シェアシマが発信する「食品開発者のための専門メディア」
業界情報や製品・サービス紹介などの食にまつわる情報をお届け!

menu icon

人気のタグはこちら

“ 昆虫食のミライを語ろう ”

NEW 2023.01.27

昆虫食のミライを語ろうvol.2後編【ゲスト:サコン・ワナセッティーさん(タイ王国大使館農務担当官事務所参事官(農務担当)】

前編はこちらから:昆虫食のミライを語ろうvol.2前編【ゲスト:サコン・ワナセッティーさん(タイ王国大使館農務担当官事務所参事官(農務担当))】 昆虫食は「奇食」「物好き」「一部地域の食文化」として特殊性をもって語られてきました。それが2013年、FAO(国際連合食糧農業機関)の報告を機に、昆虫は急増する世界人口を支える「タンパク源=食料」としてみなされるようになり、もっとカジュアルかつポジティブに「昆虫を食べよう」という流れが日本でも一気に広がっています。 「かつて宇宙食といえば誰もが錠剤を想像していたが、今や宇宙ステーションでもおいしい食事ができるというイメージが定着した」と話すのは、昆虫料理研究家の内山昭一さん。昆虫食も「グロテスク」「おいしくない」という印象を脱却し、もっと身近に感じてもらいたいーー。そんな流れをつくっていくために、個性豊かなゲストを迎えて「昆虫食のミライ」を語ります。 【タイの昆虫食の主な輸出先は】 内山)主な輸出先はEUが多いのでしょうか? サコン)タイの総務省の統計を見てみると、一昨年の合計で600トンを輸出していて、内訳をみると約5割、つまり半分くらいがカンボジアです。2番目がアメリカで3割、3番目が日本で1割。その他がミャンマーと香港になってます。昆虫食の難しいところは、割と新しい商品でまだ統計などが追いついてないところです。細かい情報はないんですが、昆虫の姿を残したままのものもあれば、コオロギパウダーのような高度な加工品という形で出している場合もあります。 内山)カンボジアは今でも昆虫食が盛んだと思うんですよね。需要が高くて国内の供給だけでは間に合っていないんでしょうか? サコン)タイ東北部の隣がラオス、ちょっと下に行けばカンボジアという地理関係になっています。島国ではなく陸続きであり、食文化も共通していることからすると、カンボジアでも昆虫を食べる習慣はあると思います。 内山)ラオスへの輸出はどうですか? サコン)東北部のことをイサーン地方と呼びますが、イサーン料理とラオス料理はすごく近い。一緒といってもいいくらい似ているので、ラオスの方が昆虫を食べているって言われても僕は驚かないですね。 内山)非常に辛い料理ですよね。 サコン)東北部は酸っぱくて辛い味ですね。 内山)そうですよね。僕も1月に行って、非常に辛くてですね。辛くないのを頼んでも、辛いんですよね(笑)。ですから普通に頼むとものすごく辛いと思うんですけど、サコンさんは全然平気なんですね? サコン)それが僕は辛いのが苦手なんですよ(笑)。でも皆さんと基準が違うので、内山先生がダメでも僕は大丈夫なものもあるかもしれません。ただ僕は普通のタイ人と比べれば、辛いのは苦手な方です。 内山)サコンさんと僕は意外と味の好みが合いそうな感じがしますね。僕の今までの認識だと、2013年以降、EUで非常に昆虫食が盛り上がっていて、EUの中で新規食品として昆虫食を流通させていこうという動きがあり、昆虫の中でもコオロギをタイの工場で粉末にして輸入し、パンなどの製品にしていくという流れがあったと聞いています。それでEUが量的に一番多いのかなと思っていたんですが、やはりまだまだカンボジアという身近なところで需要がたくさんあるということなんですね。 サコン)先ほど申し上げた600トンというのは一昨年のデータで、これには続きがあって、伸び率は年98%なんですよ。ですのでだいぶ全体量も増えているはずですし、もしかしたら輸出先も変わっているかもしれません。ヨーロッパの方でコオロギパウダーが注目されているのは確かで、タイの業者もヨーロッパを視野に入れてます。EUで販売するにはノベルフード、新規食品の認証を取得しないといけないんですが、タイは昆虫食について認証を取得済みです。タイ政府としてはEUをすごく重要なマーケットと意識していますね。 内山)EUへの輸出もこれからどんどん伸びていきそうですね。そして、日本が1割ですが、日本もコオロギがメインなんですか? サコン)日本は恐らくコオロギがメインなんですけど、コオロギのパウダー以外も結構入ってきています。昆虫の姿をそのまま残したものもたくさんあって、最近では見る機会も増えたんじゃないかと僕は思いますね。 内山)製品化されて、自動販売機などでも売られていますよね。そういったものの中ではタイ産、タイで作られた商品が非常に多いと思います。バンコク近辺の会社が作っているんでしょうか? サコン 恐らく本社がバンコク近辺だと思います。ただ昆虫の形を残したままの製品は珍しい昆虫も多いので、もしかしたらバンコクではなく少し離れたところで作っている可能性も充分に考えられます。 内山)サゴワームなんかも結構タイから来ていると聞いてます。 サコン)サゴワームに関しては、どちらかというと西部、南部の方に多いんですよね。昆虫食で食べる昆虫は、言い方を変えるとそこら辺に生息している害虫でもあります。サゴワームも最近ではあちこちで作っていると思いますが、もともとは西部から南部にいるというイメージです。暑い地方の虫で、よくヤシの木にくっついていたりします。 内山)ヤシの木の中の芯を食べて枯らしてしまう害虫でもあるわけですね。ヤシの木からは油を取っていて、木を切って油をとって放っておくとそこにサゴワームが卵を産んで、それが2、3か月くらいで食べごろになって、それを採集して食べると。養殖をされているところも出てきているみたいですが、サコンさんはサゴワームを食べたことはありますか? サコン)あります。ミルキーで美味しかったです。油で揚げたものかな、友人からもらったものが乾燥していたので、おそらく揚げてあったんじゃないかと。 内山)サゴワームは最近、日本の昆虫食界隈でも結構注目されていますね。日本に輸入されるものは冷凍されていて、来るまでに結構時間がたってしまっていて解凍すると非常に水っぽくなってしまって旨味が減ってしまいます。8月にサゴワームの養殖を頑張ってやっているラオスに行って、活きのいいやつをいただいたら、これが本当に美味しかったですね。この美味しさを維持したまま日本に持って来れたらかなり需要があるんじゃないかな。大きいからすごく食べ応えもあるし、見た感じもわれわれにとってみればすごく良い(笑)。 サコン)もともとの食べ方はだいたい炒め物にしてるみたいですね。 内山)串に刺して焼いたりすることもあるみたいですよ。