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NEW 2022.06.22

世界最大規模の米トウモロコシが危機に。気候変動のはらむリスクとは

アメリカ中西部で東西へとベルト状に広がるトウモロコシの農業地帯は「コーンベルト」と呼ばれています。ここでのトウモロコシ生産高は米国全体でのおよそ8割を占め、世界総生産高の3分の1に達します。米エモリー大学の新たな研究によると、​​​​気候変動による気温の上昇により、2100年までにアメリカのコーンベルトはトウモロコシ栽培にそぐわなくなる可能性があると報告されました。食だけにとどまらない、私たちの暮らしに及ぶ影響とは─。 19世紀から続く大産地に変化の兆し 大規模農業が盛んなアメリカでは、​​​​本土の3分の2が農作物の栽培に利用されており、農地のおよそ8割は、トウモロコシ、大豆、小麦、綿花、牧草、アルファルファの6つの商品作物の耕作に占められています。 エモリー大学の研究では、特に産業活動による人為的な温室効果ガスに焦点を当て、農地と人間の介入に関するデータを分析し、主要な作物の栽培への影響を予測しました。その結果、3段階のうち中程度の排出シナリオ(​​人間活動に伴う温室効果ガス等の大気中の濃度が、将来どの程度になるかを想定したもの​​)であっても、トウモロコシ、大豆、アルファルファ、小麦の理想的な栽培条件はいずれも北に移動するということでした。 この研究により、2100年までに中西部のコーンベルトがトウモロコシの栽培に適さなくなることが示唆されました。1800年代から肥沃な土壌と技術革新に支えられ、安定した穀物生産を可能にしてきたアメリカ農業の主戦場のひとつが近い将来危機にさらされるという衝撃的な事態です。トウモロコシは他の作物に比べてもなお影響が大きく、生産場所が国境を越えてカナダに移ってしまうことになります。 様々な分野で活用されるトウモロコシ アメリカで生産されるトウモロコシのうち、ポップコーンなどの形で直接消費されるのは10分の1以下です。食用で使われるうちの多くは甘味料の原料となっていて、例えば世界の甘味料市場の9%を占める高果糖コーンシロップなどに加工されています。肥満の原因とされる甘味料のひとつですが、コカコーラなどをはじめとした世界中で販売される多くのソフトドリンクに使用されています。 また、アメリカのトウモロコシの4割は、乳牛、鶏や豚といった家畜の飼料に使用されています。それはつまり、牛乳や乳製品、卵、ソーセージなど、日々の食卓に並ぶ多くの食料品にトウモロコシが間接的に関係しているということです。他にも、サケなど養殖魚の餌の主原料にもトウモロコシが使われています。 これだけ見ても、私たちの食生活に与える影響の大きさは計り知れません。さらには日用品でも、歯磨き粉の主成分であるソルビトールはコーンシロップに由来していますし、コーンスターチは汗を吸収するデオドラント剤に使われる成分のひとつなのです。 バイオマス燃料への期待が増す昨今。トウモロコシは燃料としても活躍の場を広げています。石油燃料の削減のため、米政府は原油価格が高騰した2000年代初頭からコーンエタノールの開発に力を入れてきました。現在、国内生産量のうちの4割がこのエタノール燃料に回っています。 日本は世界トップクラスのトウモロコシ輸入国で、年間消費量1500万トンのうち3分の2に当たる1000万トンをアメリカから輸入しています。この事実から言えるのは、私たち日本人も、気候変動のはらむリスクに目を向けるべき当事者だということです。  
世界最大規模の米トウモロコシが危機に。気候変動のはらむリスクとは
NEW 2022.06.15

