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“ 昆虫食 ”

NEW 2022.11.24

知らないとまずい?!タンパク質危機。20XX年までに肉や魚が足りなくなる?

地球の人口増加や環境問題により、食肉などのタンパク質が不足するのが「タンパク質危機」です。私たちの食卓に影響するかもしれない世界規模での課題であるにもかかわらず、一般にはそれほど広く認知されていません。こちらの記事では、タンパク質危機とはどのような問題かを解説すると共に、タンパク質危機を避けるための4つの選択肢について説明します。タンパク質危機という問題が生じている理由から取りうる対応策までを紹介し、プラントベースフードなどがにわかに注目を浴びている背景をお伝えしていきます。 タンパク質危機(タンパク質クライシス)とは タンパク質危機は、世界人口の急速な増加に由来する問題です。まずはその背景的な事情からみていきましょう。 少子化真っ只中の日本。でも世界の人口は? 日本では、出生率の低下に伴い若年層の人口が減少する「少子化」が急速に進んでいます。そのためあまり実感がわきませんが、一方で世界の人口は増え続けている状況です。国連の調査によれば、世界の人口は現在約80億人であるところ、2030年には約85億人、2050年には約98億人、2100年には約112億人になると推定されています。 2030年までにタンパク源が足りなくなる恐れ 世界規模での人口増加に伴って、近い将来、牛や豚、鶏などの畜産によるタンパク質が不足すると予測されています。この予測は「タンパク質危機」と呼ばれていて、欧米諸国を中心に話題になっています。現状のままだと早ければ2025年から2030年ごろまでに需要と供給のバランスが崩れ始めると言われています。 人間の身体を構成するのは、水分が約60%、タンパク質が約15~20%とされています。つまり、タンパク質は水分を除いて体の重量の約半分を構成する、生きていく上で大切な栄養素です。欧米では「プロテインチャレンジ2040」と題したコンソーシアムが立ち上がり、その中から複数のプロジェクトが始動しています。タンパク質危機をどう乗り越えていくのかは、人類が生きていく上で極めて重要な課題です。 タンパク質危機を避けるための4つの選択肢 タンパク質危機を回避するために、世界中でさまざまな検討が行われています。ここでは、その中から代替肉と培養肉、昆虫食、藻類という4つの選択肢について解説します。 代替肉 代替肉とは、牛肉や豚肉、鶏肉などの動物の肉の代わりに、植物性原料で作られた「肉のような食材」のことです。欧米諸国を中心とした健康への意識の高まりがきっかけで広がったとされていて、別名「プラントベースミート」と呼ばれることもあります。 代替肉の素材として最も有名なものは、大豆が主原料の「大豆ミート」でしょう。有名ハンバーガー店やコーヒーチェーンでも大豆ミートを使ったメニューが登場し、話題になっています。このほか、ひよこ豆、レンズ豆といった豆類も、代替肉の素材として注目されています。最近では、エノキタケを使った新しい代替肉「エノキート」も登場するなど、さまざまな研究・開発が進められています。 培養肉 培養肉は、牛などの動物から取った少量の細胞を、再生医療の技術により体外で増やして作られます。プラントベースの代替肉とは異なり「本物の肉を使った代用品」です。従来の食肉の生産方法と比べて、飼育・繁殖する過程における動物へのストレスや環境への負荷が少ないとされています。こうした特徴から、別名「クリーンミート」と呼ばれることもあります。 培養肉は、2013年にオランダの研究者が培養ミンチ肉を作ったのがその始まりです。日本でも培養肉の研究が進められていて、2019年には世界で初めてサイコロステーキ状の培養肉を作ることに成功しました。大きな肉を作るための技術の開発など乗り越えなくてはならないハードルが多いものの、持続可能な食材という意味で期待が寄せられています。 昆虫食 昆虫食とは、コオロギなどの昆虫を原料にした食品のことです。大豆ミートなどのプラントベースフードは植物性のタンパク質しか得られないのに対して、昆虫食の場合、肉や魚と同様、必須アミノ酸である動物性タンパク質を得ることができます、また、昆虫食は飼育・加工に必要なスペースや資源が最小限で済み、環境負荷が低いというメリットもあります。 日本にも貴重なタンパク源として昆虫を食べる地域の文化が残っていますが、世界で食べられている昆虫は1900種類にも及ぶとされ、アジアやアフリカ、中南米を中心に昆虫を食べる食文化が見られます。昆虫食には食品の安全性や見た目への抵抗感といった課題があるものの、環境負荷の少ないサステナブルな食材として注目を集めています。 藻類 細胞分裂をして増殖する藻類はタンパク質含有量が50~75%であり、新たなタンパク質源としての可能性を持っています。藻類は良質なタンパク質だけでなく、炭水化物や脂質、ビタミン、ミネラルなども豊富に含まれています。現在市場に流通しているのはタンパク質が豊富に含まれるクロレラやスピルリナで、藻類をそのまま乾燥させて粉末状にしたものが主流です。 藻類は栄養価が豊富であるものの、藻類を乾燥した粉末は独特の匂いがあることや、藻類バイオマスの生産コストが肉や大豆に比べて価格が高いことなどから、タンパク質源としてはこれまで積極的に利用されていませんでした。しかし、近い将来に訪れるとされるタンパク質危機を前に、藻類の利活用が見直され始めています。 まとめ 世界の人口増加に伴って、近い将来訪れると言われているタンパク質危機。この記事では、タンパク質危機を回避するために私たちが取りうる選択肢として、代替肉、培養肉、昆虫食、藻類の4つを紹介しました。食品としての安全性や抵抗感、生産コストなど、それぞれに乗り越えるべき障壁はありますが、タンパク質危機を避けるために、世界中でさまざまな研究・開発が行われています。これまでの常識にとらわれない、新しい食の選択肢が求められていると言えそうです。
知らないとまずい?!タンパク質危機。20XX年までに肉や魚が足りなくなる?
NEW 2022.11.22

昆虫食のメリットと注目の背景を深堀り!こんなにも話題になる理由とは?

