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“サステナブル” タグの記事一覧

NEW 2022.11.24

知らないとまずい?!タンパク質危機。20XX年までに肉や魚が足りなくなる?

地球の人口増加や環境問題により、食肉などのタンパク質が不足するのが「タンパク質危機」です。私たちの食卓に影響するかもしれない世界規模での課題であるにもかかわらず、一般にはそれほど広く認知されていません。こちらの記事では、タンパク質危機とはどのような問題かを解説すると共に、タンパク質危機を避けるための4つの選択肢について説明します。タンパク質危機という問題が生じている理由から取りうる対応策までを紹介し、プラントベースフードなどがにわかに注目を浴びている背景をお伝えしていきます。 タンパク質危機(タンパク質クライシス)とは タンパク質危機は、世界人口の急速な増加に由来する問題です。まずはその背景的な事情からみていきましょう。 少子化真っ只中の日本。でも世界の人口は? 日本では、出生率の低下に伴い若年層の人口が減少する「少子化」が急速に進んでいます。そのためあまり実感がわきませんが、一方で世界の人口は増え続けている状況です。国連の調査によれば、世界の人口は現在約80億人であるところ、2030年には約85億人、2050年には約98億人、2100年には約112億人になると推定されています。 2030年までにタンパク源が足りなくなる恐れ 世界規模での人口増加に伴って、近い将来、牛や豚、鶏などの畜産によるタンパク質が不足すると予測されています。この予測は「タンパク質危機」と呼ばれていて、欧米諸国を中心に話題になっています。現状のままだと早ければ2025年から2030年ごろまでに需要と供給のバランスが崩れ始めると言われています。 人間の身体を構成するのは、水分が約60%、タンパク質が約15~20%とされています。つまり、タンパク質は水分を除いて体の重量の約半分を構成する、生きていく上で大切な栄養素です。欧米では「プロテインチャレンジ2040」と題したコンソーシアムが立ち上がり、その中から複数のプロジェクトが始動しています。タンパク質危機をどう乗り越えていくのかは、人類が生きていく上で極めて重要な課題です。 タンパク質危機を避けるための4つの選択肢 タンパク質危機を回避するために、世界中でさまざまな検討が行われています。ここでは、その中から代替肉と培養肉、昆虫食、藻類という4つの選択肢について解説します。 代替肉 代替肉とは、牛肉や豚肉、鶏肉などの動物の肉の代わりに、植物性原料で作られた「肉のような食材」のことです。欧米諸国を中心とした健康への意識の高まりがきっかけで広がったとされていて、別名「プラントベースミート」と呼ばれることもあります。 代替肉の素材として最も有名なものは、大豆が主原料の「大豆ミート」でしょう。有名ハンバーガー店やコーヒーチェーンでも大豆ミートを使ったメニューが登場し、話題になっています。このほか、ひよこ豆、レンズ豆といった豆類も、代替肉の素材として注目されています。最近では、エノキタケを使った新しい代替肉「エノキート」も登場するなど、さまざまな研究・開発が進められています。 培養肉 培養肉は、牛などの動物から取った少量の細胞を、再生医療の技術により体外で増やして作られます。プラントベースの代替肉とは異なり「本物の肉を使った代用品」です。従来の食肉の生産方法と比べて、飼育・繁殖する過程における動物へのストレスや環境への負荷が少ないとされています。こうした特徴から、別名「クリーンミート」と呼ばれることもあります。 培養肉は、2013年にオランダの研究者が培養ミンチ肉を作ったのがその始まりです。日本でも培養肉の研究が進められていて、2019年には世界で初めてサイコロステーキ状の培養肉を作ることに成功しました。大きな肉を作るための技術の開発など乗り越えなくてはならないハードルが多いものの、持続可能な食材という意味で期待が寄せられています。 昆虫食 昆虫食とは、コオロギなどの昆虫を原料にした食品のことです。大豆ミートなどのプラントベースフードは植物性のタンパク質しか得られないのに対して、昆虫食の場合、肉や魚と同様、必須アミノ酸である動物性タンパク質を得ることができます、また、昆虫食は飼育・加工に必要なスペースや資源が最小限で済み、環境負荷が低いというメリットもあります。 日本にも貴重なタンパク源として昆虫を食べる地域の文化が残っていますが、世界で食べられている昆虫は1900種類にも及ぶとされ、アジアやアフリカ、中南米を中心に昆虫を食べる食文化が見られます。昆虫食には食品の安全性や見た目への抵抗感といった課題があるものの、環境負荷の少ないサステナブルな食材として注目を集めています。 藻類 細胞分裂をして増殖する藻類はタンパク質含有量が50~75%であり、新たなタンパク質源としての可能性を持っています。藻類は良質なタンパク質だけでなく、炭水化物や脂質、ビタミン、ミネラルなども豊富に含まれています。現在市場に流通しているのはタンパク質が豊富に含まれるクロレラやスピルリナで、藻類をそのまま乾燥させて粉末状にしたものが主流です。 藻類は栄養価が豊富であるものの、藻類を乾燥した粉末は独特の匂いがあることや、藻類バイオマスの生産コストが肉や大豆に比べて価格が高いことなどから、タンパク質源としてはこれまで積極的に利用されていませんでした。しかし、近い将来に訪れるとされるタンパク質危機を前に、藻類の利活用が見直され始めています。 まとめ 世界の人口増加に伴って、近い将来訪れると言われているタンパク質危機。この記事では、タンパク質危機を回避するために私たちが取りうる選択肢として、代替肉、培養肉、昆虫食、藻類の4つを紹介しました。食品としての安全性や抵抗感、生産コストなど、それぞれに乗り越えるべき障壁はありますが、タンパク質危機を避けるために、世界中でさまざまな研究・開発が行われています。これまでの常識にとらわれない、新しい食の選択肢が求められていると言えそうです。
知らないとまずい?!タンパク質危機。20XX年までに肉や魚が足りなくなる?
NEW 2022.11.22

昆虫食のメリットと注目の背景を深堀り!こんなにも話題になる理由とは?

コオロギなどの昆虫を原料にした食品「昆虫食」。日本にも、貴重なタンパク源として昆虫を食べる地域の文化が残っていますが、多くの人にとってはなじみの薄いものでしょう。しかし今、環境負荷の少ないサステナブルな食料として、世界が昆虫食に注目しています。 一体なぜ、これほどまで昆虫食が話題になるのか。この記事では、昆虫食が期待される背景を解説した上で、栄養価の高さなど注目の理由を解説します。他方で、「本当に安全性に問題はないの?」「昆虫を食べるリスクは」といった疑問や不安の声にもお答えします。 昆虫食が注目を集める背景 無印良品で話題となった「コオロギせんべい」をはじめ、日本では勢いのあるベンチャー企業が、昆虫食ビジネスを盛り上げています。そうした流れに至るまでに、どのような背景があったのでしょう。 増える世界人口、ひっ迫するタンパク源 日本は少子化に直面していますが、世界全体では人口は増加し続けています。このまま行けば、2050年に世界人口は100億人に達すると言われています。 近い将来、牛や豚、鶏などの畜産によるタンパク質が不足する恐れがあると言われています。「タンパク質危機(タンパク質クライシス)」を避けるために、大豆ミートをはじめとしたプラントベースフードの開発が進みました。しかし、植物由来の食べ物からは、植物性のタンパク質しか得られません。そこで、注目されたのが「昆虫食」。なぜなら昆虫は、肉や魚と同様、必須アミノ酸である動物性タンパク質を得ることができるからです。 転機の国連食糧農業機関(FAO)報告 2013年、国際連合食糧農業機関(FAO)が「ある報告書」を発表しました。それは、世界の食糧危機への対策として昆虫食を推奨するというもの。この報告書を契機とし、世界各地で昆虫食の研究・開発が加速しました。昆虫を食べる習慣のなかった欧州でも、2018年、欧州連合(EU)が昆虫を新規の食品として域内で販売することを認めました。 昆虫食を選ぶメリット さぁここから、他にはない昆虫食のメリットを深掘りしていきます。 非常に優れた環境負荷の低さ 狭いスペースで飼育・加工ができる 昆虫は牛や豚、鶏などの家畜よりも狭い場所で飼育できます。コオロギ1キロを生産するのに必要な農地は、鶏肉や豚肉の約3分の1、牛肉なら約13分の1しか必要としません。また、出荷用にパウダーなどに加工する場合でも、小規模な施設で行えます。飼育・加工に場所を取らないということは、それだけ効率的に生産できるということです。 飼育に必要な資源が少ない 昆虫の生産は、家畜に比べて少量の水や飼料で可能です。牛肉を1キロ生産するためにはおよそ8キロのえさを必要とするのに対し、昆虫1キロの生産には約2キロのえさを使うだけで済みます。生産に必要な水についても同様で、コオロギの生産に必要な水は、牛肉の場合の約2500分の1で済んでしまいます。 温室効果ガスの排出量が少ない 牛1頭がげっぷなどで出すメタンガスは1日160リットル以上で、地球温暖化を促進していると言われています。しかし、昆虫の飼育に伴う温室効果ガスの排出量はその10分の1以下。昆虫食は、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの削減にも効果があるというわけです。 丸ごと食べられて、食品ロスにも貢献 昆虫食は食品ロスの削減にも貢献します。牛1頭の可食部はおよそ4割ですが、昆虫はそのほとんどが食べられるので無駄がありません。また昆虫のえさには、残飯など本来なら捨てられてしまうものを利用できます。焼却コストのかかる生ごみの量が減り、一方で、貴重なタンパク質源になるというのですから、昆虫食の利点が際立ちます。 牛や豚に負けない栄養価の高さ それで終わらないのが、昆虫食のすごさです。ガやハチの幼虫の場合、体重の50%がタンパク質と言われています。牛や豚が1〜3%ですから、それに比べると非常に高い含有率です。昆虫は、良質なタンパク質だけでなく、食物繊維や、カルシウム、銅、鉄、亜鉛などのミネラルも豊富に含む上に、脂肪分は少ないという健康に良い食品です。 昆虫食のデメリット 栄養価が高く、環境にも良い昆虫食。その一方で、なじみの薄い昆虫食に対するネガティブな考えも少なくありません。今度は、考えられる昆虫食のデメリットを見ていきましょう。 安全面でのリスクは? 専門家の助言なしに、自然採集した虫を食べるのは、危険を伴う行為です。なぜなら、野生の昆虫には、毒を持つものや、寄生虫や病原菌を媒介するものもいるからです。一方で、管理された環境下で生産されたものは、昆虫とはいえ、他の食材と同様に安全です。 安心を担保する「コオロギ生産ガイドライン」 消費者により安心してもらえる環境を整えようと、2022年8月、民間団体が「コオロギ生産ガイドライン」をまとめました。研究機関や企業などでつくる「昆虫ビジネス研究開発プラットフォーム(iBPF)」が、コオロギの生産過程の衛生管理を中心に行動指針を決めました。公的なルール整備がない中で、民間主導で一定のルールを示すことで信頼性を高め、昆虫食のさらなる普及につながることを期待しています。 アレルギーリスクについて 昆虫食は、食物アレルギーを持つ人には注意が必要です。昆虫には、エビやカニなど同様の甲殻類アレルギーの原因となる「トロポミオシン」という成分が含まれているからです。昆虫に限らずすべての食材に言えることですが、これまで口にしたことのない食材を食べる時には、これまでアレルギーの自覚症状がなかった人でも、慎重を期すようにしましょう。 見た目への抵抗感 多くの人にとって、昆虫を食べることに対して、心理的なハードルがあります。初めて口にするものに対して拒絶反応が出るのは、動物的な本能として当たり前のことです。もしかしたら、これが昆虫食にとっての最大の問題かもしれません。日本でも昆虫食品の開発は大変盛んで、さまざまな商品ラインナップがあります。まずは、昆虫の姿を連想しづらいパウダー入りの菓子やパンなどから試してみるのがいいかもしれません。 そして、「まずいものをわざわざ食べたくない」というのが、大半の人の率直な気持ちだと思います。実際のところ、昆虫の味は実に多種多様で、思いきって食べてみると、おいしく感じるものもたくさんあります。バッタはエビやカニに似た食感、タガメは洋ナシや青リンゴのようなフルーティな香りだとか。セミに至っては、幼虫だとナッツのようなクリーミーな風味で、成虫になるとエビのような風味が楽しめます。 昆虫食とは 1900種類の食べられる昆虫 世界で食べられている昆虫は1900種類にも及ぶとされ、アジアやアフリカ、中南米を中心に昆虫を食べる食文化が見られます。昆虫学者である三橋淳氏の書いた『虫を食べる人びと』(平凡社ライブラリー)によれば、世界ではハチやイナゴに加えて、カブトムシ、カミキリムシなども食べられているそうです。 世界の昆虫食  タイ 昆虫食が住民生活に浸透しているタイでは、スーパーマーケットの食材コーナーに昆虫のサナギや幼虫が並んでいたり、昆虫の佃煮を売る屋台を目にしたりすることも珍しくありません。特に人気があるのはコオロギで、盛んに養殖されています。最近では、コオロギのスナック菓子やコオロギパウダー、コオロギオイルなど、コオロギを原材料にしたさまざまな加工食品が登場しています。特にコオロギパウダーは輸出用としての需要が高く、国もその動きを後押ししています。 ケニア アフリカ東部のケニアで最もよく食べられている虫は、シロアリです。日本でシロアリと言えば、住宅の床下で暮らすアリ(職蟻)を意味することが多いですが、現地で食べられているのは別の種類のアリ(羽蟻)です。このシロアリを使った「クンビクンビ(kumbikumbi)」という伝統料理があり、栄養失調を改善する効果があると言われています。実際、シロアリには、良質な動物性たんぱく質や脂質のほか、カルシウム、鉄分、アミノ酸などが豊富に含まれています。ケニアのシロアリはインターネット通販などでも販売されています。 日本の昆虫食 長野県に根付く昆虫食文化 日本で昆虫食文化が盛んな地域といえば、長野県です。信州でよく食べられている昆虫といえば、ハチノコやイナゴ、カイコ、ザザムシがあります。これら4種類を総称して「信州四大珍味」と呼ばれているそうです。 ハチノコはスズメバチの幼虫やさなぎ、イナゴは稲作の害虫とされるバッタのことです。長野県はかつて養蚕が盛んで、カイコは生糸の生産のために飼育されていた虫です。ザザムシは水生昆虫で、ヒゲナガカワトビケラなどの幼虫のことを指し、主に天竜川で採集できます。長野県の伊那谷地域で食べられていますが、世界的には食べる習慣がほとんどありません。イナゴやカイコは、稲作や養蚕を営む過程で副産物として発生するもので、昆虫食は、自然と共生する地域の暮らしに深く結びついていたのでしょう。 まとめ 昆虫食のメリットとデメリットを押さえてきましたが、環境負荷が低くて栄養価も高いという特徴を踏まえると、昆虫食がこれだけ話題になっていることもうなずけると思います。昆虫を食べるという行為に対して抵抗感はあるかもしれませんが、以前は「生で魚を食べるなんてありえない」と言っていた欧米人が、「Sushi(寿司)」を高級料理としてもてはやしているのを見ると、さほど大きな問題でないようにも思えます。先入観だけで昆虫食という選択肢を排除せず、機会があったらぜひともチャレンジしてみてください。
昆虫食のメリットと注目の背景を深堀り!こんなにも話題になる理由とは?
NEW 2022.11.17

代替肉とはどんな肉?大豆やきのこなど、原材料別に特徴を解説

世界中で「代替肉」のブームが到来しています。代替肉とは、その名前の示す通り、牛肉や豚肉、鶏肉などの動物の肉の代わりに、植物性原料で作られた「まるで肉のような食材」のことです。 では実際に、代替肉はどのような素材から作られ、どのように利用されているのでしょうか。この記事では、代替肉の定義を確認した上で、代替肉の原材料や原材料別の使用例について解説します。この記事を読むことで、代替肉の全体像を把握し、代替肉は具体的にどのようなものであるかを理解していただけます。 プラントベースミートと呼ばれることも 代替肉は、欧米諸国を中心とした健康への意識の高まりがきっかけで広がったとされています。代替肉は地球が抱える環境問題の解決や世界の人口増加に対する食料不足への対策、食の多様性への対応という側面においても大きな意味を持つと言われています。 代替肉の素材として最も有名なものは、大豆が主原料の「大豆ミート」でしょう。このほか、ひよこ豆、レンズ豆といった豆類も、代替肉の素材として注目されています。最近では、エノキタケを使った新しい代替肉「エノキート」も登場しました。いずれも「植物由来の肉」であることから、英語ではプラントベースミートと呼ばれています。 フェイクミート、オルタナティブミートとはどう違う? 代替肉はプラントベースミート以外に、フェイク(偽物の)ミートやオルタナティブ(代替の)ミートと訳されることもあります。呼び方はそれぞれ異なるものの、いずれも動物の肉に見た目や風味を似せた、植物性原料から作られた食材を意味しています。代替肉のどのような特徴を強調したいのかによって、フェイクミートやオルタナティブミート、プラントベースミートという言葉が使い分けされているようです。 大豆ミート:代替肉の定番でバリエーション豊富 大豆ミートとは 大豆ミートは、その名前の通り大豆で作られた代替肉のことです。ソイミートや大豆肉と呼ばれることもあります。大豆は別名「畑の肉」と呼ばれるほど栄養が豊富で、良質なタンパク質をはじめ、ビタミンやミネラルも多く含有しています。 大豆ミートは代替肉の定番であり商品の数も多く、最近はスーパーマーケットやコンビニエンスストアで見かける機会も増えました。 大豆ミートは水やお湯などで戻してから利用する「乾燥タイプ」が主流ですが、すぐに使える「レトルトタイプ」や「冷凍タイプ」もあります。また、形状は主に「ミンチタイプ」「フィレタイプ」「ブロックタイプ」という3種類で、用途に応じて使い分けできます。 あの有名ハンバーガー店やコーヒーチェーンでも 大豆ミートの需要の高まりを受けて、大豆ミートをメニューに導入する飲食店も増えています。大手ハンバーガーチェーン「モスバーガー」では「ソイパティシリーズ」と題して、大豆ミートを使ったハンバーガーのラインアップが登場しています。 また、大手コーヒーチェーン「スターバックス」はサマーシーズン第2弾として“Yori Dori Midori”をテーマにして、プラントベースという選択肢を提案。新しく加わったメニューのひとつ「スピナッチコーン&ソイパティ イングリッシュマフィン」では、肉の代わりに大豆を使ったソイパティを使用しています。 ひよこ豆の代替肉:味のクセが少なく使いやすい ひよこ豆とは ひよこ豆は大豆と同じくらいの大きさの丸い豆です。アジア西部が原産で、インドや欧米諸国、中近東などでは一般的によく流通しています。タンパク質が多く食物繊維が豊富で脂肪分が少ないことから、少し前から食肉に代わるヘルシーな食材として話題を集めています。 ひよこ豆は日本では馴染みの薄い豆ですが、味にクセが少ないため食べやすいのが特徴です。乾燥した状態の豆は水で戻して煮る必要がありますが、水煮されたレトルトタイプを使えば、手軽に利用できます。 使用例:カレーや揚げ物、おやつにも ひよこ豆の生産量はインドが世界一で、ベジタリアンの多いインドではカレーの具材に使われることも多く、日常的に食べられています。インドでは、ひよこ豆の外側の皮を取り除いて割った豆を「ダール」と呼び、カレーにもよく利用されています。また、ひよこ豆を粉末にした「ベサン粉」は、インド風天ぷら「パコラ」をはじめ、おやつや軽食にも用いられています。 この他にひよこ豆を使った料理としては、ひよこ豆のペースト「フムス」やひよこ豆のコロッケ「ファラフェル」も有名です。 レンズ豆の代替肉:ひき肉代わりとして使える レンズ豆とは レンズ豆は、レンズのように平たい形状をしています。レンズ豆には緑色やオレンジ色、褐色などさまざまな色があり、3~6ミリ程度と非常に小さいことも特徴です。日本ではあまり知られていない豆ですが、欧州などでは日常的に利用されていて、特にヴィーガンやベジタリアンの人たちに親しまれています。 レンズ豆は「世界五大健康食品」の一つに数えられていて、ビタミンB群やタンパク質、鉄分、食物繊維を多く含有しています。特に、皮付きの茶色のレンズ豆には100グラム中に9.4ミリグラムの鉄分が含まれていて、これは大豆の含有量よりも多いと言われています。 使用例:カレーや煮込み料理、サラダに レンズ豆はインドやネパールではカレーの具材として、イタリアやフランスなどの国では煮込み料理やサラダなどによく使われています。代替肉としての使い方として、レンズ豆は粒が小さいので、ひき肉のような感覚で利用することができます。例えば、ハンバーグを作る際にレンズ豆で代用する方法があります。 レンズ豆には特有の匂いがあるので、気になる場合は、スパイスを加えたり濃い味付けをしたりするのがおすすめです。レンズ豆は水を吸収しやすいため、あらかじめ水で戻す必要がなく、料理にそのまま使うことができるのも魅力です。 エノキート:キノコの旨味でおいしさ追求 エノキートとは エノキートとは、エノキタケとミートを組み合わせた名前です。エノキートはエノキタケを主原料として作られた代替肉で、農業法人である株式会社小池えのき(以下、小池えのき)によって開発されました。小池えのきの本社がある長野県中野市は、日本最大のきのこの生産地として知られ、エノキタケの生産量は全国の約4割を占めます。地元の食材を使った、新しいタイプの代替肉として注目を集めています。 エノキートには、発芽大豆から作られた大豆ミート「ミラクルミート(DAIZ)」を使用しています。ミラクルミートには、大豆独特のくさみがほとんどありません。ミラクルミートにはうまみ成分「グルタミン酸」が含まれていて、エノキタケのグアニル酸を組み合わせることでうまみが格段にアップし、動物の肉に劣らない独特のうまみが実現できます。 使用例:ハンバーグ エノキートを使った代表的な料理は、ハンバーグです。原材料は、エノキタケとタマネギ、大豆ミート、パン粉、調味料。原材料の半分以上が、エノキタケとタマネギです。5ミリ程度のみじん切りにしたエノキタケを使用することで、肉によく似た食感が生まれます。エノキタケは加熱すると独特のぬめりが出るため、つなぎの代わりになるという点からハンバーグに使うのに適しています。 エノキートのハンバーグは合いびき肉を使った通常のものに比べて、脂質やカロリーが少なく食物繊維が多いとされています。大豆ミートを使用しているため、タンパク質の量は通常のハンバーグとほとんど変わりません。ヘルシーでありながらタンパク質がしっかり摂取できるので、ベジタリアンやヴィーガンの人たちだけでなく、健康への意識が高い人にも支持されています。 まとめ 世界中で需要が高まっている、代替肉。代替肉と一口に言ってもその種類は多く、今回紹介した4種類以外にもさまざまなタイプがあります。 代替肉には私たちの健康維持や地球の環境保全につながるメリットがある一方で、原材料の調達や製造プロセス次第では、環境に負荷を与える可能性もあると言われています。今後、こうしたデメリットにどのように対応していくのかが課題でしょう。代替肉の分野は成長過程にあり、これからの展開に注目したいです。
代替肉とはどんな肉?大豆やきのこなど、原材料別に特徴を解説
NEW 2022.11.16

AI搭載のゴミ箱で分別。環境大国オーストラリアが行くリサイクル最前線

ゴミとして捨てられるプラスチックの多くが、適切に分別されないことにより、再利用の道が閉ざされているという嘆かわしい現実があります。この問題を高度なIT(情報技術)で乗り越えようと、オーストラリアの研究チームが動きました。飲料容器の分別を自動的に行うことができる「スマートビン技術」を搭載した画期的なゴミ箱を開発しました。 ITでゴミを自動分別、リサイクル率を向上 ​​オーストラリア最大の都市・シドニーがあるニューサウスウェールズ州では、年間80万トン出るプラスチックゴミのうち、リサイクルされているのはわずか10%だそう。これは、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の調べで分かりました。 プラスチックのリサイクルのプロセスは非常に複雑です。適切に分別がされないと、こうした事態に陥ります。リサイクルできない廃棄物の一部が焼却場行きとなれば、その分温室効果ガスの排出量が増えます。これらがきちんとリサイクルに回れば、地球温暖化にも大いに貢献するでしょう。 問題解決に向けて、シドニー工科大学(UTS)の共同研究チームは、ゴミの中から自動的に飲料容器を選り分ける機能を搭載したゴミ箱を開発しました。その名は「スマートビン技術」。これにより、最も多い廃棄物のひとつである飲料容器のリサイクル率を向上させることができます。 人工知能(AI)、ロボット工学、画像の認識技術などを組み合わせた先端テクノロジーが搭載されたこのゴミ箱は、ガラスや金属、プラスチックなど素材別に仕分けしてくれます。さらに、ペットボトルの素材となるポリエチレンテレフタレート(PET)や、シャンプーボトルに使われる高密度ポリエチレン(HDPE)など、プラスチックをさらに細かい種類別に分けることができます。 方法としては、まずゴミをカメラで撮影し、AIアルゴリズムを実行して、膨大なデータを処理・分析することにより分類します。そしてIoT(モノのインターネット)を含む最新のロボット技術により、重さや物質、素材を感知してゴミを分別するという仕組みです。 スマートビン技術の社会実装の日は近い 今後、あらゆる地域でスマートビン技術搭載のゴミ箱が利用されるようになれば、プラスチックゴミのリサイクル率は飛躍的に向上し、業者による回収作業もより素早く正確になります。研究チームは、このゴミ箱を管理するシステムの開発を進めています。システムが実用化されれば、ゴミ箱の所有者が、ゴミ箱の充填具合などの状態を遠隔で監視、点検できるようになります。ゴミ箱が満杯になった時、ゴミ箱を空にする必要があることを知らせる通知が表示されるという仕組みです。また、地域の人々にとっては、自分がどれだけリサイクル活動に貢献しているかがアプリに記録され、そのことを通知として受け取ることができます。 この実証実験は、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の研究プログラムの一環として行われています。同機構は2030年までに、オーストラリアで排出されるプラスチック廃棄物を80%削減することを目指しています。スマートビン技術はまだ試作段階ですが、いずれはショッピングセンター、学校、映画館、カフェ、企業、空港などにスマートビン技術搭載のゴミ箱が設置される予定です。
AI搭載のゴミ箱で分別。環境大国オーストラリアが行くリサイクル最前線
NEW 2022.11.11

