輸入しています。この事実から言えるのは、私たち日本人も、気候変動のはらむリスクに目を向けるべき当事者だということです。  
世界最大規模の米トウモロコシが危機に。気候変動のはらむリスクとは
2022.06.15

止まらぬ食品の値上げ。ウクライナ侵攻後、混迷極まる世界の食品流通

日本でも連日、食品値上げのニュースが流れていますが、ロシアによるウクライナ侵攻の余波で、世界各国に影響が生じています。急激な食品インフレを抑えるために輸出を制限する国もみられますが、それにより世界の食品流通はますます混迷を深めています。 小麦に砂糖、油…相次ぐ輸出規制 ロシアは国内の食料インフレに対処するため、2021年から小麦の輸出上限を設け、新たな関税を課しました。それに加え、翌年2月のウクライナへの侵攻後には、旧ソ連諸国への小麦の輸出を一時的に禁止しました。 一方、紛争の当事者であるウクライナは、小麦とトウモロコシを世界中に供給する「穀物の輸出大国」です。ウクライナはロシアによる侵攻後、国民への食料確保のため、小麦やオーツ麦など主要穀物の輸出制限をせざるを得なくなりました。人道支援物資を送る「人道回廊」も満足に機能せず、他に自国民を守る手段が見出せなかったからです。 世界的な生産大国であるロシアとウクライナが、紛争により小麦などの食料の輸出を規制したことで、各国も対応に追われました。世界第2位の小麦生産国のインドは、自国の食料安全保障を守ることを目的とし、4月に小麦の輸出禁止を決定。さらに5月末、砂糖の輸出を制限することも発表しました。 ウクライナ情勢が各国に与えた余波はそれだけにとどまりません。インドネシアでは4月末から1カ月弱もの間、パーム油の輸出を禁止。世界で最多の消費を誇る植物油であるパーム油の輸出がストップしたことにより、市場は大きな混乱に陥りました。 食品値上げは長期化の様相に 現在、世界貿易機関には、輸出制限を効果的に規律するルールがありません。とはいえ、各国が目先の食料確保に動くことで、世界の食料供給が逼迫することは明らかです。それにより食料価格がますます押し上げられる悪循環に陥っています。 インド政府は今回の小麦の輸出禁止を「国内で安定的な供給を確保し、物価の安定を図るため」だと説明していますが、国内の食糧価格は4月、前年同月比8.38%上昇しており、これは昨年10月の同0.85%増と比べるとはるかに高い水準です。 日本を含め、食品の値上げに次ぐ値上げは当面避けられない状況です。途上国を援助する世界銀行は、こうした食料インフレは2024年まで続くと予想しており、問題は長期化する様相を呈しています。  
止まらぬ食品の値上げ。ウクライナ侵攻後、混迷極まる世界の食品流通
2022.06.08