コオロギなどの昆虫を原料にした食品「昆虫食」。日本にも、貴重なタンパク源として昆虫を食べる地域の文化が残っていますが、多くの人にとってはなじみの薄いものでしょう。しかし今、環境負荷の少ないサステナブルな食料として、世界が昆虫食に注目しています。 一体なぜ、これほどまで昆虫食が話題になるのか。この記事では、昆虫食が期待される背景を解説した上で、栄養価の高さなど注目の理由を解説します。他方で、「本当に安全性に問題はないの?」「昆虫を食べるリスクは」といった疑問や不安の声にもお答えします。 昆虫食が注目を集める背景 無印良品で話題となった「コオロギせんべい」をはじめ、日本では勢いのあるベンチャー企業が、昆虫食ビジネスを盛り上げています。そうした流れに至るまでに、どのような背景があったのでしょう。 増える世界人口、ひっ迫するタンパク源 日本は少子化に直面していますが、世界全体では人口は増加し続けています。このまま行けば、2050年に世界人口は100億人に達すると言われています。 近い将来、牛や豚、鶏などの畜産によるタンパク質が不足する恐れがあると言われています。「タンパク質危機(タンパク質クライシス)」を避けるために、大豆ミートをはじめとしたプラントベースフードの開発が進みました。しかし、植物由来の食べ物からは、植物性のタンパク質しか得られません。そこで、注目されたのが「昆虫食」。なぜなら昆虫は、肉や魚と同様、必須アミノ酸である動物性タンパク質を得ることができるからです。 転機の国連食糧農業機関(FAO)報告 2013年、国際連合食糧農業機関(FAO)が「ある報告書」を発表しました。それは、世界の食糧危機への対策として昆虫食を推奨するというもの。この報告書を契機とし、世界各地で昆虫食の研究・開発が加速しました。昆虫を食べる習慣のなかった欧州でも、2018年、欧州連合(EU)が昆虫を新規の食品として域内で販売することを認めました。 昆虫食を選ぶメリット さぁここから、他にはない昆虫食のメリットを深掘りしていきます。 非常に優れた環境負荷の低さ 狭いスペースで飼育・加工ができる 昆虫は牛や豚、鶏などの家畜よりも狭い場所で飼育できます。コオロギ1キロを生産するのに必要な農地は、鶏肉や豚肉の約3分の1、牛肉なら約13分の1しか必要としません。また、出荷用にパウダーなどに加工する場合でも、小規模な施設で行えます。飼育・加工に場所を取らないということは、それだけ効率的に生産できるということです。 飼育に必要な資源が少ない 昆虫の生産は、家畜に比べて少量の水や飼料で可能です。牛肉を1キロ生産するためにはおよそ8キロのえさを必要とするのに対し、昆虫1キロの生産には約2キロのえさを使うだけで済みます。生産に必要な水についても同様で、コオロギの生産に必要な水は、牛肉の場合の約2500分の1で済んでしまいます。 温室効果ガスの排出量が少ない 牛1頭がげっぷなどで出すメタンガスは1日160リットル以上で、地球温暖化を促進していると言われています。しかし、昆虫の飼育に伴う温室効果ガスの排出量はその10分の1以下。昆虫食は、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの削減にも効果があるというわけです。 丸ごと食べられて、食品ロスにも貢献 昆虫食は食品ロスの削減にも貢献します。牛1頭の可食部はおよそ4割ですが、昆虫はそのほとんどが食べられるので無駄がありません。また昆虫のえさには、残飯など本来なら捨てられてしまうものを利用できます。焼却コストのかかる生ごみの量が減り、一方で、貴重なタンパク質源になるというのですから、昆虫食の利点が際立ちます。 牛や豚に負けない栄養価の高さ それで終わらないのが、昆虫食のすごさです。ガやハチの幼虫の場合、体重の50%がタンパク質と言われています。牛や豚が1〜3%ですから、それに比べると非常に高い含有率です。昆虫は、良質なタンパク質だけでなく、食物繊維や、カルシウム、銅、鉄、亜鉛などのミネラルも豊富に含む上に、脂肪分は少ないという健康に良い食品です。 昆虫食のデメリット 栄養価が高く、環境にも良い昆虫食。その一方で、なじみの薄い昆虫食に対するネガティブな考えも少なくありません。今度は、考えられる昆虫食のデメリットを見ていきましょう。 安全面でのリスクは? 専門家の助言なしに、自然採集した虫を食べるのは、危険を伴う行為です。なぜなら、野生の昆虫には、毒を持つものや、寄生虫や病原菌を媒介するものもいるからです。一方で、管理された環境下で生産されたものは、昆虫とはいえ、他の食材と同様に安全です。 安心を担保する「コオロギ生産ガイドライン」 消費者により安心してもらえる環境を整えようと、2022年8月、民間団体が「コオロギ生産ガイドライン」をまとめました。研究機関や企業などでつくる「昆虫ビジネス研究開発プラットフォーム(iBPF)」が、コオロギの生産過程の衛生管理を中心に行動指針を決めました。公的なルール整備がない中で、民間主導で一定のルールを示すことで信頼性を高め、昆虫食のさらなる普及につながることを期待しています。 アレルギーリスクについて 昆虫食は、食物アレルギーを持つ人には注意が必要です。昆虫には、エビやカニなど同様の甲殻類アレルギーの原因となる「トロポミオシン」という成分が含まれているからです。昆虫に限らずすべての食材に言えることですが、これまで口にしたことのない食材を食べる時には、これまでアレルギーの自覚症状がなかった人でも、慎重を期すようにしましょう。 見た目への抵抗感 多くの人にとって、昆虫を食べることに対して、心理的なハードルがあります。初めて口にするものに対して拒絶反応が出るのは、動物的な本能として当たり前のことです。もしかしたら、これが昆虫食にとっての最大の問題かもしれません。日本でも昆虫食品の開発は大変盛んで、さまざまな商品ラインナップがあります。まずは、昆虫の姿を連想しづらいパウダー入りの菓子やパンなどから試してみるのがいいかもしれません。 そして、「まずいものをわざわざ食べたくない」というのが、大半の人の率直な気持ちだと思います。実際のところ、昆虫の味は実に多種多様で、思いきって食べてみると、おいしく感じるものもたくさんあります。バッタはエビやカニに似た食感、タガメは洋ナシや青リンゴのようなフルーティな香りだとか。セミに至っては、幼虫だとナッツのようなクリーミーな風味で、成虫になるとエビのような風味が楽しめます。 昆虫食とは 1900種類の食べられる昆虫 世界で食べられている昆虫は1900種類にも及ぶとされ、アジアやアフリカ、中南米を中心に昆虫を食べる食文化が見られます。昆虫学者である三橋淳氏の書いた『虫を食べる人びと』(平凡社ライブラリー)によれば、世界ではハチやイナゴに加えて、カブトムシ、カミキリムシなども食べられているそうです。 世界の昆虫食  タイ 昆虫食が住民生活に浸透しているタイでは、スーパーマーケットの食材コーナーに昆虫のサナギや幼虫が並んでいたり、昆虫の佃煮を売る屋台を目にしたりすることも珍しくありません。特に人気があるのはコオロギで、盛んに養殖されています。最近では、コオロギのスナック菓子やコオロギパウダー、コオロギオイルなど、コオロギを原材料にしたさまざまな加工食品が登場しています。特にコオロギパウダーは輸出用としての需要が高く、国もその動きを後押ししています。 ケニア アフリカ東部のケニアで最もよく食べられている虫は、シロアリです。日本でシロアリと言えば、住宅の床下で暮らすアリ(職蟻)を意味することが多いですが、現地で食べられているのは別の種類のアリ(羽蟻)です。このシロアリを使った「クンビクンビ(kumbikumbi)」という伝統料理があり、栄養失調を改善する効果があると言われています。実際、シロアリには、良質な動物性たんぱく質や脂質のほか、カルシウム、鉄分、アミノ酸などが豊富に含まれています。ケニアのシロアリはインターネット通販などでも販売されています。 日本の昆虫食 長野県に根付く昆虫食文化 日本で昆虫食文化が盛んな地域といえば、長野県です。信州でよく食べられている昆虫といえば、ハチノコやイナゴ、カイコ、ザザムシがあります。これら4種類を総称して「信州四大珍味」と呼ばれているそうです。 ハチノコはスズメバチの幼虫やさなぎ、イナゴは稲作の害虫とされるバッタのことです。長野県はかつて養蚕が盛んで、カイコは生糸の生産のために飼育されていた虫です。ザザムシは水生昆虫で、ヒゲナガカワトビケラなどの幼虫のことを指し、主に天竜川で採集できます。長野県の伊那谷地域で食べられていますが、世界的には食べる習慣がほとんどありません。イナゴやカイコは、稲作や養蚕を営む過程で副産物として発生するもので、昆虫食は、自然と共生する地域の暮らしに深く結びついていたのでしょう。 まとめ 昆虫食のメリットとデメリットを押さえてきましたが、環境負荷が低くて栄養価も高いという特徴を踏まえると、昆虫食がこれだけ話題になっていることもうなずけると思います。昆虫を食べるという行為に対して抵抗感はあるかもしれませんが、以前は「生で魚を食べるなんてありえない」と言っていた欧米人が、「Sushi(寿司)」を高級料理としてもてはやしているのを見ると、さほど大きな問題でないようにも思えます。先入観だけで昆虫食という選択肢を排除せず、機会があったらぜひともチャレンジしてみてください。
昆虫食のメリットと注目の背景を深堀り!こんなにも話題になる理由とは?
NEW 2022.11.04

本格化する国産コオロギ生産 ~コオロギ生産ガイドラインを作成~【昆虫食普及ネットワーク・ニュースレターVol.5】

この数年、国内でコオロギ等昆虫を食用又は飼料用に生産する企業の動きが本格化しています。しかし、事業者が個々の価値観やルール、方法で生産・販売する結果、様々な情報が錯綜して、消費者はどの情報を頼りにすれば良いのかわからないほど、良いも悪いも一緒くたになっています。日本では、山菜採りやキノコ狩りと同様に昆虫を採取して食べる食文化があることから、昆虫に特化した規制はなく、他の食品や飼料と同様に、食品衛生法や飼料安全法(通称)が適用されます。一方で、人間の管理下で、昆虫を大量に養殖(飼育生産)することは、これまでに経験がなく、人工飼育生産の過程に潜むリスクやその対策について正しく理解するものがないので状況は異なってきます。集約して大量飼育する過程で、病原菌や有害化学物質、異物の混入、あるいは特異な生理作用を引き起 こす物質が生じる可能性がゼロではありません。また、万が一にも飼育している昆虫が自然界に散逸して、自然生態系等環境へ及ぼす影響も懸念されます。そのような観点からも、健康影響、環境影響等に配慮した生産管理が求められます 1)。昆虫食に対しては、奇異な姿形のため否定派も多く 2)、1 社でも好ましくない事態を起こすと、業界全てが同じにみられて、風評等で大きな痛手を受ける恐れがあります 3)。国は産業としての実績やリスクが顕在化しないうちは法整備には動きません。そこで、昆虫ビジネス研究開発プラットフォーム(iBPF)が、民間自主ルールの第 1 号として“コオロギの食品及び飼料原料としての利用における安全確保のための生産ガイドライン(コオロギ生産ガイドライン)”を公表しました(図)。 http://www.kannousuiken-saka.or.jp/ibpf/guideline/index.html このガイドラインでは難しいことを求めるのではなく、「当たり前のことをしっかりと守って、安全に健全なコオロギを生産しましょう。」と提唱しています。ただ、販売ありきのプロモーションが溢れる中で、「人が口にするものは安全確保が最優先ですよ」とメッセージを送ることで、ゲームチェンジャーになると考えています。本ガイドラインに生産者が集まり、管理方法を定めてお互いに点検・評価することで、国産コオロギの安全確保を図ることが期待できます。ガイドライン遵守事業 者を公開する(表)ことで、消費者の皆様が購入される際の選択肢のひとつになるとともに、生産者の真摯な姿勢が国産コオロギ市場への信頼獲得と普及拡大につながることを期待しています。 <参考文献> 1) FAO : Looking at Edible Insects from a food safety perspective – Challenges and opportunities for the sector 2021、(2021) 2) 櫻井蓮、飯島明宏 : 生物工学会誌、100(6)、320–322、 (2022) 3) 藤谷泰裕 : JATAFF ジャーナル、10(7)、42-46、(2022) (藤谷泰裕/大阪府立環境農林水産総合研究所 食と農の研究部 審議役 昆虫ビジネス研究開発プラットフォームプロデューサー補佐)   ニュースレターは、NPO法人昆虫食普及ネットワークの公式HPで配信中です。
本格化する国産コオロギ生産 ~コオロギ生産ガイドラインを作成~【昆虫食普及ネットワーク・ニュースレターVol.…
2022.10.18