SDGsって何の略?知ればその意味や目標がわかる!企業やNPOの取り組み事例も解説

近年、SDGs(エス・ディー・ジーズ)という言葉が多くの場面で使われるようになり、食品業界ではさまざまな取り組みが推進されています。一方で、何となく言葉は知っていても、正確な意味や目指す姿がわからないという声も少なくありません。 そこでこの記事では、SDGsが掲げる17の目標や169のターゲットについて説明し、さらには企業やNPO/NGOの取り組み事例を知っていただくことで、SDGsの目指す姿を解説していこうと思います。 SDGsは持続可能な開発目標のこと SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称であり、2015年9月の国連サミットにおいて決められた世界共通の目標です。2016年から2030年までの15年間の開発の指針として「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され、その中心となる開発目標をSDGsと呼んでいます。 ちなみに、SDGsの前身である「MDGs(エムディージーズ)」では、2015年までの開発目標として8つのゴールを掲げていました。この目標が達成期限を迎えたことを受けて、次に決定されたのがSDGsです。 SDGsの17の目標とは SDGsでは、17の大きな目標が設定されています。その目標とは、「1.貧困をなくそう」「2.飢餓をゼロに」「3.すべての人に健康と福祉を」「4.質の高い教育をみんなに」「5.ジェンダー平等を実現しよう」「6.安全な水とトイレを世界中に」「7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに」「8.働きがいも経済成長も」「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」「10.人や国の不平等をなくそう」「11.住み続けられるまちづくりを」「12.つくる責任 つかう責任」「13.気候変動に具体的な対策を」「14.海の豊かさを守ろう」「15.陸の豊かさも守ろう」「16.平和と公正をすべての人に」「17.パートナーシップで目標を達成しよう」です。 貧困や飢餓といえば「開発途上国が対象」というイメージがあるかもしれませんが、日本の子どもの「7人に1人が貧困」とも言われていて、日本においても重要なテーマとなっています。17の目標の特徴は、開発途上国だけでなく先進国も対象にしていることです。気候変動や働きがい、経済成長など多岐に渡るテーマが盛り込まれています。 SDGsの169のターゲットとは 17の目標を達成するために設定されているのが、169のターゲットです。すべてのターゲットは、農林水産省のサイトから確認できます。一つの目標に対して平均して10個程度のターゲットが存在する計算になります。 ターゲットの内容としては、具体的な指標を示しているものもあれば、漠然とした表現のものもあります。そこで、169のターゲットをより具体化して数値目標を盛り込んだ232の指標が策定されました。SDGsの全体像として、17の目標、169のターゲット、232の指標で構成されています。 SDGsの大きな特徴は、目標を掲げるだけでなく達成状況を定期的にモニタリングすることにあります。「国連ハイレベル政治フォーラム」という枠組みを使って、毎年7月ごろに各国の進捗状況を共有しています。 食品企業が取り組む事例 SDGsの17の目標は食品業界食品業界に関わるものも多く、さまざまな取り組みが推進されています。たとえば、「2.飢餓をゼロに」では、アジアやアフリカを中心に深刻化している飢餓や栄養不良といった問題解決に取り組む企業や、「12.つくる責任 つかう責任」では、従来の大量生産・大量消費から持続可能な仕組みへと変化していく企業の姿もあります。「4.質の高い教育をみんなに」では、大手食品産業を中心に食育や環境教育が実践されています。 ここでは、食品業界における「企業が取り組むSDGs」として、いくつか事例をご紹介します。 ハナマルキ ハナマルキ株式会社は、イオンアグリ創造株式会社とのコラボレーションで「液体塩こうじ×青いトマトプロジェクト」を2022年7月にスタートさせました。食品ロスの削減につながるだけでなく、「青いトマトがおいしく変身する」と多方面から注目を集めています。 このプロジェクトは、これまで廃棄処分されてきた青いトマトを液体塩こうじと組み合わせて、青いトマトの特徴を生かしたおいしい料理に変身させるというもの。イオン農場ECサイトにて、液体塩こうじと青いトマト、ミニレシピリーフレット付のセット販売を行っています(1セットにつき液体塩こうじ1本と青いトマト6個入りで税込1000円、送料別)。 関連記事: https://reports.shareshima.com/2335/ 森永乳業 森永乳業株式会社では「笑顔を未来につなぐプロジェクト」と題して、サステナブルな社会の実現に向けて、さまざまなプロジェクトを展開しています。プロジェクトの紹介サイトでは、クイズやゲーム、漫画などのコーナーがあり、SDGsの意味や森永乳業の取り組みを子どもから大人まで楽しく理解できます。 同社の商品では、2020年度から「認証カカオ豆」を使用し、カカオ豆を生産する農家の支援や貧困問題、地球温暖化などの解決に取り組んでいます。また商品の包装には、FSC認証紙や再生紙、環境に配慮した紙を使用し、森林資源の保護を目指しています。この他、お菓子の原材料となるパーム油や印刷に使うインキなども環境にやさしいものを使うよう配慮しています。 敷島製パン 敷島製パン株式会社(Pasco)では「ゆめちから栽培研究プログラム」を行っています。このプログラムは、中学・高校生が自ら国産小麦を育て、収穫した小麦でパンを作ることにより、日々食べているものや人とのつながりに対する意識や関心を高めることを目指しています。 日本の小麦の食料自給率は約15%とされ、特にパン用小麦は、そのほとんどを輸入に頼っています。こうした状況を改善すべく開発されたのが「ゆめちから」という品種で、日本の高温多湿な環境でも栽培しやすいという特徴があります。本プログラムには、日本の小麦の生産量を増やして日本の小麦で作ったパンを広めるという想いも込められています。 NPO/NGOが取り組む事例 SDGsに取り組んでいるのは、企業だけではありません。ここではNPO/NGOの取り組みとして、TABLE FOR TWOの事例を紹介します。 TABLE FOR TWO NPO法人「TABLE FOR TWO」は、飢餓と飽食という世界規模で起きている食の不均衡を解決することをミッションにした団体です。2007年に日本で設立して以来、先進国で健康的な食生活を提供しながら、開発途上国の子どもたちに学校給食を届ける活動を行っています。 「TFTプログラム」は、先進国で食事やサービスを受け取ると、その売上の一部が寄付金となって、開発途上国の学校給食になるというものです。この仕組みは大企業の社員食堂などにも採用され、設立から15年間で学校給食数は累計9,000万食以上も届けられています。 まとめ 食品業界では、多様な視点からSDGsの取り組みが行われています。取り組み事例を見ていると、食の分野には、貧困や飢餓、健康状態の改善だけでなく、環境保全やまちづくり、教育の質の向上、パートナーシップなどさまざまな可能性があると感じました。 実は、国連サミットで193ヵ国が全会一致で採択した文書の正式名称は、SDGsではなく「Transforming Our World(我々の世界を変革する)」とされています。SDGsは、この文書の一部に書いてあったものです。 SDGsの本質を考えたとき、「食には世界を変革するための大きな可能性がある」と言っても、過言ではないでしょう。食に関わる者として、あらゆる主体が自ら考え、取り組んでいくことが大切なのかもしれません。
SDGsって何の略?知ればその意味や目標がわかる!企業やNPOの取り組み事例も解説
NEW 2022.11.09

ウイスキーが温暖化を左右する?世界が見習うべきスコッチ業界の誠実さ

泥状の炭が積み重なる湿地帯のことを「泥炭地(でいたんち)」と呼びます。膨大な二酸化炭素を土壌に固定している泥炭地の保全は、地球温暖化対策にとって欠かせない重要な問題です。そこから採取される泥炭(ピート)は、​​伝統的なスコッチウイスキーの製造過程に欠かせない材料の一つでもあります。今、多くのスコッチウイスキー生産者が泥炭地の保全に貢献するため、カーボンニュートラルなウイスキー生産に取り組んでいます。 ピートは使わない、伝統を超える挑戦 ​​スコットランドで何百年も前から蒸溜されてきた「モルトウイスキー」は、原料の麦芽を乾燥させる際にピートをたくことで、芳醇なスモーキーフレーバーを醸します。高熱にさらすと不活性化する麦芽の糖化酵素ですが、ピートはこの酵素の働きを損なわせることなく適度な火力を保つため、伝統的にウイスキー造りの燃料として重宝してきました。 ピートを掘り出す泥炭地は、分解途中の植物が非常に長い時間をかけて堆積して形成されたもので、二酸化炭素の吸収源としてはもちろん、多様な動植物の生息地として貴重な役割を担っています。ウイスキー造りのためにこの貴重な資源を消費すれば、地球に炭素を放出させ、泥炭地の多様な生態系にも影響を及ぼすことになります。 この泥炭地を守るため、ピートを使わない持続可能なウイスキー造りに取り組むウイスキー生産者が増えています。スコットランドで最も古い蒸留所の一つである「フェッターケアン」では、地元のオーク材を使ったたるで熟成するという方法で、ピートを使わずとも香りを損なわない製造方法を試みています。依然としてピートの独特でスモーキーな風味を愛する根強いファンがいるものの、近年はウイスキー愛飲家たちの嗜好が多様化し、ピートを完全に排除したウイスキーが受け入れられやすくなっています。 2050年を見据えたスコッチ業界の選択 ​​スコットランド西海岸で2017年に設立された「ノックニーアン蒸留所」も、ピートを使わない持続可能なウイスキー生産に挑んでいます。創業者の女性、アナベル・トーマスは、スコッチウイスキーの価値観を根本から変えようと、自然に調和したウイスキー造りを明確に打ち出しています。 ノックニーアン蒸留所は、ピートを完全に使わないという選択を始めとし、バイオマス発電を主とした蒸留所の設計など、あらゆる環境に配慮した取り組みに徹し、イギリスの蒸留所として初めてカーボンゼロ認証を獲得しました。 こうした流れの中、2021年にスコットランド・グラスゴーで開催されたCOP26(気候変動枠組条約締約国会議)でも、泥炭地の保全が議題に上がりました。スコッチウイスキー生産量の95%以上を占めるスコッチ・ウイスキー協会(SWA)は、スコットランドの泥炭地を積極的に保全し、2035年までに回復させることを約束しています。SWAでは2009年以降、温室効果ガスの排出量を34%削減。イギリス政府は2050年のカーボンニュートラル達成を掲げていますが、SWAは10年前倒しで目標達成することを目指しています。 スコッチウイスキー業界の誠実な姿勢が、世界中のファンを魅了し続ける、一つの要因になっているのでしょう。 
ウイスキーが温暖化を左右する?世界が見習うべきスコッチ業界の誠実さ
NEW 2022.11.08

規格外の野菜を有効活用で「隠れ食品ロス」を削減

消費者の食品ロスへの関心が高まる中、規格外野菜を有効活用する動きが進んでいます。今回の記事では、ちまたで「隠れ食品ロス」と呼ばれる問題について言葉の意味を解説し、そうした問題をビジネスで解決しようとする事例を紹介します。 「隠れ食品ロス」とは? 色や形、大きさが市場出荷の規格を満たしていない野菜は「規格外野菜」と呼ばれます。規格外野菜の多くは「外観が基準から外れている」というもので、味は通常販売されている野菜と変わりません。 規格外野菜はカット野菜やジュース、加工食品に利用されているものもありますが、約3~4割は廃棄されている現実があります。しかし、規格外野菜は市場に出回る前に廃棄されるケースが多いため、農林水産省が発表する食品ロスの統計には含まれていません。 多くの人が知らないところで規格外野菜が捨てられてしまう問題は「隠れ食品ロス」と呼ばれ、食品ロスと共に解決が求められています。 ビジネスで規格外野菜の活路を見出す 隠れ食品ロスを削減するために、これまでとは異なる方法で規格外野菜の加工や販売に取り組むビジネスが盛んになっています。いくつかその事例を見てみましょう。 最初の事例は、「おやさいクレヨン」。グラフィックデザイナーが開発したクレヨンで、優しい色合いが魅力的です。規格外を理由に廃棄されてしまう野菜で作られていて、小さな子どもも安心して使えます。 次に紹介するのは、「VEGHEET(ベジート)」。同社が展開している規格外野菜を使った野菜シートは、料理を巻いたり飾ったりする時に使えるだけでなく、水に溶かして野菜スープにするなど、料理の材料として活用することもできます。原材料は野菜と寒天のみで、国際基準の安全性を満たしています。また、規格外野菜を定価で買い取ることにより、農家の支援にも貢献しています。 最後の事例は、「UP FOOD PROJECT(アップ・フード・プロジェクト)」。規格外野菜など食のアップサイクルに関する情報が豊富に掲載されているウェブサイトで、フードロス削減に取り組む、生産者、食品製造業者、外食・流通事業者、小売業者、メディア事業者など、多種多様な事業者が参加しています。 本来は流通を促進するために設定された「規格」ですが、規格外野菜が廃棄されるなど、解決すべき課題が見えてきます。今回紹介した3つの事例を参考に、今一度あるべき姿を考えてみる必要があるかもしれません。
規格外の野菜を有効活用で「隠れ食品ロス」を削減
NEW 2022.11.02

パリ市、学校給食を「100%サステナブル」へ

2022年5月、パリ市は「学校給食を100%サステナブルまたはオーガニックにする」と発表しました。パリ市では、これまでにもサステナブルな給食の実現に向けた取り組みを進めてきました。この記事では、パリ市の過去の取り組みと共に、今回の発表の詳しい内容について紹介します。 2027年までに実施、パリ市議会で決定 2022年5月、パリ市議会は2027年までの新しい計画として「学校の食堂で提供する食事を100%サステナブルあるいはオーガニックにする」と発表しました。 この計画の中には、「学校給食に使われる食材の75%はオーガニックなものにする」「100%は季節の食材を取り入れた食事にする」「50%を市から250キロメートル以内で生産された食材にする」などの取り組みが含まれています。 パリ市が学校給食のサステナブル化に向けた取り組みは、2009年に始まりました。さまざまな試行錯誤により、サステナブルな食材の使用率は2008年の8%に対して、2019年には53%に到達。こうした経緯を踏まえて、今回の計画が発表されました。 ベジタリアンメニューの選択肢も全員に 2027年に向けて、多様な視点から取り組みが盛り込まれていることも、今回の計画の大きな特徴です。 例えば、常にベジタリアンメニューを選べるようにすることや、週2回はベジタリアンメニューを提供するという計画もあります。また、肉や乳製品、卵やアニマルウェルフェア(動物福祉)に配慮した生産者から購入し、魚などの魚介類は責任ある漁業で採集されたもの、チョコレートはフェアトレードのものを使用することが定められています。 他にも、健康に配慮したメニューづくりとして、食事に含まれる塩分や糖分の削減や健康に被害を及ぼす添加物を使わないこと、食品に触れる部分にはプラスチックを使用しないことも規定されています。 給食は栄養を摂取するだけでなく、地域の食文化を学ぶきっかけにもなります。給食を通してサステナブルな食習慣を身に付けておくと、その後の人生に大いに役に立つでしょう。しかし、サステナブルと呼ぶ基準があいまいであるという指摘や、ベジタリアン食について子どもの発育への影響から心配の声も出ています。 2027年に向けて、どのように取り組みを推進していくのかー。その革新的な取り組みに、世界中から注目が集まっています。
パリ市、学校給食を「100%サステナブル」へ
NEW 2022.11.01

日本最大の青果市場で生まれた食品ロス削減のサービス

日本最大の青果市場である「大田市場」(東京都)の仲卸業者が抱えていた悩みから生まれた、ある食品ロス削減のウェブサービスが消費者から好評を得ています。その名は「みたあじ」。「みためとあじはちがう店」という直球のネーミングでユニークなサービスを展開しており、規格外野菜を有効活用する画期的な仕組みとして、注目を集めています。 「規格外野菜をおいしく届けたい」 従来、野菜の選別や出荷作業をする過程で市場の規格に該当しないものが発生すると、その多くは廃棄されていました。けれど実際には、サイズが異なっていたり、多少の傷があったりしても、味はほとんど変わらずおいしく食べられるものばかりです。そこで、仲卸業者は「規格外野菜を消費者においしく届けられないか」と頭をひねりました。そこで彼らが考え出したのが「みたあじ」です。 みたあじでは、ネットショップを経由して野菜を市場から直送しています。小売を経由する通常の販売ルートとは異なるため、収穫したばかりの新鮮な野菜を消費者に届けることができます。2021年2月にサイトの運用が開始されてから、口コミやSNSなどで話題になり、ファンを集めています。 一般消費者向けに販売している商品の中で最も人気があるのは「みたあじ・野菜おまかせ2,000円パック」。野菜と果物が10~12種類程度入っていて、2~3人の家族向けです。市場の様子を見て品目が決まるため、中身はその日によって異なります。 飲食店や流通・小売事業者向けの大量セットのラインアップもあります。「食べ物を大切に、フードロスをなくす」というみたあじのコンセプトに共感する企業が参加し、利用している事業者は、みたあじのホームページで「食の輪サポーター」として紹介されています。 利用者に寄り添い、課題を乗り越え みたあじには「自分では買わない野菜や果物に出合える」「手軽にSDGsや社会貢献に取り組める」といった魅力があります。 一方でサイトをオープンしてから、利用者の声などを通じて見えてきた課題がありました。それは、規格外の野菜や果物は通常のものに比べてデリケートであるということです。形状に凹凸があるため配送時に傷が付きやすかったり、傷口から傷みやすかったりという問題がありました。この課題を解決すべく、みたあじでは昔ながらの知恵をヒントに、野菜や果物に応じた梱包方法を採用しています。 また、利用者が野菜や果物の状態を適切に判断できるように「どこまで食べられるのか」を見極めるポイントを伝授しています。利用者に寄り添ったサービスであることも、みたあじが人気を集める大きな理由となっています。
日本最大の青果市場で生まれた食品ロス削減のサービス
2022.10.25

セブンカフェ、マイボトル利用の実証実験。実店舗導入へ課題探る

セブン-イレブン・ジャパンは2022年9月1日、セブン-イレブン店舗内「セブンカフェ」でのマイボトルの利用促進に向けた実証実験を始めました。同社が推進するサステナビリティ活動の一環として行われていて、参加者からは前向きな感想が寄せられています。同社は実店舗での本格運用を視野に、今回の実験結果を生かしていく方針です。 本部ビルで検証、従業員の意識変革から 実証実験は、東京都内にあるセブン-イレブン・ジャパン本部ビルの5階に、カフェマシン2台とボトル洗浄機を設置して行われました。約500人の従業員が対象で、期間は9月30日までの30日間。社員にリユース可能なボトルを配布し、「金銭的な負荷があるほうが実用化に向けて有効な効果が得やすい」との理由から有料で実施しました。 カフェマシンは、店頭で利用されているセブンカフェ自販機をマイボトルが入るように富士電機が改良しました。コーヒー豆は、味の素AGF社が提供したブラックコーヒーのホットとコールド(それぞれR・Lサイズ)の4種類を使用しました。 主な目的は、従業員の環境への意識向上や紙カップやプラスチックカップなどの産業廃棄物の削減効果を検証することです。マイボトルの底に付けられたタグが読み取り機で認証されることにより、利用頻度などが分かる仕組みになっていて、このデータを基に分析が行われます。 「コーヒーが冷めにくい」と好評の声 社員に配布されたボトルはリユースが可能で、真空断熱構造でコーヒーのおいしさを長時間保温・保冷でき、密閉構造のふたにより持ち運びにも便利な仕様です。 また、パナソニックは、同社が開発したマイボトル専用の高速自動ボトル洗浄機を提供。高温水の高圧水流により、洗浄機にボトルをセットすれば約45秒でボトル内部とふたの洗浄を行うことができます。コーヒーを淹れる前に洗浄機を使えるので、ボトルを清潔に保つことができます。 参加した社員からは「取り組みに参加できて非常にうれしい」「マイボトルだとホットが冷めにくい」「洗浄機とセットになっているのはうれしい」という声が挙がっていて、特に「便利さ」について高い評価が集まっています。 実店舗での運用時期は現時点では未定ですが、将来的な導入に向けて、利用状況を確認しながら課題を抽出していく予定です。
セブンカフェ、マイボトル利用の実証実験。実店舗導入へ課題探る
2022.10.19

バナナの皮をバイオ燃料に。廃棄物利用で脱炭素社会目指す

動物や植物などから生まれた有機性資源の「バイオマス」。具体的には森林の間伐材や食品廃棄物などから得られるバイオマスエネルギーは、カーボンニュートラルかつ再生可能であるという点から、気候変動対策への効果が期待されています。そうした中、スイスの研究者たちが、バナナの皮から再生可能なバイオマス燃料を抽出する方法を発見しました。本来なら廃棄されてしまう物を利用して再生可能エネルギーを生み出すという画期的な方法です。 光の照射でバナナの皮から水素を取り出す 2022年1月、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)に拠点を置く科学者チームは、バイオマスエネルギーの画期的な抽出法を発表しました。それは、乾燥したバナナの皮の粉末から、水素やバイオ炭などの資源を抽出するというものです。乾燥バナナの皮1kgから約100リットルの水素と330gのバイオ炭が生成されます。 特に水素は、使用過程で二酸化炭素を排出せず、多様な資源から得られるという供給源の安定性から、脱炭素社会の鍵とされるエネルギーです。研究チームが発表した水素抽出法は、実にシンプルなものです。まず、炭素、水素、酸素など有機物をたくさん含むバナナの皮を、105度で24時間乾燥させ、粉末にします。これを不活性ガスで満たしたステンレス製の容器に入れて光を照射。わずか数ミリ秒という速さで分解は完了します。 ポイントは、写真撮影のフラッシュにも使われている「キセノン閃光ランプ」で照射することです。極めて短時間に明るく照らすこの白い光は、強力なエネルギーで物質の化学反応を促進します。光と熱で一瞬にして1000℃以上という高温に達することで強力なエネルギー変換が起き、これまでなかった水素抽出法が実現しました。 真のカーボンニュートラル、画期性が評価 欧州連合(EU)は、2050年までに二酸化炭素の排出量と除去量を差し引きゼロにする脱炭素化(カーボンニュートラル)の施策を強化しています。ただ現実には、バイオエネルギーの生産工程で、二酸化炭素が排出されるケースは珍しくありません。それは、高温の加熱処理をしてエネルギーを分解・抽出する場合、大量の化石燃料が必要となるからです。 生産工程に生じるこの矛盾は、バイオマスエネルギーの生産にとってのネックでした。しかし、光を照射してバナナの皮から水素を抽出する方法は、この問題をクリアーした画期的な方法です。それどころか、水素と共に得られる副産物のバイオ炭は、二酸化炭素を吸収して閉じ込める「炭素貯留効果」があります。バイオ炭は、酸化した土地を中性化するなど土壌改善効果も確認されていて、農業資材としての活用も期待されています。 原料のバイオマスはバナナの皮以外に、トウモロコシの芯、オレンジの皮、コーヒー豆、ココナッツの殻なども応用できる見込みがあると言われています。将来的には、タイヤなどの産業廃棄物を利用するなど、さらなる発展の可能性も秘めています。
バナナの皮をバイオ燃料に。廃棄物利用で脱炭素社会目指す
2022.10.12

中国で人気の「ゼロカーボン食品」、グローバル企業で開発進む

昨今の中国では、野菜や牛乳などさまざまな種類の「ゼロカーボン食品」が登場し、注目を集めています。温室効果ガス削減への効果も期待され、グローバル企業ではゼロカーボン食品を開発する動きも進んでいます。この記事では、ゼロカーボン食品の魅力と共に、グローバル企業の取り組み事例について紹介します。 温室効果ガスをゼロに抑えた食品 ゼロカーボン食品とは、食品を生産する過程で発生する温室効果ガスの排出量をマイナスまたはゼロに抑えたもののこと。温室効果ガスは、食品の研究開発の段階から原料の栽培・収穫(飼育・養殖)、加工、流通、小売、貯蔵などさまざまな工程で排出されます。 国連グローバル・コンパクト(UNGC)が2021年に発表した研究報告書「企業のカーボンニュートラルルートマップ」では、人口増加や肉食の増加などに伴い、これから数十年間で農業と食品業界のCO2排出削減のハードルが大幅に上がると示されています。 こうした状況の中、中国のスーパーマーケットでは、ゼロカーボン牛乳やゼロカーボンヨーグルト、ゼロカーボン野菜などが販売されるようになりました。食品が食卓に上るまでの一連の過程でゼロカーボンを実現。こうした食品を食べることで、CO2の排出量を減らすことができます。 中国で開発を主導するグローバル企業 中国に30年以上進出している大手食品メーカー「ネスレ」では、低炭素と環境保護を意識したコーヒー製品を展開しています。サステナブルな製品やパッケージを採用したり、コーヒーマシンに再生できる原材料の使用割合を増やしたりする取り組みを進めています。 また、フランスの食品企業「ダノン」では、2022年4月に中国の生産工場でカーボンニュートラルを実現。さらに、二酸化炭素貯留技術を持つランザテック社と提携して、化石燃料によるパッケージを徐々に減らす方針を示しました。 ゼロカーボンを推進するためにはいくつもの試練があり、ゼロカーボン食品を導入することは簡単なことではありません。その一方で、こうした転機を「チャンス」と捉えて新しい取り組みを始める企業が出てきています。
中国で人気の「ゼロカーボン食品」、グローバル企業で開発進む
2022.09.30