開発困難な代替卵(ヴィーガンエッグ)、海外の先端研究事情を追う

動物性タンパク質の最も優れた供給源のひとつである卵を植物性の原料で代替した卵(ヴィーガンエッグ)。卵の複雑な性質ゆえに開発が非常に困難で、植物性の牛乳や肉に比べて遅れを取ってきました。しかし、急速に発達した最新の科学技術を応用し、ここ数年で代替卵の開発は大きく前進しています。海外の最先端の研究事情を追います。 世界の代替卵(ヴィーガンエッグ)市場 2019年、世界では8217万トン以上の卵が生産され、1人当たり平均161個の卵を1年間で消費しています。日本だけでも、1人当たり平均320個の卵を消費しており、これは世界の推計値のおよそ2倍に当たります。 近年、欧米諸国では、多くの企業が代替卵の開発に着手しています。市場の急成長ぶりはかつての代替乳製品のそれに匹敵するほど。植物性の代替卵=ヴィーガンエッグは今後さらに成長が見込まれる熱い市場です。 代替肉は形と味さえ調整すれば商品化の道が開くのに対し、代替卵となるとそうは行きません。卵は、ゼリー状になったり、泡立ったり、固まったりと、複雑に形態変化することが大きな特徴です。そのため、代替卵の開発は長い間、「無謀」とさえ言われてきました。 一方、菜食主義者たちは何十年も前から、卵の代用品を模索してきました。卵白の代わりに使われてきた「アクアファバ」(ひよこ豆の缶詰に入っている煮汁)はその代表例でもあります。しかしそれを、本物の卵にそっくりな代替卵へと進化させた研究チームがドイツにあります。 “本物の卵”の再現へ、熱を帯びる研究開発 ベルリンを拠点とするフードテック企業「Perfeggt((パーフェグト)」は、生命科学研究で有名なオランダのワーヘニンゲン大学と共同研究。植物由来のタンパク質と脂質を組み合わせることで、より本物の卵に近い味と食感を持たせることに成功しました。それが、そら豆を使用したタンパク質豊富な代替卵「Perfeggt」。液状になっていて、卵の代用品としてすぐに使えます。 溶いた鶏卵と同じように、スクランブルエッグやオムレツに使用することが可能で、そのリアルな味、食感、口当たりは、ヴィーガンでない一般の消費者を引き付けるほどのものだそうです。 近年、多数の企業が代替卵の開発に着手しており、アメリカ・テキサス州の「Craft Counter社」によるゆで卵状の代替卵、イスラエル「YO-Egg」による目玉焼き状の白身と黄身の形を模した代替卵など、本物の卵に近い製品の開発が日夜進んでいます。 まだ市場には出回っていない殻付きの代替卵が、スーパーの店頭に並ぶ日もそう遠くないのかもしれません。
開発困難な代替卵(ヴィーガンエッグ)、海外の先端研究事情を追う

新着レポートはこちら

NEW 2022.12.05

【令和4年12月5日】新着情報(厚生労働省・農林水産省・消費者庁)

厚生労働省 ベトナム産青とうがらしのプロピコナゾールの命令検査が解除されました。(令和4年11月29日) SARL BIOMOMO HASHIMOTOの製造したアーモンド及びごまの種子を含むフランス産食品、並びにUAB SILAVOTO B&Bの製造したピスタチオナッツを含むリトアニア産食品のアフラトキシン命令検査が発令されました。(令和4年11月29日) ベトナム産カエルのエンロフロキサシン及びフラゾリドンの命令検査が発令されました。(令和4年12月1日) IBERICOS TORREON SALAMANCA, S.L. 及びJAMONES EL CHARRO, S.Aの製造したスペイン産非加熱食肉製品は、輸入の都度リステリア・モノサイトゲネスの自主検査が指導されます。(令和4年11月30日) 原子力災害対策特別措置法第20条第2項の規定に基づく食品の出荷制限が解除されました。(令和4年11月25日) ・群馬県の吾妻川のうち岩島橋から東京電力株式会社佐久発電所吾妻川取水施設までの区間(支流を含 む。)において採捕されたイワナ及びヤマメ(養殖により生産されたものを除く。) 輸入時における輸入食品違反事例速報が公表されました。 ・令和4年11月分(令和4年12月2日) 農林水産省 「安全性審査の結果、組換えDNA技術応用食品及び添加物の安全性審査の手続第3条第5項の規定を適用した品目一覧(セルフクローニング、ナチュラルオカレンス、高度精製品)」、「安全性審査継続中の遺伝子組換え食品及び添加物一覧」(令和4年11月9日現在) が更新されました。(令和4年11月28日) 消費者庁 「機能性表示食品制度届出データベース 届出情報」が更新されました。(令和4年12月2日)   (提供:一般財団法人食品環境検査協会)
【令和4年12月5日】新着情報(厚生労働省・農林水産省・消費者庁)
NEW 2022.12.08