昆虫食のミライを語ろうvol.1【ゲスト:太田信吾さん(映画監督)】

昆虫食は「奇食」「物好き」「一部地域の食文化」として特殊性をもって語られてきました。それが2013年、FAO(国際連合食糧農業機関)の報告を機に、昆虫は急増する世界人口を支える「タンパク源=食料」としてみなされるようになり、もっとカジュアルかつポジティブに「昆虫を食べよう」という流れが日本でも一気に広がっています。 「かつて宇宙食といえば誰もが錠剤を想像していたが、今や宇宙ステーションでもおいしい食事ができるというイメージが定着した」と話すのは、昆虫料理研究家の内山昭一さん。昆虫食も「グロテスク」「おいしくない」という印象を脱却し、もっと身近に感じてもらいたいーー。そんな流れをつくっていくために、個性豊かなゲストを迎えて「昆虫食のミライ」を語ります。 自己紹介 内山)内山昭一です。毎日ではないんですが、結構頻繁に虫を食べながら暮らしています。季節的に今はセミが一番おいしい季節です。ミンミンゼミやアブラゼミなど、いろんなセミによって味が違います。そのほかにも最近はタケオオツクツクというかなり大きめな外来種のツクツクボウシが竹林で見つかることもあり、そんな新しい昆虫の食材を出会うことの楽しさに取りつかれてしまった20年です。昆虫食ってこんなにおいしくて環境的にもいいので、できるだけ大勢の方においしさや良さを知ってもらいたく、昆虫食普及ネットワークというNPO法人を5、6年前に立ち上げました。 太田)太田信吾です。映画の監督をはじめ、テレビ番組などの映像のディレクターをしています。2017年にNHKのドキュメンタリーで東南アジアの昆虫食を巡る旅を番組化したのが昆虫食との出会いです。このとき東南アジアの昆虫食を食べたことをきっかけとして、今に至るまですごく新しい食の魅力に引き込まれています。出身が長野県千曲市なので、振り返ると小さい時にイナゴを取った記憶がありまして、「どこか昆虫の味って懐かしいな」という昔の記憶が食を通じて蘇ってくることもあります。 昆虫食との出会い 内山)東南アジアでNHKの番組って、どのような番組でしたか。 太田)「旅旅しつれいします」という、世界各地を旅する旅人たちがどんなテーマを持って旅しているかを紹介する番組です。リサーチをしている段階で、昆虫食をテーマにしている佐藤裕一さんという旅人に出会いまして、なんだこれは!?と思って出ていただきました。タイの東北部、イサーン地方のコーンケンでしたね。 内山)あの辺りは今でも昆虫食が結構残っていますね。 太田)コーンケン大学のユパ教授という昆虫食を専門とされている先生を訪問して、いろいろとタイの昆虫食事情を教えていただきながら、バンコクとコーンケンを中心にいろいろな昆虫食を食べました。番組ではコーンケンのコオロギ養殖農家さんを訪ねるところをドキュメントにしました。佐藤さんはすごい活発な方で、昆虫エネルギー研究所というNPOを主宰されています。 内山)まさに昆虫エネルギーを一身に吸収した人ですよね。すごい頑張っていらっしゃる。太田さんは長野県出身ですが、昔から昆虫食に対してはある程度興味があったんですか。 太田)そうですね。小さい時にイナゴの佃煮が実家で出たなとか、そういう記憶もあってあまり抵抗もなかったんですが、東京に出てきてからはあまり食べる機会がなくなっていて、その番組を機にまた思い出したという感じです。 映像作品『エディブルリバー』について 内山)本格的に昆虫食を掘り下げてみようと思ったのは、佐藤さんと出会ったその番組以降ということですか。 太田)はい。2020年、コロナでロックダウンの期間中に、実家のある長野県千曲市に半年ほど戻りました。映像の仕事も一時延期になり時間があって、長野県中を一人で旅した時にザザムシとか蜂の子とかいろいろな昆虫食を食べさせてもらえまして。 始まりはザザムシ漁の漁師さんでした。中村さんと今年引退された菅沼さんという漁師さんがいらっしゃるんですけど。まず漁師の高齢化が課題だと知り、そこからどうやってその食文化が今後継承されていくのかと。ザザムシも食べたらすごくおいしかった。 内山)ザザムシは確かにすごくおいしいし良いんですけど。非常に(漁師は)高齢化してきているし、川が護岸工事されて漁が非常に難しくなってきているというのが現状です。そうした中であの上伊那農業高校の高校生はすごいですね。情熱がものすごい。 太田)去年(2021年)半年ほどかけて、上伊那農業高校の皆さんがザザムシを食べやすくふりかけにする取り組みをドキュメンタリー化しました。大月さんという主人公の女子高生は駒ヶ根出身で小さい時から給食でザザムシが出ていたそうで、ザザムシを食べるということが身近な体験としてベースにあったのだろうなと取材していて感じました。 この高校には、食を切り口に生徒の皆さんが自発的にいろいろなプロジェクトを立ち上げて運営するグローカルコース(グローバルとローカルをかけたユニークなコース)があります。例えばこうじを利用した甘酒など、地域の食品や食文化を扱っていろいろな商品開発をしようという取り組みをしていて、その一つがザザムシでした。 内山)給食というのはかなり大きなインパクトがあると思うんです。ただ、今ではなかなか給食で虫が出る学校ってそんなにはありません。いろんな人の意見を聞くと、小さい頃から経験した方がいいので、一番手っ取り早いのがまず給食だろうと。給食に出れば子供の頃から昆虫食に慣れてくるので、大人になっても継続していくんじゃないか、食品として捉えることができるんじゃないかという意見がかなり多いんですが、今では給食の安全面などから導入がかなり厳しくなってきていて、給食で虫を出すのは難しいようです。 この映画を見ると、伊那谷だけの文化っていうのを強調されていて、そういう局地的な文化って今もう消滅しそうなんですけど、ザザムシを養殖することまで考えている。これからの昆虫食に期待できる一つの方向性があるんじゃないかなと思いまして、この映画が非常に参考になりました。 新作『イナゴンピック』の撮影背景 内山)イナゴンピックの映像を撮られて、どうでしたか。 太田)僕も昆虫食の魅力に取りつかれてしまったところがあって、どうやったら広げていけるかなっていう思いはずっと持ってます。環境にいいからという切り口では自分でもそんなに食べたいなとは思えないので、やっぱり娯楽性とかおいしさを切り口にしないといけないなと。楽しくておいしいってところにまず出会いたいなというところで、ザザムシのふりかけと出会いました。 イナゴンピックに関しては、オリンピックとイナゴンピックをかけて、イナゴ取りをゲーム、行事としてみんなで楽しく捕ろうっていうイベントの趣旨がすごく良い。親子の交流の時間でもあり、都会の子どもたちがなかなか経験できない田んぼで自然とふれあう時間でもあり、そのエンターテインメント性にすごく引かれました。 内山)僕も同感です。これは群馬県の中之条町が始めて、もう10年以上やってると思うんですけど、前に一度参加しました。すごくみんな楽しそうにやってるんですよ。親子でとても仲が良くて、親子のつながりや触れ合い、話もたくさんできてすごく面白いんだけど、なかなか東京じゃ難しいかなと思っていたら、たまたま家の近くに田んぼがあって、そこでやれちゃった。イナゴがいないとできないわけですから、本当に幸運でした。東京でできたことは本当に良かったなと思います。 映画の中にもありましたが、毎年優勝する男の子、シュン君に「捕まえるコツは?」って聞いた時に、彼は「感じること」だと答えていたんですよね。確かにそうだなと思って、すごく印象に残りました。やっぱり五感をフルに活用して捕まえることが狩猟の原点だけれど、そういう五感というものが全然使われない環境になっている中、人間が本来持っている動物的な勘をもう一度自分で感じ直していく機会があることはすごく良い。しかも子どもの頃のこの経験が強く印象に残って大人まで継続していくとしたら、イナゴンピックはすごく意義があるんじゃないかなって。有機の田んぼっていろんな生き物があふれてるじゃないですか。世界にはこんなにも生き物があふれているということを実感する楽しさ、それから捕って食べるという命をいただくような実感。そういう喜びが、あのコンパクトな映像の中にきっちり詰まっていて、昆虫食にとっては最高のドキュメンタリーじゃないかなと思っています。 映像作品として伝えたいこと 内山)太田さんにとって、昆虫食を映画にする意味とは何ですか。 太田)一つは食の新しい可能性です。小さな時から慣れた食事が当たり前の食事という風に思ってしまっていますけれど、まだまだ世界を見渡すといろんな食文化があって、さまざまな感覚の体験、食の多様性、可能性、そういったものが秘められています。旅する中で食べたことがないいろんなものを食べることが好きなので、そういう新たな体験としての可能性を伝えていきたい。また昆虫食文化を知ることで、地球環境の持続可能性も再認識できればいいのかなって思いますね。入り口はやっぱり美味しかったり楽しかったりというところを軸に伝えていきたいです。
昆虫食のミライを語ろうvol.1【ゲスト:太田信吾さん(映画監督)】
2022.10.07