止まらぬ食品の値上げ。ウクライナ侵攻後、混迷極まる世界の食品流通

日本でも連日、食品値上げのニュースが流れていますが、ロシアによるウクライナ侵攻の余波で、世界各国に影響が生じています。急激な食品インフレを抑えるために輸出を制限する国もみられますが、それにより世界の食品流通はますます混迷を深めています。 小麦に砂糖、油…相次ぐ輸出規制 ロシアは国内の食料インフレに対処するため、2021年から小麦の輸出上限を設け、新たな関税を課しました。それに加え、翌年2月のウクライナへの侵攻後には、旧ソ連諸国への小麦の輸出を一時的に禁止しました。 一方、紛争の当事者であるウクライナは、小麦とトウモロコシを世界中に供給する「穀物の輸出大国」です。ウクライナはロシアによる侵攻後、国民への食料確保のため、小麦やオーツ麦など主要穀物の輸出制限をせざるを得なくなりました。人道支援物資を送る「人道回廊」も満足に機能せず、他に自国民を守る手段が見出せなかったからです。 世界的な生産大国であるロシアとウクライナが、紛争により小麦などの食料の輸出を規制したことで、各国も対応に追われました。世界第2位の小麦生産国のインドは、自国の食料安全保障を守ることを目的とし、4月に小麦の輸出禁止を決定。さらに5月末、砂糖の輸出を制限することも発表しました。 ウクライナ情勢が各国に与えた余波はそれだけにとどまりません。インドネシアでは4月末から1カ月弱もの間、パーム油の輸出を禁止。世界で最多の消費を誇る植物油であるパーム油の輸出がストップしたことにより、市場は大きな混乱に陥りました。 食品値上げは長期化の様相に 現在、世界貿易機関には、輸出制限を効果的に規律するルールがありません。とはいえ、各国が目先の食料確保に動くことで、世界の食料供給が逼迫することは明らかです。それにより食料価格がますます押し上げられる悪循環に陥っています。 インド政府は今回の小麦の輸出禁止を「国内で安定的な供給を確保し、物価の安定を図るため」だと説明していますが、国内の食糧価格は4月、前年同月比8.38%上昇しており、これは昨年10月の同0.85%増と比べるとはるかに高い水準です。 日本を含め、食品の値上げに次ぐ値上げは当面避けられない状況です。途上国を援助する世界銀行は、こうした食料インフレは2024年まで続くと予想しており、問題は長期化する様相を呈しています。  
止まらぬ食品の値上げ。ウクライナ侵攻後、混迷極まる世界の食品流通
NEW 2022.06.08

開発困難な代替卵(ヴィーガンエッグ)、海外の先端研究事情を追う

動物性タンパク質の最も優れた供給源のひとつである卵を植物性の原料で代替した卵(ヴィーガンエッグ)。卵の複雑な性質ゆえに開発が非常に困難で、植物性の牛乳や肉に比べて遅れを取ってきました。しかし、急速に発達した最新の科学技術を応用し、ここ数年で代替卵の開発は大きく前進しています。海外の最先端の研究事情を追います。 世界の代替卵(ヴィーガンエッグ)市場 2019年、世界では8217万トン以上の卵が生産され、1人当たり平均161個の卵を1年間で消費しています。日本だけでも、1人当たり平均320個の卵を消費しており、これは世界の推計値のおよそ2倍に当たります。 近年、欧米諸国では、多くの企業が代替卵の開発に着手しています。市場の急成長ぶりはかつての代替乳製品のそれに匹敵するほど。植物性の代替卵=ヴィーガンエッグは今後さらに成長が見込まれる熱い市場です。 代替肉は形と味さえ調整すれば商品化の道が開くのに対し、代替卵となるとそうは行きません。卵は、ゼリー状になったり、泡立ったり、固まったりと、複雑に形態変化することが大きな特徴です。そのため、代替卵の開発は長い間、「無謀」とさえ言われてきました。 一方、菜食主義者たちは何十年も前から、卵の代用品を模索してきました。卵白の代わりに使われてきた「アクアファバ」(ひよこ豆の缶詰に入っている煮汁)はその代表例でもあります。しかしそれを、本物の卵にそっくりな代替卵へと進化させた研究チームがドイツにあります。 “本物の卵”の再現へ、熱を帯びる研究開発 ベルリンを拠点とするフードテック企業「Perfeggt((パーフェグト)」は、生命科学研究で有名なオランダのワーヘニンゲン大学と共同研究。植物由来のタンパク質と脂質を組み合わせることで、より本物の卵に近い味と食感を持たせることに成功しました。それが、そら豆を使用したタンパク質豊富な代替卵「Perfeggt」。液状になっていて、卵の代用品としてすぐに使えます。 溶いた鶏卵と同じように、スクランブルエッグやオムレツに使用することが可能で、そのリアルな味、食感、口当たりは、ヴィーガンでない一般の消費者を引き付けるほどのものだそうです。 近年、多数の企業が代替卵の開発に着手しており、アメリカ・テキサス州の「Craft Counter社」によるゆで卵状の代替卵、イスラエル「YO-Egg」による目玉焼き状の白身と黄身の形を模した代替卵など、本物の卵に近い製品の開発が日夜進んでいます。 まだ市場には出回っていない殻付きの代替卵が、スーパーの店頭に並ぶ日もそう遠くないのかもしれません。
開発困難な代替卵(ヴィーガンエッグ)、海外の先端研究事情を追う