外側の皮がパリパリで、中がジューシーでクリーミーで、余分な脂も結構落ちるので、すごく美味しいねっていうのが一般的な大方の評価ですね。 【若者が活躍するタイの昆虫食産業】 内山)タイはこれからの昆虫食の希望の星なんじゃないかと思います。サコンさんにも頑張っていただいて、日本でバンバン虫を売ってほしいですね。 サコン)それこそ、内山先生のお力を借りたいくらいです。 内山)お互いに協力し合って売っていきたいですね。そういう意味では、若い人たちに入っていただくことが、これからの将来のためにも非常に大事だと思うんですが、タイでは若い人の参加は増えてきている感じでしょうか? サコン)最近目覚ましい成長を成し遂げた、近代化した昆虫食産業は結構若い人が多いです。年の伸び率が98%くらいなので、いろんな人が興味を持つようになったんですね。昆虫食に興味を持つ人は、機械のある業者さんもおそらく40代くらいだと思います。特に最近はいろんな企業さん、会社さんが生まれて、一人で戦うよりは皆で集まって協会を作って一緒に頑張っていきましょう、タイ国内マーケットはもちろん海外も狙っていきましょうということで、3月までにはタイ昆虫食産業協会というのができる予定です。 内山)何社くらい参加するんですか? サコン)まだ準備してる段階で公表されてないんですけども、聞いた話ですと結構多いみたいですね。昨年3月のFOODEX(国際食品・飲料展)にタイのブリケット社に出てもらったんですけど、このブリケット社の方が今度できるタイ昆虫食産業協会の初代会長を務めることになっています。この方と話してみると、すごくやる気があって、何にでも挑戦してみたいという意欲を感じました。 内山)僕もバンコクでブリケット社のハンバーガーのお店に寄って、コオロギを使った商品を食べて美味しかったです。「昆虫未来食」というテーマを掲げていました。ああいう形のお店はバンコクにはブリケット社だけではなくて他にもあるんですか? サコン)コオロギパウダーや虫を揚げたものを袋詰めして売ってるところは多いんですけども、昆虫食専門のレストランはまだそんなにたくさんはないと思います。内山先生が訪問したお店はすごくきれいで、新しくてできたばっかりというイメージがあったと思うんですが、そういったお店の数はまだあまり多くないと思います。ただ、増える傾向はありますね。 内山)昆虫食産業協会ができれば、それが一つの始まりということで、それをきっかけにいろんなお店ができるのかなと思って、すごく期待しています。 サコン)地元の人がもちろん通ってますし、海外から来ている観光客もそこを狙って行くこともあると聞いています。タイに来る人はタイ料理を好んでくださる方が多いんですけれど、トムヤムクンだけではなく、新しい料理にも挑戦してみたいということになれば、昆虫食レストランに行くこともあるかもしれませんね。 内山)それと同時に、東北部で継承されている昆虫そのものが食材となっている伝統的な昆虫食というのも、なくなってほしくないなと強く思います。コオロギだけじゃなくていろんな昆虫食材の持つ食感とか味とか、タガメをはじめそれぞれに特徴があるじゃないですか。そういう特徴を生かした多様な昆虫食の実験場みたいな感じにタイがなっていくと、いろんな昆虫食が広がる可能性が出てくると思うんですよね。ぜひコオロギだけじゃなくて、もっといろんなものを取り上げて調理法や栄養についても紹介していただいて、昆虫食をリードしていってくだされば、昆虫食の未来はすごく明るいんじゃないかと思います。 【昆虫食で日本に期待したいことは】 内山)日本で昆虫食を扱う企業も、スタートアップ企業が圧倒的に多いです。若い人が起業していろんな可能性を模索しているという段階なので、もっとタイと日本の昆虫食企業が交流できるような場ができると面白いんじゃないかなと思っています。 サコン)やはり昆虫というのは見た目で敬遠する人が多いと思うんです。そういう意味では、われわれタイ人からすると昔から見ている光景なので、食べなくてもすごく嫌だっていう人は比較的少なく、昆虫に慣れてるというところがあるのだと思います。コオロギパウダーは見た目という課題は克服してますので、ウケがいいんじゃないでしょうか。ただ一つの食文化として、虫の形のままの昆虫食も維持してほしいというのは、僕も同じ考えです。 内山)世界的にはコオロギの養殖がメインで、とにかく粉にしてハードルを下げてできるだけたくさん食べてもらって、価格を下げて普及させていこうっていうのが今の世界的な趨勢だと思います。日本でも2つに分かれていて、グリラスという徳島の会社は養殖にかなり力を入れていて、新しい昆虫食っていうのを目指しているところです。一方、タガメサイダーのTAKEOは国産、量的には少量のロットで地域ごとに異なる食べ物を与えて地域独自の味とか旨味とかを追求して、京都コオロギとかっていう地名にちなんだ名前を付けて特色を活かした昆虫食を目指していますね。この2つは両方とも非常に大事な昆虫食の進んでいく道だと思います。この両方がうまくかみ合って総合的に発展していくようなあり方が僕が望んでいる方向です。 タイも東北部にはちゃんと伝統的な昆虫食が残っていて、プラスしてバンコクの新しい昆虫食がうまくつながるようなタイ昆虫食産業協会になってほしいと思います。若い人の力っていうのはすごくエネルギーがありますし、とにかく元気で好奇心が旺盛っていうのがいいですよね。われわれも昆虫を食べる会を毎月やっているんですけれど、集まってくる人は20代、30代の方が圧倒的に多いです。そういった人たちがこれから昆虫食を進めていく原動力になるような気がしていますので、両国の交流が深まっていけば非常にいいと思っています。 サコン)タイは長年昆虫食をやってきたうえに早い段階から産業化したので、かなりノウハウが蓄積されていますが、内山先生がおっしゃったように日本の方はすごく発想力が豊かですよね。日本のアイデアとタイの今まで蓄積されたノウハウ、経験をうまく活かして、日本とタイが手を取り合って昆虫食を盛り上げていけたらなと思います。 内山)そういう意味ではサコンさんの役割って非常に重要ですね。シティーボーイでありながら、なおかつ昆虫食にも造詣が深く、2番目に食べたのが長野県だというのもありますし、ぜひ活躍して盛り上げていただければと思います。こちらも20年以上やっていていろんなつながりもありますので、協力しながら昆虫食をさらに進めていければいいなと思っています。ありがとうございました。 https://reports.shareshima.com/3150/
昆虫食のミライを語ろうvol.2後編【ゲスト:サコン・ワナセッティーさん(タイ王国大使館農務担当官事務所参事官…
NEW 2023.01.20