イエバエに魅せられて【昆虫食普及ネットワーク・ニュースレターVol.4】

我々は群馬県でおからを原料にイエバエを生産している養虫®農家です。 私がイエバエと初めて出会ったのは、もう8年ほど前でしょうか。千葉県でイエバエの生産工場を見学する機会がありました。豚糞を原料にして、イエバエの幼虫は観賞魚の餌として、残渣は肥料として販売していました。日本で初めての昆虫を使った民間の事業だったのではないでしょうか。しかし、豚糞由来だから汚いという言われなきイメージがあって、 世に受け入れられず、ビジネス的には難しい状況でした。4年前に、その会社の技術者と再会し、イエバエの優秀さ、可能性を再認識しました。その人と共に、豚糞ではなく、おからを原料にイエバエを生産する会社を作りました。おからというきれいな原料で、きれいな虫を育てる。それがフライハイです。 おからは人も食べるきれいな食材ですが、豆腐製造時の副産物として年間70万トンも排出され、その半分は焼却処分されています。焼却される前にいくばくかでも、タンパク質や肥料に変換して活用できれば。イエバエは成長が速く、また、タンパク質としても優秀です。なにより、昆虫食の中でも指折りの食べやすさ、おいしさです。初心者向けでもあり、 様々な料理に使える上級者向けでもあります。イエバエがコオロギに続く昆虫食の新しい柱になるといいなと思っています。もちろん、コオロギに比べてハードルがさらに高いのは承知の上です。だから、 挑戦する価値があるのです。 (左より冷凍幼虫、乾燥幼虫、乾燥さなぎ) (木下敬介/株式会社フライハイ 代表取締役)   「バタピー」ならぬ「バッタピー」【おススメの一皿】 バッタの季節になりました。というわけで、今回は バッタを使った一品をご紹介しようと思います。まずはバッタ捕りを楽しむところから始めましょう。 捕ってきたバッタは 1,2 日糞抜きをしたほうがよりおいしくいただけます。袋(洗濯ネットが便利です) に入れて物干しの隅にでもぶらさげておけばいいでしょう。それから、殺菌消毒と洗浄を兼ねて熱湯でさっとゆでます。エビやカニのように赤くなるのを見ると、それだけで食欲がわいてきます。ここでもうひと手間かけて、これを乾燥させるととても食べやすくなります。天日で干すといかにも自然食品といった感じで健康的ですが、私はいつも食品乾燥機で 70℃、4時間乾燥させています。ゆでるときに塩味をつけておけばもうこれだけで立派なおつまみになりますが、今回は味付けなしで乾燥させたものをバター適宜で炒めて塩を振って、市販のバターピーナッツと混ぜ合わせました。「バタピー」ならぬ「バッタピー」の出来上がりです。写真はトノサマバッタ等を使ったもの。これがもう、子どものおやつにもよし、お酒のお供にもよし。「みんなのバッタピー」とでも名付けましょうか。ぜひお試しあれ。 (小貫浩一)   夏に行った数々のイベントも無事、無事故で終える事が出来ました。予想以上に多くのお子さんや親御さんが参加して頂き、昆虫食への関心の高さを改めて感じることが出来ました。きっと昆虫に親しんだ今の子供が大人になる頃には、昆虫食=高タンパク食品が常識になっている事でしょう。 (須賀亮二)   ニュースレターは、NPO法人昆虫食普及ネットワークの公式HPで配信中です。
イエバエに魅せられて【昆虫食普及ネットワーク・ニュースレターVol.4】
2022.09.02

タイ産コオロギの魅力【昆虫食普及ネットワーク・ニュースレターVol.3】

初めまして、私は昆虫食の生産、製造に携わっているタイ国 BRICKET社のタナプーンと申します。タイ国は昆虫食の伝統を活かし、生産・製造に関する法令等も整備し、安全で安心な商品をタイ国 ばかりでなく世界に提供しています。又、「美味しい食品」を目指して昆虫を使った数々の商品を開発・提供し ています。 弊社 BRICKET 社は2021年4月にアジア初のバーガ ー・レストランをオープンしました。このレストランで はバーガーだけでなく、コオロギを使用したパンも、調味料も、飲み物も提供しています。 バーガーのパティは先ず、新鮮なコオロギを茹で、脚, 羽、触手を丁寧に取り除き、細かく擦りおろしたうえで 厳選した牛肉と混ぜ合わせて製造しています。ハンバー ガーには欠かせないパンにもコオロギのパウダーを使用し、開発しました。調味料にもコオロギパウダーを使用 しています。コオロギパウダーを混ぜることにより、従 来の調味料の「うま味」が増しました。大きな驚きでした。 弊社は最近、新しいプロジェクトをスタートしました。 従来の“バウンスバーガー”から“BOUNCE to the Taste of Thailand’s Cricket”に拡大しました。従来のバーガー だけでなく、コオロギを使ったあらゆる食品を一堂にご 提供することにしました。フラッペ、クロッフル、タイ の伝統的なミニライスクラッカー、クリスピーアーモン ドトゥイル等々。又、コオロギばかりでなくタイ国で生 産されるサゴワーム、エリサン等各種昆虫ベースの食品 も一堂に集めてお客様に提供しています。勿論、すべて 安全、安心な食品です。「オール・イン・ワンプレイス」 を目指しています。 お客様個々のご関心に応え、常に私どもは新しい昆虫 食品の開発・提供を心掛けています。昆虫食の美味しさ を、そしてその将来性、可能性を信じ、タイ国全土に、 そして世界中の皆様に弊社の食品を提供するという大き な夢に向かって!! ( タナプーン/RICKET 社マネージング・ディレクター) 「TAKEO」と「ニチレイ」で 昆虫のいちばんおいしい瞬間を食卓へ 2022 年 7 月、TAKEO㈱は㈱ニチレイと資本提携にいたりました。TAKEO は昆虫食専門企業として、昆虫が野菜、魚、肉などと同じような食として楽しまれるより豊かな食卓の実現に向けて様々な事業に取り組んできました。今回の提携を通じてニチレイが持つ食品開発力を活用し、昆虫食品の開発、製造、販売を強化していきます。 昆虫の「いちばんおいしい瞬間」は、きっと採れたてのフレッシュな状態です。TAKEO が築いたお客様との信頼関係とニチレイの冷凍食品技術が組み合わせれば、近い将来、昆虫の「いちばんおいしい瞬間」を届けることができるようにはずです。今後のTAKEO にご期待ください。(ニチレイのプレスリリースはこちら) (三橋亮太/TAKEO 株式会社) TV ではこの時期になると、カブトムシやクワガタなどを取り上げた番組が数多く放映されます。日本では当たり前になっている、昆虫を採集して飼育する文化は世界でも稀なことの様です。日本には昔から昆虫と共に生活 をしてきた文化が根付いているのでしょうね。 ニュースレターは、NPO法人昆虫食普及ネットワークの公式HPで配信中です。
タイ産コオロギの魅力【昆虫食普及ネットワーク・ニュースレターVol.3】
2022.08.05