青いトマトがおいしく大変身!液体塩こうじでつくる食品ロスのない社会〜醸造の奥深さを知るみそメーカーだからできるSDGsプロジェクト〜

昨今、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けて食品業界ではさまざまな取り組みが行われています。2022年7月、ハナマルキ株式会社とイオンアグリ創造株式会社のコラボレーションによる「液体塩こうじ×青いトマトプロジェクト」がスタート。食品ロスの削減につながるだけでなく、「青いトマトがおいしく変身する」と多方面から注目を集めています。 そこで今回は、ハナマルキのマーケティング部長の平田伸行(ひらた・のぶゆき)さんとマーケティング部営業推進室でレシピ開発担当の松田有加(まつだ・ゆうか)さんへの取材から、プロジェクトの魅力や商品開発に至る経緯、目指す未来像についてお伝えします。(取材・構成=松橋かなこ) ハナマルキが食品ロス対策に取り組む理由 1918(大正7)年に長野県で創業し、日本を代表するみそメーカーとして、食卓に欠かせない商品を提供し続けてきたハナマルキ。近年ではSDGs達成や持続可能な社会の実現に向けて、「安心・安全」や「次世代の成長支援」「自然との共生」「多様性の促進」という4つの柱を軸に活動を展開。その一つとして「液体塩こうじを使用することで食品ロス削減」の取り組みを推進しています。 食品ロスとは、本来食べられるにもかかわらず捨てられている食品のこと。農林水産省が公表した2019年度の日本の食品ロスは570万トン。世界には全人口を賄えるだけの十分な食糧がある状態でありながら、8億人が飢餓に苦しんでいると言われています。こうした状況を受けて、行政にとどまらず企業やNGOなどでも食品ロス削減のチャレンジが盛んに行われています。 ハナマルキが取り組む「液体塩こうじ×青いトマトプロジェクト」は、これまで廃棄処分されてきた青いトマトを液体塩こうじと組み合わせて、青いトマトの特徴を生かしたおいしい料理に変身させるというもの。イオン農場ECサイトにて、液体塩こうじと青いトマト、ミニレシピリーフレット付のセット販売を行っています(1セットにつき液体塩こうじ1本と青いトマト6個入りで税込1000円、送料別)。 実は、液体塩こうじを使った食品ロス削減の取り組みは、これが初めてではありません。2019年7月、国連WFP協会主催「Zero Hunger Challenge for AFRICA 食品ロス×飢餓ゼロ」に参画。SNSキャンペーンに、野菜や果物の切れ端や皮などを使った液体塩こうじのレシピ4品を披露しました。ここでの想いや経験が、青いトマトプロジェクトにつながっています。 液体塩こうじと青いトマトの出合い 液体塩こうじと青いトマトは、どのようにして出合ったのでしょうか。平田さんが出張料理人の工藤英良(くどう・えいりょう)さんに「トマトと液体塩こうじを組み合わせたメニューをPRしたい」と相談したのが、その始まりです。工藤さんは、カナダや中国、フランスの大使館で料理人を約10年間務めた経験を持っています。平田さんがおすすめのトマトを尋ねてみると、工藤さんは「イオン農場のトマトが抜群においしい」と推薦。農場に連絡すると「ぜひ見学に来てください」と、話はトントンと進みました。 2021年9月、平田さんは埼玉県久喜市の「イオン埼玉久喜農場」を訪問しました。そこで目にしたのは、山積みにされた青いトマト。これは一体どういうことだろうと思い、農場長の髙橋寛(たかはし・ひろし)さんに質問しました。 トマトは花が咲いて実を付けると、緑色から赤色に変化します。農場ではトマトを一定期間育てた後新しい苗に植え替えますが、その時にまだ緑色のトマトは出荷することができません。平田さんは、髙橋さんとのやりとりの中で「かなりの量の青いトマトが廃棄されている」という現状を知りました。 青いトマトは市場に出回りませんが、実際に目にした光景はショッキングなものでした。そして、トマト栽培に情熱を注いでいる髙橋さんにとって、「青いトマトも真心込めて育てた大切な存在に変わりない」という言葉にも心を動かされました。 平田さんの頭に、あるアイデアが浮かびました。それは、青いトマトを液体塩こうじと組み合わせて、セット販売するという企画です。その場で髙橋さんに持ちかけてみると、 「それはいいアイデアですね!」と前向きな返答が。二人は意気投合し、具体的な検討へと進んでいきました。 醸造の「プロ」の力でおいしい新商品に ハナマルキでは液体塩こうじと赤いトマトを組み合わせたメニューをそれまでにも開発していました。しかし、青いトマトと液体塩こうじの組み合わせは実際に試したことがありませんでした。 このプロジェクトを成功させるには「おいしいレシピ」が必要でした。社内に持ち帰って相談したのが、液体塩こうじのレシピ開発を担当している松田さんです。 平田さんから相談された時のことを松田さんはこう語ります。「青いトマトが食べられるということは知っていたものの、実際に扱うのは初めてでした。不安な気持ちがなかったわけではありませんが、液体塩こうじで『青いトマトでもきっとおいしくできるだろう』と思ってはいました」。 試しに、松田さんが青いトマトを刻んで液体塩こうじに漬けてみたところ、独特の青臭さが消えて、想像以上においしく食べられることを確認。それだけでなく、青いトマトだからこそ出せる「爽やかな酸味」を発見しました。青いトマトならではの強みを最大限生かすべく、液体塩こうじに漬けた青いトマトを使って、繰り返し料理の試作に取り組みました。 イオンアグリ創造側を交えて2021年11月に開催した試食会では、「確かにこれはおいしい」「ぜひ商品化しましょう」と大好評。「さわやかトマトキーマカレー」「シャキシャキトマトピクルス」など5つの料理を厳選し、レシピをまとめたリーフレットの制作を進めて、2022年7月から商品の販売が始まりました。 「青いトマトは赤いものに比べて硬さがあって水分が少ないです。通常の液体塩こうじのレシピであれば30分~1時間漬け込みますが、青いトマトは漬け込み時間をそれより長い一晩に設定しました。家庭でも手軽に実践しやすく、しかも青いトマトの特徴を生かした絶品料理が作れるようにと工夫を凝らしました」と、松田さんはレシピ集のポイントを話していました。 レシピを基に調理、実食してみると 今回の記事制作に際して、私自身も青いトマトと液体塩こうじを組み合わせた料理を試作して、食べ比べてみました。調理に使ったのは、イオン農場SHOPで販売されている液体塩こうじと青いトマトがセットになった商品です。まずは、写真左上から時計回りに「1.そのままの青いトマト」「2.青いトマトを液体塩こうじに漬けたもの」「3.2を加熱したもの」「4.2を刻んで加熱したドライカレー」と4種類を用意して、味を確かめてみました。生食ではやはり青臭さが気になるものの、液体塩こうじに半日程度浸けるとその香りが軽減し、別物に変わります。加熱すると、酸味がよりマイルドになり、ほのかな甘味が出るのが印象的でした。 松田さん考案のレシピを基に、他の具材と調味料を加えて作ったキーマカレーは、後味として青いトマトの爽やかな香りとシャキシャキとした食感が楽しめました。まさに、「青いトマトならではの一品」です。家族全員で試食しましたが、「おいしい」「キーマカレーは青いトマトで作ってほしい」という思った以上の人気ぶりでした。 青いトマトプロジェクトが目指す未来 いろいろな人との出会いと情熱によって育まれてきた青いトマトプロジェクト。最後に、この取り組みの先にどのような未来を描いているのかを平田さんと松田さんに尋ねました。 「農場を訪れた時、食品ロスの現状を目の当たりにして、食品ロスへの取り組みの必要性を強く感じました。今回のこの液体塩こうじと青いトマトの取り組みを知っていただくことで、食品ロスへ取り組む方がさらに増えていくとうれしいですね。」(平田さん) 「青いトマトは、ハナマルキと一般消費者とのコミュニケーションにも役立っています。青いトマトに限らず、食べられるのに捨てられている食材がたくさんあります。そうした食材をおいしく食べる方法を、これからも提案していきたいです」(松田さん) 実際、ハナマルキの公式Twitterアカウントで今回のプロジェクトについて投稿した時に、家庭菜園でトマトを育てている人から「青いトマトの使い方が分からずに困っていた」というリアクションがあったそうです。 実はわが家でも、「どうして今日は青いトマトなの?」と子供から尋ねられ、トマト栽培や食品ロス、食の多様性についての話になりました。「おいしい」という食体験から、家族みんなで食のあり方について考えるーー。青いトマトはそうした貴重な時間を提供してくれる、とても心強い存在です。  
青いトマトがおいしく大変身!液体塩こうじでつくる食品ロスのない社会〜醸造の奥深さを知るみそメーカーだからできる…
2022.09.28

自社商品への情熱ゆえ?環境配慮のマーケティングに潜むリスク

スウェーデンに拠点を置き、20か国で植物性ミルクを販売する大手企業「Oatly(オートリー)」。環境配慮をアピールする同社の広告表現が誇張されており、消費者に誤解を招きかねない内容だとして、イギリス広告基準局(ASA)が禁止措置を講じました。環境への取り組みをマーケティングに利用する企業が増える中、果たしてそれがエビデンスに基づくふさわしい内容なのか、環境意識の高い欧州で問題視されるようになっています。その背景には、日本でも浸透している「サステナブル」などの言葉の定義のあいまいさがあるようです。 植物性ミルクの最大手、100件以上の苦情が殺到 ASAは2021年9月、根拠がなく誤解を招くような環境に関する主張を宣伝する企業に対して、以前より厳しく取り締まる姿勢を明らかにしました。そうした中、自社の植物性ミルクが一般的な牛乳より優れており、肉や乳製品を摂取することが環境に悪いと訴えたオートリーの翌年1月の広告に対し、自社製品を有利にしようと環境配慮を誇張しているのではないかと、市民や団体などから100件以上の苦情が寄せられました。 イギリスの広告分野における独立規制機関であるASAは、オートリーの広告は内容を裏付けるだけの十分な根拠を示しておらず、消費者の誤解を招くものであったとし、苦情の大半を支持し、同社に対して広告の禁止を言い渡したのです。 オートリーは、この経緯を全面的に受け入れ、より科学的な根拠に基づいた分かりやすい表現を心掛けるべきだったとして、禁止を受けた広告を削除しました。ただし、苦情が寄せられた広告すべてに環境配慮を誇張した表現があった訳ではありませんでした。一部については、客観的に実証された内容であり苦情の内容に当たらないと、ASAから掲載の継続を認められています。 環境配慮を装う「グリーンウォッシュ」が問題に 気候変動対策が迫られる今、企業がマーケティングにおいて「サスティナブル」や「環境に良い」といった言葉を使う機会は急増しています。そうした中で顕在化してきた問題が、自社のブランドが「環境に優しい」ことを強調し、消費者の関心を引くやり方です。 中には環境意識の高い消費者をあざむく悪質なものもあり、「グリーン=環境に配慮した」と「ホワイトウォッシング=都合のいいようにごまかす」を合わせた造語で、「グリーンウォッシュ(グリーンウォッシング)」と呼ばれています。 うそやでまかせが横行すれば、消費者が環境配慮をうたう企業を信用しなくなるばかりか、きちんと環境問題と向き合う誠実な企業まで疑われる皮肉な状況が生まれます。実際には悪意がなくとも、商品のメリットを熱心に訴えたいがあまりに、グリーンウォッシュと捉えられてしまうケースもあります。このような事態を避けるには、情報発信の際は裏付けとなる客観的なデータに基づき、あいまいな表現は控えなければなりません。 企業側が真摯な姿勢を示すことはもちろん、消費者側が冷静に判断することも求められます。「サスティナブル」などの言葉を巧みに利用して、感情に訴えかけるグリーンウォッシュには注意が必要です。
自社商品への情熱ゆえ?環境配慮のマーケティングに潜むリスク
2022.09.22

ドール初!バナナの量り売り。目指すは食品ロス削減と脱プラスチック

2022年6月から、株式会社ドールはバナナを量り売りする企画を始めました。フルーツロス削減と脱プラスチックに役立つ新しい試みとして話題を集めています。人にも環境にも優しいエシカルな行動を体現する同社の取り組みを紹介します。 プラスチック袋で1房包装の常識を覆す 通常のバナナは、1房ごとにプラスチック袋に包装されて販売されることが一般的です。1房につき4~5本入っていて「食べきれずに廃棄している」という消費者の声の他、「少ない本数で購入したい」「熟成度合の異なるバナナの食べ比べをしたい」といった要望が、以前からドールに寄せられていたそうです。 こうした背景から、バナナを必要な分だけ購入できる「量り売り企画」が店頭でスタート。この取り組みにより、食品ロスとプラスチックゴミの削減が期待されています。 量り売りでの購入方法は、まず、袋詰めされていないバナナを買いたい量だけはかりに載せます。すると、重さに応じて価格が表示され、機械から出てきたラベルを紙袋に貼って、レジで代金を支払うという流れです。 今回の企画は、イトーヨーカ堂やヤオコーなどの量販店と提携して行われています。購入方法を店頭で説明するスタッフを配置するなど、消費者が利用しやすいように工夫が施されています。 「エシカルバリューチェーンプログラム」として展開 ドールではこの量り売り企画を第一弾として、「バナナエシカルバリューチェーンプログラム」を展開しています。このプログラムは、バナナを生産から消費者の食卓に上るまでのプロセスを通して、人や社会、地域、環境に優しい取り組みを行い、その価値をつないでいく試みです。 量り売り企画と併行して、バナナの皮などの生ごみを分解・熟成して堆肥を作る「コンポスト企画」も実施しました。この企画は、量り売りでバナナを購入した人の中から参加者を募り、当選者にコンポストをプレゼントして家庭での生ごみの堆肥化のプロセスを体験してもらうというものです。 こうした一連の取り組みが注目され、同プログラムは、環境省の「令和4年度 地方公共団体及び事業者等による食品廃棄ゼロエリア創出の推進モデル事業等」に採択。食品ロス削減と食品リサイクルを実効的に推進するための先進事例と評価されています。
ドール初!バナナの量り売り。目指すは食品ロス削減と脱プラスチック
2022.09.15

人と環境にやさしい!注目のプラントベース(植物由来)ミルク​とは

地球環境や自身の健康のことを考えて、プラントベースの食事を選ぶ人が増えてきました。牛や豚の肉を食べないことはもちろんですが、いざ実践してみると、毎日の食卓に欠かせないものが、実は動物由来の食品であったことに改めて気付かされます。その代表格が牛乳です。 プラントベースフードに興味は持ったものの、「牛乳なしではやっていけない・・・」と挫折しそうになっている方も、安心してください。プラントベースフードへの関心が高まる中、多種多様なプラントベースミルクが登場し、美味しいものを選べるようになってきました。 注目のプラントベースミルクをご紹介します。 欧州で人気な「ポテトミルク」 さまざまな種類のプラントベースミルクが次々と登場する中、次にブームになると予測されているのが「ポテトミルク」です。ヨーロッパで新商品が発売されたことを受け、人気に火がつきました。 ジャガイモ由来のプラントベースミルク 名前の通り、ジャガイモを主原料として作られたポテトミルク。従来のポテトミルクは粉末タイプのみでしたが、スウェーデン発のブランド「DUG」が液体タイプのものを発売したところ大ヒット商品に。2021年10月にイギリスの高級スーパーマーケットが「2022年にポテトミルクが人気になる」と予測し、一躍注目を集めました。 ポテトミルクは、ジャガイモ特有の香ばしさがあり、クセが少なく、飲みやすいのが特徴です。植物性ミルクによくある水っぽさも少なく、ミルクらしいクリーミーな味わいがあります。DUGのポテトミルクの原料には、ジャガイモの他に、菜種油やビタミン、香味料、えんどう豆のタンパク質、チコリ由来の食物繊維などが使われています。 栄養豊富なのに低カロリー イギリスでは植物性ミルクの人気が高く、利用する人が増えています。市場調査会社ミンテルの調べでは、植物性ミルクの利用率は2020年の25%に対して2021年には32%に達し、過去最高を更新しています。 さまざまな新商品が登場する植物性ミルク市場にあって、ポテトミルクが注目される理由は大きく2つあります。1つ目は、環境にやさしいということ。ジャガイモは栽培しやすく、大豆やアーモンド、オーツなどの他の植物性ミルクの原料と比較して、約2倍も効率よく土地が利用できるとされています。 また、原料の調達から使用後のリサイクルに至るまでの全工程で排出される温室効果ガスと水の消費量を示した「カーボンフットプリント」と「ウォーターフットプリント」の数値は極めて低く、環境への負荷を大幅に減らすことができます。こうした事実を踏まえて、DUGは「ポテトミルクは最もサステナブルな代替ミルクである」と述べています。 2つ目は、カルシウムや食物繊維などの栄養が豊富であるにもかかわらず、糖質や脂質が少なく低カロリーであること。アレルゲンとされる乳糖や大豆、グルテン、ナッツなどは含まれていません。味だけでなく、人にも環境にもやさしいポテトミルク。日本ではあまり知られていませんが、人気が出る日もそう遠くないかもしれません。 味だけじゃない「オーツミルク」 ポテトミルクと並ぶ、注目株は「オーツミルク」。おいしさはもちろんのこと、その健康効果が話題を集めています。 オーツ麦のプラントベースミルク オーツミルクの主原料は、オーツ麦。別名「えん麦」とも呼ばれる穀物の一種であり、オートミールやグラノーラなどにも使われています。オーツミルクは、オーツ麦を水に浸して混ぜ、裏ごしして作られます。他の植物性ミルクに比べて、味にクセが少なく、クリーミーでほのかな甘みがあるのが特徴です。 市販のオーツミルクは無添加の素朴な甘さのもののほか、砂糖などで甘さを付けたものや栄養素を加えたものなどさまざまなタイプがあります。インターネット通販やスーパー、コンビニエンスストアなどでも購入することができます。 オーツミルクにはさまざまな栄養が含まれており、特に食物繊維を豊富に含有しています。注目すべき点は、オーツミルクの食物繊維には、ベータグルカンが多く含まれているということ。ベータグルカンは悪玉コレステロールの抑制や生活習慣病の予防に効果が期待されています。 他の植物性ミルクと比較して、オーツミルクは原料が穀物であるため、カロリーや糖質はやや高いとされています。ただクリーミーな風味があり、物繊維が豊富に含まれていることから、少量でも満足感を得やすいです。 オートミールと好相性 オーツミルクはそのまま味わうこともできますが、アレンジすることで飽きることなく楽しめます。簡単なアレンジ方法としては、牛乳の代わりにオーツミルクを使ってカフェオレや抹茶オレを作ること。このほか、昨今ブームになっている「ゴールデンラテ」に使うのもよく合います。ゴールデンラテとは、ターメリックというスパイスに牛乳などのミルクを加えて温めた飲み物のこと。栄養価の高いターメリックを手軽においしく摂取できます。 また、オートミールにオーツミルクを加えて朝食を作るのもおすすめです。ホットケーキや焼き菓子などを作る際に、牛乳や豆乳の代わりにオーツミルクを使うのもよく合います。普段の飲み物やお菓子づくりなどにオーツミルクを使ってみると、意外なおいしさを発見できるかもしれません。 最も身近な「アーモンドミルク」 プラントベースミルクの中では割と知られている古株かもしれません。最後に、「アーモンドミルク」について紹介します。 牛乳・豆乳に次ぐ「第3のミルク」 アーモンドミルクはその名の通り、アーモンドを原料にしたプラントベースミルクです。水に浸してふやかしたアーモンドをミキサーなどで細かく砕き、ろ過して作ります。ちょうど大豆から豆乳を作るのと同じような作り方です。舌触りはさらりとしていて、味わいもすっきりとしており舌残りもあまり感じられない軽い飲み口のものが多いという特徴があります。アーモンドの香り、風味がありますが、豆乳のような癖はなく、飲みやすいと感じる人が多そうです。 市販品は、そのタイプにより飲みやすくおいしい味重視のもの、砂糖不使用でアーモンドミルク本来の栄養重視のもの、さまざまなフレーバーつきのものなどラインナップが豊富です。アーモンドの含有率も製品により約3~12%と幅があります。栄養成分表示などで確認してみると良いでしょう。 スーパーの乳製品売り場でも販売されていることが多く、気軽に購入できます。牛乳、豆乳に次ぐ「第3のミルク」と呼ばれることもあるようです。 ナッツ由来だから栄養抜群 アーモンドにはオレイン酸、ビタミンE、食物繊維などが豊富で、そのまま食べてもさまざまな栄養を摂取できます。アーモンドミルクでは細胞壁を砕いて液状にしますので、より効果的に栄養素を吸収できるのです。牛乳や投入に比べて低糖質・低カロリーなので、ダイエットにもぴったり。しかも豊富な栄養素で健康や美容面でも効果も期待できます。 なお、市販品では砂糖などの糖分が添加されている商品が多いので、飲みすぎて糖分の過剰摂取にならないように気をつけましょう。またアーモンドアレルギーがある場合にはアーモンドミルクでもアナフィラキシーショックを起こす場合があるので、注意が必要です。 飲料としてそのまま飲むだけでなく、料理に使うのもおすすめです。カレーやポタージュなどスープのベースにすると牛乳を使う時とは一味違った味わいが楽しめます。アーモンドの風味を生かしてスイーツにアレンジするのもよさそうですね。
人と環境にやさしい!注目のプラントベース(植物由来)ミルク​とは
2022.09.14

欧米が注目する「第3の代替肉」。植物性でも動物性でもない新素材

目に見えない菌類を主原料とする​​​​新しい代替肉が欧米で注目されています。代替肉にはさまざまなカテゴリーがありますが、キノコ由来の微生物を培養して作る「第3の代替肉」は、美味しさや汎用性の高さに加え、環境への負荷が少ないのが特徴です。地球環境を守るという点において最も優れた代替肉と言えるかもしれません。  キノコ由来の菌類をベースに生成 環境への負担に配慮して作られる代替肉は、これまで大きく2種類に分けることができました。大豆などを原料とした植物由来(プラントベース)のものと、研究室で細胞を培養する動物由来のもの(培養肉)です。しかし欧米では今、これまでとは全く違う形で作られる「第3の代替肉」に注目が集まっています。それが、菌類などの微生物から作られる代替肉です。 菌類を含む微生物は、私たちの食生活にとって、とても身近な存在です。とりわけ日本はその結びつきが強く、味噌や納豆、日本酒といった発酵食品は伝統的な食文化となっています。また、ビールやパンも同じように、微生物による発酵の作用で作られる食品です。 「第3の代替肉」は、例えるなら、キノコとバイオテクノロジーを掛け合わせて製造するというようなイメージです。主な原料となるのは、キノコの根っこの部分に当たる菌糸体です。糸状菌の集合体である菌糸体は、動物の筋肉組織に非常に似ているため、応用力に優れています。好きな形状、質感、風味で調理することができ、赤身の肉と同じくらいジューシーで柔らかく美味しいという三拍子そろった逸材です。 加えて、タンパク質、鉄分、ビタミン、ミネラルといった栄養素が豊富に含まれている点も、大切なポイントです。糸状菌の集合体である菌糸体は食物繊維も豊富で、食後に満腹感が得られやすく、食事量の調節や体重管理にも向いており、健康食品としても優秀です。 最も環境にやさしい代替肉 近年、地球環境を意識してベジタリアンになる人が増えています。とはいえ、そうした流れを飲み込むような猛烈な勢いで、世界人口が増えているのも揺るぎない事実です。 第3の代替肉の原料になる微生物は、糖分をえさとして培養液の中で育ちます。この微生物と同量のタンパク質を得るには、牛であれば放牧や飼料生産のための広大な農地を必要とします。微生物のえさとなる砂糖を生産するためのコストを考慮したとしても、微生物由来の代替肉は、畜産よりもはるかに省スペースかつ省エネルギーで効率よく製造できます。 ドイツとスウェーデンの研究チームは、2050年までに人が食べる牛肉の20%を菌類由来の代替品に置き換えると、森林破壊を50%も削減できることを明らかにしています。菌類由来の代替肉を増やして、肉牛の数を減らせば、森林伐採を食い止めるだけでなく、牛が排出するメタンガスなどの温室効果ガスを削減できます。 地球環境が危ぶまれる時代に、大きな環境負荷をかけずとも、優れた栄養・食感・味を持つ自然食品を提供してくれる微生物のポテンシャルは底しれません。この新しい代替肉は、私たちの食のシステムを変えていくための重要な足掛かりになるでしょう。
欧米が注目する「第3の代替肉」。植物性でも動物性でもない新素材
2022.09.13