昆虫食のミライを語ろうvol.2前編【ゲスト:サコン・ワナセッティーさん(タイ王国大使館農務担当官事務所参事官(農務担当))】

昆虫食は「奇食」「物好き」「一部地域の食文化」として特殊性をもって語られてきました。それが2013年、FAO(国際連合食糧農業機関)の報告を機に、昆虫は急増する世界人口を支える「タンパク源=食料」としてみなされるようになり、もっとカジュアルかつポジティブに「昆虫を食べよう」という流れが日本でも一気に広がっています。 「かつて宇宙食といえば誰もが錠剤を想像していたが、今や宇宙ステーションでもおいしい食事ができるというイメージが定着した」と話すのは、昆虫料理研究家の内山昭一さん。昆虫食も「グロテスク」「おいしくない」という印象を脱却し、もっと身近に感じてもらいたいーー。そんな流れをつくっていくために、個性豊かなゲストを迎えて「昆虫食のミライ」を語ります。 https://youtu.be/T_wiQZQ2O80 【自己紹介】 内山)4、5年ほど前に昆虫食普及ネットワークを立ち上げたのを機に、昆虫食について一生懸命やっている内山昭一です。それまでは昆虫料理研究会という名前の任意団体で、20年以上虫を食べ続けてきました。比較的昆虫食が盛んな長野市に生まれたことがベースになっていると感じています。今回は、昆虫王国と言われているタイの方とお話しできるのをとても楽しみにしております。 サコン)タイ大使館農務担当官事務所のサコン・ワナセッティーと申します。タイ大使館にはいろいろな部局がありまして、僕のいる農務担当官事務所ではタイの農産物を日本の商社にPRするのが主なミッションです。昨年から昆虫食についてPRすべくいろいろなイベントなどを企画して実施してきました。タイというといろんなものを思いつくと思うんですけど、もしかしたら一部の方はタイといえば昆虫食を思い出すかもしれません。僕自身は実はタイの首都バンコク生まれで、完全なシティーボーイです(笑)。正直昆虫をたくさん食べて育ったというわけではないんですけれど、子供のころから昆虫食は身近でした。あちこちで売っていましたし、生活の一部だと感じているタイ人が多いと思います。 【サコンさんと昆虫食との関わり】 内山)サコンさんが小さい頃はバンコクでも屋台がいっぱいあって、昆虫が食べられる環境だったんですね。 サコン)そうですね。今ではバンコクも都市化が進んで結構屋台も減ってきたんですけども、僕が小さい頃はあちこちで屋台を見かけましたね。 内山)サコンさんが初めて食べた昆虫って何ですか? サコン)6歳か7歳のころ親に連れられてタイ北部のチェンマイに行った時に、タケノコムシというのを初めて食べました。 内山)タケノコの中に入って育っていくタケツトガという蛾の幼虫ですね。日本でも非常に人気です。食べやすいので、昆虫食といってもこれならいけるという人もいます。サッと揚げて塩を振って食べると非常に食べやすい、おいしい昆虫だと思います。食べやすくおいしくて人気があるという点が、タイと日本ですごく共通していますね。 サコン)昆虫というと土のにおいがするというイメージを抱えている人が多いと思うんですけれども、タケノコムシは竹の中に住んでいるのですごくきれいで変なにおいもなく、食感もよかったです。 内山)竹の芯を食べているので、イメージとしてもすごくよくて、そこらへんが日本人にもうけているんじゃないかと思います。タイ語では「ロットドゥアン」と言いますか? サコン)はいそうです。「特急列車」という意味です。 内山)なんで特急列車なんですか? サコン)虫の外見が鉄道車両のように見えるんですよね。細長くて列車の形のイメージです。 内山)面白いですね。 【タイが「昆虫食王国」と言われているのは、なぜ?】 内山)農務関係のお仕事ということですが、昆虫以外で日本が輸入しているトップは何ですか? サコン)タイの輸出額でいうと鶏肉が一番多いです。 内山)2番目がロットドゥアン?(笑) サコン)そうだったらいいんですけれど(笑)、2番目は天然ゴムですね。 内山)ゴムですか、なるほど。最初にロットドゥアンを食べて、そのあとはどんな昆虫食歴ですか? サコン)実は2番目に食べたところは日本の長野県なんですよ。大学が日本でしたので、長野県でハチノコを食べました。 内山)長野県は伊那の方ですか? サコン)松本です。 内山)2度目を日本で食べたなんてすごいですね。本当に昆虫食の架け橋みたいですね。長野に行った理由は虫を食べに行ったんですか? サコン)そうではなく普通に観光でした。知り合いにせっかくだから長野の食べ物を食べさせてほしいって言ったら、レストランで最初にハチノコが出されて、食べました。 内山)それは非常にいい出会いでしたね。よくタイは昆虫食王国といわれますが、どんな経緯があるんでしょうか? サコン)タイには昆虫を食べる習慣、食文化があります。タイは農産物も豊富なんですが、なんで昆虫を食べる必要があるかというと、おそらく単においしいからだと思うんですよ。他の国の方と比べて、比較的早いうちから昆虫食のおいしさが分かっていたわけです。食材として、あるいはむしろ調味料として昆虫を使う習慣があったので、国の政策として産業化、近代化が進められました。 内山)なるほど。調味料、味付けという意味では、タガメなんていうのはタイではよく使われる食材なんですよね。 サコン)タガメのふりかけはすごく有名で、好評です。すごく風味がいいです。 内山)日本でタガメがおいしいですよっていうと絶滅危惧種だから取っちゃいけないんだって言われるんですが、日本のタガメじゃなくて台湾タガメ、ちょっと大ぶりのタガメのことですね。タイでは養殖まではしていないんですかね? サコン)一般的に手に入りますので、おそらく。 内山)とにかくたくさんいるんですね。昔から食べられていたっていうことですもんね。 サコン)食材、調味料という意味では酸味としてアリの卵は昔も今もよく使います。アリは酸っぱいんです。 内山)アリが取れるのは乾季ですよね。タガメは年中取れるんですか? サコン)タガメはほとんど年中取れます。アリの卵の時期は決まっていて、僕が聞いた話では高値で取引されてるそうで、かなり高い食材になっているようです。 内山)タガメはオスのフェロモンが風味につながるんですよね。オスの方が値段が高いと聞きますが、オスとメスでは結構値段は違うものですか? サコン)違いますね。 内山)オスの場合はそのにおいがいろんな調味料、それこそふりかけにも使われますが、メスは普通どういう風に食べるんですか? サコン)タガメといえば、つぶしてご飯と一緒に食べるイメージしかないんですよね。 内山)メスは小ぶりだし、お腹に卵が入っていることもあるので、素揚げか何かにしてバリバリと食べる印象を持っています。 サコン)ついこの間、タガメサイダーを飲みました。これは絶対試してもらいたいです。もう、爽やかですごくおいしいです。 内山)タイは非常に気候が暖かく虫も育ちやすいことから養殖がしやすく、これがタイを昆虫食王国にした大きな要因だと思います。日本の場合はやっぱり冬があるので、やはりタイの方が昆虫の養殖に向いていますよね。 サコン)まさにそうですね。放っておいても育つという環境が大きなきっかけだったと思います。今のコオロギパウダーを作るためのコオロギは、ちゃんとした設備で作ってると思いますが、昔は恐らく気候が合っていてたくさん獲れることが始まりだったのでしょう。今でも昆虫はたくさん獲れますし、かつ近代的な設備もできてあちこちで養殖をやってます。 【タイ東北部で盛んな昆虫食】 内山)タイといっても地域が分かれていますよね。東北部は今でも昆虫食が非常に盛んだと聞きますし、北部、中央部、東部、南部と分かれていますが、南の方はそれほど盛んではなく、やはり北部、東北部が盛んですか? サコン)もともと昆虫を食べる習慣、食文化があるのはまさに東北部の方ですね。アリの卵などもよく使っています。名産地は中央部と東北部にあります。米農家の閑散期の副業として成長した昆虫食産業があって、食文化もあって、という感じですね。 内山)北部っていうのはまた少し違うんですね。 サコン)食べてるものが違うというイメージなんですよね。北部は僕が食べたタケノコムシのイメージなんですよ。屋台で販売しているものはだいたい東北の方がバンコクに出稼ぎに来ていて、生まれ故郷のふるさとの味を屋台で、というものなのです。北部でも昆虫を食べることはあるんですけども、やはり東北の方が昆虫食が盛んなイメージがありますね。 内山)やっぱり一番盛んなのは東北部なんですね。僕も昨年1月にタイに行って、最初にバンコクに行ったんですけど、昆虫食と接する機会がほとんどなくて。で、東北部のチェンマイとかイサーンに行くと、朝市とか屋台でバッタとかオケラとかゲンゴロウ、タケノコムシも売られていたんですよね。国の中でも地域によって違うんだなってすごく実感しました。さっきおっしゃったように、バンコクに来ている東北の方が故郷の懐かしい昆虫食に親しむ市場がバンコクにあるというのは、日本でいうと長野県人が東京に出てきてイナゴのつくだ煮やハチノコを食べたいなっていう時にそういうお店に行って食べるのと同じイメージですかね。昆虫食を見ると昔食べたなっていうイメージがあって、そこで食べてみようかとつながっていくのは日本でも共通していると思います。タイの現状ですけれども、昔ながらの自然採集で食べることにプラスして、コオロギの養殖は世界で一番盛んなんじゃないかと思うんですよね。コオロギの養殖場はやっぱり東北部が一番多いんですか? サコン)もともとは食文化の影響もあって東北部で養殖が盛んでしたが、最近では設備も入ってきてどこでも育つようになっています。バンコクの郊外にもたくさん養殖場はあるんですよ。そして都市近郊の方が輸出につながりやすいんですよね。やはり東北部からだと距離もありますので、輸出を念頭に置く業者さんであればおそらくバンコク近郊に最新設備の密閉空間で管理する施設を作って養殖することが多いと思います。 内山)流通経路がしっかり発達しているバンコク周辺にそういったコオロギ養殖場がどんどん増えてきているわけですね。管理や安全性がしっかりしているところじゃないとなかなか輸出ができないということなので、そういった工場では例えばHACCPとかGAPとかいう基準にのっとって養殖されているということなんでしょうか? サコン)まさにこれがタイの農業省が一番力を入れているところです。我々はキューマークと呼んでいるんですが、GAPをちゃんと取得している工場の製品であればキューマークをつけることができるんです。やはり海外に輸出するということを考えると、基準、認証をしっかりした方がいいとタイの農業省も思っていますので、結構早い段階から食用コオロギのためのGAPを制定しました。タイ農業省によれば世界初だということで誇りに思っています。   ※GAP: Good Agricultural Practice(ギャップ) :食品安全、環境保全、労働安全等の持続可能性を確保するための生産工程管理の取組 ※HACCP: Hazard Analysis and Critical Control Point (ハサップ):食品の原料から出荷までの各工程で可能性のある危害要因(異物混入や微生物の汚染や増殖など)を特定し管理する取組
昆虫食のミライを語ろうvol.2前編【ゲスト:サコン・ワナセッティーさん(タイ王国大使館農務担当官事務所参事官…
2022.10.18