食品ロス削減の切り札、アップサイクルとは?食品や日用品など具体事例を紹介

SDGsや食品ロスの削減に関心が高まる中、「アップサイクル」という言葉を目にする機会が増えています。本来捨てられてしまうはずだったものを加工して、新たな価値あるものへと生まれ変わらせる「アップサイクル」ですが、そもそもリサイクルやリユースとはどう違うのでしょうか?この記事では、アップサイクルという言葉の意味や話題となっているその背景から、食品業界における実際の事例まで、食品業界におけるアップサイクルの主なポイントをおさえました。 アップサイクルとは(言葉の意味や由来) アップサイクルとは、本来捨てられてしまうようなものを加工して、新たな価値あるものへと生まれ変わらせること。特に食品を使ったアップサイクルについては、アップサイクルフード、アップサイクル食品と言われることもあります。ここでは、アップサイクルという言葉のそもそもの意味と由来について、深掘りしていきます。 リサイクル・リユースとの違い 持続可能な循環型社会を目指し、リサイクルやリユースが活発化しています。リユースは、使用済みの製品やその部品などを捨てずに、繰り返し長く使うことで、これに対しリサイクルは、ある製品を別の製品の原料にして別の製品を生み出すことを意味します。 リサイクルでは、古紙が再生紙になるように、どちらかと言えば価値の低い製品に変換されるケースが大半です。古いタオルやシャツを雑巾として再利用するのも同様で、これらは「ダウンサイクル」と呼ばれます。これに対し、産業から出る副産物や廃棄物などを新たな価値を持った製品に生まれ変わらせるのがアップサイクルです。「創造的再利用」とも呼ばれるアップサイクルは、これまではアートやファッション、インテリアの分野が主でしたが、今や食品の分野にもこのアップサイクルの波が来ています。 食品のアップサイクルの流れはアメリカから アメリカでは、コーヒーの果実の皮を原料にした紅茶飲料や、ビール醸造の際に出る穀物廃棄物を原料としたプロテインバーなど、食品廃棄物を活用したアップサイクル食品への関心が高まっています。 米国企業を中心に70社ほどが参加して設立された業界団体「アップサイクル食品協会」(本部=コロラド州デンバー)は、こうしたアップサイクルの市場拡大を受け、2020年5月にアップサイクル食品の定義を定めました。「本来は人間の食用とならなかった食材を使用して、検証可能なサプライチェーンにより調達・生産され、環境に良い影響をもたらす食品」ということで、実際に食品廃棄物の削減につながるものだけを「アップサイクル食品」と定義しました。これには、アップサイクル食品という言葉の持つ良いイメージだけを利用して売り込む偽物との差別化を図り、フードロスを削減し持続可能な社会を実現したいという強い意図が感じられます。 世界では100兆円超す期待のマーケット 食品廃棄物による世界経済のロスは年間で100兆円を超えるという試算もあります。アップサイクル食品への取り組みにより、この膨大な経済損失を削減できる可能性があるのです。 日本には昔から「もったいない」という言葉がある通り、廃棄物削減の意識は比較的高いと言えるでしょう。しかし米国は廃棄物に寛容な風潮があり、供給された食料のうち3〜4割がロスとなっているとも言われているのです。 ただ、米国でも時代は動いてきているようで、ミレニアル世代(1980年代~1995年生まれ)やZ世代(1996年~2012年生まれ)は消費者としての意識が高く、芯のある理念やメッセージを発する企業・ブランドの商品を購入する傾向があるのだそう。今後、世代交代が進むにつれて、フードロス削減を掲げるアップサイクル食品市場はさらに拡大していくことが予想されます。 SDGs・食品ロスとの関係性 SDGs 12 「つくる責任 つかう責任」 日本語で「持続可能な開発目標」を意味するSDGsは、2015年の国連サミットで掲げられた、国際社会の環境問題、差別、貧困などのあらゆる問題と向き合い、解決していくための17の目標のことです。 2030年までの達成を目指しているSDGsですが、そのうちの12番目の目標「つくる責任 つかう責任」には、作る人=生産者も、使う人=消費者も、未来の地球を守れるように行動に責任を持っていきましょうという狙いがあります。