環境意識で割高感をカバー!脱ペットボトルで消費者の心をつかむ

ペットボトルは非常に優れた使い勝手のよい容器ですが、プラスチックごみ問題という環境への影響を考えると、脱ペットボトル・脱プラスチックという方向性を無視することはできません。今回は脱ペットボトルの動きを、大塚製薬のポカリスエット瓶、無印良品のアルミ缶飲料という2つの事例から紹介します。 ポカリスエットはガラスのリターナブル瓶に 2022年7月12日、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、群馬県、茨城県、京都府のイオン・イオンスタイル66店舗で、大塚製薬「ポカリスエット リターナブル瓶」の販売が開始されました。爽やかな水色のガラス瓶は、おなじみのロゴが入っていながらもペットボトルや缶とは異なるガラスの質感が新鮮です。原材料などの表示は王冠への印字で対応しており、ラベルレスで余分なごみも出ません。空き瓶は売り場に併設された循環型ショッピングプラットフォーム「Loop(ループ)」を利用して回収・洗浄・再利用されます。容器を使い捨てにしないことで容器製造にかかる環境への負荷を低減できるほか、リターナブル瓶の循環を消費者が認識することで循環型社会に参加しているという当事者意識をもたらすメリットもあります。内容量は250mlとペットボトルの半分ながら、価格は248円。この248円にはデポジットの瓶代が含まれており、空き瓶を専用ボックスに返却すると77円が戻ってくるシステムです。ペットボトルに比べると高いのですが、リターナブル瓶という話題性、ガラス瓶のデザイン性の高さ、環境への配慮などから売り切れ続出の人気となっています。 無印良品は全ての飲料をアルミ缶へ 1980年のブランド創生時から環境に配慮した商品開発を続けている無印良品は、2021年4月23日から全ペットボトル飲料をアルミ缶へと容器変更しています。アルミ缶は日本国内のリサイクル率がおよそ98%と非常に高い循環型資源です。しかも、再生アルミはバージン素材からアルミを製造するよりも97%もエネルギーを削減でき、省エネルギー効果に優れています。加えて、アルミ缶を採用したことで遮光性が高く炭酸の抜けにくい容器となり、賞味期限が長くなってフードロスの削減にもつながるといううれしい効果もありました。お茶の賞味期限は270日から310日へと40日間、炭酸飲料では180日から270日へと90日間も伸びました。ただ、アルミ缶は中身が見えないため、ペットボトルの透明感に比べると購買意欲をかき立てる力に欠けます。そして、コスト面から内容量が減り、実質的な値上げになりました。しかしながら、無印良品の環境に配慮する姿勢への共感や、SDGsへの配慮から購入する人も多く、ペットボトルで販売していた時と比べても好調な推移を見せているといいます。 消費者も歓迎する環境配慮の意識 どちらの事例も、ペットボトルよりも実質的に高いというデメリットをはねのけて話題を呼び、好評を博しているのが印象的です。価格は購入要因として重要ではありますが、それだけが決定打となるわけではありません。環境への取り組みやペットボトルとは異なる容器の魅力をアピールすることで、価格面でのデメリットははねのけることができると、これら2つの事例が証明してくれています。SDGsという言葉が広く使われるようになり、社会全体の環境意識が年々高まる中、環境に配慮する企業の姿勢は消費者の共感を呼び、高く評価されているといえそうです。
環境意識で割高感をカバー!脱ペットボトルで消費者の心をつかむ
2022.09.08

プラントベースの新メニュー続々と。スタバはソイパティのマフィンを発表

2022年6月1日、スターバックスが「プラントベース」フードメニューを拡充しました。プラントベースの需要が高まりつつある昨今。市場の変化をいち早く捉えた大手企業の動きに、注目が集まります。 スタバの定番「シュガードーナツ」も新登場 スターバックスはサマーシーズン第2弾として“Yori Dori Midori”をテーマにして、おいしい「“ミドリ」”、楽しい「“ミドリ」”、サステナブルな地球の未来に想いを込めた「“ミドリ」”が感じられる商品やサービスを展開しています。その一つとして、プラントベースという選択肢が提案されています。 プラントベース商品は、主な原材料に動物性食材を使わず、植物性食材を使用したものです。今回発表されたフードメニューは、5つあります。朝食や昼食にも適した「スピナッチコーン&ソイパティ イングリッシュマフィン」と「トマト&ソイボール 石窯フィローネ」、「シェイクンミール ソイボロネーゼ」に加えて、コーヒータイムにぴったりの「シュガードーナツ」と「アーモンドミルクの抹茶ムース」です。 イングリッシュマフィンには肉の代わりに大豆を使ったソイパティ、石窯フィローネには豆から作られたソイボールとプラントベースのチーズ(乳不使用)を挟んでいます。どちらも風味が豊かで、食べ応えのある商品です。また、スターバックスの定番商品「シュガードーナツ」は、プラントベースにリニューアルして再登場。「長年愛されてきた従来品に負けないおいしさ」と好評のようです。 カゴメやミツカンもプラントベース商品を展開 スターバックスだけでなく、プラントベース商品の開発に取り組む企業は増える傾向にあります。 カゴメは、プラントベースのレトルトカレーやパスタソース、エスニック料理用のソースなどを販売しています。手軽に利用できるように、一人分のサイズで提供しているのも特徴です。 ミツカンでは、素材本来のおいしさと栄養を最大限に引き出したプラントベース食品「ZENB(ゼンブ)」を展開。野菜を丸ごとペースト状にした「ZENB PASTE(ゼンブペースト)」や黄エンドウ豆100%の麺「ZENB NOODLE(ゼンブヌードル)」など、さまざまなバリエーションがあります。SNSを中心に「おいしい」「身体にやさしい」といった口コミで話題になっています。
プラントベースの新メニュー続々と。スタバはソイパティのマフィンを発表
2022.09.07

米国で話題!一歩先を行く「プラントベースホールフード」とは

植物性の食材から作られるプラントベースの食品は、肉や魚、卵に代わるものとして急速に広がりつつあります。アメリカではプラントベースのホールフードという考え方が登場し、味と健康を両立するとして話題を集めています。日本でも食肉代替の植物性食品が急速に広まる中、一歩先を行くアメリカの最新事情を紹介します。 プラントベースホールフードは未精製・未加工の植物性食品 プラントベースホールフードを一言で説明すると、精製・加工がされていない植物性の食品のことです。プラントベースフードの中でもより自然に近い食品を指し、素材を丸ごと食べることを意味しています。 たとえば、大豆ミートは大豆などの植物性の原料を加工した食品であり、プラントベースフードの代表的な食品です。しかし、加工しているという点から、大豆ミートはプラントベースホールフードには含まれません。 プラントベースホールフードの例としては、野菜や果物、玄米やキヌアなどの全粒穀物、豆類、ナッツなどが挙げられます。プラントベースホールフードの基本は、野菜や果物の皮や茎、種まで食べること。購入する際には、自然栽培で作られたものなど残留農薬の不安がないものを選ぶようにするようにするのがおすすめです。 日本には昔から「一物全体食」という考え方があり、白米よりも玄米を選んだり、野菜や果物は皮ごと食べたりすることが推奨されてきました。プラントベースホールフードは、一物全体食にも通じる考え方と言えるでしょう。 プラントベースホールフードは環境負荷が少なく、栄養が豊富 プラントベースホールフードを取り入れるメリットは、大きく2つあります。1つ目は、環境負荷が少なくて済むということ。食材を丸ごと食べるので食材の無駄が少なく、食品ロスの削減につながります。また、自然栽培などの食材を選ぶことにより、化学肥料や農薬の使用を減らすことができます。 2つ目は、安全な食材を選び丸ごと食べることで、栄養をしっかりと摂取できるということです。野菜や果物の皮には栄養が豊富に含まれているためです。 アメリカで人気が高まっている、プラントベースのホールフード。WHO(世界保健機関)やFAO(国際連合食糧農業機関)においてもその効果が認められていて、今後さらなる注目が予想されます。
米国で話題!一歩先を行く「プラントベースホールフード」とは
2022.09.06

植物由来のえびが話題に。肉から魚に拡大する代替食品

2021年10月、スイス食品大手ネスレがエビ代替食品を開発したことを発表し、一躍注目を集めました。植物由来の原料で肉を代替するプラントベース商品は魚介類にも広がり、ますます勢いを増しています。今回の記事では、植物由来のエビの原材料や特徴と共に、各国で開発が盛んに行われているプラントベースフードの現況を紹介します。 ネスレが植物由来のエビを開発 ネスレはエビの代替食品を開発し、スイスとドイツの一部店舗でテスト販売を開始すると発表しました。同社では植物由来食品の開発に力を入れていて、すでに肉や魚、牛肉の代替品を販売しています。シーフードについては商品ラインナップの拡充を進めている段階で、エビだけでなくヴィーガン用ツナ缶の販売をスタートしました。 今回開発された植物由来のエビは、海藻やえんどう豆、こんにゃくなどの原材料から作られています。エビ独特のジューシーな食感と風味を再現するべく、原材料の選定や加工を行いました。植物由来のエビの利用シーンとして、サラダやパスタ、ピザなどへの展開が想定されています。 30年で100倍に拡大するマーケット 植物由来の代替食材に対する需要は年々高まっていて、世界中で新商品が登場しています。金融大手クレディ・スイスが2021年6月に実施した調査によれば、世界の肉類や乳製品の代替食品の市場規模は2050年までに1兆4000億ドルにも上ると言われています。2021年時点での市場規模は140億ドルなので、約30年間で100倍の規模に拡大するという計算になります。 現時点では代替シーフードの売り上げは少ないものの、植物由来食品の人気は、魚介類にも今後広がっていくと予想されています。こうした流れを受けて、ネスレだけでなく、他の企業も植物由来のシーフードの開発に着手しています。 世界最大規模のタイのシーフード食品加工会社「Thai Union Group」では、「植物由来のエビで天ぷらを提供する」と発表。同社では、カニのハンバーグや点心などをすでに発売していて、今後の展開に注目が集まります。 この他、数々のヴィーガン商品を手掛けてきた「Upton’s Naturals」では、バナナの花を使った魚肉の代替食品を発表する予定。バナナの花は、東南アジアやインドなどでは食材として用いられることも多く、料理すると魚によく似た食感になります。また、米大手スーパー「Trader Joe's」では、プラントベースのシーフードの入荷を検討するなど、シーフードの代替食材の市場規模は確実に拡大しつつあります。
植物由来のえびが話題に。肉から魚に拡大する代替食品
2022.08.31

異常な熱波に苦しむジンバブエ、危機を救うのはアノ農作物⁈

アフリカ南部のジンバブエ共和国。気候変動による異常な熱波が、ジンバブエ国民の生活を容赦なく襲っています。国民のほとんどが小規模農家で自給自足の暮らしをしている同国では、ここ数十年で最悪の経済状態となっています。ところが近年ある作物の栽培に力を入れ始めたことで、復興の兆しが見えてきました。 熱波に負けない農家たちの“救世主” 首都から400キロ以上離れたゴクウェ南部。以前は盛んだったトウモロコシや綿花の栽培は、熱波の影響でほぼ不可能な状態にまでなっています。干ばつになると、トウモロコシなどの通常の作物は2週間も持ちません。そこでこれらに代わる、干ばつに強い作物への移行が急がれていました。 民間の国際協力組織が状況を打開するために動きました。農業ビジネスセンター、通称ABCと呼ばれる組織です。ABCは、ドイツの世界飢餓援助機構 (WHH) が運営し、欧州連合(EU)から資金提供を受けています。 ジンバブエの農業の救世主として白羽の矢が立ったのは、ヒマワリです。ヒマワリは干ばつに強い作物で、1ヶ月もの乾期を生き延びることができます。厳しい経済状況にあるジンバブエでは、農家が必要な資材を購入することも困難ですが、ヒマワリは大量の栄養剤を与えずとも豊作が期待できます。まさにジンバブエの土地柄に適した作物でした。 当時のジンバブエではヒマワリ市場は確立されておらず、多くのヒマワリ農家は零細産業として脇に追いやられていました。そこで、ABCは地域の6000以上の小規模農家と契約を結び、ヒマワリの栽培ノウハウを提供。個別の農家の所得向上を支援しています。ヒマワリの種子からヒマワリ油を加工できることにも着目し、さらなる収益性の向上を模索しています。 ヒマワリに続く期待の作物はマンゴー 厳しい日差しのもとでよく育つマンゴーは、ジンバブエ農業にとって期待の作物です。ところがここ数年、収穫したマンゴーを捨てざるを得ないという事態が相次いでいます。 新型コロナウイルスの大流行により、ゴクウェを含む地方の農家は、都市部に果物を売りに行くことができなくなりました。そこで、ABCは生のマンゴーを農家から買い取り、工場で加工してドライマンゴーとして売り出す支援を始めました。これにより、食べられるマンゴーの廃棄を防ぐと同時に、失業者が多くを占めていた若者世代の雇用を生み出しました。 ドライマンゴーは生のマンゴーと比べて4倍の価格で売れることに加え、国内外の需要も見込める魅力的な商品です。現在、ゴクウェ南部に4つの加工センターを運営するABCは、これまで国内向けだったゴクウェ産のドライマンゴーの販売を海外に広げ、輸出市場を積極的に開拓していく考えです。 ジンバブエの人々に寄り添う一連の支援は、SDGs(持続可能な開発目標)の一つ、「パートナーシップで目標を達成しよう」にも貢献するものとなっています。
異常な熱波に苦しむジンバブエ、危機を救うのはアノ農作物⁈
2022.08.30

代替肉の注目素材!世界で愛されるひよこ豆

肉の代替食材として、豆類を使った食品が数多く登場しています。そんな中、昨今注目を集めているのがひよこ豆です。海外では広く親しまれている豆のひとつですが、日本でもプラントベースフードのニーズが高まるにつれてあらためて注目されています。この記事では、ひよこ豆の魅力とともに、代替肉としても活用できるひよこ豆料理について紹介します。 アジア原産、インドや欧米では一般的 ひよこ豆の原産はアジア西方であり、そこからインドやヨーロッパに広まったと言われています。インドでは、ひよこ豆を割った豆をスープやカレーなどに使ったり、粉状にしたものを小麦粉の代わりに利用したりしています。ベジタリアンの多いインドでは、日常的に使われる豆のひとつです。 ひよこ豆は大豆と同じくらいの大きさです。鳥の頭のような形をしていることからこの名前が付けられました。ひよこ豆は「ガルバンゾ」という名前で呼ばれることもあり、これはスペイン語に由来しています。また、英語でひよこを意味する「チック」に丸い豆という意味の「ピー」を組み合わせて、「チックピー」と呼ばれることもあります。 日本ではひよこ豆はなじみが薄いかもしれませんが、インドや欧米諸国、中近東などでは一般的によく知られた豆です。タンパク質が多く食物繊維が豊富で脂肪分が少ないことから、昨今では食肉に代わるヘルシーな食材として話題を集めています。 市販の水煮缶で簡単!スープやサラダに ひよこ豆はナッツにも似た独特の香りがあり、食感が良く食物繊維が多いことから、満足感を得やすいという特徴があります。乾燥したひよこ豆を食べるためには「水で戻して煮る」という工程が必要ですが、市販の水煮缶を利用すれば、調理の手間を大幅に省くことができます。 ひよこ豆の水煮缶があれば、スープやサラダ、カレーにそのまま利用できます。また、中東や地中海地域の定番料理「フムス」や「ファラフェル」にも挑戦できます。フムスはひよこ豆のディップ、ファラフェルは中東発祥のコロッケのことで、どちらもひよこ豆を煮てからすりつぶして作る料理です。 ひよこ豆はヴィーガン料理に昔からよく使われており、肉の代わりとしてさまざまな料理に活用することができます。料理のバリエーションが豊富にあることも、ひよこ豆が代替肉として注目される大きな理由となっています。
代替肉の注目素材!世界で愛されるひよこ豆
2022.08.24

食品産業排水を代替小麦粉へアップサイクル。米フードテック企業の成功例

​​​​廃棄されるはずのものを、価値ある新しい商品として生まれ変わらせる「アップサイクル」。このアップサイクルにより、アメリカのフードテック企業が、グルテンフリーで栄養豊富な代替小麦粉の生産を成功させました。地球温暖化対策に資する、カーボンニュートラルな製造法も話題となっています。 食品工場で廃棄される砂糖水に着目 米国のフードテック企業ハイフェフーズは、食品工場で排出される砂糖水を利用して、菌糸体由来の代替小麦粉を生産しています。これを原料とするパスタ「ハイフェパスタ」は、高タンパク、低炭水化物、アレルゲンフリーな代替小麦粉になると注目を集めています。 ハイフェフーズ共同創業者の1人、ミシェル・ルイズ氏は、アメリカの大手石油会社で化学技術者としての勤務経験があります。同氏が働いていた廃水処理施設では、有機物を食べて水を浄化する微生物のえさが常に不足しており、過剰になった大量の微生物が日々捨てられてメタンガス発生の原因となっていました。無駄な微生物の廃棄を止めれば、地球の温室効果ガス削減に貢献することもできます。同氏は、この飢えた微生物のえさを効率的に得る方法を探しました。 ルイズ氏が着目したのは、毎日数百万リットルもの排水を出す、ビールなどの大規模な醸造所、トウモロコシの製粉所や缶詰工場です。実はこの食品産業排水は、製造過程で濃縮されており、糖分を多く含んでいて栄養豊富です。しかしながら、企業は費用を払って廃棄物としてこれらを処理していました。糖分を含んだ排水は、ルイズ氏を悩ませていた廃水処理施設の微生物のえさとして利用できます。 さらに同氏は、この排水を代替小麦の原料として再利用し、価値あるものに生まれ変わらせることを考えました。微生物を扱うプロであり、排水の隠れた価値を知っていた同氏だからこそ、微生物による発酵作用で作るハイフェパスタを完成させることができました。 アップサイクルが食料問題解決の糸口に バイオテクノロジーで開発された代替小麦粉によるハイフェパスタは、1人前で鶏のむね肉1枚分ものタンパク質を含み、食物繊維も豊富です。豆類やナッツ類から成る代替小麦粉は、炭水化物以外の栄養素に欠けるという点がネックでしたが、ハイフェパスタなら、健康を損なわずに、小麦に限りなく近い食事のメニューを楽しむことができます。 一般的な小麦粉製品とは違って「グルテンフリー」であることも特筆すべき点です。 同時に、ハイフェフーズは止まらない食品値上げへの具体的対策も提示しています。通常、米国の食品メーカーは、工場で排出される砂糖水を浄化するために課徴金を支払っています。同社は課徴金よりも低い料金で、砂糖水を食品として再利用することを可能にします。食品メーカーはその分、コストを節約することができるため、最終商品の価格として消費者に還元できるというロジックです。 ハイフェパスタは、世界中あらゆる場所で入手可能な食品産業排水を原料としています。栄養価の高い食品を確実に各地へと供給できるハイフェフーズの代替小麦粉は、今後深刻化すると言われている食料問題を解決する糸口になるかもしれません。
食品産業排水を代替小麦粉へアップサイクル。米フードテック企業の成功例
2022.08.18

食品の3分の1が捨てられる世界、解決方法は「フードシェアリング」

少子高齢化が問題となっている日本では実感できませんが、世界の人口は増え続けています。2050年にはなんと97億人にまで増えると言われていて、さらに多くの食品が必要になることが見込まれます。すでに現在、8億人が飢えに苦しんでいる状況で、対策は急務です。その一方で、世界で作られる食料品のおよそ3分の1が捨てられています。世界の食料品廃棄量は年間13億トンにも上ります。どのくらいの量かイメージがつかないと思いますが、飢えに苦しむ人たちが必要とする食料品の数倍分に当たる、実に20億人分の食料品が失われているのです。 食べ切る・使い切ることを目標に 日本での食品廃棄物のうち、まだ食べられるものを「フードロス」というのですが、その量は約646万トン、そのうち製造・卸・小売・外食事業者による廃棄が357万トンと半分以上を占めています。ちなみに世界全体の食料援助が320万トンですから、どれほどの食料品がムダになっているのかお分かりいただけると思います。日本でも「食品リサイクル法」などを制定して廃棄量を減らす方向に進んでいますが、根本的な解決には至っていません。やはり食料品は食べ切る!使い切る!ということを第一の目標にしなければならないでしょう。そこで注目されているのが「フードシェアリング」です。 買い手・売り手の双方にメリット フードシェアリングは、使わなかったり、余ったりした食料品を、事業者や個人の間で取引する新しい仕組みです。社会貢献ができる仕組みだと思う人も多いと思いますが、これを上手く使いこなせば企業にとっても大きなメリットがあります。例えば、今までなら余らせてしまった食料品は廃棄するしかなく、経営的な損失となっていました。しかし、この仕組みを利用することで、売り手は損失を抑えることができ、また買い手は仕入れコストを抑えることができます。つまり、フードシェアリングは食料品の新しい取引方法なのです。 フードシェアリングの仕組みは世界各国で始まっていますが、まだスケールの小さいものがほとんどです。この仕組みが国全体、ひいては世界全体へと広がっていけば、廃棄される食品が大きく減るのは間違いないでしょう。
食品の3分の1が捨てられる世界、解決方法は「フードシェアリング」
2022.08.05

昆虫食王国タイにおける 昆虫食の魅力【昆虫食普及ネットワーク・ニュースレターVol.2】

トロピカルフルーツや鶏肉の産地として名高いタイですが、実は昆虫食王国の一面も併せ持っています。高温多湿の気候が昆虫資源の宝庫を生み出し、追求された美味しさや栄養価の高さによって、昆虫食は身近な食材として地位を確立させています。 昆虫食を伝統食文化として親しみをもつタイは、早い時期から産業化へと舵を切り、産官学で研究開発を重ねて、国際基準に準拠する生産レベルを高めることに成功しました。かつては屋台で見かけることが多かったですが、現在では、多様な昆虫食の商品がスーパーやコンビニの店頭に並ぶ光景は決して珍しくありません。 タイ農業・協同組合省は昆虫食を推進するために、2017 年にコオロギ養殖場の生産工程管 理 (GAP) TAS8202(G)-2017 を制定しました。近い将来、他の昆虫食の規格も公表する予定です。また、「世界の昆虫食ハブ」という目標を設定し、チェンマイ大学、 メジョー大学、コンケン大学、カセサート大学に昆虫食分野を特化した農業イノベーションセンターを設立して、 昆虫産業をさらに盛り上げようとしています。現在では、 昆虫養殖農家が全国に約2万戸にも上り、昆虫食の生産と輸出が目覚ましい成長を遂げています。一方、民間企業でも「タイ昆虫産業協会」を年内に立ち上げるために最終調整に入っています。豊かな資源、蓄積されたノウハウ、そして、連携の取れたステークホルダーを強みにもち、タイ昆虫食産業が今後更に加速化することに違いありません。  (サコン・ワナセッティー/タイ大使館農務担当官事務所)   「セミ会」【今月のトピック】  当NPO理事長の内山昭一が始めた「セミ会」は昆虫食界の夏の風物詩となって各地に拡がっています。現代では難しい「自分で狩って。料理して、食べる」、この当たり前を体験できる魅力がセミ会にはあります。しかし、それに勝る魅力はセミが美味しいという事実です。どんな味と聞かれますが、説明は難しいので是非ご自分の舌で体験していただきたいと私は思います。勇気をもって参加した時、アリストテレスが「きわめて甘美なり」と 表現したセミの味、あなたならどう感じるでしょう?心 に残る夏の体験になること間違いないです。  (増田隆紀/NPO法人昆虫食普及ネットワーク副理事長)   どんな味?香りも楽しむ昆虫メニュー【おススメの一皿 】   5 月14 日、米とサーカス高田馬場店にて皆さんと昆虫料理を。この日は夏野菜と昆虫をテーマにレシピを考案。 タガメの香りを楽しむキャロットラペ、ジャイミル入り のペペロンチーノ、オオスズメバチの洋風じゃが、そし て試作メニューの山梨名物ほうとう(ミックス昆虫入り)でお腹いっぱい! 毎回違うメニューで参加スタッフ一同も楽しみにしています。コロナ禍が落ち着いたら、一緒に調理に参加してもらえる形で開催できるといいですね。  (阿南)   ニュースレターは、NPO法人昆虫食普及ネットワークの公式HPで配信中です。
昆虫食王国タイにおける 昆虫食の魅力【昆虫食普及ネットワーク・ニュースレターVol.2】
2022.07.27

海藻が世界を救う?ヨーロッパで養殖産業化の流れ

アジアでは食べ物としてなじみ深い海藻ですが、ヨーロッパでは日常的に海藻を食べる習慣はありませんでした。しかしながら、健康志向の高まりや食生活の変化を受けて、栄養豊富な海藻がヨーロッパの食卓に広まりつつあります。気候変動により地球上の資源がますます逼迫していくことが懸念される中、ヨーロッパでは養殖産業化の機運が高まっています。 ヨーロッパで高まる海藻ニーズ ヨーロッパの海藻の売上は今、急成長しており、欧州連合(EU)や国連食糧農業機関(FAO)でも、世界の食糧安全保障のために海藻を含む海産物の重要性が唱えられています。今後、ヨーロッパでの海藻の売上高は2030年までに20億ユーロから30億ユーロにまで増加するという見込みもあります。 平均余命が伸び続ける中、消費者は年齢を重ねながらも健康を維持するための方法を求めています。ヨーロッパでこうした健康志向が高まると共に、サプリメントなどの栄養補助食品の需要が増加。今あらためて、海藻の栄養価の高さが注目されています。海藻は、ビタミン、ミネラル、抗酸化物質、タンパク質などの必須栄養素を豊富に含むことから、それを使ったサプリメントがヨーロッパの消費者に浸透しつつあります。 ヨーロッパでの海藻需要の高まりは、肉食からタンパク質代替への転換という流れも、大きく後押ししています。現在、ヨーロッパのビーガンと菜食主義者は推定7500万人とされ、ここ数年での世界の代替肉のおよそ4割がヨーロッパで消費されています。環境への負担が大きい肉食を避けたいヨーロッパの人々にとって、栄養も豊富で環境に優しい海藻がヨーロッパの日常の食生活になじむのにそう時間はかからないでしょう。 また、海藻は人の食料だけにとどまらず、家畜や養殖魚のえさ、化粧品や医薬品、バイオ包装、バイオ燃料、繊維、洗剤、建材にも活用されます。海藻産業が環境への負担を減らす効果は大きく期待されており、海藻製品の活用により、ヨーロッパの人々の年間最大80万人分の温室効果ガス排出を相殺できるとする報告もあります。 採取から養殖へ:持続可能な海藻産業へのシフト 世界の海藻生産量の99%がアジアで生産されており、ヨーロッパは全体の1%程度というのが現状です。しかも、そのほとんどが天然海藻の採取によるもので、持続可能な収穫量は限界を迎えつつあります。そこで、将来を見据えた海藻の養殖への移行が、ヨーロッパの海藻産業には求められています。 冷たくて栄養豊富なヨーロッパの海水は、実は海藻にとって理想的な生育条件であり、ヨーロッパの海藻産業は今後成長する可能性が大いにあります。投資、生産技術、政策などをうまく組み合わせることで、ヨーロッパの海藻生産は現在の約30万トンから10年以内に約800万トンにまで拡大すると言われています。 ヨーロッパでの持続可能な海藻養殖が普及すれば、これまでの採取とは違って海洋環境に害を与えずに、海藻の生産量を増やすことができます。海藻は魚のえさになり住みかにもなるので、海藻養殖は海の生態系をより理想的なものにします。 また、海藻は植物と同じように大気中の二酸化炭素を吸収します。主に太陽光と海水があれば育つ海藻の養殖は、陸での農業と違い、広大な開墾された農地や水といった限りある資源を過剰に必要としません。ポルトガルの3倍の広さの海藻栽培で、世界のタンパク質需要がまかなえるとの話もあるほどです。 今後ますます懸念される気候変動と人口増加による土地と水の不足、そこから引き起こされる食糧不足という脅威が差し迫る中、持続可能な海藻の養殖はこれらの問題解決にも一役買うのではと期待が高まっているのです。
海藻が世界を救う?ヨーロッパで養殖産業化の流れ
2022.07.20