昆虫食のミライを語ろうvol.1【ゲスト:太田信吾さん(映画監督)】

昆虫食は「奇食」「物好き」「一部地域の食文化」として特殊性をもって語られてきました。それが2013年、FAO(国際連合食糧農業機関)の報告を機に、昆虫は急増する世界人口を支える「タンパク源=食料」としてみなされるようになり、もっとカジュアルかつポジティブに「昆虫を食べよう」という流れが日本でも一気に広がっています。 「かつて宇宙食といえば誰もが錠剤を想像していたが、今や宇宙ステーションでもおいしい食事ができるというイメージが定着した」と話すのは、昆虫料理研究家の内山昭一さん。昆虫食も「グロテスク」「おいしくない」という印象を脱却し、もっと身近に感じてもらいたいーー。そんな流れをつくっていくために、個性豊かなゲストを迎えて「昆虫食のミライ」を語ります。 自己紹介 内山)内山昭一です。毎日ではないんですが、結構頻繁に虫を食べながら暮らしています。季節的に今はセミが一番おいしい季節です。ミンミンゼミやアブラゼミなど、いろんなセミによって味が違います。そのほかにも最近はタケオオツクツクというかなり大きめな外来種のツクツクボウシが竹林で見つかることもあり、そんな新しい昆虫の食材を出会うことの楽しさに取りつかれてしまった20年です。昆虫食ってこんなにおいしくて環境的にもいいので、できるだけ大勢の方においしさや良さを知ってもらいたく、昆虫食普及ネットワークというNPO法人を5、6年前に立ち上げました。 太田)太田信吾です。映画の監督をはじめ、テレビ番組などの映像のディレクターをしています。2017年にNHKのドキュメンタリーで東南アジアの昆虫食を巡る旅を番組化したのが昆虫食との出会いです。このとき東南アジアの昆虫食を食べたことをきっかけとして、今に至るまですごく新しい食の魅力に引き込まれています。出身が長野県千曲市なので、振り返ると小さい時にイナゴを取った記憶がありまして、「どこか昆虫の味って懐かしいな」という昔の記憶が食を通じて蘇ってくることもあります。 昆虫食との出会い 内山)東南アジアでNHKの番組って、どのような番組でしたか。 太田)「旅旅しつれいします」という、世界各地を旅する旅人たちがどんなテーマを持って旅しているかを紹介する番組です。リサーチをしている段階で、昆虫食をテーマにしている佐藤裕一さんという旅人に出会いまして、なんだこれは!?と思って出ていただきました。タイの東北部、イサーン地方のコーンケンでしたね。 内山)あの辺りは今でも昆虫食が結構残っていますね。 太田)コーンケン大学のユパ教授という昆虫食を専門とされている先生を訪問して、いろいろとタイの昆虫食事情を教えていただきながら、バンコクとコーンケンを中心にいろいろな昆虫食を食べました。番組ではコーンケンのコオロギ養殖農家さんを訪ねるところをドキュメントにしました。佐藤さんはすごい活発な方で、昆虫エネルギー研究所というNPOを主宰されています。 内山)まさに昆虫エネルギーを一身に吸収した人ですよね。すごい頑張っていらっしゃる。太田さんは長野県出身ですが、昔から昆虫食に対してはある程度興味があったんですか。 太田)そうですね。小さい時にイナゴの佃煮が実家で出たなとか、そういう記憶もあってあまり抵抗もなかったんですが、東京に出てきてからはあまり食べる機会がなくなっていて、その番組を機にまた思い出したという感じです。 映像作品『エディブルリバー』について 内山)本格的に昆虫食を掘り下げてみようと思ったのは、佐藤さんと出会ったその番組以降ということですか。 太田)はい。2020年、コロナでロックダウンの期間中に、実家のある長野県千曲市に半年ほど戻りました。映像の仕事も一時延期になり時間があって、長野県中を一人で旅した時にザザムシとか蜂の子とかいろいろな昆虫食を食べさせてもらえまして。 始まりはザザムシ漁の漁師さんでした。中村さんと今年引退された菅沼さんという漁師さんがいらっしゃるんですけど。まず漁師の高齢化が課題だと知り、そこからどうやってその食文化が今後継承されていくのかと。ザザムシも食べたらすごくおいしかった。 内山)ザザムシは確かにすごくおいしいし良いんですけど。非常に(漁師は)高齢化してきているし、川が護岸工事されて漁が非常に難しくなってきているというのが現状です。そうした中であの上伊那農業高校の高校生はすごいですね。情熱がものすごい。 太田)去年(2021年)半年ほどかけて、上伊那農業高校の皆さんがザザムシを食べやすくふりかけにする取り組みをドキュメンタリー化しました。大月さんという主人公の女子高生は駒ヶ根出身で小さい時から給食でザザムシが出ていたそうで、ザザムシを食べるということが身近な体験としてベースにあったのだろうなと取材していて感じました。 この高校には、食を切り口に生徒の皆さんが自発的にいろいろなプロジェクトを立ち上げて運営するグローカルコース(グローバルとローカルをかけたユニークなコース)があります。例えばこうじを利用した甘酒など、地域の食品や食文化を扱っていろいろな商品開発をしようという取り組みをしていて、その一つがザザムシでした。 内山)給食というのはかなり大きなインパクトがあると思うんです。ただ、今ではなかなか給食で虫が出る学校ってそんなにはありません。いろんな人の意見を聞くと、小さい頃から経験した方がいいので、一番手っ取り早いのがまず給食だろうと。給食に出れば子供の頃から昆虫食に慣れてくるので、大人になっても継続していくんじゃないか、食品として捉えることができるんじゃないかという意見がかなり多いんですが、今では給食の安全面などから導入がかなり厳しくなってきていて、給食で虫を出すのは難しいようです。 この映画を見ると、伊那谷だけの文化っていうのを強調されていて、そういう局地的な文化って今もう消滅しそうなんですけど、ザザムシを養殖することまで考えている。これからの昆虫食に期待できる一つの方向性があるんじゃないかなと思いまして、この映画が非常に参考になりました。 新作『イナゴンピック』の撮影背景 内山)イナゴンピックの映像を撮られて、どうでしたか。 太田)僕も昆虫食の魅力に取りつかれてしまったところがあって、どうやったら広げていけるかなっていう思いはずっと持ってます。環境にいいからという切り口では自分でもそんなに食べたいなとは思えないので、やっぱり娯楽性とかおいしさを切り口にしないといけないなと。楽しくておいしいってところにまず出会いたいなというところで、ザザムシのふりかけと出会いました。 イナゴンピックに関しては、オリンピックとイナゴンピックをかけて、イナゴ取りをゲーム、行事としてみんなで楽しく捕ろうっていうイベントの趣旨がすごく良い。親子の交流の時間でもあり、都会の子どもたちがなかなか経験できない田んぼで自然とふれあう時間でもあり、そのエンターテインメント性にすごく引かれました。 内山)僕も同感です。これは群馬県の中之条町が始めて、もう10年以上やってると思うんですけど、前に一度参加しました。すごくみんな楽しそうにやってるんですよ。親子でとても仲が良くて、親子のつながりや触れ合い、話もたくさんできてすごく面白いんだけど、なかなか東京じゃ難しいかなと思っていたら、たまたま家の近くに田んぼがあって、そこでやれちゃった。イナゴがいないとできないわけですから、本当に幸運でした。東京でできたことは本当に良かったなと思います。 映画の中にもありましたが、毎年優勝する男の子、シュン君に「捕まえるコツは?」って聞いた時に、彼は「感じること」だと答えていたんですよね。確かにそうだなと思って、すごく印象に残りました。やっぱり五感をフルに活用して捕まえることが狩猟の原点だけれど、そういう五感というものが全然使われない環境になっている中、人間が本来持っている動物的な勘をもう一度自分で感じ直していく機会があることはすごく良い。しかも子どもの頃のこの経験が強く印象に残って大人まで継続していくとしたら、イナゴンピックはすごく意義があるんじゃないかなって。有機の田んぼっていろんな生き物があふれてるじゃないですか。世界にはこんなにも生き物があふれているということを実感する楽しさ、それから捕って食べるという命をいただくような実感。そういう喜びが、あのコンパクトな映像の中にきっちり詰まっていて、昆虫食にとっては最高のドキュメンタリーじゃないかなと思っています。 映像作品として伝えたいこと 内山)太田さんにとって、昆虫食を映画にする意味とは何ですか。 太田)一つは食の新しい可能性です。小さな時から慣れた食事が当たり前の食事という風に思ってしまっていますけれど、まだまだ世界を見渡すといろんな食文化があって、さまざまな感覚の体験、食の多様性、可能性、そういったものが秘められています。旅する中で食べたことがないいろんなものを食べることが好きなので、そういう新たな体験としての可能性を伝えていきたい。また昆虫食文化を知ることで、地球環境の持続可能性も再認識できればいいのかなって思いますね。入り口はやっぱり美味しかったり楽しかったりというところを軸に伝えていきたいです。
昆虫食のミライを語ろうvol.1【ゲスト:太田信吾さん(映画監督)】