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NEW 2022.06.24

ハラル認証取得の基本を学ぶ【食品ハラルビジネス進化論~ハラル認証原料編vol.3】

こんにちは、ハラル・ジャパン協会の佐久間です。6月中旬、マレーシア、シンガポールに2年ぶりに出張に行きました。現地で見て聞いて、食品原材料のハラル(ハラール)ビジネスはますます盛んになると確信を持ちました。3回目となるこちらの回では、本丸のハラル認証について解説します。 国際認証のハラル認証に世界統一基準がない!? ハラル認証は「国際認証のひとつ」ですが、世界統一基準がありません。世界中に350以上のハラル認証団体(機関)が存在しています。国が運営する機関から、各種団体、株式会社、個人が運営する団体まで、さまざまです。この多くのハラル認証機関・団体等々の中から、自社の目的に合わせて選ぶ必要があることを、まずは念頭に置いてください。 特に日本はイスラム教徒の国ではないことから、ハラル認証団体は許認可団体ではありません。したがって輸出国、製品、目的により、話の前提となるハラル認証の有無から、取得すべきハラル認証も違うことを理解する必要があります。自社でハラル認証団体を選択することが最も大切な点です。 ハラル認証は、大きな部分ではイスラム教のハラルが原理原則ですが、多少の差異があります。具体的には、5つのカテゴリーを確認してハラル認証の発行がされています。1つ目は商品の選定で、最終製品であればネーミングなども関係することがあります。2つ目は原材料がハラルかどうか?です。入口の原材料がハラルでなければハラル認証は取得できません。3つ目は工場の確認で、製造工場の建屋、製造ラインの確認をします。ヴィーガン認証等は少し違い、現地で接触コンタミ(コンタミネーション:混入)がないか?の確認を行います。4つ目は原材料、中間製造物、最終製品の倉庫(置場)がハラル品とレギュラー品(一般品)とできちんと分けられているか?の確認もあります。5つ目はイスラム教徒の従業員等がいなくてもハラルチーム(他のFSSC、HACCPなど国際基準と同様)を作り、内部規定で管理することなどを満たしているか?これらのチェックを経て、ハラル認証の証明書やハラルロゴマークを発行しています。 東南アジアイスラム市場ではハラル認証が輸出パスポートに ハラル認証団体(機関)により難易度、料金、取得期間、対応言語、申請種類等が違います。ピンキリとは言いませんが、大きく違うことを理解しておくといいと思います。まずは初期費用、更新費用などを照会し、見積書をもらうこと、そして実際にハラル認証商品の効果測定ができる3年間のトータル金額をハラルビジネスの専門家に助言を受けるといいと考えます。最近は高経済成長の東南アジアイスラム市場で、マレーシア、シンガポール、インドネシアを筆頭に、タイ、ベトナム、フィリピンからもハラル認証原材料の引き合いが多くなっています。 それぞれの国でハラル認証商品を作り、東南アジア域内や南西アジア、中東等に輸出していると考えられます。ハラル認証原材料が他の国際認証と同様、一般品に付与される、一種の輸出時のパスポート的な国際認証の一つになる勢いです。 次回の4回目は原材料の「ハラル認証がいるハラルビジネス、いらないハラルビジネス」を解説したいと考えます。7月第4金曜日を楽しみにしていてください。 (佐久間朋宏/非営利一般社団法人ハラル・ジャパン協会代表理事)
ハラル認証取得の基本を学ぶ【食品ハラルビジネス進化論~ハラル認証原料編vol.3】
NEW 2022.06.23