昆虫食王国タイにおける 昆虫食の魅力【昆虫食普及ネットワーク・ニュースレターVol.2】

トロピカルフルーツや鶏肉の産地として名高いタイですが、実は昆虫食王国の一面も併せ持っています。高温多湿の気候が昆虫資源の宝庫を生み出し、追求された美味しさや栄養価の高さによって、昆虫食は身近な食材として地位を確立させています。 昆虫食を伝統食文化として親しみをもつタイは、早い時期から産業化へと舵を切り、産官学で研究開発を重ねて、国際基準に準拠する生産レベルを高めることに成功しました。かつては屋台で見かけることが多かったですが、現在では、多様な昆虫食の商品がスーパーやコンビニの店頭に並ぶ光景は決して珍しくありません。 タイ農業・協同組合省は昆虫食を推進するために、2017 年にコオロギ養殖場の生産工程管 理 (GAP) TAS8202(G)-2017 を制定しました。近い将来、他の昆虫食の規格も公表する予定です。また、「世界の昆虫食ハブ」という目標を設定し、チェンマイ大学、 メジョー大学、コンケン大学、カセサート大学に昆虫食分野を特化した農業イノベーションセンターを設立して、 昆虫産業をさらに盛り上げようとしています。現在では、 昆虫養殖農家が全国に約2万戸にも上り、昆虫食の生産と輸出が目覚ましい成長を遂げています。一方、民間企業でも「タイ昆虫産業協会」を年内に立ち上げるために最終調整に入っています。豊かな資源、蓄積されたノウハウ、そして、連携の取れたステークホルダーを強みにもち、タイ昆虫食産業が今後更に加速化することに違いありません。  (サコン・ワナセッティー/タイ大使館農務担当官事務所)   「セミ会」【今月のトピック】  当NPO理事長の内山昭一が始めた「セミ会」は昆虫食界の夏の風物詩となって各地に拡がっています。現代では難しい「自分で狩って。料理して、食べる」、この当たり前を体験できる魅力がセミ会にはあります。しかし、それに勝る魅力はセミが美味しいという事実です。どんな味と聞かれますが、説明は難しいので是非ご自分の舌で体験していただきたいと私は思います。勇気をもって参加した時、アリストテレスが「きわめて甘美なり」と 表現したセミの味、あなたならどう感じるでしょう?心 に残る夏の体験になること間違いないです。  (増田隆紀/NPO法人昆虫食普及ネットワーク副理事長)   どんな味?香りも楽しむ昆虫メニュー【おススメの一皿 】   5 月14 日、米とサーカス高田馬場店にて皆さんと昆虫料理を。この日は夏野菜と昆虫をテーマにレシピを考案。 タガメの香りを楽しむキャロットラペ、ジャイミル入り のペペロンチーノ、オオスズメバチの洋風じゃが、そし て試作メニューの山梨名物ほうとう(ミックス昆虫入り)でお腹いっぱい! 毎回違うメニューで参加スタッフ一同も楽しみにしています。コロナ禍が落ち着いたら、一緒に調理に参加してもらえる形で開催できるといいですね。  (阿南)   ニュースレターは、NPO法人昆虫食普及ネットワークの公式HPで配信中です。
昆虫食王国タイにおける 昆虫食の魅力【昆虫食普及ネットワーク・ニュースレターVol.2】
2022.07.06

伝統から革新へと脱皮する昆虫食【昆虫食普及ネットワーク・ニュースレターVol.1】

哺乳類の祖先ラオレステスから始まり、猿人、原人、旧人、新人と進化するなかで、人類は 400 万年の間身近で採集しやすい昆虫を日々の糧としてきました。日本でも 1919(大正8)年の調査で 55 種類もの昆虫が食べられていましたが、その後の食の西欧化で一部地域を除き昆虫は食べ物とみなされなくなってしまいました。世界は急速な人口増加と工業化による環境悪化が顕在化し、気候変動対応や生物多様性保全などの「環境」「持続性」が農業政策の最重要項目になってきています。 FAO が 2013 年に出した昆虫食を推奨するレポート『食用昆虫:食料と飼料の安全保障に向けた将来の展望』はこうした背景から生まれたものでした。世界的な趨勢を受けて農林水産省は 2020 年、完全資源循環型の食料供給と高い QOL の実現に向けて「フードテック官民協議会」を設立。そのなかに作業部会「昆虫ビジネス研究開発 WT」が設置されました。 哺乳類誕生とともに食べられてきた伝統食の昆虫が、新たな革新的な価値を付与された食材に脱皮しようとしています。受容傾向(食物新奇性嗜好)の高い消費者への働きかけ、そのための喫食機会の拡大や新たなメニュー開発が急務です。このたび発刊に至ったニュースレターが、昆虫の社会受容性を推進する情報発信ツールとなることを切に願っています。 (内山昭一/NPO法人昆虫食普及ネットワーク理事長)   夏はセミがおすすめ!【7月のトピック】 夏、昆虫食好きの私たちにとって待ち焦がれた狩りのシーズンです。今夏ぜひ狩って、食してもらいたいのは「セミ」。狩って楽しく、食べておいしい食材です。成虫を明るいうちに網で、日没後に羽化のために地面から出てくる幼虫を手で捕らえます。ミンミン、アブラ、ニイニイ、クマゼミ、外来種タケオオツクツク等のセミ種、幼虫と成虫、性別によって味、食感がかなり違いますので食べ比べの楽しみもあります。セミ食に興味が動いたなら、セミ会や昆虫食を楽しむ会等イベント参加をお勧めしたい。そこで得た新しい経験が今もなお私にとって昆虫食の最大の魅力だからです。 (増田隆紀/NPO法人昆虫食普及ネットワーク副理事長)   スズメバチ幼虫・蛹とピーマン、松の実の炒め物【7月の一皿】 スズメバチ幼虫と蛹は 巣から抜いて湯通しし、幼 虫は糞抜きしておく  細切りピーマン、乾燥松 の実、スズメバチをサラダ オイルで炒め、麺つゆで味 付け、最後に擦りごまを振 りかける 食材メモ: スズメバチ幼虫 は丁寧に糞抜きすると臭み も少なく、あっさりした甘味と旨味があります。野菜と炒め物や煮物にするなど何の料理にも使いやすい食材です。成虫の形になっているものは、オオスズメバチの場合は殻が硬く炒める程度では口当たりが悪いので別な料理に使いますが、コガタスズメバチ等では幼虫や蛹と一緒に料理してもまた違った 食感が楽しめます。  (樋口素子)     ニュースレターは、NPO法人昆虫食普及ネットワークの公式HPで配信中です。  
伝統から革新へと脱皮する昆虫食【昆虫食普及ネットワーク・ニュースレターVol.1】
2022.06.28

古くて新しい昆虫食、日本のルーツは郷土料理にあり

タンパク質危機の課題解決のひとつとして、「昆虫食の普及」が推進され始めています。昆虫食と聞くと新しい食事法のように感じるかもしれません。実は、信州など日本の郷土料理には昆虫を使ったものも多く、世界的にも注目を集めています。この記事では、昆虫を使った郷土料理について解説します。 タンパク質危機で脚光浴びる昆虫食 2025~2030年頃に起こるとされている「タンパク質危機」。タンパク質危機とは、増加し続ける世界人口に対して、牛肉や豚肉を主とするタンパク質の供給が追い付かず大幅に不足してしまうこと。この課題を解決するためのひとつの方法として、昆虫食が注目を集めています。 昆虫食の魅力としては、タンパク質が豊富に含まれることや育てるための水や飼料が少ないこと、飼育の過程で発生する温室効果ガスの排出量が少なくて済むことなどが挙げられます。国連食糧農業機関(FAO)は昆虫食を推奨していて、環境負荷の少ないサステナブルな食料として話題になっています。 その一方で、一般の人たちの間では昆虫食に対するネガティブな意見も少なくありません。ある調査で昆虫食に対するイメージを尋ねたところ、「気持ち悪い」「おいしくなさそう」という声も多く出ていました。 信州の暮らしに根付いた昆虫食文化 日本では、昔から昆虫を食べる地域があります。ここでは、昆虫を使った郷土料理が多いことで全国的に有名な信州の事例を紹介します。 信州でよく食べられている昆虫といえば、蜂の子やイナゴ、カイコ、ザザムシがあります。これら4種類を総称して「信州四大珍味」と呼び、カイコを除いた3種類は「信州三大珍味」とされています。この中で初心者にも比較的食べやすいのは蜂の子とイナゴで、佃煮(つくだに)にして食べることが多いです。 蜂の子はスズメバチの幼虫・さなぎ、イナゴは稲作の害虫とされるバッタのことです。カイコは生糸の生産のために飼育されていた虫で、一昔前までは長野県では飼育が盛んでした。ザザムシは水生昆虫でありヒゲナガカワトビケラの幼虫のことで、主に天竜川で採集できます。長野県の伊那谷で食べられていますが、世界的には食べる習慣がほとんどありません。 自然と共生する暮らしの中で生まれた、昆虫食。イナゴやカイコなどは、稲作や製糸業を営む過程で副産物として発生するもので、人々の生活に深く結びついていました。昆虫食をより身近なものとして捉えるために、信州の郷土料理に目を向けてみてはいかがでしょうか。  
古くて新しい昆虫食、日本のルーツは郷土料理にあり

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NEW 2022.11.24

知らないとまずい?!タンパク質危機。20XX年までに肉や魚が足りなくなる?