スペインが食品ロスの厳罰化へ。世界が注目する本気の新法案

「持続可能な開発目標」(SDGs)の目標の1つに、2030年までに世界全体の一人当たりの食品廃棄物を半減させることが盛り込まれるなど、国際的な食品ロス削減の機運が高まっています。日本においても2019年に食品ロス削減推進法が施行されました。そうした中、スペインでは6月、食品廃棄物を減らすために厳罰を伴う新たな法案が国会に提出され、その野心的な内容が世界の注目を集めました。 食品ロスの企業に最高6800万円相当の罰金 この法案によれば、スーパーマーケットなどの食品の生産や供給に関わるすべての企業は、食品廃棄物の削減を計画することを義務づけられます。もし売れ残りなどの食品廃棄の量を減らす取り組みを怠れば、最高6万ユーロ(約800万円)の罰金が科せられ、これが悪質な場合だと最高50万ユーロ(約6800万円)にもなるというから驚きです。 この厳しい罰を回避するために、スペインのフードチェーンでは、食品の無駄な損傷を防ぐための正しい取り扱い、保管、輸送について今まで以上に十分な教育が求められます。そして、最適な鮮度を保つための冷蔵庫などの設備の適切な管理・維持へもより一層の配慮が必要になります。 スペインの多くのスーパーマーケットでは、以前から賞味期限が近い果物や野菜には、そのことを示すラベルが目立つように貼られていました。新法案が可決されれば、今後はそれだけでなく、そうした商品の価格を早めに下げて売り切ることや、期限が切れる前に慈善団体に寄付するケースが増えることになります。こと、大企業に関していえば、賞味期限が切れる前の食品を寄付する計画を事前に提出することなども課されています。 農場やメーカーでも、売れ残りやすい形やサイズが小さな果物は、ジュースやジャムに加工することが求められます。人が食べるには適さないけれど、カビや害がない場合は、動物の餌にするといった対策へもこれまで以上に積極的に取り組まなければなりません。人や動物が食べられなくないものは、家畜の飼料や肥料、バイオ燃料の生産へと回されます。 飲食店では無料の持ち帰り袋の提供を義務化 バーやレストランといった飲食店については、顧客が希望した場合、無料の持ち帰り袋「ドギーバッグ」の提供を義務付けることを盛り込みました。元々、食べ残しを持ち帰るという習慣が一般的でなかったスペインの人々にとっては、これは画期的な施策です。 また、飲食店には食べ残しをフードバンクやNGOに提供することも義務付けようとしています。 今回の法案は、学校や病院といった公共機関も、食品ロス対策の当事者に位置付けています。例えば、あまり空腹でない生徒や患者の皿には食べ物を盛りすぎないようにするといった食品廃棄を減らすための工夫をしなければなりません。 スペインのこの新法案は、農場からスーパーやレストランを経て消費者に至るまで、食品供給の一連の流れであるフードチェーンに関係するすべての人々や企業・団体を対象としています。EU全体で、食品廃棄物の53%が消費者から出ていて、この状況はスペインでも同様です。政府は個々の家庭から罰金を取ることまではしませんが、消費者の行動を変えるための教育キャンペーンも実施していく方針です。 EUは国連の目標に沿って、2030年までにEU域内の食品廃棄物を50%削減させることを約束しています。この地球規模の問題に取り組むべく、今回のスペイン政府の思い切った決断は、その一翼を担う国としての責任と覚悟が示されたものだといえそうです。  
スペインが食品ロスの厳罰化へ。世界が注目する本気の新法案
2022.07.19

食べてSDGsを実践!サステナブルチョコレートって何?

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)では2030年までの達成を目標として、17のゴール・169のターゲットが設定されています。こうした流れを受けて、食品業界でもさまざまな取り組みが進められています。この記事では、昨今注目を集める「サステナブルチョコレート」とは何かについて、事例を交えて解説します。 チョコレート原産国が抱える課題に対応 私たちが普段食べているチョコレートの原産国では、生産者の貧困や児童労働、森林減少などたくさんの課題が山積みになっています。こうした課題を解決するために生まれたのが「サステナブルチョコレート」です。サステナブルとは「持続可能な」という意味の英語で、サステナブルチョコレートは人権や環境、経済課題に配慮した方法で製造されています。つまり、消費者はこのチョコレートを選ぶことで、生産地や生産者を間接的に支援することができます。 サステナブルチョコレートは昨今、人気が高まっています。自然食品店や輸入食材店、インターネット通販だけでなく、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどでもよく見かけるようになりました。美味しくてお洒落なパッケージのものが多いので、自分で食べるのはもちろん、プレゼントにもおすすめです。 サステナブルチョコレートの人気商品2選 サステナブルチョコレートは海外のものも含めると数多くの商品がありますが、ここでは国内で人気の商品を2つピックアップして紹介します。 ピープルツリー フェアトレード&オーガニックをテーマにしたチョコレート。フェアトレードとは、「公正な取引」という意味で、発展途上国の生産者・労働者の生活を改善し、自立を支援する仕組みのこと。カカオ豆だけでなく、砂糖やトッピング素材もすべてオーガニックの素材を使っていて、おいしさにも定評があります。ミルクチョコやビターチョコ、植物性ミルクを使用したベジシリーズなどもあり、定番商品から個性的なものまで幅広いラインナップです。 meiji THE Chocolate(明治ザ・チョコレート) 日本の老舗ブランド「meiji」が手掛けていて、ベネズエラやブラジル、ペルー、ドミニカ共和国という生産地別に、4種類のチョコレートが展開されています。meijiは以前からカカオ農家の支援を行っていて、生産地の井戸の整備や環境に配慮した農法を教える取り組みをしてきました。スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどでも販売されているので、手軽に試すことができるのも魅力です。   チョコレートをおいしく食べて生産者も幸せになるのであれば、これほど素晴らしいことはないでしょう。これだけSDGsの考え方が広まったことを考えると、消費者にとってもこうした選択肢が当たり前の世の中になるのかもしれません。    
食べてSDGsを実践!サステナブルチョコレートって何?
2022.07.08

「UMAMI EGG」徹底解剖!開発秘話と今後の展望【代表インタビュー】

さまざまなメディアで取り上げられ、注目を集めている植物性卵「UMAMI EGG」。こんにゃく粉を使って卵らしさを出すことに成功し、急速に販路が拡大しています。しかし、最初から順調に進んでいたのかといえば、決してそうではありませんでした。UMAMI UNITED JAPAN株式会社(以下「UMAMI UNITED JAPAN」)の代表取締役である山﨑寛斗(やまざき ひろと)さんに、開発の経緯や苦労したエピソード、こんにゃくに見る可能性を聞きました。食品開発に従事する人へのメッセージもお届けします。(取材・構成=松橋かなこ) 「ONE TABLE」を実現すべく、こんにゃく粉を使った植物性卵の開発へ ――UMAMI UNITED JAPANの設立に至るまでの、山﨑さんのご経歴を教えてください。 学生時代にインターンで関わった活動を通して、食の多様性を学びました。同時に外国人へのボランティアガイドをしていましたが、海外の国に比べて日本は食の選択肢が少ないことを痛感しました。こうした課題に取り組みたいと考え始めたのは学生の頃です。卒業後、食の多様性(フードダイバーシティ)に特化した会社で業務に携わりました。現在の開発担当者との出会いにより、2022年にUMAMI UNITED JAPANを設立。その前後で、UMAMI EGG2.0の開発を進めました。 ――植物性卵の開発に取り組もうと思ったきっかけはどんなことでしたか。また、植物性卵にこんにゃく粉を使おうと考えた理由は。 私たちの会社のミッション「ONE TABLEで未来を創る」を実現しようと考えたときに、卵にニーズがありそうだという話になりました。そこで、植物性卵に取り組んでいる海外の競合会社や類似商品をリサーチし、プロトタイプ(試作品)を作りました。そのプロトタイプをレストランなどに提供し、実際に使ってもらい感想を集めました。そこで見えてきたのは「味はおいしいけれど、通常の卵と比べて使い勝手があまりに違う」ということ。具体的には、加熱すると固まるという卵の特性が上手く表現できていませんでした。そこで、卵の特性を出すために「こんにゃく粉を使ってはどうか」という話になりました。 ――こんにゃく粉以外に、検討した材料はありましたか。 他の素材としては、加熱で固まる特性を持つ「水溶性タンパク質」を使うことを考えました。海外の植物性卵では、植物性のタンパク質を使うケースが多いです。他の国から素材を取り寄せて試作しましたが、なかなか思うように進みませんでした。そこで、「自分たちの身近にあるもので何ができるか」をもう一度考えたのです。その結果、日本にふさわしい素材のこんにゃく粉にたどり着きました。 マーケティングとの連携やニーズの選定に苦労することも ――商品開発、そして販売へと動くなかで、特に苦労したことは何でしたか。 1~2カ月かけて試作品を作った後、同じくらいの時間をかけていろいろな人に使ってもらいながら改良を重ねました。開発にはトータルで半年程度の時間がかかりました。 「開発とマーケティングをどう連携させていくのか」については、社内でいつも議論しています。どこの市場に、どんな価格帯でどんなポジションとして打ち出していくのか。これまで世になかったものを提案する立場なので、ニーズの選定に難しさを感じることが多いです。国によっては使用できない原料がある場合も多く、最初はとても苦労しました。 今は国内での受注が8~9割を占めていて、残りの1~2割が海外です。しかし、海外での市場のほうが圧倒的に大きいので、今後はこの比率を逆転させたいと考えています。そのために、「卵のどういう部分や機能を求めているのか」を徹底的にリサーチして、ニーズの掘り起こしや細分化をしています。 ――マーケティングのポイントは、どこに重きを置いているのでしょうか。 特別に決まったスタイルがあるのではなく、「やりながら考える」ということを大切にしています。定量的なデータだけでなく、定性的なデータも集めています。誰もが知っているようなことであれば、ベンチャーがあえて取り組む意味はないのではと。「掘ってみたら、偶然にも温泉が出てきた」というような意外性のあるニーズを探しています。 その上で、基準は大きく2つあります。会社のミッションに合っているのかどうかと、ある程度の市場規模があるのかということです。市場規模は大きくても、会社のミッションに合わないものであれば、選択しないこともあります。 こんにゃくや海外市場への可能性に向けて   ――国内外問わず、こんにゃくへの注目が高まっています。こんにゃくの可能性について、感じていることがあれば教えてください。 海外ではこんにゃくを使ったパスタが人気を集めていて、大手企業もこんにゃくに注目しています。こんにゃくは日本の伝統食材であり、日本らしさを前面に出した海外市場への展開にも向いていると思います。 特に、こんにゃくとプラントベースの組み合わせは相性が良いと感じています。たとえば、こんにゃくとおからを組み合わせた「おからこんにゃく」を揚げてトンカツ風にすると、とてもおいしいです。新しい食の選択肢として、こんにゃくにはさまざまな可能性を感じています。茨城県の伝統食材に「凍みこんにゃく」というものがあり、作るのに大変手間がかかることから、生産者が減少しているそうです。そうした食材をどう活用するのかを考えるのも、面白いのではと思っています。 ――食品業界で開発に携わっている方々に向けて、メッセージがあればお聞かせください。 日本の市場が縮小化するなかで、海外に目を向けるとニーズが大幅に拡大します。特に、プラントベースではその傾向が強いと感じます。日本には素晴らしい開発者がたくさんいるので、国を超えて展開していくとよいのではないでしょうか。海外市場を見据えて、クオリティーの高い商品を一緒に作っていきたい。同じ気持ちを持つ方がいれば、ぜひとも声を掛けてください! ▽シェアシマの商品ページを見る 関連記事: https://reports.shareshima.com/1903/
「UMAMI EGG」徹底解剖!開発秘話と今後の展望【代表インタビュー】
2022.07.01

こんにゃく粉を使った植物性卵「UMAMI EGG」が注目を集める理由

近年、健康ブームや地球環境の保護、動物愛護といった観点から、プラントベース(植物由来)食品への関心や需要が高まっています。そんな状況下で、話題を集めているのが2022年春に登場した植物性卵「UMAMI EGG」。UMAMI UNITED JAPAN株式会社(以下「UMAMI UNITED JAPAN」)の代表取締役である山﨑寛斗(やまざき・ひろと)さんへの取材から、UMAMI EGGの魅力や「卵らしさ」の理由、目指す未来像についてお伝えします。(取材・構成=松橋かなこ) こんにゃく粉が主原料の植物性卵「UMAMI EGG」とは UMAMI EGGは粉末タイプの卵食材であり、植物性の素材だけで作られています。粉末に豆乳を加えて混ぜた後に加熱することで、卵にそっくりの見た目と味、食感を再現できます。ここで着目したいのは、主原料としてこんにゃく粉を使っているということ。植物性卵は欧米ではスーパーマーケットの棚に並ぶほど広がりつつあるものの、緑豆など豆由来の原料を使った商品が多く、こんにゃく粉を使用したものはこれが初めてです。 世界中を見渡してみても、こんにゃくを食べる食文化を持つ地域は限られています。ここには「日本の魅力を世界に発信したい」という会社のビジョンがあります。 UMAMI EGGの「卵らしさ」の理由 卵を使っていないのに、卵にそっくりのUMAMI EGG。こんにゃく粉を使うことにより、「加熱すると固まる」という卵の最大の特徴が再現できます。また、こんにゃく粉には保水性があるので、しっとりとした仕上がりになります。こうした特性によって、スクランブルエッグなどの代表的な卵料理を手軽に作ることができます。 UMAMI EGG2.0と豆乳の配合を変えれば、料理のレパートリーがぐっと広がります。たとえば、豆乳の量を増やすとトロリとした食感が出るので、オムライスやオムレツに最適です。さらに量を増加させると、茶碗蒸しも作れます。それどころか、プロの料理人が茶碗蒸しを試作したところ「今までで一番おいしくできた」と賞賛されたそうです。 こんにゃく粉以外の原材料としては、卵らしい色味を出すために、かぼちゃパウダーやにんじんパウダーを使っています。人工的な着色料ではなく、できるだけ自然な素材を使うこともこだわりのひとつです。 製菓店からのニーズが多く、幼稚園にも「プリン」を提供 山﨑さんによれば「焼き菓子作りに使うのもおすすめ」とのこと。アレルギーなどの理由から卵や小麦粉を避けている場合、米粉を使ってお菓子を作ることも多いですが、パサパサした食感になりやすいもの。しかし、UMAMI EGGを粉の重量に対して0.5~1%程度加えることで、パサつきが少なくもっちりとした食感になります。 さらに、フランスの洋菓子「カヌレ」やカスタードクリームとの相性も抜群です。「卵を使わないと作れない」「卵アレルギーがあるから食べられない」と思っていたお菓子が、UMAMI EGG2.0を使うことで、安心しておいしく食べられるようになります。実際に、グルテンフリーの商品をつくる製菓店などからのオファーも多く、業務用として販路を拡大中です。 東京都のある幼稚園では、給食のおやつとして卵アレルギーの子どもも食べられる「プリン」を350人分提供しました。通常のプリンは卵を使いますが、その代わりに植物性の素材を使ったUMAMI EGGの姉妹商品「らくぷりんミックス」を使用。おいしそうにプリンを食べる園児の様子がとても印象的で、「みんなが一緒に食べられてとても嬉しい」という保護者や先生達からの声もありました。 UMAMI EGGを食べてみると 今回記事を書くにあたり、私自身もUMAMI EGG2.0を使って卵料理を試作し、食べてみました。まず驚いたのは、豆乳を加えてブレンダーで混ぜるとすぐに固まり始めたということ。山﨑さんによれば、これはこんにゃく粉の固形性によるものなのだとか。ちょうど自宅にあったトウモロコシの粒を加えて、フライパンで加熱するとスクランブルエッグのような一品ができあがりました。初めての試作でしたが、想像していたよりもずっと簡単に調理できました。 何も言わずに朝ごはんの食卓に並べてみると、植物性卵を使っていることに、家族の誰も気が付かない様子。実際に食べてみると、子どもは独特の食感が気に入った様子で「卵クリームみたいだね」「おいしい」とのこと。我が家には卵アレルギーを持つ人はいませんが、「選択肢のひとつとして植物性卵がある」というのはとても素晴らしいことだと感じました。 UMAMI EGGを通して、「ONE TABLE」を実現する 国際鶏卵委員会(IEC)によると、国民1人当たりが1年で消費する卵の数は、日本は世界で2番目に多いとされています。たしかに、身近な料理やお菓子に卵を使ったものはとても多く、アレルギーがあると「食べたくても食べられない」という苦痛を毎日のように感じることになります。 UMAMI UNITED JAPANのミッションは「ONE TABLEで未来を創る」。食のニーズは多様化しているものの、現在の日本では選択肢が限られているのが現実です。その結果、みんなでひとつのテーブルを囲めないことも少なくありません。UMAMI EGGには、こうした目に見えない垣根を越えていきたいという熱い想いが込められています。幼稚園の園児達がみんなでテーブルを囲み、おいしそうにプリンを食べる姿には、山崎さん達が思い描く未来があふれています。 現在はUMAMI EGGへの期待として「アレルギー対応」という側面が強いものの、将来的には小学校の給食で当たり前に使われる状態を目指したいと山﨑さんは語ります。「おいしいね」とみんなで一緒に食べた後に、実は「植物性卵だった」と気が付く――。そんな自然な流れのなかにUMAMI EGGが存在する時代に向けて、試行錯誤を重ねています。 ▽シェアシマの商品ページを見る 関連記事: https://reports.shareshima.com/1913/
こんにゃく粉を使った植物性卵「UMAMI EGG」が注目を集める理由
2022.04.20

食品ロスが「先進国の問題」は間違い?視点を変えて考えてみる

全世界で生産されている食料は毎年40億トンもあり、実は地球上の全人類が生きていくための必要量を上回っています。けれど、生産された食品の3分の1がさまざまな理由で捨てられているのです。こういう話をすると必ず、「先進国がムダにしているんだ!贅沢しているんだ!」という食の不均衡の話になります、しかしそれは理由のひとつ。実際には、発展途上国でも別の理由で食品ロスが発生しているのです。食品ロスの先進国と発展途上国での違いとは一体何でしょうか。 先進国では流通や保存技術が進歩しており、食品が長持ちするという特徴があります。また家庭では、家計に占める食費の割合が比較的低いため、食べる以上に食品を買い、ムダにしてしまうということがあります。事業者側では、仕入れのミスや需要の変更、ブームによって、食材を使いきれなくなり廃棄する場合も多くあります。それに見た目が良くないと消費者に売れないという現実があることから、食べられるものでも色や形で選別し、販売さえできないということもあります。 先進国ではこうした食品ロスをなくすために、売りに出せないけれど食べられる食品を加工し、売れる商品を新たに開発しています。最近では余った食品を業者や個人の間でシェアする取り組みも盛んです。少しずつではありますが、食品ロスを減らす対策は進んでいるのです。 一方、発展途上国側では、別の原因で食品ロスが発生しています。それは、先進国では克服されている、流通や保存の問題です。例えば、農家の生産物を保存する技術や施設がないため、食品が廃棄されています。その廃棄を防ぐために加工すればいいという話もありますが、加工食品を作る技術も設備もないのです。さらに、交通手段が未発達の場合、市場まで食品を運ぶことができず、また運んでいる最中に痛んでしまって、食べられるものが減ってしまうのです。これを解消するための開発が進み、自然環境を犠牲にしたことで、砂漠化が進んでしまった地域もあります。だから、先進国は発展途上国に食料を援助しましょうというだけでなく、技術や設備を提供し、世界全体が豊かになる支援をしていく必要があります。 食品ロスの問題は、まずは自分たちの周りのムダをなくしていくことから解決しなくてはなりません。しかし、自分たちがムダを減らせば世界の人々が救われるという単純な話でもないわけです。世界の人口はこれからますます増えていきます。未来のためにどう行動すべきか、一人一人が考えなければならない時代を、私たちは生きています。
食品ロスが「先進国の問題」は間違い?視点を変えて考えてみる
2022.04.19

インパクト抜群「虫糞茶」の魅力

 生きていることの証とも言える排泄。フンは汚いものというのが一般的な認識ですが、世の中は広く、動物のフンを利用した飲食物もあります。有名どころではジャコウネコのフンを利用したコーヒー「コピ・ルアク」が思い浮かぶ人もいるかもしれませんね。 今回ご紹介したいのは、同じくフンを利用した飲み物ですが日本ではあまり知られていない、「虫糞茶(ちゅうふんちゃ)」です うま味と善玉菌を多く含む健康茶 虫糞茶は特定の植物の葉を特定のガの幼虫に食べさせ、そのフンを利用して作られるお茶の一種です。1578年に完成した中国の薬学書「本草綱目」にも記載があり、歴史あるお茶と言えますね。虫糞茶のほかに「虫屎茶(ちゅうしちゃ)」、「龍珠茶(りゅうしゅちゃ)」「茶精(ちゃせい)」等とも呼ばれ、中国の一部で珍重されてきました。現在は湖南省や四川省、貴州省で製造され、一部は東南アジアなどにも輸出されています。 フンというと汚いもののように感じてしまいますが、ガの幼虫はお茶の原料である葉だけを食べ、異臭もありません。それどころか、葉が幼虫により消化吸収される過程で分解されてうま味成分や善玉菌が増えるのだそうです。 使用する植物とガの種類によって味わいが異なり、中国ではブドウ科のトウチャやバラ科のコナシなどをコメシマメイガ、ソトウスグロアツバなどに食べさせて虫糞茶を製造しています。 日本でも先日京都大学の大学院生が虫糞茶の普及を目指して研究に取り組んでいると話題になりました。 SDGsにも合致 一般的に飲まれている煎茶・紅茶・コーヒーなどは、その製造過程において熱処理が必要です。しかし虫糞茶は葉を幼虫に食べさせ、そのフンを自然乾燥させるだけというシンプルな製造法なので資源を節約でき二酸化炭素の排出も抑えられます。まさに持続可能性に満ちていて、SDGsの理念にも合致していると言えるでしょう。 幼虫やそのフンと聞くとまずそのビジュアルがイメージされてしまいがちですが、正体を隠して試飲すれば「おいしいお茶」と感じられそうな虫糞茶。幼虫、フンというイメージを逆にインパクトとして活用したり、SDGs時代の新しい選択肢というブランド構築をしたりといった工夫を凝らして、日本でも商業ベースに乗せられる製品が現れてくるでしょうか。今後に注目です。
インパクト抜群「虫糞茶」の魅力
2022.04.13

安全で美味!アメリカ発祥の〝Farm to table(ファーム・トゥー・テーブル)〟とは

〝Farm to table〟という言葉を聞いたことはありますか?アメリカで生まれた食に対する考え方で、農場(生産者)から食卓(消費者)まで安全で新鮮な食材を届けるというものです。レストランなどでは少し前から話題を集めており、「地産地消」や「サステナブル(持続可能)」な食のあり方にもつながるものです。では具体的にどんなものなのか、その実践例を見ていきましょう! まずご紹介するのは、温暖な気候に恵まれたアメリカのカルフォルニア州にあるレストラン「Central Market」。こちらのオーナーシェフのトニーさんは、自宅を農場の敷地内に建設し、そこで野菜や家畜を育てています。大切にしているのは、野菜などは遺伝子組み換えをしていない種を厳選し、家畜の飼料にはオーガニックのものを使い、安心安全な食材をつくるということ。レストランで使用するソーセージやサラミは、自身の農場で育った家畜の肉を使い手作りするなど、細かい部分にまで気を配っています。 農場とレストランが近いということは「安心安全で美味しい食材が提供できる」だけでなく、「環境にやさしい」というメリットもあります。例えば、食材を箱詰めするための容器や包装紙は不要になりますし、運搬することで発生する温室効果ガスの削減にもつながります。 もともとトニーさんは、ニューヨークやサンフランシスコで活躍していたシェフでした。都会で仕事をする中で「オーガニックの畑があり、その近くでレストランを開きたい」という想いを長年抱いていたのだそう。その想いに当てはまる場所を探していたところ、ちょうどよいタイミングで見つかったのが、今の場所というわけです。 いろいろなこだわりが詰まっているということもあり、このレストランで提供される食材は安心して食べられる新鮮なものばかりで、もちろん料理が美味しい!夕方のオープン時間になると、地元の客が次々に店内に入り始めて、トニーさんと親しげに会話を始めるのだとか。こうしたレストランの在り方から、地元の人たちにとても愛されている存在になっています。 この〝Farm to table〟の考え方は、日本にも広がりつつあります。次にご紹介するのは、東京のレストラン「navarre Tokyo」。オレゴン州ポートランドで人気を集めるレストランが、日本に出店したものです。有機農業を実践している農家から食材を仕入れ、その日ごとに変化する「スペシャル」として、料理が提供されています。現地のスタイルのように、週末限定でブランチも食べられるのだとか。ポートランドにも通じる「ゆったりとした空気」を楽しみながら、オリジナルの料理を味わってみてはいかがでしょうか。
安全で美味!アメリカ発祥の〝Farm to table(ファーム・トゥー・テーブル)〟とは
2022.03.14