それってマーガリン?「植物性バター」とは

タンパク質危機や健康志向の高まりに合わせて、植物性の代替食品が次々と登場しています。そんな中、話題を集めている「植物性バター」をご存知でしょうか。植物性の素材で作られたバターのことで、じわじわと支持を集めています。この記事では、マーガリンとはまた異なる、植物性バターについて解説します。 バターなのに乳製品は不使用 植物性バターは、乳製品不使用の植物性油脂食品です。別名「ヴィーガンバター」と呼ばれることもあります。大豆やオリーブ、アボガド、ココナッツなどの植物性の油をベースにして、そこに水や香料、保存料などを加えて作られます。固形またはペーストの状態をしていて、硬さは通常のバターにそっくり。乳製品特有の香りがなくさっぱりとした口当たりですが、植物性とは思えないほどのコクや濃厚な味わいがあります。 植物性バターは、通常のバターと同じように利用できます。パンに塗って食べるのはもちろん、料理やお菓子づくりに使うのもおすすめです。植物性バターは大手スーパーやインターネット通販で入手できます。植物性バターと一口に言ってもいろいろな商品があり、添加物が含まれていないものやそのまま食べてもおいしいものもあります。購入する前に原材料などのラベルをしっかり確認するようにしましょう。 マーガリンとの違いは?  バターによく似た植物性の食材と言えば、マーガリンもよく知られています。マーガリンは、バター不足を解消するための代替品として生まれたもので、バターの代用として使われることもあります。では、植物性バターとマーガリンの違いはどんな所にあるのでしょうか。  マーガリンの定義は「日本農林規格(JAS規格)」に定められており、「油脂が80%以上含まれるもの」とされています。一般的なバターは牛乳の脂肪分からできていますが、マーガリンはコーン油や大豆油、パーム油、なたね油、実油などをベースに、乳や乳製品、食塩、ビタミンA、乳化剤などを加えて作られます。  一昔前までは「バターよりもマーガリンはヘルシー」と言われていましたが、最近はトランス脂肪酸の危険性が指摘されることもあります。それを受けて、トランス脂肪酸を極力減らしたマーガリンの開発に取り組む企業も出始めています。  植物性バターとマーガリンには原料の違いがあり、商品によっては体への影響も異なると言えそうです。用途や目的によって選択する幅が増えるのは、消費者にとってはうれしいことです。植物性バターを店頭で見つけたら、ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。
それってマーガリン?「植物性バター」とは
NEW 2022.06.22