地球の人口増加や環境問題により、食肉などのタンパク質が不足するのが「タンパク質危機」です。私たちの食卓に影響するかもしれない世界規模での課題であるにもかかわらず、一般にはそれほど広く認知されていません。こちらの記事では、タンパク質危機とはどのような問題かを解説すると共に、タンパク質危機を避けるための4つの選択肢について説明します。タンパク質危機という問題が生じている理由から取りうる対応策までを紹介し、プラントベースフードなどがにわかに注目を浴びている背景をお伝えしていきます。 タンパク質危機(タンパク質クライシス)とは タンパク質危機は、世界人口の急速な増加に由来する問題です。まずはその背景的な事情からみていきましょう。 少子化真っ只中の日本。でも世界の人口は? 日本では、出生率の低下に伴い若年層の人口が減少する「少子化」が急速に進んでいます。そのためあまり実感がわきませんが、一方で世界の人口は増え続けている状況です。国連の調査によれば、世界の人口は現在約80億人であるところ、2030年には約85億人、2050年には約98億人、2100年には約112億人になると推定されています。 2030年までにタンパク源が足りなくなる恐れ 世界規模での人口増加に伴って、近い将来、牛や豚、鶏などの畜産によるタンパク質が不足すると予測されています。この予測は「タンパク質危機」と呼ばれていて、欧米諸国を中心に話題になっています。現状のままだと早ければ2025年から2030年ごろまでに需要と供給のバランスが崩れ始めると言われています。 人間の身体を構成するのは、水分が約60%、タンパク質が約15~20%とされています。つまり、タンパク質は水分を除いて体の重量の約半分を構成する、生きていく上で大切な栄養素です。欧米では「プロテインチャレンジ2040」と題したコンソーシアムが立ち上がり、その中から複数のプロジェクトが始動しています。タンパク質危機をどう乗り越えていくのかは、人類が生きていく上で極めて重要な課題です。 タンパク質危機を避けるための4つの選択肢 タンパク質危機を回避するために、世界中でさまざまな検討が行われています。ここでは、その中から代替肉と培養肉、昆虫食、藻類という4つの選択肢について解説します。 代替肉 代替肉とは、牛肉や豚肉、鶏肉などの動物の肉の代わりに、植物性原料で作られた「肉のような食材」のことです。欧米諸国を中心とした健康への意識の高まりがきっかけで広がったとされていて、別名「プラントベースミート」と呼ばれることもあります。 代替肉の素材として最も有名なものは、大豆が主原料の「大豆ミート」でしょう。有名ハンバーガー店やコーヒーチェーンでも大豆ミートを使ったメニューが登場し、話題になっています。このほか、ひよこ豆、レンズ豆といった豆類も、代替肉の素材として注目されています。最近では、エノキタケを使った新しい代替肉「エノキート」も登場するなど、さまざまな研究・開発が進められています。 培養肉 培養肉は、牛などの動物から取った少量の細胞を、再生医療の技術により体外で増やして作られます。プラントベースの代替肉とは異なり「本物の肉を使った代用品」です。従来の食肉の生産方法と比べて、飼育・繁殖する過程における動物へのストレスや環境への負荷が少ないとされています。こうした特徴から、別名「クリーンミート」と呼ばれることもあります。 培養肉は、2013年にオランダの研究者が培養ミンチ肉を作ったのがその始まりです。日本でも培養肉の研究が進められていて、2019年には世界で初めてサイコロステーキ状の培養肉を作ることに成功しました。大きな肉を作るための技術の開発など乗り越えなくてはならないハードルが多いものの、持続可能な食材という意味で期待が寄せられています。 昆虫食 昆虫食とは、コオロギなどの昆虫を原料にした食品のことです。大豆ミートなどのプラントベースフードは植物性のタンパク質しか得られないのに対して、昆虫食の場合、肉や魚と同様、必須アミノ酸である動物性タンパク質を得ることができます、また、昆虫食は飼育・加工に必要なスペースや資源が最小限で済み、環境負荷が低いというメリットもあります。 日本にも貴重なタンパク源として昆虫を食べる地域の文化が残っていますが、世界で食べられている昆虫は1900種類にも及ぶとされ、アジアやアフリカ、中南米を中心に昆虫を食べる食文化が見られます。昆虫食には食品の安全性や見た目への抵抗感といった課題があるものの、環境負荷の少ないサステナブルな食材として注目を集めています。 藻類 細胞分裂をして増殖する藻類はタンパク質含有量が50~75%であり、新たなタンパク質源としての可能性を持っています。藻類は良質なタンパク質だけでなく、炭水化物や脂質、ビタミン、ミネラルなども豊富に含まれています。現在市場に流通しているのはタンパク質が豊富に含まれるクロレラやスピルリナで、藻類をそのまま乾燥させて粉末状にしたものが主流です。 藻類は栄養価が豊富であるものの、藻類を乾燥した粉末は独特の匂いがあることや、藻類バイオマスの生産コストが肉や大豆に比べて価格が高いことなどから、タンパク質源としてはこれまで積極的に利用されていませんでした。しかし、近い将来に訪れるとされるタンパク質危機を前に、藻類の利活用が見直され始めています。 まとめ 世界の人口増加に伴って、近い将来訪れると言われているタンパク質危機。この記事では、タンパク質危機を回避するために私たちが取りうる選択肢として、代替肉、培養肉、昆虫食、藻類の4つを紹介しました。食品としての安全性や抵抗感、生産コストなど、それぞれに乗り越えるべき障壁はありますが、タンパク質危機を避けるために、世界中でさまざまな研究・開発が行われています。これまでの常識にとらわれない、新しい食の選択肢が求められていると言えそうです。
知らないとまずい?!タンパク質危機。20XX年までに肉や魚が足りなくなる?
NEW 2022.11.22

昆虫食のメリットと注目の背景を深堀り!こんなにも話題になる理由とは?