多年草カーンザは世界を救うか

世界中の人々のカロリー源のうち、45%以上が穀物から摂取されています。収穫後の輸送や貯蔵の容易さ、保存性の良さ、エネルギー源としての優秀さを考えれば不思議ではありませんね。 ところが、穀物は一年生植物です。毎年毎年種をまき、手をかけて収穫しなければなりません。田畑を耕し植え替える作業がなくなったらどれだけの資源を節約できるでしょう。 今回のレポートでは地球環境を救うかもしれない多年生植物「カーンザ」を紹介します。 <多年生植物の可能性> カーンザは20年ほど前に誕生した多年生植物です。小麦に似ていますが、種の大きさは小麦の5分の1程度と小さく、これまで飼料として使われてきました。この種が品種改良で小麦に近いサイズになれば、農業に革命が起こるかもしれません。 カーンザは多年生植物ですので、畑を耕したり植え替えたりする必要がないのです。その分のエネルギーや二酸化炭素の排出量を削減できるわけですね。 加えて特徴的なのが、カーンザが3メートルを超える長い根を持つこと。この長い根に空気中の二酸化炭素を蓄えることで、土壌に炭素を貯留する役割を効果的に果たします。地中深くまで張り巡らされた根は、1年を通して土壌を守り、水や炭素、窒素を循環させます。毎年耕す必要がないので地中の根や微生物といった有機物=炭素を外に出さず閉じ込めておけるという利点もあります。一年生植物に比べて、農業による環境悪化を防ぐ効果が大きいのは明らかです。 アウトドアブランドのパタゴニアはこのカーンザに注目しました。同社はSDGsを目指した食品群を販売していますが、その一つとしてカーンザを原料としたビールを2018年に販売し、大きな話題となりました。カーンザという多年生植物が広く認知されるきっかけとなったという意味でも大きな出来事と言えるでしょう。 持続可能な社会が求められる今後は、カーンザをはじめとする多年生植物にますます注目が集まると考えられます。農業における品種改良も育種科学の発展により、厳しい気候や病害虫に強く収量を多くするだけでなく、一年生植物を多年生植物へと改良していく道筋が見えてきているのだそうです。実現はもう少し先になるようですが、いずれカーンザが気候変動を救う救世主となるかもしれませんね。
多年草カーンザは世界を救うか
2022.03.02

工場で作る微生物由来フェイクミートの可能性

大豆などの豆類を利用したフェイクミート(代替肉)は近年目覚ましい伸びを見せています。シェアシマレポートでもフェイクミートについては何度も取り上げてきました。日本ではお馴染みの大豆を使った代替肉とは一線を画した、生肉タイプのフェイクミートで欧米ではメジャーになりつつあります。アメリカではインポッシブルフーズ社、ビヨンドミート社をはじめとしてここ2年で100社以上が代替肉業界に参入しており、この動きは世界に広がっています。 消費者により本物の肉っぽさをもつフェイクミートが届き始めた今、代替肉の研究はさらに進んでいます。今回は次世代のフェイクミートともされる微生物由来代替肉についてのレポートをお届けします。 <工場で作る環境にやさしいフェイクミート> 大豆などの植物由来のフェイクミートに続く次世代のフェイクミートとして有力なのが微生物由来のフェイクミートです。畜産に比べると大豆栽培は環境への負荷が低くなっていますが、大豆栽培よりもさらに環境への負荷が少ないのが微生物と空気、水、太陽光発電を使って作るたんぱく質です。 微生物由来のフェイクミートづくりには肥沃な土地も動物の生息に快適な温暖な気候も必要ありません。空気中の二酸化炭素を微生物の餌とし、太陽光エネルギーを利用して微生物からたんぱく質を取り出します。つまり、これまで食物を生産するのに適していないと考えられていた灼熱の砂漠地帯や極寒の北極・南極地帯でもフェイクミートを生産できるのです。しかも単位面積当たりのたんぱく質の収量は、大豆栽培の10倍以上になるという試算もあります。 微生物由来タンパク質食品「ソレイン」を開発したフィンランドのソーラーフーズ社は、2023年に工場を稼働予定なのだそうです。ただ、ソレインは無味のパウダーなので、代替肉というよりも代替タンパク質と呼ぶのが適切かもしれません。肉の質感の実現などはこれからの課題であり、肉々しさの実現の前にプロテインドリンクなどに利用される可能性もあります。あるいはパンやスナックなどに加えることで栄養価を増すといった利用法も検討されているでしょう。 ソーラーフーズ社は自社で食品として製造販売するのではなく、BtoBビジネスに特化する戦略をとっています。新規の食品を販売するためには、各国でさまざまな承認や手続きを得る必要があるため、バイオテック企業ではBtoBビジネスに特化するモデルが一般的なのだとか。 日本企業でいち早く名乗りを上げる企業はあるのか、あるとすればどこなのか。今後に注目です。 ◎フェイクミートを「シェアシマ」で探す!
工場で作る微生物由来フェイクミートの可能性
2022.02.03

【シェアシマ】昆虫食原料特集ページを開設【お知らせ】

「シェアシマ」TOPページに、動物性タンパク質の代替タンパク質として大豆ミートや代替肉と共に注目されている「昆虫食原料」の特集ページを開設 「世界の情報、人、想いを繋げるサービスを!」をビジョンに掲げ、食品原料Webサービス「シェアシマ」を運営するICS-net株式会社(本社:長野県長野市、代表取締役:小池祥悟)は、「シェアシマ」のTOPページに代替タンパク質として大豆ミートや代替肉と共に注目されている「昆虫食原材料」の特集を掲載しました。 この特集ページを広く告知して、少しでも多くの食品メーカーの開発担当者や調達、マーケティング担当者にPRすることで、昆虫食そのものを広く知って頂き、昆虫食を使った商品開発やヒントを提供し、SDGsをコンセプトとする商品開発及び、販売できる環境をバックアップしてまいります。 「シェアシマ」では今後も自らがプロジェクトを立ち上げて実践するだけではなく、食品業界の新商品開発に積極的に関わり、サスティナブルな社会の実現を目指してまいります。 昆虫食原料特集ページ  〇掲載企業・商品(2022年3月2日現在) ・太陽グリーンエナジー株式会社 「生冷凍フタホシコオロギ」 ・株式会社グリラス 「グリラスエキス」「グリラスパウダー」 ・株式会社エコロギー 「エコロギーパウダーSH」「エコロギーパウダーW」 ・株式会社IMO Global 日本本社 「クリケットプロテイン」 ・エリー株式会社 「SILKFOOD 食用蚕パウダー」 ・株式会社アールオーエヌ 「コオロギパウダー」 ・株式会社アルファリンク 「BCP-60(コオロギパウダータンパク60%)」 ・株式会社MNH 「業務用 エコプロテイン コオロギパウダー」 「業務用 未来コオロギオツマミ」 ・サントレック株式会社 「クリケットパウダー(脱脂)」   お問い合わせ先: ICS-net株式会社 シェアシマ事務局 info@ics-net.com
【シェアシマ】昆虫食原料特集ページを開設【お知らせ】
2021.10.11

プラスチック製スプーンの有料化⁉ その概要とは

プラスチック製スプーンの有料化とは レジ袋の有料化に続き、プラスチック製のスプーンなどの有料化への動きが進んでいることをご存知でしょうか。今回は、その概要や2021年春に成立した「プラスチック資源循環促進法」について紹介します。 2021年3月9日、プラスチックごみの削減を目指して「プラスチック資源循環促進」が閣議決定されました。それに伴って、コンビニエンスストアやファーストフード店などで提供される、プラスチック製のスプーンやフォークなどの有料化や代替素材への移行が検討されています。 身近なところでは、2020年7月に全国一斉でレジ袋が有料化されたことは記憶に新しいと思います。ここから、使い捨てプラスチック製品を減らそうとする動きが加速しています。最近、プラスチック製ストローから紙製のものへと変更する飲食店などが増えつつありますが、こうした変化もその一部といえるでしょう。 プラスチック製スプーンの有料化に対しては、賛否両論のいろいろな声があります。賛成側の意見としては、「慣れれば当たり前になる」「以前から使い捨ては『もったいない』と思っていた」など。逆に、反対側の意見としては、「常に携帯しておくのは面倒」という消費者の声だけでなく、「スプーンを使う商品の売り上げが落ちるのでは」「スプーンの代わりに箸をくださいという人が増えるのでは」というお店側の声もあります。 代替素材のスプーンとは プラスチック製スプーンの有料化への動きにあわせて、代替素材を使ったスプーンが続々と登場しています。たとえば、天然バイオマス材料など土に還る素材を使って作られたスプーンの開発なども行われています。見た目は、プラスチック製のものとほとんど変わりませんが、使い終わった後は微生物の働きによって自然に分解するとされています。従来は、こうした素材を使うと強度や耐久性が確保できないというデメリットがありましたが、そうした点も克服すべく研究が重ねられています。 また、トウモロコシなどの食材を使って作られたスプーンも注目を集めています。スープなどを食べる際にこのスプーンを使った後、そのまま食べたり、適度な大きさに割って料理に使ったりすることもできます。トウモロコシ以外に、じゃがいもの皮を使ったスプーンなども登場しています。通常廃棄されてしまう部分を有効活用できるのも、大きな魅力です。 代替素材のスプーンと聞くと、難しそうなイメージを持つ人もいるかもしれません。でも実際には、ユニークな特徴を持ったものも多く登場しています。プラスチック製スプーンの有料化に関する動向を、これからもチェックしていきたいと思います!
プラスチック製スプーンの有料化⁉ その概要とは
2021.03.23

「世界食料デー」SDGsの取り組みをみんなで考えよう

「世界食料デー」月間とは?国連は10月16日を「世界食料デー」、10月を世界食料デー月間と定めています。世界の飢餓や食糧問題について考えるとともに、その解決に取り組む1ヵ月としています。日本では2008年からこの世界食料デー月間の期間を活用して、NPO/NGOや国連機関などとの連携による情報発信を行っています。 特定非営利活動法人国際連合世界食糧計画WFP協会によれば、2018年時点での世界の飢餓人口は約8億2000万人以上とされています。これは「世界の人口のうち、約9人に1人が飢餓で苦しんでいる」という計算になります。世界食料デー月間では、飢餓や食糧問題はその課題に苦しんでいる当事者だけでなく、社会全体の課題であるとされ、より多くの人による多面的な取り組みが必要です。 例えば、飢餓が深刻化する一方で、食べられるのに廃棄されてしまう「食品ロス」などの問題があります。解決方法のひとつとしては、消費者は「(賞味期限の長いものを選ぶのではなく)賞味期限の短いものを買う」「購入した食材は残さず食べ切る」といった心掛けが重要です。また食材や料理を提供する側としては「食べられる量を提供する」など、それぞれの立場で身近にできることから実践することが求められます。 世界食料デー月間とSDGs 世界食料デー月間に関連して、持続可能な開発目標(SDGs)における17の目標のひとつに「飢餓をゼロに」というものがあります。これは、次に挙げるような他の目標とも密接に関わっています。 例えば、「貧困をなくそう」という目標について言えば、極度の貧困状態にある人々(1日あたり1.9ドル以下で暮らす人々)の数は、1990年以降大幅に減りました。しかし依然として、2015年時点では世界に約7億3700万人が極度の貧困状態にあるとされ、飢餓にも深くつながっています。 「つくる責任 つかう責任」という目標では、「生産された食料のうち、約3分の1が廃棄もしくは損失している」という現実が大きな問題となっています。飢餓で苦しむ人が減り、より多くの方が食べられるようにするために、環境にも配慮しながら持続可能な生産・消費の仕組みを構築していくことが望まれています。 最後に「パートナーシップで目標を達成しよう」という目標は、行政・企業・NPOなどさまざまな主体が関わっていくことの重要性を意味しています。これは飢餓だけでなく他の課題にも通じることですが、世界規模での課題を解決するためには、それぞれの専門分野を越えて取り組んでいくことが大切です。 食料デー月間をきっかけに、私たちが身近にできることを考えてみてはいかがでしょうか。
「世界食料デー」SDGsの取り組みをみんなで考えよう
2021.02.02

ノンカフェインで美味!今話題の「マヤナッツコーヒー」とは?

カフェインを含まないコーヒーが人気! 仕事や家事などの合間に気分転換したい時によく飲まれるコーヒーですが、「カフェインの入っていないコーヒーを飲みたい」という方が増えています。妊娠中や授乳中の方だけでなく、美容や健康のためなどその理由は人それぞれです。 こうした背景を受けて、最近では大手コーヒーチェーン店などでも「デカフェ」「カフェインレス」という文字をよく見かけるようになりました。しかし、いざ試してみようとすると「いろいろな種類があり選ぶのに迷ってしまう」という方も多いのではないでしょうか。 実際に、カフェインレスコーヒーと一口に言っても、インスタントから豆を挽くタイプまでさまざまな種類があります。たんぽぽコーヒーやチコリコーヒーなど、コーヒー豆の代わりに別の素材を使用したものも数多くあります。 そんななかで、美や健康に意識の高い人達の間で話題になっているのが「マヤナッツコーヒー」。そこで今回は、このマヤナッツコーヒーについてご紹介したいと思います。 マヤナッツコーヒーの魅力 マヤナッツとは、グァテマラの森林で育つラモンという名前の木から収穫できる実のこと。古代マヤ人はこの実のおかげで生き延びたとも言われるほど、栄養価に富んでいます。そんなマヤナッツを天日で乾燥させて焙煎し、粉末状にしたものがマヤナッツコーヒーです。香ばしい苦味と深いコクがあり、コーヒーが好きな方からも人気を集めています。もちろん、カフェインは含まれていません。 マヤナッツは、高タンパク・低脂肪であるだけでなく、現代人に不足しやすいビタミンやミネラルも豊富に含んでいます。また、必須アミノ酸「トリプトファン」がたっぷりと含まれているのも人気の理由のひとつです。トリプトファンは、通称「ハッピーホルモン」と呼ばれるセロトニンを作るとされています。私自身もマヤナッツコーヒーが好きでよく飲みますが、ほっと一息付きたい時にぴったりの飲み物です。 マヤナッツコーヒーは、熱湯で溶かすだけでも手軽に飲めますが、煮出すことでより風味がしっかりと味わえます。豆乳や牛乳などを加えてミルクコーヒーやカプチーノ風にするのも美味しいです。甘さが足りないという時には、黒砂糖などを加えてください。また、クッキーなどのお菓子づくりに加えるのもよく合います。今話題のマヤナッツコーヒー、気になる方はぜひ試してみてはいかがでしょうか。
ノンカフェインで美味!今話題の「マヤナッツコーヒー」とは?
2020.11.30

コロナ禍で売れ残った高級食材、新しい売り方とは

高級食材が売れ残っている現状 新型コロナウィルスの影響により、結婚式などのイベントや接待などが大幅に減っています。それに伴って、高級食材や引き出物用のお菓子などが大量に売れ残っていることをご存知でしょうか。 例えば、私の暮らす愛知県で盛んに生産されている紅色のしょうがの一種「はじかみ」。和食の焼き魚などに添えられることも多く、料亭などでよく利用されてきました。ところがコロナ禍でそうした需要も少なっています。はじかみが大量に売れ残ってしまい農家さんが困っている、というニュースが新聞などでも取り上げられました。 はじかみ農家だけでなく、こうした状況に追い込まれている生産者や加工業者は全国に数多く存在します。そこで、この現状を解決すべく、コロナ禍で売れ残った高級食材を売るためにいろいろな活動がスタートしています。 高級食材を売るための活動がスタート まずご紹介するのは、結婚式などの引き出物に使われる高級菓子や高級グルメなどを格安で販売するサイト「PIARY(ピアリー)」。行き場を失った食品の数は、なんと約600万個にものぼるのだとか。こうした食品を「引き出物おまかせ10点詰め合わせセット」として、手頃な価格かつ送料無料で販売しています。「フードロス削減のための支援・協力」ということだけでなく、「幸せのおすそわけ」というコンセプトも魅力のひとつです。 次にご紹介するのは、プロ料理人向けの産直食材仕入れサイト「リーチストック」。全国で一万店舗以上の飲食店が利用しているサービスです。コロナ禍では「コロナに負けるな!食材レスキュープロジェクト」が立ち上がり、飲食店などでプロが使用する食材を、一般家庭向けに良心的な価格で販売しています。例えば、「真鯛のお刺身セット」も人気を集めている商品のひとつです。半身にして骨を取った状態で真空パックにしているため、自宅ですぐに食べることができます。 今回ご紹介したのは2つの支援サイトですが、他にもいろいろな活動が始まっています。普段はなかなか味わえない高級食材をおいしく味わいながら、生産者や日本の食文化をしっかりと応援していきたいですね。
コロナ禍で売れ残った高級食材、新しい売り方とは
2020.11.19

生産者を応援!コロナ禍で話題の「オンラインマルシェ」

コロナ禍でも人気を集める「オンラインマルシェ」 マルシェとは、フランス語で「市場」の意味。食べ物や雑貨、手作りアクセサリーなどを扱う店が並ぶイベントのようなもので、週末などに公園やお寺などのスペースを利用して全国各地で開催され、人気を集めています。私の自宅近くでもマルシェが定期的に行われていますが、生産者と消費者が顔を合わせて、会話をしながら商品を直接購入できるのが大きな魅力です。 しかしながら2020年の新型コロナウィルスの影響により、各地で予定されていたマルシェが続々と開催中止になっています。また、こだわりを持って作られた商品が売れ残っている現状を解決したいという想いのもと、「マルシェの魅力を維持しながら、コロナ禍でも安心して買い物ができるように」という考えから始まったのが、オンラインマルシェです。 農家・漁師直送の「ポケットマルシェ」 新鮮な野菜や魚・肉類などを農家や漁師などの生産者から直接購入できるサービスとして人気を集めているのが「ポケットマルシェ」。コロナ禍でも着実に売り上げを伸ばしていることからも、話題になっています。 こちらのホームページでは、野菜・果物・米といった「商品カテゴリ」と北海道・東北・関東などの「エリア」に加えて、「生産者」のリストからも商品を検索することができ、希望に合った商品を探しやすいのも特徴のひとつです。遠方になかなか足を運べない状況だからこそ、故郷の味や思い出の味をオンラインマルシェで見つけてみるのもいいかもしれません。 中小企業が集結「茨城まごころオンラインマルシェ」 茨城県内の中小企業や小規模事業者のスタートアップのために東京で開催予定だったマルシェを、急遽オンラインで実施することにした「茨城まごころオンラインマルシェ」。開催に向けて、より多くの方にマルシェの存在を知ってもらうために、クラウドファンディングを行いました。 コロナ禍では、多くの生産者や事業者を含めてたくさんの人たちが予期していなかった状況下に置かれています。そのなかで、オンラインマルシェは、従来のマルシェの魅力を保ちながら、生産者と消費者がつながる貴重な場として今後さらに人気を集めていくのではないでしょうか。今後の展開も、ぜひチェックしていきたいですね。
生産者を応援!コロナ禍で話題の「オンラインマルシェ」
2020.11.12

フードロス削減に向けて「量り売り」が加速中⁉その理由と取り組み事例

「量り売り」「ばら売り」が今注目される理由 コロナの影響を受けて一部の農産物や加工品などが売れ残っており、新聞やテレビなどのニュースなどでもよく取り上げられています。こうした背景を受けてさまざまな取り組みが加速していますが、そのなかでも「量り売り」「ばら売り」への注目が集まっていることをご存知でしょうか。 まず前提として、日本の大手スーパーなどでは新型コロナウィルスへの対策のなかで、従来の量り売りやばら売りを中止し、パック詰めのものを販売するスタイルへと切り替わりつつあります。その一方で環境先進国と呼ばれるドイツでは、現在も量り売り販売をする店が支持されているそうです。もちろん、お客さんの手の消毒や、量り売りに使用するカップなどの消毒、試食の中止などは徹底して行っています。これらの事項をまとめた「量り売り専門店における感染防止対策のガイドライン」なども定められました。ウィズコロナのなかでも、ゴミ削減などの問題に取り組む強い姿勢の現れとも言えそうです。 また国内の事例として、東京都世田谷区にある食品専門のミニスーパー「アイアイマーケット」では、廃棄処分を目前に控えた商品を通常の半額以下の価格で販売しており、女性客を中心に人気を集めています。この店の人気の秘密は安さだけでなく、「フードロス」「持続可能」というコンセプトに共感する人たちを惹きつけていることにもあります。これまでは飲食店向けとしていた商品を、個人客向けに少量ずつ販売することで、食品の廃棄量を減らすことに貢献しています。 地域レベルでの取り組みも加速中 フードロス削減に向けて、行政による地域レベルでの取り組みも加速しています。例えば兵庫県加古川市では「加古川市おいしい食べきり運動」を実施し、飲食店や宿泊施設、小売店から発生する食品ロスの削減を目指しています。また、「小盛りやハーフサイズの設定」「食料品の量り売りやばら売りの実施」「規格外品の安売りや有効利用」などを行う店舗も支援しています。 フードロス削減に向けた解決方法としても、注目されている「量り売り」「ばら売り」。コロナウィルスの感染防止対策をどう進めるのかなど課題はたくさんありますが、海外や国内での事例をもとに具体的な進め方を考えてみるのもいいかもしれません。
フードロス削減に向けて「量り売り」が加速中⁉その理由と取り組み事例
2020.11.09

「エシカル消費」することで世界の問題は解決される?