世界最大規模の米トウモロコシが危機に。気候変動のはらむリスクとは

アメリカ中西部で東西へとベルト状に広がるトウモロコシの農業地帯は「コーンベルト」と呼ばれています。ここでのトウモロコシ生産高は米国全体でのおよそ8割を占め、世界総生産高の3分の1に達します。米エモリー大学の新たな研究によると、​​​​気候変動による気温の上昇により、2100年までにアメリカのコーンベルトはトウモロコシ栽培にそぐわなくなる可能性があると報告されました。食だけにとどまらない、私たちの暮らしに及ぶ影響とは─。 19世紀から続く大産地に変化の兆し 大規模農業が盛んなアメリカでは、​​​​本土の3分の2が農作物の栽培に利用されており、農地のおよそ8割は、トウモロコシ、大豆、小麦、綿花、牧草、アルファルファの6つの商品作物の耕作に占められています。 エモリー大学の研究では、特に産業活動による人為的な温室効果ガスに焦点を当て、農地と人間の介入に関するデータを分析し、主要な作物の栽培への影響を予測しました。その結果、3段階のうち中程度の排出シナリオ(​​人間活動に伴う温室効果ガス等の大気中の濃度が、将来どの程度になるかを想定したもの​​)であっても、トウモロコシ、大豆、アルファルファ、小麦の理想的な栽培条件はいずれも北に移動するということでした。 この研究により、2100年までに中西部のコーンベルトがトウモロコシの栽培に適さなくなることが示唆されました。1800年代から肥沃な土壌と技術革新に支えられ、安定した穀物生産を可能にしてきたアメリカ農業の主戦場のひとつが近い将来危機にさらされるという衝撃的な事態です。トウモロコシは他の作物に比べてもなお影響が大きく、生産場所が国境を越えてカナダに移ってしまうことになります。 様々な分野で活用されるトウモロコシ アメリカで生産されるトウモロコシのうち、ポップコーンなどの形で直接消費されるのは10分の1以下です。食用で使われるうちの多くは甘味料の原料となっていて、例えば世界の甘味料市場の9%を占める高果糖コーンシロップなどに加工されています。肥満の原因とされる甘味料のひとつですが、コカコーラなどをはじめとした世界中で販売される多くのソフトドリンクに使用されています。 また、アメリカのトウモロコシの4割は、乳牛、鶏や豚といった家畜の飼料に使用されています。それはつまり、牛乳や乳製品、卵、ソーセージなど、日々の食卓に並ぶ多くの食料品にトウモロコシが間接的に関係しているということです。他にも、サケなど養殖魚の餌の主原料にもトウモロコシが使われています。 これだけ見ても、私たちの食生活に与える影響の大きさは計り知れません。さらには日用品でも、歯磨き粉の主成分であるソルビトールはコーンシロップに由来していますし、コーンスターチは汗を吸収するデオドラント剤に使われる成分のひとつなのです。 バイオマス燃料への期待が増す昨今。トウモロコシは燃料としても活躍の場を広げています。石油燃料の削減のため、米政府は原油価格が高騰した2000年代初頭からコーンエタノールの開発に力を入れてきました。現在、国内生産量のうちの4割がこのエタノール燃料に回っています。 日本は世界トップクラスのトウモロコシ輸入国で、年間消費量1500万トンのうち3分の2に当たる1000万トンをアメリカから輸入しています。この事実から言えるのは、私たち日本人も、気候変動のはらむリスクに目を向けるべき当事者だということです。  
世界最大規模の米トウモロコシが危機に。気候変動のはらむリスクとは
NEW 2022.06.21