コオロギなどの昆虫を原料にした食品「昆虫食」。日本にも、貴重なタンパク源として昆虫を食べる地域の文化が残っていますが、多くの人にとってはなじみの薄いものでしょう。しかし今、環境負荷の少ないサステナブルな食料として、世界が昆虫食に注目しています。 一体なぜ、これほどまで昆虫食が話題になるのか。この記事では、昆虫食が期待される背景を解説した上で、栄養価の高さなど注目の理由を解説します。他方で、「本当に安全性に問題はないの?」「昆虫を食べるリスクは」といった疑問や不安の声にもお答えします。 昆虫食が注目を集める背景 無印良品で話題となった「コオロギせんべい」をはじめ、日本では勢いのあるベンチャー企業が、昆虫食ビジネスを盛り上げています。そうした流れに至るまでに、どのような背景があったのでしょう。 増える世界人口、ひっ迫するタンパク源 日本は少子化に直面していますが、世界全体では人口は増加し続けています。このまま行けば、2050年に世界人口は100億人に達すると言われています。 近い将来、牛や豚、鶏などの畜産によるタンパク質が不足する恐れがあると言われています。「タンパク質危機(タンパク質クライシス)」を避けるために、大豆ミートをはじめとしたプラントベースフードの開発が進みました。しかし、植物由来の食べ物からは、植物性のタンパク質しか得られません。そこで、注目されたのが「昆虫食」。なぜなら昆虫は、肉や魚と同様、必須アミノ酸である動物性タンパク質を得ることができるからです。 転機の国連食糧農業機関(FAO)報告 2013年、国際連合食糧農業機関(FAO)が「ある報告書」を発表しました。それは、世界の食糧危機への対策として昆虫食を推奨するというもの。この報告書を契機とし、世界各地で昆虫食の研究・開発が加速しました。昆虫を食べる習慣のなかった欧州でも、2018年、欧州連合(EU)が昆虫を新規の食品として域内で販売することを認めました。 昆虫食を選ぶメリット さぁここから、他にはない昆虫食のメリットを深掘りしていきます。 非常に優れた環境負荷の低さ 狭いスペースで飼育・加工ができる 昆虫は牛や豚、鶏などの家畜よりも狭い場所で飼育できます。コオロギ1キロを生産するのに必要な農地は、鶏肉や豚肉の約3分の1、牛肉なら約13分の1しか必要としません。また、出荷用にパウダーなどに加工する場合でも、小規模な施設で行えます。飼育・加工に場所を取らないということは、それだけ効率的に生産できるということです。 飼育に必要な資源が少ない 昆虫の生産は、家畜に比べて少量の水や飼料で可能です。牛肉を1キロ生産するためにはおよそ8キロのえさを必要とするのに対し、昆虫1キロの生産には約2キロのえさを使うだけで済みます。生産に必要な水についても同様で、コオロギの生産に必要な水は、牛肉の場合の約2500分の1で済んでしまいます。 温室効果ガスの排出量が少ない 牛1頭がげっぷなどで出すメタンガスは1日160リットル以上で、地球温暖化を促進していると言われています。しかし、昆虫の飼育に伴う温室効果ガスの排出量はその10分の1以下。昆虫食は、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの削減にも効果があるというわけです。 丸ごと食べられて、食品ロスにも貢献 昆虫食は食品ロスの削減にも貢献します。牛1頭の可食部はおよそ4割ですが、昆虫はそのほとんどが食べられるので無駄がありません。また昆虫のえさには、残飯など本来なら捨てられてしまうものを利用できます。焼却コストのかかる生ごみの量が減り、一方で、貴重なタンパク質源になるというのですから、昆虫食の利点が際立ちます。 牛や豚に負けない栄養価の高さ それで終わらないのが、昆虫食のすごさです。ガやハチの幼虫の場合、体重の50%がタンパク質と言われています。牛や豚が1〜3%ですから、それに比べると非常に高い含有率です。昆虫は、良質なタンパク質だけでなく、食物繊維や、カルシウム、銅、鉄、亜鉛などのミネラルも豊富に含む上に、脂肪分は少ないという健康に良い食品です。 昆虫食のデメリット 栄養価が高く、環境にも良い昆虫食。その一方で、なじみの薄い昆虫食に対するネガティブな考えも少なくありません。今度は、考えられる昆虫食のデメリットを見ていきましょう。 安全面でのリスクは? 専門家の助言なしに、自然採集した虫を食べるのは、危険を伴う行為です。なぜなら、野生の昆虫には、毒を持つものや、寄生虫や病原菌を媒介するものもいるからです。一方で、管理された環境下で生産されたものは、昆虫とはいえ、他の食材と同様に安全です。 安心を担保する「コオロギ生産ガイドライン」 消費者により安心してもらえる環境を整えようと、2022年8月、民間団体が「コオロギ生産ガイドライン」をまとめました。研究機関や企業などでつくる「昆虫ビジネス研究開発プラットフォーム(iBPF)」が、コオロギの生産過程の衛生管理を中心に行動指針を決めました。公的なルール整備がない中で、民間主導で一定のルールを示すことで信頼性を高め、昆虫食のさらなる普及につながることを期待しています。 アレルギーリスクについて 昆虫食は、食物アレルギーを持つ人には注意が必要です。昆虫には、エビやカニなど同様の甲殻類アレルギーの原因となる「トロポミオシン」という成分が含まれているからです。昆虫に限らずすべての食材に言えることですが、これまで口にしたことのない食材を食べる時には、これまでアレルギーの自覚症状がなかった人でも、慎重を期すようにしましょう。 見た目への抵抗感 多くの人にとって、昆虫を食べることに対して、心理的なハードルがあります。初めて口にするものに対して拒絶反応が出るのは、動物的な本能として当たり前のことです。もしかしたら、これが昆虫食にとっての最大の問題かもしれません。日本でも昆虫食品の開発は大変盛んで、さまざまな商品ラインナップがあります。まずは、昆虫の姿を連想しづらいパウダー入りの菓子やパンなどから試してみるのがいいかもしれません。 そして、「まずいものをわざわざ食べたくない」というのが、大半の人の率直な気持ちだと思います。実際のところ、昆虫の味は実に多種多様で、思いきって食べてみると、おいしく感じるものもたくさんあります。バッタはエビやカニに似た食感、タガメは洋ナシや青リンゴのようなフルーティな香りだとか。セミに至っては、幼虫だとナッツのようなクリーミーな風味で、成虫になるとエビのような風味が楽しめます。 昆虫食とは 1900種類の食べられる昆虫 世界で食べられている昆虫は1900種類にも及ぶとされ、アジアやアフリカ、中南米を中心に昆虫を食べる食文化が見られます。昆虫学者である三橋淳氏の書いた『虫を食べる人びと』(平凡社ライブラリー)によれば、世界ではハチやイナゴに加えて、カブトムシ、カミキリムシなども食べられているそうです。 世界の昆虫食  タイ 昆虫食が住民生活に浸透しているタイでは、スーパーマーケットの食材コーナーに昆虫のサナギや幼虫が並んでいたり、昆虫の佃煮を売る屋台を目にしたりすることも珍しくありません。特に人気があるのはコオロギで、盛んに養殖されています。最近では、コオロギのスナック菓子やコオロギパウダー、コオロギオイルなど、コオロギを原材料にしたさまざまな加工食品が登場しています。特にコオロギパウダーは輸出用としての需要が高く、国もその動きを後押ししています。 ケニア アフリカ東部のケニアで最もよく食べられている虫は、シロアリです。日本でシロアリと言えば、住宅の床下で暮らすアリ(職蟻)を意味することが多いですが、現地で食べられているのは別の種類のアリ(羽蟻)です。このシロアリを使った「クンビクンビ(kumbikumbi)」という伝統料理があり、栄養失調を改善する効果があると言われています。実際、シロアリには、良質な動物性たんぱく質や脂質のほか、カルシウム、鉄分、アミノ酸などが豊富に含まれています。ケニアのシロアリはインターネット通販などでも販売されています。 日本の昆虫食 長野県に根付く昆虫食文化 日本で昆虫食文化が盛んな地域といえば、長野県です。信州でよく食べられている昆虫といえば、ハチノコやイナゴ、カイコ、ザザムシがあります。これら4種類を総称して「信州四大珍味」と呼ばれているそうです。 ハチノコはスズメバチの幼虫やさなぎ、イナゴは稲作の害虫とされるバッタのことです。長野県はかつて養蚕が盛んで、カイコは生糸の生産のために飼育されていた虫です。ザザムシは水生昆虫で、ヒゲナガカワトビケラなどの幼虫のことを指し、主に天竜川で採集できます。長野県の伊那谷地域で食べられていますが、世界的には食べる習慣がほとんどありません。イナゴやカイコは、稲作や養蚕を営む過程で副産物として発生するもので、昆虫食は、自然と共生する地域の暮らしに深く結びついていたのでしょう。 まとめ 昆虫食のメリットとデメリットを押さえてきましたが、環境負荷が低くて栄養価も高いという特徴を踏まえると、昆虫食がこれだけ話題になっていることもうなずけると思います。昆虫を食べるという行為に対して抵抗感はあるかもしれませんが、以前は「生で魚を食べるなんてありえない」と言っていた欧米人が、「Sushi(寿司)」を高級料理としてもてはやしているのを見ると、さほど大きな問題でないようにも思えます。先入観だけで昆虫食という選択肢を排除せず、機会があったらぜひともチャレンジしてみてください。
昆虫食のメリットと注目の背景を深堀り!こんなにも話題になる理由とは?
NEW 2022.11.17