限りある地球の資源を無駄にすることのないよう、少ない原料からより多くのものを作り出せるよう持続可能なやり方を追求していくことが求められています。 食品ロスの削減の必要性 「つくる責任 つかう責任」を達成するために、より具体的な目標として「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる。」というターゲットが設定されています。 まだ食べられる食料が捨てられてしまう食品ロスは、日本をはじめとした先進国で重大な問題になっています。こうした食品を捨てることなく、新たな食品や工業製品へと価値あるものに加工するアップサイクルは、食品ロス削減につながるだけでなく、その先のSDGsへの貢献にもなるのです。 出典:農林水産省公式HP 食品から食品への事例 アップサイクル食品は、日本でも続々と増えています。ここでは、食品アップサイクルの中でも、食品を食品へとアップサイクルする事例を紹介します。 余ったパンがビールなどの飲料製品に:CRUST JAPAN 2019年設立のシンガポールを拠点としたフードテック企業、CRUST Group(クラストグループ)は、まだ食べられるのに捨てられてしまう食材をビールなどの飲料製品にアップサイクルすることで、食品ロスの削減に貢献しています。クラストグループは、提携する飲食店から余ったパンや米といった穀物や、コーヒーやカカオの残りかすや殻、茶葉、野菜や果物の皮などを回収して、それらを飲料製品に生まれ変わらせてきました。主な製品には、パンやコーヒーかすを原料にした独創性あふれる風味豊かなクラフトビール「CRUST」や、果物や野菜の皮から作るノンアルコール飲料「CROP」があります。日本部門である株式会社CRUST JAPAN(クラストジャパン)では、みかんやパイナップルの皮やきのこの柄を利用したお茶やジュースの生産にも力を入れています。 参考:CRUST JAPAN公式HP 規格外野菜を食べられるシートに:VEGHEET 売れなくなった野菜をペーストにし、海苔のようなシート状に乾燥させた新食材「VEGHEET(ベジート)」へとアップサイクルしたのが、長崎県を拠点とする株式会社アイルです。地元九州の不揃いな大きさや傷などにより規格外となった野菜と寒天を使用しているベジートは、食物繊維やビタミンなどの栄養も豊富で、化学調味料や添加物を使わないアレルゲンフリーな食品であることが高く評価されています。そのまま食べても、野菜本来の味を楽しめるベジートですが、水分を含ませればジェルやスープにも応用して、様々な食べ方を楽しめます。開封前なら2年(防災用5年)という長期保存ができ、シート状で場所も取らないベジートは、非常食のような保存食として、世界の食糧危機の解決にも貢献できる見込みもあります。 参考:VEGHEET公式HP ​​食品から工業製品への事例 りんごが合成皮革に:りんごレザー 長野県のベンチャー企業である株式会社SORENAは、同県飯綱町と協力して、地元の名産品りんごを加工するときに出る副産物を利用したある取り組みが話題になっています。同社は、りんごジュースやシードル(りんご由来の醸造酒)の生産過程で得られるりんごの搾りかすから合成皮革「りんごレザー」のアップサイクルに成功し、この冬からバッグなどの商品を発売します。廃棄されるはずだったりんごの皮や芯などの原料とポリウレタン樹脂とを合成して作られる合成皮革は、アップルレザーと呼ばれ、海外では動物由来でないヴィーガンレザーとして人気を集めています。りんごレザーは、アップルレザーの製品化としては国内初ということで、地方創生やSDGsにも貢献する製品として期待が高まっています。 参考:株式会社SORENA HP まとめ アップサイクル食品の開発と発展は、これまでの廃棄を前提とした大量生産・大量消費の社会から、持続可能な循環型社会へと変化が生じていることの兆しとも言えそうです。本来、日本はもったいないの精神からアップサイクル含めリサイクルの文化を大切に育んできた国です。地元から出る廃棄食品を使ったアップサイクルの取り組みは、地方創生などの付加価値もあり、これからの日本でますます盛り上がっていきそうです。
食品ロス削減の切り札、アップサイクルとは?食品や日用品など具体事例を紹介
NEW 2022.12.07