食事も個別最適化の時代へ、味のデジタル化の先は

視覚や聴覚は、音や光という物理的刺激を量で測定できる、シンプルな感覚だと言えます。対する味覚は、食品に含まれる数百種類もの化学物質の絡み合いの中で捉えられる繊細で複雑な感覚です。味覚センサーは1990年代に実用化され、進化してきました。現在では香りや複雑な味わいを数値で示し、それをデータベース化して解析することもできるようになっています。主観的感覚とも言える味覚を測定し、客観的な数値として表す「味覚のデジタル化」。急速に発達してきたこの技術は、私たちの食を巡る身近な風景にどのような変化をもたらすことになるのでしょう。 味覚のデジタル化により、既にある味を再現するだけではなく、意外な組み合わせで生じる新しい「おいしさ」も発見されています。プリン+醤油=ウニ、牛乳+たくあん=コーンスープといった組み合わせによる味の変化を耳にしたことはありませんか。これらは味をデジタル化し、分析したことで分かった新しい味の組み合わせの一例です。 そもそも味を測定するという概念は、ここ10年ほどの考え方です。それまでは味わいとは一人ひとりの主観的感覚で、測定できるとは考えられていなかったのです。味覚センサーは急速に進化してきています。さまざまな味を測定して数値化するだけでなく、かなり正確に味や香りを再現できるようになってきました。九州大学特任教授の都甲潔氏は、音楽を視覚化して再現可能にする楽譜と同じように、味や香りを再現する「食譜」を作り出すことも夢ではない、と言います。味をデータとして蓄え、再現できるようになれば、あまたある味の中から好きな味を選択することもできるようになるでしょう。 味のデジタル化により、消費者は自分の好みを見つけやすくなるでしょう。すでに現在でも、お茶やコーヒー、アルコール類などでは味の特徴を示したチャートが存在しますが、ゆくゆくは食品全般にこのようなチャートが活用されることが考えられます。そして、グルメ番組のレポーターによる料理紹介にも、食レポと共にチャートや食譜が使われるようになるのかも?  
食事も個別最適化の時代へ、味のデジタル化の先は
NEW 2022.06.17

タンパク質危機で浮上する、昆虫食という選択肢

少子化が叫ばれて久しい日本ではあまりピンと来ないかも知れませんが、世界では今、人口過剰による食糧問題が深刻化しています。世界人口は2011年には70億人に達し、増加のペースは加速度的に上がっていて、2056年には100億人を突破するとも言われています。増え続ける人間の数に対して、従来通りの食料供給に頼っていては、いずれ限界を迎えるのは明らかなことです。特に魚や動物から摂取する必要のあるタンパク質は資源に限りがあることから、増え続ける人類すべてを賄うことは難しいとされています。 タンパク質代替の「切り札」 そこで世界的に注目されているのがタンパク質の代替食料。中でも食糧問題の切り札とされているのが昆虫食です。昆虫食が見直されるきっかけとなったのは、2013年に国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した報告書がきっかけと言われています。 増え続ける世界人口に対し、昆虫食が問題解決のひとつになると提案したこの報告書をきっかけに、世界各地で一斉に昆虫食の取り組みが始まりました。2015年にはそれまで昆虫を食べる習慣のなかった欧州連合(EU)で、昆虫を新規の食品にすると規定されました。また、東南アジアには世界最大規模のコオロギの養殖場も完成。常時700万頭以上が飼育されています。 コオロギが牛や豚に替わる食材に? ここで疑問になるのが、昆虫が牛や豚の代わりになるのか? という点です。まず、栄養価の面で見ると、ガやハチの幼虫の場合、体重の50%がタンパク質と言われています。牛や豚が1~3%ですから、それに比べると非常に高い含有率です。 また、環境問題の観点で考えても、極めて優秀です。牛1頭がゲップなどで1日に吐き出すメタンガスは160~320リットル。全世界にはおよそ15億頭の牛が飼育されているため、一部研究では地球温暖化の原因の一つとして指摘されています。対する昆虫自体はほとんど温室効果ガスを放出しないので、そうした問題もありません。 最後に、昆虫を食べるという行為に対する私たちの抵抗感が問題になります。しかし、考えてみればほんの数年前まで、西洋諸国では生で魚介類を食べる習慣がありませんでした。それが、今やアメリカやヨーロッパでも寿司は高級料理としてもてはやされています。近い将来、昆虫も私たちの食卓に当たり前に並ぶ時代が来るのかもしれませんね。
タンパク質危機で浮上する、昆虫食という選択肢