「エシカル消費」という言葉が世に出始めて、10年ほどが経つでしょうか。 一過性の爆発的なブームなどではなく、良い形で少しずつ少しずつ浸透してきているように感じます。 今後ますます、商品選択にあたって品質や価格以外に「エシカル」という要素が重要になっていく時代へと社会は進んでいくのか。 今回は「エシカル消費」について解説します。 エシカル消費は社会問題解決への第一歩になる 「エシカル(ethical)」は「倫理的」「道徳的」を意味します。 倫理的な消費と言われても、消費活動と倫理が結びつかない方も多いかもしれません。 しかし実は、衣食住といった生きていく上で欠かせない消費活動だけに限っても膨大なエシカル消費の選択肢があります。 その商品を生産するにあたって、人・環境・地域に過度な負担を強いない、むしろ貢献することを目指すのがエシカル消費です。 具体例については後述しますが、エシカル消費を実行することで、深刻な世界の問題解決の第一歩を踏み出すことができるのです。 普段食品や衣類を買うときに、その商品が目の前に届くまでの過程を想像することはないかもしれません。 しかし購入しようとしているその商品が、多少なりとも児童労働をはじめとする人権問題・森林伐採などの環境問題・貧困といった犠牲の上に成り立っているかもしれない可能性に思いを馳せてほしいのです。 消費は生きることそのものです。止めることはできません。 だからこそ、消費するモノやサービスの背景まで考え、環境負荷の低いものや生産者からの過度な搾取のないものを選択する、倫理道徳に則って選択することが大切だと言えます。 エシカル消費の具体例 エシカル消費だと自覚していなくても、実はすでに皆さんもエシカルな消費行動をしているかもしれません。 ・エコマーク ・フェアトレード ・カーボンオフセット ・グリーン購入 ・オーガニック 購入するモノやサービスにこれらのキーワードがあればそれはエシカル消費を実行していると言えます。 「エシカル消費」という言葉よりも、具体例の方が耳なじみのある人も多そうですね。 これらは環境や人・社会に配慮された例ですが、地域への配慮という面からは ・地産地消 ・応援消費 などもエシカル消費の一例と言えます。 無理のない「エシカル消費」を続けていく 消費活動は生きている限り続きます。 同じようにお金を払うならば、社会問題を解決する生きたお金を使う。 そう心掛ければ、価格だけを比較した時よりも、より広い目で商品選択をできるような気がしますね。 「より安い」を追求した商品は、得てしてエシカルではない、弱い立場の生産者の犠牲の上に成り立っている場合も多いのだということを心の隅に置いてください。 商品選択に「より安い」だけではない、「より良い」という指標を持てば、企業側にも価格一辺倒ではない商品やサービスの開発を促すことができます。 実際に、寄付つき商品などは価格が高いにもかかわらずよく売れるというデータもあります。 このようなデータが蓄積すれば、企業としてもマーケティング戦略に「エシカル消費」を意識しないわけにはいかなくなります。 もちろん明日から生活のすべてでエシカル消費を実行するのは不可能です。 しかし1つのものからでもエシカル消費は実行できます。 いつでもエシカル消費を実行することができる、実行するほどに社会問題解決の一歩を重ねられるという「気持ち」をまずは持ってみましょう。
「エシカル消費」することで世界の問題は解決される?
2020.10.08

食品ロス削減に向けた注目の取り組み「フードシェアリングサービス」とは

フードシェアリングサービスとは?食品ロス削減に向けて、欧州などで広く普及し始めている「フードシェアリングサービス」。日本でもこのサービスを提供する会社が登場し、少し前から注目を集めています。そこで今回は、その内容やコンセプトなどについて紹介したいと思います。 まず、フードシェアリングサービスとはどんな意味なのでしょうか。もともとは、欧州を中心に広がっているスマートフォンのアプリを利用した取り組みがその始まり。早い時期から食品ロス削減に向けてさまざまな活動を行っています。 こうした背景には、まだ食べられる状態であるにもかかわらず「賞味期限が近づいている」といった理由などにより、大量の食品が捨てられているという現実があります。 世界には飢えで苦しむ人たちが大勢いるという事実と照らし合わせても、持続可能な社会を目指していく上で、これは大きな問題です。こうしたグローバルな課題を踏まえて、食品ロスを減らすために生まれたのがフードシェアリングサービスです。 2015年の「持続可能な開発目標(SDGs)」の目標ターゲットのなかにも、この食品ロスの減少が掲げられ、国際的なテーマとなっています。また、日本では「食品ロス削減推進法」が成立し、国内においても関心が高まりつつあります。 日本での取り組み事例は?フードシェアリングサービスには、大きく分けて「インターネット通販型」と「店舗訪問型」の2種類があります。 インターネット通販型は、ネット上にて商品を購入し、登録した住所に届くというもの。取り組み事例としては「Otameshi」などがあり、購入金額の一部が社会貢献としてさまざまな団体に寄付されます。通常の商品を「お試し価格」で購入できるというのもこのサービスの特徴のひとつです。 これに対して店舗訪問型は、実在する店舗を訪問して、そこで作られた料理や商品などを購入するというもの。取り組み事例としては「tabete」などがあり、廃棄が迫った食品を購入するものです。食品と食べ手をつなぐだけでなく、天候や予想外のアクシデントなどにより注文数が安定しない店舗を応援するという側面もあります。 「食品ロスを減らす」という意味のなかには、食材や作ってくれた料理人への感謝の気持ちも込められているのかもしれません。身近に利用できるサービスも増えていますので、ぜひチェックしてみたいですね!
食品ロス削減に向けた注目の取り組み「フードシェアリングサービス」とは
2020.10.01

在庫処分品の購入は効果薄⁉ 食品ロス削減の鍵となるものとは

食品ロスという言葉は今やすっかり市民権を得、「食品ロスを削減しよう」などというスローガンを目にすることも多くなりました。 ではどうすれば食品ロスを減らすことができるのか。 ここでは主に売れ残り食品のロスに焦点を当てて考察していきます。 在庫処分セールでの購入、食品ロス削減効果はある? コロナ禍という社会状況から、食品の在庫処分セールがあちこちで行われています。お得な商品を買うことで生産者・販売店を応援できるなら、と購入した方も多いかもしれませんね。 ではこの行動に、食品ロス削減効果はあるのでしょうか? 在庫処分セールで売れ残ってしまったものが廃棄されるのであれば、それを購入して消費することでその場での食品ロスは確かに減ります。 しかしここではもう少し俯瞰して考えてみましょう。 食品の購入量全体が一定だとすると、在庫処分セールで購入した分、正規品の購入は減るはずです。 在庫処分セールで買ったものが、普段の食生活とは別にプラスされたものであれば買い控えは起こりませんが、実際には完全なプラスではなくどこかで置き換えられていることが多いからです。 在庫処分セールでお米を買ったとしましょう。そのお米がある間は、本来なら買うはずだった通常価格のお米を買わずに済みますね。 では何もなければ買われるはずだった通常価格のお米はどうなるか。 乱暴に推測すれば、それは在庫処分にまわると考えられます。 つまり、在庫処分品を買った分正規品が売れ残り、新たな在庫処分品が生まれるという堂々巡りになってしまうわけです。 在庫処分品の購入は食品ロス削減の観点から考えると、一時的には効果がありそうですが、長期的包括的に考えると効果があるとは言い切れないということになりそうです。 意識改革が食品ロス削減の鍵になる? そもそも在庫処分セールが行われるということは、売れ残りがあるということを示します。 消費者の「できるだけ新しいものを、欲しい時にいつでも買いたい。品切れは許さない」という意識と、販売側の「品切れは怖い、売れ残りは仕方ない」という意識。 この不足よりも過剰を是とする意識が在庫過多を招き、食品ロスを生んでしまってはいないでしょうか。 「豊かな時代」を皆が享受する大量生産大量消費の流れが長く続いてきました。しかしそろそろ次の段階へと進んでも良い頃合いでしょう。 多いほど豊かという考えから脱却し、「適量」を是とする社会へと成熟していくことが期待されます。 需要と供給のアンバランスを完全に解消することは難しいでしょう。どれだけ精緻に予測しても想定外の事態は起きますし、天候を意のままにすることはできず、ブームは急に来て急に去るのが常です。 そういった状況の中、社会全体に「自らが不足を受け入れる」という寛容さがあれば、それは食品ロスを削減することつながっていくように思えてなりません。また逆に言えば「自らが過剰を受け入れ一口多く食べる」ことも寛容さの一種になるかもしれません。 まとめ 意識改革というと大仰ですが、目の前の食品ロスを減らすには、まずはシンプルに一人ひとりが ・食べきれる量を ・過度な鮮度志向を控えて購入し ・残さず・捨てず ・品切れを快く受け入れる これらを心掛けることが大切です。 在庫処分セールでの購入も否定されるものではありませんので、上手に利用できるとよいですね。
在庫処分品の購入は効果薄⁉ 食品ロス削減の鍵となるものとは
2020.09.24

レジ袋有料化で「エコバック持参」が促進。賢い使い分け術とは。

エコバック持参の動きが加速! 2020年7月から全国一斉にレジ袋の有料化がスタートしましたね。経済産業省のホームページではその目的を「普段何気なくもらっているレジ袋を有料化することで、それが本当に必要かを考えていただき、私たちのライフスタイルを見直すきっかけとすること」としています。 実際に、レジ袋に使われるプラスチックは丈夫で軽いことから使い勝手の良い素材ですが、その一方で、海洋プラスチックごみ問題や地球温暖化などの多くの環境課題の原因となってきました。また「無料でもらえる」ということから、「使ってすぐに捨てる」という使い捨ての行動パターンからなかなか抜け出せないという現実もありました。 私の周囲でも、レジ袋の有料化を受けてエコバックを持参する人が増えているように感じています。エコバックと一口に言ってもいろんな種類があり、実は身近なスカーフなどもエコバックの代用品になったりします。そこで今回は、エコバックの賢い使い分け術をご紹介したいと思います! エコバックの使い分け術とは まずは、よく使うエコバックを3種類ご紹介しましょう。一つ目は、常にカバンに入れておきたい「コンパクトにたためるタイプ」。折りたたむと手の平サイズにおさまります。少量の買い物をしたい時などに、とても重宝します。 二つ目は「レジのかごに対応するタイプ」。週末のまとめ買いなど、しっかりと買い物をしたい時に役立ちます。レジのかごにも引っ掛けることができますし、持ち手の部分も丈夫なつくりになっていることが多いので、大量の買い出しには欠かせません。 三つ目は「保冷できるタイプ」。夏場など、蒸し暑い時期には「必須」とも言えそうです。せっかく美味しそうな食材を買ったのに、帰宅するまでに鮮度が落ちてしまっては非常に残念ですよね。特に、魚介類や肉類など傷みやすいものを購入したり、買い物から帰宅までに時間がかかったりする時などには、ぜひおすすめです。 最後に、レジ袋の代わりに使えるものについてご紹介しましょう。小さなものであれば、スカーフや手ぬぐいなどで包むこともできます。レジ袋を忘れてしまったという時などに、あるもので代用するのもいいかもしれません。 これをきっかけにエコバックを上手に活用して、ライフスタイルを見直したいですね。
レジ袋有料化で「エコバック持参」が促進。賢い使い分け術とは。
2020.09.14

急伸する「フードテック」を知ろう(後編)~キーワードは「パーソナライズ化」~

前編の記事はこちらです フードテックは食×テクノロジー(技術)を意味し、食品関連分野にサイエンスやITを導入することにより更なる食の可能性を探る動きを指します。 前編では食品ロスや将来のたんぱく源不足といった食糧問題や人手不足などの社会問題の解決を目指す点からフードテックを見てみましたが、それだけではフードテックの一面を捉えたにすぎません。 フードテックにはパーソナライズ化されたニーズを満たし、食の多様化、食の可能性をより広げられるのではないかという期待も込められているのです。 後編ではこの視点からフードテックを考察します。 食のパーソナライズ化の可能性を探る ITが急速に生活に浸透し、もはやインターネットなしで生活していたころを思い出せないと感じたことはありませんか。ほんの20年ほどの間に、一家に一台のパソコンから一人一台のスマホでインターネットとIT環境は一気に充実しました。5Gの時代がやってくれば車や家電それぞれがインターネットに通じ、再び世界は激変すると考えられています。 この技術革新を背景に、従来では追跡することのできなかった人々の消費行動や食にまつわる欲求などの詳細なデータを獲得することができるようになってきました。 スマホでアレルギーや味の好みを登録しておけば、冷蔵庫内の食材を画像解析した上で好みに合わせたレシピを提案する、必要な食材をオンライン購入する、スマート家電で自動調理するなどといったサービスがこの先どんどん展開されていくでしょう。 あるいは遺伝子・血液などの情報を含む健康診断の結果や運動量をもとにした基礎代謝の状況などを解析して健康状態にあったレシピやメニューを提案したり、食材や不足しがちな栄養のサプリメントはもちろんのこと調理済みの料理を配達したりするなどというサービスも考えられます。 食のパーソナライズ化は家の外へも拡がる さらには家の中だけでなく、外出先でもこういったパーソナライズ化された食の可能性は広がっています。 例えば自動販売機にスマホをかざすと好みのサラダやスムージーが出てきたら嬉しいですよね。欧米ではすでにサラダベンディングマシンやフレッシュスムージーをその場で作ってくれる自動販売機が実用化され、徐々に普及してきているといいます。 日本国内でも遠くない将来、同様のサービスが展開されていくことでしょう。 外食時でも決まったメニューから選ぶのではなく、好みの食材と調理法・味付けを選べば、ロボットが調理してくれる。あるいは「今日のあなたをより健康に導くのはこの料理です」と不足している栄養素を補う料理が提案される。 そんな未来も全くの絵空事ではなく、現実味を帯びてきています。 まとめ フードテックについて前後編で考察してきました。 現段階では可能性として語られているサービスのうちのいくつかは、近いうちに実用化され、きっかけさえあれば日本国内でも一気に普及するかもしれません。 5G普及の過渡期はまさに人々の「常識」が変革する真っただ中にあると言えそうです。 20年後、日常生活はどう変わっているのか。まだ想像の域を出ませんが、今日の私たちが20年前を懐かしむと同程度、あるいはそれ以上に世界は変わっていくと思うと、ワクワクが止まりませんね。
急伸する「フードテック」を知ろう(後編)~キーワードは「パーソナライズ化」~
2020.09.10

急伸する「フードテック」を知ろう(前編)~社会問題の解決を目指すフードテック~

「フードテック」という言葉を聞いたことがありますか? フードテックは食×テクノロジー(技術)を意味し、食品関連分野にサイエンスやITを導入することにより更なる食の可能性を探る動きを指します。生きていく上での根幹ともいえる「食」は農業漁業から、食品製造、流通・保存、調理、配送など様々な分野にまたがります。関連したお仕事をしている方も多いでしょうし、末端の消費者として考えれば、フードテックによる新サービスや新ビジネスはまさに私たち一人ひとりの生活に直結しているわけです。 とはいっても、「フードテック」という言葉だけでは具体的なイメージは湧きにくいかもしれませんね。まずは社会問題の解決という視点から、フードテックを探ります。 食糧問題の解決を目指すフードテック フードテックの目指す一つの行き先は食品ロスや将来のたんぱく源不足の解消といった食糧問題の解決です。食品ロスの問題は大変深刻です。国連食糧農業機関(FAO)によれば、食糧廃棄量は世界中では年間約13トン。これは人の消費のために生産された食料のおよそ1/3にも上るといいます。 ITを活用することで需要と供給をより精緻に予測することができれば、家庭に届く前までの食品ロスが減少すると考えられます。家庭に届いたあと、さらに最新技術により品質を保持できる保存期間が延長され、誰でも簡単においしく調理できる自動調理などが実現すれば、家庭内での食品ロスも減っていくでしょう。食品パッケージが変わってくれば、プラスチックごみの減少へもつながるでしょうし、流通のロスが少なくなればその分の輸送量が減り、排出CO2も削減できるなど、影響は計り知れません。たんぱく源不足も大きな食糧問題ですが、代替肉や培養肉の分野が解決の糸口となる可能性を秘めています。さらにはたんぱく源不足だけではなく、貧困層の栄養不良による健康問題、それとは逆の富裕層の食べすぎによる健康被害といった問題に対応できる代替肉や培養肉は、今後ますます注目されていくことでしょう。 人手不足をテクノロジーが解決する? 日本の人口は10年連続で減少し続けています。少子高齢化の流れは今後も加速の一途をたどりそうです。この労働力人口の減少をテクノロジーによって解決できるのでしょうか。 実は、その可能性は十分にあります。ドローンを活用した農薬散布、AIによる自動灌漑、食品工場でのロボット化などはすでに実現していますし、畑ではなく工場で野菜を生産することも今後ますます増えていくでしょう。さらには小売り・飲食業界でも調理や接客をロボットが行うことも当たり前の時代がやってくるかもしれません。あるいは小売という業態が変化していく可能性もあります。一昔前は、どのようなものでも出かけて行って店舗で買うのが一般的でしたが、現在の通信販売の躍進は皆さんご存じのところです。今後この流れがますます加速し、もしかしたら普段食べる生鮮食品についてもオンラインで購入し届けてもらう形が普及していくのかもしれません。 近い将来の購買形態がどうなるかは未知数ですが、フードテックがさまざまな可能性に満ちていることは確かです。 今回の記事のまとめ 以上のように、フードテックは社会問題の解決を目指して急伸してきています。しかしそれだけではフードテック全体をとらえたとは言えません。もう一つ別のアプローチとして、フードテックは食の多様化を目指しています。次回後編ではこの食の多様化、パーソナライズ化されたニーズを満たすフードテックについてお伝えします。 後編はこちら
急伸する「フードテック」を知ろう(前編)~社会問題の解決を目指すフードテック~
2020.08.17

最近話題の「エコラップ」とは?簡単な作り方とその活用法

「脱プラスチック」とは? 包装容器などに使われることの多いプラスチック容器。容器の廃棄による環境問題が、深刻化しています。例えば、プラスチック製のストローが身体に突き刺さったウミガメの写真などをご覧になったことのある方もいらっしゃるかもしれません。これはほんの一例に過ぎず、プラスチックごみが海を汚染し、そこに棲むさまざまな生き物の暮らしを脅かしているのです。 こうした状況を受けて、世界中で広がりつつあるのが「脱プラスチック」に向けた動き。従来のプラスチック容器を見直して、環境問題の解決を目指そうというものです。企業や行政だけでなく、個人としてもさまざまな取り組みが行われています。 繰り返し使える「みつろうラップ」とは? そのなかで注目を集めているのが「みつろうラップ」。一度使ったら捨ててしまう従来のラップとは異なり、繰り返し使えるのが特徴です。その特徴から「エコラップ」と呼ばれることもあります。また、好きな絵柄を選ぶことができるので、キッチンを明るく華やかに彩ってくれるという魅力もあるんです。 みつろうラップが話題になっているもうひとつの理由は、自宅でも簡単に作れること。コットンの布に、みつろうやココナッツオイルなどを染み込ませて作ります。みつろうというのは、みつばちが巣を作る際に分泌する「ろう」のことです。 作り方は、アイロン台の上に新聞紙、クッキングペーパー、布、細かく刻んだみつろう、クッキングペーパーという順に重ねて、低温に設定して上から熱を加えます。みつろうが溶けて、布全体に溶けた液体が浸透すればOK。自然に冷めるまで待てば、できあがり。私も作ったことがありますが、10分程度で完成します! このみつろうラップは、器などに使うだけでなく、果物や野菜、おにぎりやサンドイッチなどを包んだりするのにも使うことができます。お手入れは、水やぬるま湯などで洗って、風通しのよい場所で乾燥させること。大切に扱えば、1年程度は使用できます。 「ゴミを減らしたい」「環境にやさしい暮らしをしたい」という方は、ぜひ作ってみてはいかがでしょうか。
最近話題の「エコラップ」とは?簡単な作り方とその活用法
2020.08.13

「冬瓜」の旬は夏!薬膳料理でも使われるその効能とおすすめレシピ

「冬瓜」の旬は夏!薬膳料理でも使われるその効能とおすすめレシピ。 夏の身体に嬉しい「冬瓜」 ウリ科の野菜「冬瓜」。漢字のイメージから冬の野菜と思われがちですが、実は夏に旬を迎える野菜です。涼しいところで保管すれば冬まで食べられることから、この名前が付いたと言われています。 冬瓜は9割以上が水分。低カロリーな野菜としてもよく知られていますが、実は、夏の身体に嬉しい栄養を含む野菜であることをご存知でしょうか。 その代表的な栄養素を3つ、ご紹介しますね。まずは、蒸し暑さや運動不足などで深刻化しやすい「むくみ」を予防する効果が期待されている「カリウム」。そして、強い陽射しを浴びることの多い夏において、美容には欠かせない「ビタミンC」。最後に、コレステロールや中性脂肪を減らす効果が期待される「サポニン」です。 冬瓜は、夏の薬膳にもよく使われる食材です。身体の余分な熱や水分を取り、潤いを与える作用があるのだとか。冬瓜の皮は「冬瓜皮(とうがんひ)」と呼ばれており、果肉の部分よりも利尿作用が高いとされています。冬瓜の種の部分は「冬瓜子(とうがんし)」と呼ばれ、こちらも使われることがあります。果肉だけでなく、皮も種も使うことができるなんて、驚きですね! 冬瓜を使った簡単料理 冬瓜を使った料理と言えば、「煮物」のイメージが強いかもしれません。でも実際には、味や食感などにクセの少ない冬瓜は、さまざまな料理に使うことができます。特に、冬瓜に含まれる栄養は調理法によっては水分と一緒に外に溶け出してしまうことがあります。そのため、どんな料理に使う場合でも、煮汁ごと食べるようにすることがおすすめです。 例えば「冬瓜と鶏肉のスープ」など、肉や魚と組み合わせると主菜にもなるボリューム感のある一品になります。食欲の少ない時などには、カレー粉や酢などで風味を付けると、肉の臭みも抑えられて食べやすくていいですね。淡泊な冬瓜に、煮汁が染み込んで美味しいです。その他、「冬瓜の鶏肉そぼろあんかけ」「冬瓜と豚肉の炒め煮」などにするのもおすすめ。暑い時期には、少し冷ましていただくと食べやすくなります。 夏の野菜・冬瓜を美味しくいただいて、この夏も健やかに過ごしたいですね。
「冬瓜」の旬は夏!薬膳料理でも使われるその効能とおすすめレシピ
2020.08.10

すいかの皮を捨てないで!漬物やスープなどの美味しい活用法

すいかの皮は、食べられる! 夏を代表する果物のひとつ「すいか」。今年もすいかが美味しく感じられる季節がやって来ました!甘くて水分をたっぷりと含んだ果肉が人気を集めていますが、実は、その皮も食べられることをご存知でしょうか。 普段捨ててしまう部分を使うことでゴミの量も減りますし、夏の身体に嬉しい栄養価もギュッと詰まっています。もちろん美味しいので、本当にいいことづくめ!では、すいかの皮の栄養と食べ方をご紹介していきますね。 皮に含まれる栄養とは? まず、すいかの皮に含まれる栄養についてですが「シトルリン」という成分が豊富に含まれています。この成分はアミノ酸の一種で「血流の改善」「ホルモンバランスの調整」などに効果が期待されると言われています。すいかの果肉にも含まれていますが、皮に含まれる量はその約2倍もあるのだとか。また漢方ではすいかの皮は「西瓜翠衣(せいかすいい)」と呼ばれ、漢方薬の原料や中国料理などにも古くから使われてきました。 すいかの皮を使った簡単料理 次に使い方について、見ていきましょう。一番手軽な食べ方は「漬物」です。果肉を食べ終えた後の皮の部分を刻み、塩を振って少し待てば出来上がり。もちろん、浅漬けやピクルス、キムチなどに使うのもよく合います。緑色の硬い部分だけを薄く切って、白い部分を中心に召し上がってくださいね。 また、漬物のような生食だけでなく、加熱した料理に使うのもおすすめです。夏の薬膳料理でよく作られるのは「豚スペアリブとすいかの皮のスープ」。豚肉とすいかの皮を煮込んで、塩味などでシンプルに味付けをします。薬膳の考え方では、豚肉とすいかの皮のどちらにも「身体を潤す」効果が期待されています。つまり、たくさんの汗をかいて身体が乾きやすい夏にもぴったりの料理ということですね。 この他、炒めものや麺類の具材に加えても美味しくいただけます。ちなみに、赤い果肉の部分を多めに残すようにすると、甘さが強くなります。お好みにもよりますが、甘さがあるとお子さんにも食べやすいのでおすすめです。今年の夏は、ぜひすいかを丸ごと美味しく食べてみませんか。
すいかの皮を捨てないで!漬物やスープなどの美味しい活用法
2020.06.17

余った野菜が美味しく変身!「ベジブロス」とは

にんじんのヘタや玉ねぎの皮など、通常料理に使わない野菜の切れ端などはどうしていますか?おそらく「捨てている」という方も多いと思います。こうした野菜の切れ端には、昨今注目されている成分「フィトケミカル」などを含め、実は栄養が豊富に詰まっています。つまり、捨ててしまうのはもったいない!そこで今回は、こうした余った野菜を使った絶品スープストック「ベジブロス」についてご紹介します。 ベジブロスとは、野菜の切れ端を使ったスープのこと。旨味がたっぷり感じられるので、市販のスープの素などに頼らなくても、とても美味しいスープを作ることができます。またアンチエイジングなどにも効果が期待されている「フィトケミカル」は加熱することで体内に吸収されやすくなるため、ベジブロスにして食べるという方法はとても理にかなっています。 ではまず材料についてご紹介しますね。ベジブロスに使うことのできるのは、野菜のヘタや芯、皮、種など。できれば、オーガニックや無農薬のものがおすすめです。もし農薬が気になる場合には、流水でよく洗うか水にさらすなどして、農薬を洗い流すようにしてください。 基本的にはどんな野菜でも使うことができますが、ゴーヤーなどのアクの強い野菜は避けたほうが無難です。セロリの葉や玉ねぎの皮など香りのよい食材を使うと、風味豊かなベジブロスになるのでおすすめ!2~3種類から作れますが、できればたくさんの種類を入れたほうが美味しくなります。 野菜を切り落とすたびにタッパーなどに入れて冷蔵庫で保管し、ある程度たまったらベジブロスを作ってみましょう。野菜の切れ端を鍋に入れて、かぶるくらいの水と少量の酒を加熱していきます。沸騰したら弱火にして、じっくりと煮出します。その後、ザルなどで野菜を濾せば完成!密閉容器に入れて、冷蔵庫で3日程度保存できます。出来上がったベジブロスは、昆布やかつおの出汁などと同じように、スープや味噌汁、煮込み料理などのベースに使ってくださいね。もしじっくり煮出す時間がないという場合には、圧力鍋を使うと短い時間で作ることができます。 普段捨てていた野菜の切れ端を使って、美味しくて身体にも優しいスープストックが作れるのは、家計にもやさしく、とても嬉しいですね!ぜひお試しください。
余った野菜が美味しく変身!「ベジブロス」とは
2020.05.27

フェアトレードコーヒーが美味しい理由

昨今よく聞かれるようになった「フェアトレードコーヒー」。コーヒー豆の専門店や大手コーヒーチェーンなどでも、その文字を見かけます。もともとフェアトレードとは、一般的に途上国と先進国での貿易などに対して使われる言葉のこと。こうした途上国の弱くなりがちな立場を保護し、先進国と途上国の対等な関係を築くためのものです。逆のことを言えば、輸入食材などがとても安い値段で売られているのを時々見かけますが、その背景には途上国での過酷な労働環境がひそんでいる場合もあるんです! ちなみコーヒーに関しては、世界中にいる約2500万人ものコーヒー生産者のうち約7割が10ヘクタール未満の小規模農園の従事者なのだとか。1990年代の生産量トップのブラジルの霜害の影響により、多くの国が新規参入したことなどにより、需要と供給のバランスが乱れています。その結果、小規模農園の経営は苦しく、過酷な労働を強いられています。そんな状況下においてフェアトレードで取引をすることにより、それまでの取引価格の2倍以上のお金が生産者に渡るようになり、労働や生活の環境が大きく改善されたという報告もあります。 また、コーヒー好きな人のなかでは「フェアトレードコーヒーは美味しい」「美味しいから選んでいる」という声も時々聞きますね!これは、フェアトレードで取引をすることにより、小規模農園でも経営が成り立つようになるため、一般には知られていないコーヒーも商品化することができるためです。 フェアトレードコーヒーが広まるメリットは他にもあります。それは、途上国の現状を知り、消費者の意識を変えていくことにつながるということ。コーヒーに限らず、フェアトレード商品はパッケージなどもデザインに気を配ったものが多いので、自身のスタイルを磨いていきたいという方にもおすすめです! さらに関心のある方は、フェアトレードコーヒーが注目されるきっかけになったとも言われる映画「おいしいコーヒーの真実」を鑑賞してみてはいかがでしょう。フェアトレードコーヒーとは何なのかを、再確認することができますよ!
フェアトレードコーヒーが美味しい理由
2020.04.20