国内ハラルマーケットを分析【食品ハラルビジネス進化論〜ハラル認証原料編vol.8】

こんにちは、ハラル・ジャパン協会の佐久間です。11月にタイ・バンコクに出張した日のことです。到着日には1米ドル150円でしたが、翌朝には142円!?ビックリです。急な円高でバーツ・日本円交換の金額差異を実感しました。ビジネスでは事前に契約がありますから、実際は急な反応ではないかもしれませんが、当分注視が必要です。タイでも日本食や日本製品は大人気です。インバウンド需要が戻れば、購買も増えると予想されます。国内もいよいよ本格的にリスタートです。 今回は「国内ハラル(ハラール)マーケットを分析」ということで解説していきます。国内をメインに今後の方向性を解説していきたいと思います。 国内はムスリムインバウンド対応で差別化を インバウンドが戻り、また国内の旅行支援策が活況で一見盛り上がっているように見えますが、ホントに持続可能でしょうか?継続が見込めますでしょうか?この機会に原材料成分の由来を確認して、「勝てる原材料にバージョンアップ」しませんか?実は特別なことではありません。「棚卸し」するだけです。しっかり調べてみたら動物性不使用・畜肉フリー原材料でヴィーガン(ベジタリアン)原材料とわかればウリになります。また「ノーポーク・ノーアルコール」や「ノーアニマル・ノーアルコール」の原材料であることが確認できれば、成分がハラル対応の原材料として同じくウリになります。ウリになることは差別化になります。一度当会にハラル原材料可能性診断(ハラル&ベジタリアン(ヴィーガン)対応版)を依頼してみてはいかがでしょうか?まずは今ある素材(原材料)を確認して、売上UPすることを考えませんか? ※ハラル原料可能性診断(ハラル&ベジタリアン(ヴィーガン)対応版)のお問い合わせはこちらへ。 [caption id="attachment_2882" align="alignnone" width="512"] インバウンドでのハラル対応 [/caption] ハラル業務用は学生・社員食堂を狙うべし 日本が鎖国でもしない限り、外国人が日本に増加することは明確です。観光(遊び)にくる人、学びに来る人(=留学生)、そして働きに来る人(=労働者・技能実習生)がいます。目的が違いますが、中〜短期で日本にいます。しかし日本は非イスラム教の国です。イスラム教徒にやさしい環境がないと長期にはいてもらえないのが現実です。日本の国益にとっても損失で、せっかく日本で学び、日本で就職したい優秀なイスラム教徒人材が定着しないのはもったいないです。そのためにもまずは観光客向けにソフトな対応で構いません、できることから始めるムスリムインバウンド対応を全国各地で整備することが重要です。また地方自治体や教育機関、企業レベルでは基礎研修や社内セミナー、ムスリム試食会やメニュー開発、商品開発などを行うことも大事です。そして社員食堂、学生食堂、近隣レストランやホテル・社員寮を含めた宿泊施設等の環境整備が大事であります。これら日常使いの食事はインバウンドと違い、生活しやすい価格帯に抑えることでイスラム教徒にも喜ばれ、行政もここにポイントを絞って支援することが大事であると当会は考えます。自国に帰国するときに「地元のおみやげ」戦略もとても大事です。でないと全国的に人気がある白い恋人や東京バナナ、抹茶味キットカットばかりになってしまいます。 [caption id="attachment_2883" align="alignnone" width="512"] 外国人の増加 ⇒ ダイバーシティ[/caption] 9回目となる次回は原材料の「イスラム市場(南西アジア・中東)からハラルビジネス研究」を解説します。12月第4金曜日を楽しみにしてください。引き続きよろしくお願いいたします。 (佐久間朋宏/非営利一般社団法人ハラル・ジャパン協会代表理事)
国内ハラルマーケットを分析【食品ハラルビジネス進化論〜ハラル認証原料編vol.8】
NEW 2022.12.06