新着レポートはこちら

NEW 2023.01.30

【解説】サフランとは【食品業界用語】

この記事では、サフランとは何か、その食材としての働き、また料理への利用、サフランに関する最近の研究結果、料理にサフランを使用する際の注意点について説明します。 サフランとは? サフランは、クロッカスの花の茎を乾燥させたものから得られるスパイスです。地中海沿岸、中東、南西アジアの一部が原産で、古くから料理や宗教儀式に使われてきました。 サフランは世界で最も高価なスパイスのひとつであり、その独特の風味、色、香りは、さまざまな料理に欠かせない食材となっています。 サフランの働き サフランは健康に良いことでも知られています。抗酸化物質が多く含まれ、疲労回復や婦人科系の不調予防、鎮痛、血行改善など、美容と健康にさまざまな効果があるとされています。また、サフランは認知機能の向上や、うつ症状の軽減にもつながると期待されています。 サフランを使った料理例 サフランは非常に汎用性の高いスパイスで、スープからデザートまで、さまざまな料理に使うことができます。 サフランを使った代表的な料理には、カレー、パエリア、リゾット、ブイヤベース、ビリヤニなどがあります。また、サフランは紅茶やシロップなどの嗜好品にも使われます。 サフランの研究成果 サフランが性機能と生殖能力の向上に役立つことを示唆する研究結果も増えてきています。サフランがストレスを軽減し、性欲を増進させ、健康的なホルモンバランスを促進することが研究で実証されています。 サフランの注意点 サフランで料理に色付けをする場合は、ほんのひとつまみで十分です。 入れすぎてしまうと、他の味に影響が出ることがあるので、控えめに使うように注意しましょう。
【解説】サフランとは【食品業界用語】
NEW 2023.01.27