代替肉とはどんな肉?大豆やきのこなど、原材料別に特徴を解説

世界中で「代替肉」のブームが到来しています。代替肉とは、その名前の示す通り、牛肉や豚肉、鶏肉などの動物の肉の代わりに、植物性原料で作られた「まるで肉のような食材」のことです。 では実際に、代替肉はどのような素材から作られ、どのように利用されているのでしょうか。この記事では、代替肉の定義を確認した上で、代替肉の原材料や原材料別の使用例について解説します。この記事を読むことで、代替肉の全体像を把握し、代替肉は具体的にどのようなものであるかを理解していただけます。 プラントベースミートと呼ばれることも 代替肉は、欧米諸国を中心とした健康への意識の高まりがきっかけで広がったとされています。代替肉は地球が抱える環境問題の解決や世界の人口増加に対する食料不足への対策、食の多様性への対応という側面においても大きな意味を持つと言われています。 代替肉の素材として最も有名なものは、大豆が主原料の「大豆ミート」でしょう。このほか、ひよこ豆、レンズ豆といった豆類も、代替肉の素材として注目されています。最近では、エノキタケを使った新しい代替肉「エノキート」も登場しました。いずれも「植物由来の肉」であることから、英語ではプラントベースミートと呼ばれています。 フェイクミート、オルタナティブミートとはどう違う? 代替肉はプラントベースミート以外に、フェイク(偽物の)ミートやオルタナティブ(代替の)ミートと訳されることもあります。呼び方はそれぞれ異なるものの、いずれも動物の肉に見た目や風味を似せた、植物性原料から作られた食材を意味しています。代替肉のどのような特徴を強調したいのかによって、フェイクミートやオルタナティブミート、プラントベースミートという言葉が使い分けされているようです。 大豆ミート:代替肉の定番でバリエーション豊富 大豆ミートとは 大豆ミートは、その名前の通り大豆で作られた代替肉のことです。ソイミートや大豆肉と呼ばれることもあります。大豆は別名「畑の肉」と呼ばれるほど栄養が豊富で、良質なタンパク質をはじめ、ビタミンやミネラルも多く含有しています。 大豆ミートは代替肉の定番であり商品の数も多く、最近はスーパーマーケットやコンビニエンスストアで見かける機会も増えました。 大豆ミートは水やお湯などで戻してから利用する「乾燥タイプ」が主流ですが、すぐに使える「レトルトタイプ」や「冷凍タイプ」もあります。また、形状は主に「ミンチタイプ」「フィレタイプ」「ブロックタイプ」という3種類で、用途に応じて使い分けできます。 あの有名ハンバーガー店やコーヒーチェーンでも 大豆ミートの需要の高まりを受けて、大豆ミートをメニューに導入する飲食店も増えています。大手ハンバーガーチェーン「モスバーガー」では「ソイパティシリーズ」と題して、大豆ミートを使ったハンバーガーのラインアップが登場しています。 また、大手コーヒーチェーン「スターバックス」はサマーシーズン第2弾として“Yori Dori Midori”をテーマにして、プラントベースという選択肢を提案。新しく加わったメニューのひとつ「スピナッチコーン&ソイパティ イングリッシュマフィン」では、肉の代わりに大豆を使ったソイパティを使用しています。 ひよこ豆の代替肉:味のクセが少なく使いやすい ひよこ豆とは ひよこ豆は大豆と同じくらいの大きさの丸い豆です。アジア西部が原産で、インドや欧米諸国、中近東などでは一般的によく流通しています。タンパク質が多く食物繊維が豊富で脂肪分が少ないことから、少し前から食肉に代わるヘルシーな食材として話題を集めています。 ひよこ豆は日本では馴染みの薄い豆ですが、味にクセが少ないため食べやすいのが特徴です。乾燥した状態の豆は水で戻して煮る必要がありますが、水煮されたレトルトタイプを使えば、手軽に利用できます。 使用例:カレーや揚げ物、おやつにも ひよこ豆の生産量はインドが世界一で、ベジタリアンの多いインドではカレーの具材に使われることも多く、日常的に食べられています。インドでは、ひよこ豆の外側の皮を取り除いて割った豆を「ダール」と呼び、カレーにもよく利用されています。また、ひよこ豆を粉末にした「ベサン粉」は、インド風天ぷら「パコラ」をはじめ、おやつや軽食にも用いられています。 この他にひよこ豆を使った料理としては、ひよこ豆のペースト「フムス」やひよこ豆のコロッケ「ファラフェル」も有名です。 レンズ豆の代替肉:ひき肉代わりとして使える レンズ豆とは レンズ豆は、レンズのように平たい形状をしています。レンズ豆には緑色やオレンジ色、褐色などさまざまな色があり、3~6ミリ程度と非常に小さいことも特徴です。日本ではあまり知られていない豆ですが、欧州などでは日常的に利用されていて、特にヴィーガンやベジタリアンの人たちに親しまれています。 レンズ豆は「世界五大健康食品」の一つに数えられていて、ビタミンB群やタンパク質、鉄分、食物繊維を多く含有しています。特に、皮付きの茶色のレンズ豆には100グラム中に9.4ミリグラムの鉄分が含まれていて、これは大豆の含有量よりも多いと言われています。 使用例:カレーや煮込み料理、サラダに レンズ豆はインドやネパールではカレーの具材として、イタリアやフランスなどの国では煮込み料理やサラダなどによく使われています。代替肉としての使い方として、レンズ豆は粒が小さいので、ひき肉のような感覚で利用することができます。例えば、ハンバーグを作る際にレンズ豆で代用する方法があります。 レンズ豆には特有の匂いがあるので、気になる場合は、スパイスを加えたり濃い味付けをしたりするのがおすすめです。レンズ豆は水を吸収しやすいため、あらかじめ水で戻す必要がなく、料理にそのまま使うことができるのも魅力です。 エノキート:キノコの旨味でおいしさ追求 エノキートとは エノキートとは、エノキタケとミートを組み合わせた名前です。エノキートはエノキタケを主原料として作られた代替肉で、農業法人である株式会社小池えのき(以下、小池えのき)によって開発されました。小池えのきの本社がある長野県中野市は、日本最大のきのこの生産地として知られ、エノキタケの生産量は全国の約4割を占めます。地元の食材を使った、新しいタイプの代替肉として注目を集めています。 エノキートには、発芽大豆から作られた大豆ミート「ミラクルミート(DAIZ)」を使用しています。ミラクルミートには、大豆独特のくさみがほとんどありません。ミラクルミートにはうまみ成分「グルタミン酸」が含まれていて、エノキタケのグアニル酸を組み合わせることでうまみが格段にアップし、動物の肉に劣らない独特のうまみが実現できます。 使用例:ハンバーグ エノキートを使った代表的な料理は、ハンバーグです。原材料は、エノキタケとタマネギ、大豆ミート、パン粉、調味料。原材料の半分以上が、エノキタケとタマネギです。5ミリ程度のみじん切りにしたエノキタケを使用することで、肉によく似た食感が生まれます。エノキタケは加熱すると独特のぬめりが出るため、つなぎの代わりになるという点からハンバーグに使うのに適しています。 エノキートのハンバーグは合いびき肉を使った通常のものに比べて、脂質やカロリーが少なく食物繊維が多いとされています。大豆ミートを使用しているため、タンパク質の量は通常のハンバーグとほとんど変わりません。ヘルシーでありながらタンパク質がしっかり摂取できるので、ベジタリアンやヴィーガンの人たちだけでなく、健康への意識が高い人にも支持されています。 まとめ 世界中で需要が高まっている、代替肉。代替肉と一口に言ってもその種類は多く、今回紹介した4種類以外にもさまざまなタイプがあります。 代替肉には私たちの健康維持や地球の環境保全につながるメリットがある一方で、原材料の調達や製造プロセス次第では、環境に負荷を与える可能性もあると言われています。今後、こうしたデメリットにどのように対応していくのかが課題でしょう。代替肉の分野は成長過程にあり、これからの展開に注目したいです。
代替肉とはどんな肉?大豆やきのこなど、原材料別に特徴を解説
NEW 2022.11.16

AI搭載のゴミ箱で分別。環境大国オーストラリアが行くリサイクル最前線

ゴミとして捨てられるプラスチックの多くが、適切に分別されないことにより、再利用の道が閉ざされているという嘆かわしい現実があります。この問題を高度なIT(情報技術)で乗り越えようと、オーストラリアの研究チームが動きました。飲料容器の分別を自動的に行うことができる「スマートビン技術」を搭載した画期的なゴミ箱を開発しました。 ITでゴミを自動分別、リサイクル率を向上 ​​オーストラリア最大の都市・シドニーがあるニューサウスウェールズ州では、年間80万トン出るプラスチックゴミのうち、リサイクルされているのはわずか10%だそう。これは、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の調べで分かりました。 プラスチックのリサイクルのプロセスは非常に複雑です。適切に分別がされないと、こうした事態に陥ります。リサイクルできない廃棄物の一部が焼却場行きとなれば、その分温室効果ガスの排出量が増えます。これらがきちんとリサイクルに回れば、地球温暖化にも大いに貢献するでしょう。 問題解決に向けて、シドニー工科大学(UTS)の共同研究チームは、ゴミの中から自動的に飲料容器を選り分ける機能を搭載したゴミ箱を開発しました。その名は「スマートビン技術」。これにより、最も多い廃棄物のひとつである飲料容器のリサイクル率を向上させることができます。 人工知能(AI)、ロボット工学、画像の認識技術などを組み合わせた先端テクノロジーが搭載されたこのゴミ箱は、ガラスや金属、プラスチックなど素材別に仕分けしてくれます。さらに、ペットボトルの素材となるポリエチレンテレフタレート(PET)や、シャンプーボトルに使われる高密度ポリエチレン(HDPE)など、プラスチックをさらに細かい種類別に分けることができます。 方法としては、まずゴミをカメラで撮影し、AIアルゴリズムを実行して、膨大なデータを処理・分析することにより分類します。そしてIoT(モノのインターネット)を含む最新のロボット技術により、重さや物質、素材を感知してゴミを分別するという仕組みです。 スマートビン技術の社会実装の日は近い 今後、あらゆる地域でスマートビン技術搭載のゴミ箱が利用されるようになれば、プラスチックゴミのリサイクル率は飛躍的に向上し、業者による回収作業もより素早く正確になります。研究チームは、このゴミ箱を管理するシステムの開発を進めています。システムが実用化されれば、ゴミ箱の所有者が、ゴミ箱の充填具合などの状態を遠隔で監視、点検できるようになります。ゴミ箱が満杯になった時、ゴミ箱を空にする必要があることを知らせる通知が表示されるという仕組みです。また、地域の人々にとっては、自分がどれだけリサイクル活動に貢献しているかがアプリに記録され、そのことを通知として受け取ることができます。 この実証実験は、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の研究プログラムの一環として行われています。同機構は2030年までに、オーストラリアで排出されるプラスチック廃棄物を80%削減することを目指しています。スマートビン技術はまだ試作段階ですが、いずれはショッピングセンター、学校、映画館、カフェ、企業、空港などにスマートビン技術搭載のゴミ箱が設置される予定です。
AI搭載のゴミ箱で分別。環境大国オーストラリアが行くリサイクル最前線