おコメでできたライスフィルムを利用!最も環境にやさしい米袋が誕生

地球環境に配慮して脱プラスチックの流れが強まる中、植物由来のバイオマス資源への注目度が高まっています。大阪市中央区の米袋等包材メーカー「株式会社マルタカ」は2022年10月、米を原料とする国産のバイオマスプラスチック「ライスレジン®」(※)を使用した「ライスフィルム米袋」の販売を開始しました。同社は、「ライスフィルム米袋を使用することは、お米の用途拡大につながり、日本の食文化や稲作農家の支援につながる」として新素材米袋の需要拡大に期待を寄せています。 国産の非食用米をアップサイクル、強度・コストはプラ並み 株式会社マルタカが新たに発売を開始した「ライスフィルム米袋」は、お米からできた100%国産のバイオマスプラスチック「ライスレジン®」を使用しています。 ライスレジンの原料となるのは、食用に適さない古米や、米加工メーカーなどで発生する破砕米、精米時に出る砕米など。飼料として使われることもなく廃棄されてきたお米です。バイオマスプラスチックの多くは、海外産のサトウキビやトウモロコシなどを主な原料としています。一方、ライスレジン®は米を原料としているため、製品化に至るまで一貫して国内生産することが可能です。海外情勢に左右されにくく安定供給が可能な上、食品ロス削減にも寄与するサステナブルな資源として期待が寄せられています。 ライスレジン®は、糊化させたお米に石油系樹脂を配合して作られます。米の配合比率は最大でなんと70%。従来100%石油系プラスチックとほぼ同等の強度と成形性、コストを保ちながら、石油系樹脂の含有量を大幅に減らすことができるのです。こうした観点からライスレジン®の市場規模は拡大傾向にあり、ストローや箸、スプーン、レジ袋、玩具などさまざまな新商品が続々と誕生しています。 カーボンニュートラルでCO2削減効果も 日本は持続可能なバイオマスプラスチックを積極導入する方針を打ち出しています。製造元のマルタカは、「お米からできたライスフィルム米袋を使用することは、地球環境に配慮するだけでなく、米の用途拡大と、日本の農業支援並びに耕作放棄地の活用などにもつながる有力な取り組みになる」としています。 また、植物由来のバイオマスプラスチックは、生育時の光合成でCO2を吸収するため、たとえ焼却したとしても結果的にCO2排出を抑えることにつながります。同社は「こうした製品を採用することで、企業活動にSDGs(持続可能な開発目標)を取り入れ、持続可能な社会の実現に向けて貢献できる」と呼び掛けています。 食べるだけじゃない、バイオマス資源としての日本のお米の可能性に注目です。 ※ライスレジン®は、株式会社バイオマスレジン南魚沼の登録商標です。 参考:株式会社マルタカ公式HP
おコメでできたライスフィルムを利用!最も環境にやさしい米袋が誕生
NEW 2022.12.01