昆虫食のミライを語ろうvol.2後編【ゲスト:サコン・ワナセッティーさん(タイ王国大使館農務担当官事務所参事官(農務担当)】

前編はこちらから:昆虫食のミライを語ろうvol.2前編【ゲスト:サコン・ワナセッティーさん(タイ王国大使館農務担当官事務所参事官(農務担当))】 昆虫食は「奇食」「物好き」「一部地域の食文化」として特殊性をもって語られてきました。それが2013年、FAO(国際連合食糧農業機関)の報告を機に、昆虫は急増する世界人口を支える「タンパク源=食料」としてみなされるようになり、もっとカジュアルかつポジティブに「昆虫を食べよう」という流れが日本でも一気に広がっています。 「かつて宇宙食といえば誰もが錠剤を想像していたが、今や宇宙ステーションでもおいしい食事ができるというイメージが定着した」と話すのは、昆虫料理研究家の内山昭一さん。昆虫食も「グロテスク」「おいしくない」という印象を脱却し、もっと身近に感じてもらいたいーー。そんな流れをつくっていくために、個性豊かなゲストを迎えて「昆虫食のミライ」を語ります。 【タイの昆虫食の主な輸出先は】 内山)主な輸出先はEUが多いのでしょうか? サコン)タイの総務省の統計を見てみると、一昨年の合計で600トンを輸出していて、内訳をみると約5割、つまり半分くらいがカンボジアです。2番目がアメリカで3割、3番目が日本で1割。その他がミャンマーと香港になってます。昆虫食の難しいところは、割と新しい商品でまだ統計などが追いついてないところです。細かい情報はないんですが、昆虫の姿を残したままのものもあれば、コオロギパウダーのような高度な加工品という形で出している場合もあります。 内山)カンボジアは今でも昆虫食が盛んだと思うんですよね。需要が高くて国内の供給だけでは間に合っていないんでしょうか? サコン)タイ東北部の隣がラオス、ちょっと下に行けばカンボジアという地理関係になっています。島国ではなく陸続きであり、食文化も共通していることからすると、カンボジアでも昆虫を食べる習慣はあると思います。 内山)ラオスへの輸出はどうですか? サコン)東北部のことをイサーン地方と呼びますが、イサーン料理とラオス料理はすごく近い。一緒といってもいいくらい似ているので、ラオスの方が昆虫を食べているって言われても僕は驚かないですね。 内山)非常に辛い料理ですよね。 サコン)東北部は酸っぱくて辛い味ですね。 内山)そうですよね。僕も1月に行って、非常に辛くてですね。辛くないのを頼んでも、辛いんですよね(笑)。ですから普通に頼むとものすごく辛いと思うんですけど、サコンさんは全然平気なんですね? サコン)それが僕は辛いのが苦手なんですよ(笑)。でも皆さんと基準が違うので、内山先生がダメでも僕は大丈夫なものもあるかもしれません。ただ僕は普通のタイ人と比べれば、辛いのは苦手な方です。 内山)サコンさんと僕は意外と味の好みが合いそうな感じがしますね。僕の今までの認識だと、2013年以降、EUで非常に昆虫食が盛り上がっていて、EUの中で新規食品として昆虫食を流通させていこうという動きがあり、昆虫の中でもコオロギをタイの工場で粉末にして輸入し、パンなどの製品にしていくという流れがあったと聞いています。それでEUが量的に一番多いのかなと思っていたんですが、やはりまだまだカンボジアという身近なところで需要がたくさんあるということなんですね。 サコン)先ほど申し上げた600トンというのは一昨年のデータで、これには続きがあって、伸び率は年98%なんですよ。ですのでだいぶ全体量も増えているはずですし、もしかしたら輸出先も変わっているかもしれません。ヨーロッパの方でコオロギパウダーが注目されているのは確かで、タイの業者もヨーロッパを視野に入れてます。EUで販売するにはノベルフード、新規食品の認証を取得しないといけないんですが、タイは昆虫食について認証を取得済みです。タイ政府としてはEUをすごく重要なマーケットと意識していますね。 内山)EUへの輸出もこれからどんどん伸びていきそうですね。そして、日本が1割ですが、日本もコオロギがメインなんですか? サコン)日本は恐らくコオロギがメインなんですけど、コオロギのパウダー以外も結構入ってきています。昆虫の姿をそのまま残したものもたくさんあって、最近では見る機会も増えたんじゃないかと僕は思いますね。 内山)製品化されて、自動販売機などでも売られていますよね。そういったものの中ではタイ産、タイで作られた商品が非常に多いと思います。バンコク近辺の会社が作っているんでしょうか? サコン 恐らく本社がバンコク近辺だと思います。ただ昆虫の形を残したままの製品は珍しい昆虫も多いので、もしかしたらバンコクではなく少し離れたところで作っている可能性も充分に考えられます。 内山)サゴワームなんかも結構タイから来ていると聞いてます。 サコン)サゴワームに関しては、どちらかというと西部、南部の方に多いんですよね。昆虫食で食べる昆虫は、言い方を変えるとそこら辺に生息している害虫でもあります。サゴワームも最近ではあちこちで作っていると思いますが、もともとは西部から南部にいるというイメージです。暑い地方の虫で、よくヤシの木にくっついていたりします。 内山)ヤシの木の中の芯を食べて枯らしてしまう害虫でもあるわけですね。ヤシの木からは油を取っていて、木を切って油をとって放っておくとそこにサゴワームが卵を産んで、それが2、3か月くらいで食べごろになって、それを採集して食べると。養殖をされているところも出てきているみたいですが、サコンさんはサゴワームを食べたことはありますか? サコン)あります。ミルキーで美味しかったです。油で揚げたものかな、友人からもらったものが乾燥していたので、おそらく揚げてあったんじゃないかと。 内山)サゴワームは最近、日本の昆虫食界隈でも結構注目されていますね。日本に輸入されるものは冷凍されていて、来るまでに結構時間がたってしまっていて解凍すると非常に水っぽくなってしまって旨味が減ってしまいます。8月にサゴワームの養殖を頑張ってやっているラオスに行って、活きのいいやつをいただいたら、これが本当に美味しかったですね。この美味しさを維持したまま日本に持って来れたらかなり需要があるんじゃないかな。大きいからすごく食べ応えもあるし、見た感じもわれわれにとってみればすごく良い(笑)。 サコン)もともとの食べ方はだいたい炒め物にしてるみたいですね。 内山)串に刺して焼いたりすることもあるみたいですよ。外側の皮がパリパリで、中がジューシーでクリーミーで、余分な脂も結構落ちるので、すごく美味しいねっていうのが一般的な大方の評価ですね。 【若者が活躍するタイの昆虫食産業】 内山)タイはこれからの昆虫食の希望の星なんじゃないかと思います。サコンさんにも頑張っていただいて、日本でバンバン虫を売ってほしいですね。 サコン)それこそ、内山先生のお力を借りたいくらいです。 内山)お互いに協力し合って売っていきたいですね。そういう意味では、若い人たちに入っていただくことが、これからの将来のためにも非常に大事だと思うんですが、タイでは若い人の参加は増えてきている感じでしょうか? サコン)最近目覚ましい成長を成し遂げた、近代化した昆虫食産業は結構若い人が多いです。年の伸び率が98%くらいなので、いろんな人が興味を持つようになったんですね。昆虫食に興味を持つ人は、機械のある業者さんもおそらく40代くらいだと思います。特に最近はいろんな企業さん、会社さんが生まれて、一人で戦うよりは皆で集まって協会を作って一緒に頑張っていきましょう、タイ国内マーケットはもちろん海外も狙っていきましょうということで、3月までにはタイ昆虫食産業協会というのができる予定です。 内山)何社くらい参加するんですか? サコン)まだ準備してる段階で公表されてないんですけども、聞いた話ですと結構多いみたいですね。昨年3月のFOODEX(国際食品・飲料展)にタイのブリケット社に出てもらったんですけど、このブリケット社の方が今度できるタイ昆虫食産業協会の初代会長を務めることになっています。この方と話してみると、すごくやる気があって、何にでも挑戦してみたいという意欲を感じました。 内山)僕もバンコクでブリケット社のハンバーガーのお店に寄って、コオロギを使った商品を食べて美味しかったです。「昆虫未来食」というテーマを掲げていました。ああいう形のお店はバンコクにはブリケット社だけではなくて他にもあるんですか? サコン)コオロギパウダーや虫を揚げたものを袋詰めして売ってるところは多いんですけども、昆虫食専門のレストランはまだそんなにたくさんはないと思います。内山先生が訪問したお店はすごくきれいで、新しくてできたばっかりというイメージがあったと思うんですが、そういったお店の数はまだあまり多くないと思います。ただ、増える傾向はありますね。 内山)昆虫食産業協会ができれば、それが一つの始まりということで、それをきっかけにいろんなお店ができるのかなと思って、すごく期待しています。 サコン)地元の人がもちろん通ってますし、海外から来ている観光客もそこを狙って行くこともあると聞いています。タイに来る人はタイ料理を好んでくださる方が多いんですけれど、トムヤムクンだけではなく、新しい料理にも挑戦してみたいということになれば、昆虫食レストランに行くこともあるかもしれませんね。 内山)それと同時に、東北部で継承されている昆虫そのものが食材となっている伝統的な昆虫食というのも、なくなってほしくないなと強く思います。コオロギだけじゃなくていろんな昆虫食材の持つ食感とか味とか、タガメをはじめそれぞれに特徴があるじゃないですか。そういう特徴を生かした多様な昆虫食の実験場みたいな感じにタイがなっていくと、いろんな昆虫食が広がる可能性が出てくると思うんですよね。ぜひコオロギだけじゃなくて、もっといろんなものを取り上げて調理法や栄養についても紹介していただいて、昆虫食をリードしていってくだされば、昆虫食の未来はすごく明るいんじゃないかと思います。 【昆虫食で日本に期待したいことは】 内山)日本で昆虫食を扱う企業も、スタートアップ企業が圧倒的に多いです。若い人が起業していろんな可能性を模索しているという段階なので、もっとタイと日本の昆虫食企業が交流できるような場ができると面白いんじゃないかなと思っています。 サコン)やはり昆虫というのは見た目で敬遠する人が多いと思うんです。そういう意味では、われわれタイ人からすると昔から見ている光景なので、食べなくてもすごく嫌だっていう人は比較的少なく、昆虫に慣れてるというところがあるのだと思います。コオロギパウダーは見た目という課題は克服してますので、ウケがいいんじゃないでしょうか。ただ一つの食文化として、虫の形のままの昆虫食も維持してほしいというのは、僕も同じ考えです。 内山)世界的にはコオロギの養殖がメインで、とにかく粉にしてハードルを下げてできるだけたくさん食べてもらって、価格を下げて普及させていこうっていうのが今の世界的な趨勢だと思います。日本でも2つに分かれていて、グリラスという徳島の会社は養殖にかなり力を入れていて、新しい昆虫食っていうのを目指しているところです。一方、タガメサイダーのTAKEOは国産、量的には少量のロットで地域ごとに異なる食べ物を与えて地域独自の味とか旨味とかを追求して、京都コオロギとかっていう地名にちなんだ名前を付けて特色を活かした昆虫食を目指していますね。この2つは両方とも非常に大事な昆虫食の進んでいく道だと思います。この両方がうまくかみ合って総合的に発展していくようなあり方が僕が望んでいる方向です。 タイも東北部にはちゃんと伝統的な昆虫食が残っていて、プラスしてバンコクの新しい昆虫食がうまくつながるようなタイ昆虫食産業協会になってほしいと思います。若い人の力っていうのはすごくエネルギーがありますし、とにかく元気で好奇心が旺盛っていうのがいいですよね。われわれも昆虫を食べる会を毎月やっているんですけれど、集まってくる人は20代、30代の方が圧倒的に多いです。そういった人たちがこれから昆虫食を進めていく原動力になるような気がしていますので、両国の交流が深まっていけば非常にいいと思っています。 サコン)タイは長年昆虫食をやってきたうえに早い段階から産業化したので、かなりノウハウが蓄積されていますが、内山先生がおっしゃったように日本の方はすごく発想力が豊かですよね。日本のアイデアとタイの今まで蓄積されたノウハウ、経験をうまく活かして、日本とタイが手を取り合って昆虫食を盛り上げていけたらなと思います。 内山)そういう意味ではサコンさんの役割って非常に重要ですね。シティーボーイでありながら、なおかつ昆虫食にも造詣が深く、2番目に食べたのが長野県だというのもありますし、ぜひ活躍して盛り上げていただければと思います。こちらも20年以上やっていていろんなつながりもありますので、協力しながら昆虫食をさらに進めていければいいなと思っています。ありがとうございました。 https://reports.shareshima.com/3150/
昆虫食のミライを語ろうvol.2後編【ゲスト:サコン・ワナセッティーさん(タイ王国大使館農務担当官事務所参事官…
NEW 2023.01.27