植物性ミルクが選ばれる理由とは?おすすめを原材料別に紹介

地球環境や自身の健康を考えて、プラントベースの食事を選ぶ人が増えてきました。こうした状況において、さまざまなニーズに対応する植物性ミルクが登場しています。そこで、この記事では植物性ミルクの特徴について解説すると共に、豆乳やアーモンドミルクなど植物性ミルクの事例を紹介します。 この記事を読むことで、植物性ミルクを選ぶメリットに加えて、植物性ミルクの具体的な選択肢を把握することができます。 植物性ミルクとは 植物性ミルクは、その名前の通り、植物由来の原料で作られたミルクです。スーパーやコーヒーショップでは植物性ミルクを見かける機会が増えましたが、なぜこれほどまでに人気を集めているのでしょうか。ここでは、植物性ミルクの特徴とおすすめしたい人のタイプについて解説します。 植物性ミルクの特徴 別名「プラントベースミルク」 植物性ミルクは、別名「プラントベースミルク」と呼ばれます。豆やナッツ、穀物などの植物を主原料にして作られたミルクのこと。基本的な作り方は、食材を粉砕した後、水で成分を抽出するという方法です。 日本で古くから親しまれている豆乳は大豆から作られていて、植物性ミルクに含まれます。豆乳は「第二のミルク」として利用されてきましたが、近年ではアーモンドミルクやオーツミルク、ココナッツミルクなどさまざまな種類の植物性ミルクが出回るようになりました。 低カロリーで高栄養 植物性ミルクのカロリーや栄養価は種類によって異なるものの、牛乳と比べてカロリーが低く高栄養のものが多いです。植物性の原料から作られているためコレステロールは含まれていません。原材料によっては、抗酸化作用や便秘予防の効果が期待できるものもあります。 ただし、植物性ミルクの中には砂糖などの甘味料や添加物を多く含むものがあります。メーカーによって異なるので、カロリーや栄養が気になる場合は、表示をよく確認するようにしてください。 環境への負荷が少ない 一般的に、牛乳を生産・製造する過程で多くの資源が使われます。例えば、乳牛を飼育するためには広大な土地や大量の水が必要です。それに対して、植物性ミルクの場合、環境にかかる負荷が比較的少なく、温室効果ガスの発生量は牛乳の3分の1程度と言われています。 最近は、牛乳を飲める人であっても「環境への負荷が少ない」「動物を搾取したくない」という理由で、植物性ミルクを選ぶケースも増えています。 こんな人にオススメ 牛乳アレルギーや乳糖不耐症の方でも飲むことができる 植物性ミルクは、牛乳アレルギーや乳糖不耐症の人でも飲むことができます。乳糖不耐症とは牛乳に含まれる糖質「乳糖」を分解する酵素の働きが低下しているために、乳糖を消化吸収できず下痢や体調不良が起きる疾患のことです。古くから乳製品を食べてきた欧米人に比べて日本人はその割合が高く、「3人に2人が乳糖不耐症である」と言われています。 植物性ミルク5種類を種類別に解説 植物性ミルクには、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、代表的な植物性ミルクとして、豆乳とアーモンドミルク、オーツミルク、ココナッツミルク、ポテトミルクの5種類について解説します。 豆乳 豆乳は、大豆を水に浸してすりつぶし、水を加えて加熱した液体をこして作られます。豆乳は牛乳に匹敵するほどタンパク質が多く、食物繊維や鉄分、ビタミン、イソフラボンも豊富に含まれています。カルシウムの含有量は少ないものの、牛乳よりも脂肪分が少なく低カロリーです。コップ一杯あたり(200ml)のカロリーは、牛乳が約122kcalであるのに対して、豆乳は88kcalです。 豆乳の中には砂糖や油脂、保存料が入った「調整豆乳」もあります。カロリーや栄養価を気にする場合は、大豆と水だけで作られた「無調整豆乳」を選ぶようにするのがおすすめです。一般的に牛乳の賞味期限は数日程度ですが、豆乳は未開封の状態であれば常温で3ヶ月程度保存できます。 アーモンドミルク   アーモンドミルクは、水に浸したアーモンドを潰してペースト状にした後、こして作ることが多いです。さらりとした口当たりで、アーモンド特有の香ばしさが特徴です。 アーモンドミルクには、ビタミンEを始めとするビタミン類やミネラル、オレイン酸、ポリフェノール、食物繊維を豊富に含有していて、高い抗酸化作用が期待されています。砂糖不使用のアーモンドミルクの場合、コップ一杯あたり(200ml)のカロリーは約39kcalで、牛乳の三分の一程度のカロリーです。