健康食品(サプリメント)のハラルビジネス考察【食品ハラルビジネス進化論〜ハラル認証原料編vol.10】

こんにちは、ハラル・ジャパン協会の佐久間です。2023年がスタートしましたが、いかがでしょうか?スタートダッシュできましたか!?昨年は為替、原材料高、そしてアフターコロナを見据えたマーケティングなど激動の一年でした。皆様の事業に置かれてもきっと次の事業を考えて「新しい手」は今年こそやるぞ!と考えていると思います。ハラルビジネスもその一助になればと思います。今年もよろしくお願いします。今回は「健康食品(サプリメント)のハラルビジネス考察」ということで解説していきます。 日本のハラルサプリ産業は長寿・健康を売る、そしてアジアで勝負する!!  ハラルサプリ産業のポジショニングはネクストステージです。食品→健康食品(サプリ)→化粧品→生活用品→医薬品(?)が、ハラルビジネスの展開だと我々ハラル・ジャパン協会は考えています。むしろ、食品よりも更にハラル認証やハラル性が求められる分野だと考えられます。コロナ禍で低下したものの、まだまだ経済成長中であり圧倒的な人口を有する東南アジア、南西アジア。近い将来「ハラルサプリ産業」はここから始まる、また、始まりつつある予感がします。 なぜならサプリ原料にハラル性、ハラル認証が要求されることが増えているからです。食品・健康食品の輸出は医薬品扱いになると非常に難しいので、特に食品として登録されるサプリの需要が増えると考えられます。日本の原材料メーカーにとってはチャンスです!だからハラルビジネスに取り組もうと当会は言い続けています。 しかし、いつものようにライバルは中国・韓国・台湾など東アジアの国が多く、そこに欧米豪が加わり各国しのぎを削っています。そこでの差別化は「メイドインジャパン、日本品質」ですが、残念ながらこれはもう通用しなくなりつつあります。では次なる差別化は、日本の1億2千万人の長寿・健康の長年のノウハウを訴えることです。日本人が総じて健康かつ長生きでいることがウリになるのです。ここをアジアで徹底的にブランディングしていく必要があります。自動車やカメラのような存在になる日も近いかもしれません。 [caption id="" align="alignnone" width="720"] 海外のドラッグストア[/caption] まず海外で勝負できる自社のグローバル戦略原材料を決める、そしてメイドインジャパン・メイドバイジャパンの種分けをする 日本製の原材料がすべてイスラム市場で勝負できるわけではありません。欧米とはまた違った独特のマーケットを作っています。しかし、ヨーロッパ主導の統治が長い国も多く、その影響を大きく受けています。今あるシンプルな健康食品(サプリ)はプロテインやビタミンなど、ヨーロッパのモノが主流でアメリカやオーストラリアのモノが店頭に並んでいることもあります。 そこで「日本らしい」「日本ならではの技術」の素材(原材料)が必要になります。2023年はまずイスラム市場等への輸出で勝負できる原材料を見極めてください。そして自社の戦略商品として決めてください。ここからハラルビジネスがスタートです。ハラルビジネスにならないグローバル戦略商品も中にはあるかもしれませんが、構いません。決めることが重要です!! そして日本で作るもの、イスラム市場の海外で作るものかストーリーを考えてみて下さい。完成品まで日本のハラル品で製造するか?またはイスラム市場の作りやすいイスラム教国で製造するのか?の種分けをしてみて下さい。 実はここから始めるハラルビジネスが一番パンチがあり有効なのです。 [caption id="attachment_3208" align="alignnone" width="720"] 森下仁丹(株)の「シームレスカプセル」[/caption] 次回の11回目では「輸出対応とハラル(ハラール)認証の有効性」を解説したいと考えます。2月第4金曜日を楽しみにしてください。引き続き、2023年もよろしくお願いいたします。 (佐久間朋宏/非営利一般社団法人ハラル・ジャパン協会代表理事)
健康食品(サプリメント)のハラルビジネス考察【食品ハラルビジネス進化論〜ハラル認証原料編vol.10】
NEW 2023.01.27

【解説】精密発酵とは【食品業界用語】

この記事では、精密発酵とは何か、精密発酵の活用法や効果について解説します。 精密発酵とは? 精密発酵は、微生物を培養して特定の動物性たんぱく質を量産する技法のことです。 精密発酵は食品自体を作り出すものではなく、食品を作る際に使用される動物性たんぱく質を作るものです。また精密発酵に使用する微生物は、特定のたんぱく質を生成するためにあらかじめカスタマイズされています。 精密発酵でできること 精密発酵は、主に食品の原料になる動物性たんぱく質の製造に使われます。 例として、チーズを作る際に使うレンネットという凝固酵素があります。レンネットの素となる酵素は、子牛の胃袋に含まれています。今まではレンネットを大量に製造するため、多くの子牛を屠畜(とちく・食肉用の家畜を殺処理すること)しなければなりませんでしたが、精密発酵の技術により、子牛を屠畜せずに大量のレンネットを人工的に作り出すことが可能になりました。 他にも精密発酵により製造された動物性たんぱく質を使って、乳製品などを作る研究がなされています。 アメリカでは既に、精密発酵による動物性たんぱく質を使用したヨーグルトやアイスクリーム、チョコレートバー、プロテインパウダーが販売されています。 精密発酵のメリット 精密発酵により、動物を使わなくても安定的・大量に動物性たんぱく質を製造することができます。また、動物を飼育するために使う資源やエネルギーを節約することにも繋がります。 他にも、精密発酵は持続可能な食料システムを構築して、将来の食糧危機を改善する可能性が期待されています。
【解説】精密発酵とは【食品業界用語】