未開封の状態であれば、常温で9ヶ月程度保存できます。 オーツミルク オーツミルクは、オートミールやグラノーラにも利用されている「オーツ麦」から作られます。別名「オートミルク」「オーツ麦ミルク」と呼ばれることもあり、優しい風味とクリーミーな味わいがあります。植物由来の食物繊維や不飽和脂肪酸を豊富に含有しているため、整腸作用や悪玉コレステロールの低下が期待されています。 オーツミルクは温かい飲み物に加えても分離しにくく、コーヒーとの相性が良いのが特徴で、大手コーヒーチェーン店では「オーツミルクラテ」として提供されています。植物性ミルクの中では糖質とカロリーが高めであるものの、濃厚な味わいが楽しめます。 ココナッツミルク ココナッツミルクは、熟したココナッツから白い胚乳を取り出し、水を加えて混ぜたものをこして作られます。濃厚な風味と甘さがあり、ベトナムやタイなどアジアの料理によく使われています。ココナッツミルクには、カリウムやマグネシウム、銅、鉄が多く含まれています。 ココナッツには「中鎖脂肪酸」が多く含まれていて、消化・吸収・分解しやすく、エネルギーになりやすいのが特徴です。食欲抑制効果も期待できるため、スポーツをしている人にもおすすめです。 ポテトミルク ポテトミルクは、ジャガイモを主原料として作られます。ポテトミルクは、ジャガイモ特有の香ばしさがあり、クセが少なく、飲みやすいのが特徴です。カルシウムや食物繊維などの栄養が豊富に含まれているにもかかわらず、糖質や脂質が少なく低カロリーです。 2021年10月にイギリスの高級スーパーマーケットが「2022年にポテトミルクが人気になる」と予測し、一躍注目を集めました。注目される大きな理由は、環境にやさしいということ。ジャガイモは栽培しやすく、大豆やアーモンド、オーツなどの他の植物性ミルクの原料と比較して、約2倍も効率よく土地が利用できるとされています。 まだある!植物性ミルク10種類 植物性ミルクの市場は世界規模で拡大していて、2020年の226億ドルから、2026年には406億ドルまで成長すると予測されています。ここでは、日本では販売されていないものも含めて、世界で出回っている植物性ミルク10種類について紹介します。 名称 特徴 ライスミルク 白米や玄米から作られている。自然な甘味とあっさりとした飲み口で、欧米で人気がある。 ヘンプミルク 植物性ミルクの中でも栄養が豊富で、欧米では別名「ミラクルドリンク」とも呼ばれている。すっきりとした風味で飲みやすい。 カシューナッツミルク ナッツ類の中でも脂質の含有量が少なく、低カロリー。口当たりが牛乳によく似ているため、アメリカでは次世代ミルクとして注目されている。 マカダミアミルク ナッツ特有の苦みやクセは少なく、クリーミーで甘味がある。良質な脂質のほか、ビタミンやミネラル、食物繊維が豊富に含まれている。 くるみミルク さらりとした口当たりでほのかな甘味がある。くるみには、ナッツ類の中でもオメガ3脂肪酸が多く含まれている。 ピーナッツミルク すっきりとした味わいと香ばしさがあり、アーモンドミルクにも似ている。ピーナッツはアレルギーの出やすい食材であるため、注意が必要である。 ピスタチオミルク ピスタチオ特有の濃厚なナッツの風味が楽しめる。油脂が多く含まれているためカロリーは高めだが、美容と健康に欠かせない栄養素が豊富に含まれている。 ピーミルク(えんどう豆ミルク) えんどう豆のタンパク質から作られている。クセが少なく牛乳によく似た口当たりで、コーヒーとの相性も良く、ラテメニューとしても利用されている。 フラックスミルク(亜麻仁ミルク) 亜麻仁という小さな種子から作られている。香ばしさとやさしい甘味があり、オメガ3脂肪酸が豊富に含まれている。他の植物性ミルクと比べてカロリーが低い。 キヌアミルク 栄養価が高いことで知られる穀物・キヌアから作られている。クセのない味わいで飲みやすい。消化しやすいことから、離乳食など子どもの食事にも使われている。   まとめ 今回は、植物性ミルクの特徴と具体的な事例について紹介しました。プラントベースの市場拡大や美と健康への意識の高まりから、植物性ミルクの種類は今後も増えていくと予想されます。実際に、大手コーヒーチェーン店をはじめ食品業界では、植物性ミルクを使った商品開発が進んでいます。植物性ミルクの特性を把握し、顧客のニーズに合った植物性ミルクを上手に活用することで、他社との差別化にもつながりそうです。
植物性ミルクが選ばれる理由とは?おすすめを原材料別に紹介