食の在り方を考える一冊「カレーライスを一からつくる」

安全・安心な食の在り方をめぐって、さまざまな動きが広がっています。今回紹介するおすすめの一冊「カレーライスを一からつくる」もそのひとつです。 タイトルにある通り、カレーライスを始めから作ってみるという本なのですが、「ルーを使わずにスパイスを調合してつくる」という内容ではありません!カレーライスに使う野菜や米、スパイスはもちろん、家畜を育てて肉までも手作りするという内容です。探検家である関野吉晴氏が、武蔵野美術大学で学生たちと一緒に行った食のゼミの様子を書籍にまとめたものです。書籍が好評であったことを受けて、映画化もされており、全国各地で自主上映会などが行われています。 本のなかで、関野先生はこの9ヵ月間のゼミの目的について「カレーライスを一から手作りすることによって、学生たちにいろいろな気付きをしてもらうこと」と語っています。実際に始めから作ることで見えてくるものや感じることがたくさんあり、それらが本のなかで鮮明に綴られています。 例えば、家畜を育てて肉にするという時に学生たちは「殺すか、殺さないか」という議論を真剣に行っている場面。もともとはカレーライスに使う肉として家畜を育てたはずが、飼育する間に愛情が芽生えてしまい「殺すのはかわいそうだ」という学生の声もありました。普段私たちは「生き物の命をいただいている」という実感をあまり持つことなく、動物性の食材を口にしていることも多いと思いますが、この本を読んでいると「いただきます」の本当の意味を考えさせられるシーンがいくつもあります。 ゼミでは「塩や皿までも手作り」しています。さすが探検家とも言うべき徹底的なこだわりですよね。でも「カレーライスをゼロから作る」ではなく「一からつくる」としているのには、関野先生の想いが表れているのだとか。それは「自然のものは本当の最初から、ゼロから作ることはできない」という、命や自然に対する尊敬の念でもあります。 私も本を読みましたが、「カレーライスを一から作る」という一見シンプルな話のなかにさまざまなドラマがあり、命をいただくことについて深く考えるきっかけになりました!子どもにも分かりやすいストーリーなので、親子で一緒に読んでみるのもおすすめです。
食の在り方を考える一冊「カレーライスを一からつくる」
2020.04.15

報酬は「魚」!漁業の活性化に向けた新しい副業「ギョソモン」とは

「人生100年時代」という言葉があちこちで聞かれるようになりました。それとともに、フリーランスで働く人が増えたり、大手企業などでも副業が認められるようになったりするなど、人生や仕事の選択肢の幅が確実に広がってきていますね! 多くの人が仕事に求めるものは、お金だけではありません。やりがいや社会的課題の解決など「人生や社会を豊かにするため」という方も多いことと思います。そんな大きな流れのなかで、多様な主体が協業し、専門性を持つ人材を取り入れて漁業を活性化する試み「ギョソモン」が始まりました。 ギョソモンは、東京を拠点に活動する特定非営利活動法人エティックと、宮城県に拠点を置く一般社団法人フィッシャーマン・ジャパンの協業による取り組みで、エティックが運営するWワークと副業の求人サイト「YOSOMON!」にてスタートしました。具体的な事業内容としては、水産業に携わる宮城県近郊の若者と、課題解決を一緒に進める専門性を持つ副業人材をマッチングするものです。 他のWワークや副業との大きな違いは、報酬がお金ではなく「魚払い」であること。サポートした水産事業者から、旬の魚や魚加工食品が副業人材の手元に贈られるという仕組みです。また、勤務スタイルが柔軟に決められるのもの大きな特徴です。そのため、宮城県近郊に住んでいる方だけでなく、都市部など遠隔地に住んでいる方も応募することができます。都合が合えばスタート時などに現地での顔合わせがありますが、基本的にはインターネット上での定期的なミーティングをしながら、プロジェクトを進行していきます。 フィッシャーマン・ジャパンでは、従来の漁業のイメージを変えることを目指しているのだとか。かっこよくて、稼げて、革新的な「新3K」という、水産業の未来のイメージを掲げています。ギョソモンは、都会で働きながら水産業の改革の一助になれるかもしれない大きなチャンスです!具体的なプロジェクトについては、ギョソモンのホームページから確認することができます。マーケティングや商品企画・開発などに詳しい方は、活躍の機会もありそう!気になる方は、ぜひチェックしてみてくださいね。
報酬は「魚」!漁業の活性化に向けた新しい副業「ギョソモン」とは
2020.03.09

食品ロスと貧困を改善するフードバンクとは?

日本では本来食べられるのに包装の破損や過剰製造、印字ミスなどの理由によって流通することができずに廃棄される食品が年間で約643万トンもあります。日本全体での食品廃棄は1,561万トンなので、3割以上も占めています。このような現状があるにもかかわらず、現在日本では貧困生活で困っている17歳以下の子供が全国で約280万人もおり、子供のうち7人に1人が貧困生活を強いられています。 そんな食品ロスと貧困問題を改善するべく行われているフードバンク活動というのをご存知でしょうか。 フードバンク活動というのは、まだ安全に食べることが可能であるにも関わらず、廃棄してしまう食品などを企業や個人から無償で寄贈を受けて、生活に困っている人や福祉系の団体に無償で提供する活動です。 元々は海外で始まったこの活動も日本で2006年頃から始められ、日本全国に約70近い団体が活動するまでになりました。このフードバンク活動は食品ロスを軽減するだけでなく、生活困窮者への支援も兼ねているので、一石二鳥の社会貢献となります。 フードバンク活動の流れ (1)まず安全に食べられるのに処分されてしまう食料を企業や個人から買い取ります。種類は様々で、乾麺やレトルト食品、飲料水など、常温で保存がきく食料がメインとなっています。 (2)寄贈を受けた食品を当然無駄にしないため、賞味期限別に分類して、安全に生活困窮者の方々に提供をしています。 フードバンク活動によって、現在食品の取扱量は判明しているだけでも約3,800トン以上も食品ロスの削減することができています。 しかし、日本ではまだ認知度が低く、利用者や寄付者のつながりが浅い状態であり、組織の運営基盤が確立できていないのが現状です。 まだまだ改善できる食品ロスとフードバンク活動ですが、皆さんの周りにも、寄贈を募っているフードバンク活動団体かいるかもしれません。もし在庫を抱えていて、そのまま廃棄してしまうような食品がある場合には、手軽な社会貢献として寄贈して食品ロス削減を目指してみませんか。また、こういったフードバンク活動と並行してそれぞれが食べ残し、作りすぎなどを改善して、食品ロス削減に取り組んでみてはいかがでしょうか。
食品ロスと貧困を改善するフードバンクとは?
2020.03.04

フードロス削減にアプリを利用!広がるフードシェア

全世界で生産された全食料の1/3が捨てられているフードロス問題。食料を捨てるということは単に食べ物をムダにするということだけではなく、生産や輸送に使ったエネルギーまでムダにしてしまうということなのです。特に先進国では、食べ残しや売れ残り商品の廃棄が、フードロスの大きな原因になっています。そんな世界で、いま、注目されているのが、売れ残ったり、使わなかった食材を販売できるフードシェアという仕組み。そして売り手と消費者をマッチングするアイテムとして使われるスウェーデン発の「Karma(カルマ)」というアプリです。今日はどんなアプリの仕組みなのか、メリットも含めてご紹介したいと思います。 まず登録しているスーパーマーケットやレストラン、カフェ、ホテルが、売れ残った商品をアプリ上にアップします。そしてお客様はアプリ上に表示された商品の中から自分がほしいものを選び、オンラインで決済。最後は、お店に商品を取りに行くという仕組みです。このアプリをフードロス解決に利用することで、多くのメリットが生まれます。 お店側のメリットとしては大きく二つあります。ひとつは廃棄するだけの食材を販売に結びつけることで、損失を抑えることができること。そして、二つ目は、自分のお店の宣伝にも繋がるということです。利用者の声で「美味しいお店を見つけられる」という評判もあり、新しい顧客開拓にもつながっているようです。ここが単純な安売り戦略と違うポイントです。 お客様の側のメリットとしては、もちろん安くて美味しい食べ物を買うことができるということですが、それにプラスして、アプリを使うことでスマートにお買い物ができるということです。例えば、半額シールが貼られる時間帯を狙ってお店に行くというようなことをしなくていいわけです。まさに、クールなシェアリングエコノミーだということです。 このようなフードシェアサービスは、今後、日本でも普及してくると思います。実際、生産者と消費者を結びつけるサービスや、業者間で余剰食材を融通するサービスが実際にはじまっています。お店にも、消費者にも、環境にもやさしい、このようなフードシェアサービスですが、使ってもらわなければ意味がありません。お店側としては廃棄するよりも低コストで販売できる必要があるし、また消費者にとっても安くて美味しい食べ物が簡単に買えるというメリットがないと受け入れてもらえません。ここでアプリを使うという発想は、フードシェアを大きく広げる強いチカラになって行くと思います。 Karmaの紹介動画はこちらからご覧ください↓ https://www.youtube.com/watch?v=ehC8t6w52Kg&feature=youtu.be
フードロス削減にアプリを利用!広がるフードシェア

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NEW 2022.11.24

知らないとまずい?!タンパク質危機。20XX年までに肉や魚が足りなくなる?

地球の人口増加や環境問題により、食肉などのタンパク質が不足するのが「タンパク質危機」です。私たちの食卓に影響するかもしれない世界規模での課題であるにもかかわらず、一般にはそれほど広く認知されていません。こちらの記事では、タンパク質危機とはどのような問題かを解説すると共に、タンパク質危機を避けるための4つの選択肢について説明します。タンパク質危機という問題が生じている理由から取りうる対応策までを紹介し、プラントベースフードなどがにわかに注目を浴びている背景をお伝えしていきます。 タンパク質危機(タンパク質クライシス)とは タンパク質危機は、世界人口の急速な増加に由来する問題です。まずはその背景的な事情からみていきましょう。 少子化真っ只中の日本。でも世界の人口は? 日本では、出生率の低下に伴い若年層の人口が減少する「少子化」が急速に進んでいます。そのためあまり実感がわきませんが、一方で世界の人口は増え続けている状況です。国連の調査によれば、世界の人口は現在約80億人であるところ、2030年には約85億人、2050年には約98億人、2100年には約112億人になると推定されています。 2030年までにタンパク源が足りなくなる恐れ 世界規模での人口増加に伴って、近い将来、牛や豚、鶏などの畜産によるタンパク質が不足すると予測されています。この予測は「タンパク質危機」と呼ばれていて、欧米諸国を中心に話題になっています。現状のままだと早ければ2025年から2030年ごろまでに需要と供給のバランスが崩れ始めると言われています。 人間の身体を構成するのは、水分が約60%、タンパク質が約15~20%とされています。つまり、タンパク質は水分を除いて体の重量の約半分を構成する、生きていく上で大切な栄養素です。欧米では「プロテインチャレンジ2040」と題したコンソーシアムが立ち上がり、その中から複数のプロジェクトが始動しています。タンパク質危機をどう乗り越えていくのかは、人類が生きていく上で極めて重要な課題です。 タンパク質危機を避けるための4つの選択肢 タンパク質危機を回避するために、世界中でさまざまな検討が行われています。ここでは、その中から代替肉と培養肉、昆虫食、藻類という4つの選択肢について解説します。 代替肉 代替肉とは、牛肉や豚肉、鶏肉などの動物の肉の代わりに、植物性原料で作られた「肉のような食材」のことです。欧米諸国を中心とした健康への意識の高まりがきっかけで広がったとされていて、別名「プラントベースミート」と呼ばれることもあります。 代替肉の素材として最も有名なものは、大豆が主原料の「大豆ミート」でしょう。有名ハンバーガー店やコーヒーチェーンでも大豆ミートを使ったメニューが登場し、話題になっています。このほか、ひよこ豆、レンズ豆といった豆類も、代替肉の素材として注目されています。最近では、エノキタケを使った新しい代替肉「エノキート」も登場するなど、さまざまな研究・開発が進められています。 培養肉 培養肉は、牛などの動物から取った少量の細胞を、再生医療の技術により体外で増やして作られます。プラントベースの代替肉とは異なり「本物の肉を使った代用品」です。従来の食肉の生産方法と比べて、飼育・繁殖する過程における動物へのストレスや環境への負荷が少ないとされています。こうした特徴から、別名「クリーンミート」と呼ばれることもあります。 培養肉は、2013年にオランダの研究者が培養ミンチ肉を作ったのがその始まりです。日本でも培養肉の研究が進められていて、2019年には世界で初めてサイコロステーキ状の培養肉を作ることに成功しました。大きな肉を作るための技術の開発など乗り越えなくてはならないハードルが多いものの、持続可能な食材という意味で期待が寄せられています。 昆虫食 昆虫食とは、コオロギなどの昆虫を原料にした食品のことです。大豆ミートなどのプラントベースフードは植物性のタンパク質しか得られないのに対して、昆虫食の場合、肉や魚と同様、必須アミノ酸である動物性タンパク質を得ることができます、また、昆虫食は飼育・加工に必要なスペースや資源が最小限で済み、環境負荷が低いというメリットもあります。 日本にも貴重なタンパク源として昆虫を食べる地域の文化が残っていますが、世界で食べられている昆虫は1900種類にも及ぶとされ、アジアやアフリカ、中南米を中心に昆虫を食べる食文化が見られます。昆虫食には食品の安全性や見た目への抵抗感といった課題があるものの、環境負荷の少ないサステナブルな食材として注目を集めています。 藻類 細胞分裂をして増殖する藻類はタンパク質含有量が50~75%であり、新たなタンパク質源としての可能性を持っています。藻類は良質なタンパク質だけでなく、炭水化物や脂質、ビタミン、ミネラルなども豊富に含まれています。現在市場に流通しているのはタンパク質が豊富に含まれるクロレラやスピルリナで、藻類をそのまま乾燥させて粉末状にしたものが主流です。 藻類は栄養価が豊富であるものの、藻類を乾燥した粉末は独特の匂いがあることや、藻類バイオマスの生産コストが肉や大豆に比べて価格が高いことなどから、タンパク質源としてはこれまで積極的に利用されていませんでした。しかし、近い将来に訪れるとされるタンパク質危機を前に、藻類の利活用が見直され始めています。 まとめ 世界の人口増加に伴って、近い将来訪れると言われているタンパク質危機。この記事では、タンパク質危機を回避するために私たちが取りうる選択肢として、代替肉、培養肉、昆虫食、藻類の4つを紹介しました。食品としての安全性や抵抗感、生産コストなど、それぞれに乗り越えるべき障壁はありますが、タンパク質危機を避けるために、世界中でさまざまな研究・開発が行われています。これまでの常識にとらわれない、新しい食の選択肢が求められていると言えそうです。
知らないとまずい?!タンパク質危機。20XX年までに肉や魚が足りなくなる?
NEW 2022.11.22

昆虫食のメリットと注目の背景を深堀り!こんなにも話題になる理由とは?

コオロギなどの昆虫を原料にした食品「昆虫食」。日本にも、貴重なタンパク源として昆虫を食べる地域の文化が残っていますが、多くの人にとってはなじみの薄いものでしょう。しかし今、環境負荷の少ないサステナブルな食料として、世界が昆虫食に注目しています。 一体なぜ、これほどまで昆虫食が話題になるのか。この記事では、昆虫食が期待される背景を解説した上で、栄養価の高さなど注目の理由を解説します。他方で、「本当に安全性に問題はないの?」「昆虫を食べるリスクは」といった疑問や不安の声にもお答えします。 昆虫食が注目を集める背景 無印良品で話題となった「コオロギせんべい」をはじめ、日本では勢いのあるベンチャー企業が、昆虫食ビジネスを盛り上げています。そうした流れに至るまでに、どのような背景があったのでしょう。 増える世界人口、ひっ迫するタンパク源 日本は少子化に直面していますが、世界全体では人口は増加し続けています。このまま行けば、2050年に世界人口は100億人に達すると言われています。 近い将来、牛や豚、鶏などの畜産によるタンパク質が不足する恐れがあると言われています。「タンパク質危機(タンパク質クライシス)」を避けるために、大豆ミートをはじめとしたプラントベースフードの開発が進みました。しかし、植物由来の食べ物からは、植物性のタンパク質しか得られません。そこで、注目されたのが「昆虫食」。なぜなら昆虫は、肉や魚と同様、必須アミノ酸である動物性タンパク質を得ることができるからです。 転機の国連食糧農業機関(FAO)報告 2013年、国際連合食糧農業機関(FAO)が「ある報告書」を発表しました。それは、世界の食糧危機への対策として昆虫食を推奨するというもの。この報告書を契機とし、世界各地で昆虫食の研究・開発が加速しました。昆虫を食べる習慣のなかった欧州でも、2018年、欧州連合(EU)が昆虫を新規の食品として域内で販売することを認めました。 昆虫食を選ぶメリット さぁここから、他にはない昆虫食のメリットを深掘りしていきます。 非常に優れた環境負荷の低さ 狭いスペースで飼育・加工ができる 昆虫は牛や豚、鶏などの家畜よりも狭い場所で飼育できます。コオロギ1キロを生産するのに必要な農地は、鶏肉や豚肉の約3分の1、牛肉なら約13分の1しか必要としません。また、出荷用にパウダーなどに加工する場合でも、小規模な施設で行えます。飼育・加工に場所を取らないということは、それだけ効率的に生産できるということです。 飼育に必要な資源が少ない 昆虫の生産は、家畜に比べて少量の水や飼料で可能です。牛肉を1キロ生産するためにはおよそ8キロのえさを必要とするのに対し、昆虫1キロの生産には約2キロのえさを使うだけで済みます。生産に必要な水についても同様で、コオロギの生産に必要な水は、牛肉の場合の約2500分の1で済んでしまいます。 温室効果ガスの排出量が少ない 牛1頭がげっぷなどで出すメタンガスは1日160リットル以上で、地球温暖化を促進していると言われています。しかし、昆虫の飼育に伴う温室効果ガスの排出量はその10分の1以下。昆虫食は、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの削減にも効果があるというわけです。 丸ごと食べられて、食品ロスにも貢献 昆虫食は食品ロスの削減にも貢献します。牛1頭の可食部はおよそ4割ですが、昆虫はそのほとんどが食べられるので無駄がありません。また昆虫のえさには、残飯など本来なら捨てられてしまうものを利用できます。焼却コストのかかる生ごみの量が減り、一方で、貴重なタンパク質源になるというのですから、昆虫食の利点が際立ちます。 牛や豚に負けない栄養価の高さ それで終わらないのが、昆虫食のすごさです。ガやハチの幼虫の場合、体重の50%がタンパク質と言われています。牛や豚が1〜3%ですから、それに比べると非常に高い含有率です。昆虫は、良質なタンパク質だけでなく、食物繊維や、カルシウム、銅、鉄、亜鉛などのミネラルも豊富に含む上に、脂肪分は少ないという健康に良い食品です。 昆虫食のデメリット 栄養価が高く、環境にも良い昆虫食。その一方で、なじみの薄い昆虫食に対するネガティブな考えも少なくありません。今度は、考えられる昆虫食のデメリットを見ていきましょう。 安全面でのリスクは? 専門家の助言なしに、自然採集した虫を食べるのは、危険を伴う行為です。なぜなら、野生の昆虫には、毒を持つものや、寄生虫や病原菌を媒介するものもいるからです。一方で、管理された環境下で生産されたものは、昆虫とはいえ、他の食材と同様に安全です。 安心を担保する「コオロギ生産ガイドライン」 消費者により安心してもらえる環境を整えようと、2022年8月、民間団体が「コオロギ生産ガイドライン」をまとめました。研究機関や企業などでつくる「昆虫ビジネス研究開発プラットフォーム(iBPF)」が、コオロギの生産過程の衛生管理を中心に行動指針を決めました。公的なルール整備がない中で、民間主導で一定のルールを示すことで信頼性を高め、昆虫食のさらなる普及につながることを期待しています。 アレルギーリスクについて 昆虫食は、食物アレルギーを持つ人には注意が必要です。昆虫には、エビやカニなど同様の甲殻類アレルギーの原因となる「トロポミオシン」という成分が含まれているからです。昆虫に限らずすべての食材に言えることですが、これまで口にしたことのない食材を食べる時には、これまでアレルギーの自覚症状がなかった人でも、慎重を期すようにしましょう。 見た目への抵抗感 多くの人にとって、昆虫を食べることに対して、心理的なハードルがあります。初めて口にするものに対して拒絶反応が出るのは、動物的な本能として当たり前のことです。もしかしたら、これが昆虫食にとっての最大の問題かもしれません。日本でも昆虫食品の開発は大変盛んで、さまざまな商品ラインナップがあります。まずは、昆虫の姿を連想しづらいパウダー入りの菓子やパンなどから試してみるのがいいかもしれません。 そして、「まずいものをわざわざ食べたくない」というのが、大半の人の率直な気持ちだと思います。実際のところ、昆虫の味は実に多種多様で、思いきって食べてみると、おいしく感じるものもたくさんあります。バッタはエビやカニに似た食感、タガメは洋ナシや青リンゴのようなフルーティな香りだとか。セミに至っては、幼虫だとナッツのようなクリーミーな風味で、成虫になるとエビのような風味が楽しめます。 昆虫食とは 1900種類の食べられる昆虫 世界で食べられている昆虫は1900種類にも及ぶとされ、アジアやアフリカ、中南米を中心に昆虫を食べる食文化が見られます。昆虫学者である三橋淳氏の書いた『虫を食べる人びと』(平凡社ライブラリー)によれば、世界ではハチやイナゴに加えて、カブトムシ、カミキリムシなども食べられているそうです。 世界の昆虫食  タイ 昆虫食が住民生活に浸透しているタイでは、スーパーマーケットの食材コーナーに昆虫のサナギや幼虫が並んでいたり、昆虫の佃煮を売る屋台を目にしたりすることも珍しくありません。特に人気があるのはコオロギで、盛んに養殖されています。最近では、コオロギのスナック菓子やコオロギパウダー、コオロギオイルなど、コオロギを原材料にしたさまざまな加工食品が登場しています。特にコオロギパウダーは輸出用としての需要が高く、国もその動きを後押ししています。 ケニア アフリカ東部のケニアで最もよく食べられている虫は、シロアリです。日本でシロアリと言えば、住宅の床下で暮らすアリ(職蟻)を意味することが多いですが、現地で食べられているのは別の種類のアリ(羽蟻)です。このシロアリを使った「クンビクンビ(kumbikumbi)」という伝統料理があり、栄養失調を改善する効果があると言われています。実際、シロアリには、良質な動物性たんぱく質や脂質のほか、カルシウム、鉄分、アミノ酸などが豊富に含まれています。ケニアのシロアリはインターネット通販などでも販売されています。 日本の昆虫食 長野県に根付く昆虫食文化 日本で昆虫食文化が盛んな地域といえば、長野県です。信州でよく食べられている昆虫といえば、ハチノコやイナゴ、カイコ、ザザムシがあります。これら4種類を総称して「信州四大珍味」と呼ばれているそうです。 ハチノコはスズメバチの幼虫やさなぎ、イナゴは稲作の害虫とされるバッタのことです。長野県はかつて養蚕が盛んで、カイコは生糸の生産のために飼育されていた虫です。ザザムシは水生昆虫で、ヒゲナガカワトビケラなどの幼虫のことを指し、主に天竜川で採集できます。長野県の伊那谷地域で食べられていますが、世界的には食べる習慣がほとんどありません。イナゴやカイコは、稲作や養蚕を営む過程で副産物として発生するもので、昆虫食は、自然と共生する地域の暮らしに深く結びついていたのでしょう。 まとめ 昆虫食のメリットとデメリットを押さえてきましたが、環境負荷が低くて栄養価も高いという特徴を踏まえると、昆虫食がこれだけ話題になっていることもうなずけると思います。昆虫を食べるという行為に対して抵抗感はあるかもしれませんが、以前は「生で魚を食べるなんてありえない」と言っていた欧米人が、「Sushi(寿司)」を高級料理としてもてはやしているのを見ると、さほど大きな問題でないようにも思えます。先入観だけで昆虫食という選択肢を排除せず、機会があったらぜひともチャレンジしてみてください。
昆虫食のメリットと注目の背景を深堀り!こんなにも話題になる理由とは?
NEW 2022.11.17

代替肉とはどんな肉?大豆やきのこなど、原材料別に特徴を解説

世界中で「代替肉」のブームが到来しています。代替肉とは、その名前の示す通り、牛肉や豚肉、鶏肉などの動物の肉の代わりに、植物性原料で作られた「まるで肉のような食材」のことです。 では実際に、代替肉はどのような素材から作られ、どのように利用されているのでしょうか。この記事では、代替肉の定義を確認した上で、代替肉の原材料や原材料別の使用例について解説します。この記事を読むことで、代替肉の全体像を把握し、代替肉は具体的にどのようなものであるかを理解していただけます。 プラントベースミートと呼ばれることも 代替肉は、欧米諸国を中心とした健康への意識の高まりがきっかけで広がったとされています。代替肉は地球が抱える環境問題の解決や世界の人口増加に対する食料不足への対策、食の多様性への対応という側面においても大きな意味を持つと言われています。 代替肉の素材として最も有名なものは、大豆が主原料の「大豆ミート」でしょう。このほか、ひよこ豆、レンズ豆といった豆類も、代替肉の素材として注目されています。最近では、エノキタケを使った新しい代替肉「エノキート」も登場しました。いずれも「植物由来の肉」であることから、英語ではプラントベースミートと呼ばれています。 フェイクミート、オルタナティブミートとはどう違う? 代替肉はプラントベースミート以外に、フェイク(偽物の)ミートやオルタナティブ(代替の)ミートと訳されることもあります。呼び方はそれぞれ異なるものの、いずれも動物の肉に見た目や風味を似せた、植物性原料から作られた食材を意味しています。代替肉のどのような特徴を強調したいのかによって、フェイクミートやオルタナティブミート、プラントベースミートという言葉が使い分けされているようです。 大豆ミート:代替肉の定番でバリエーション豊富 大豆ミートとは 大豆ミートは、その名前の通り大豆で作られた代替肉のことです。ソイミートや大豆肉と呼ばれることもあります。大豆は別名「畑の肉」と呼ばれるほど栄養が豊富で、良質なタンパク質をはじめ、ビタミンやミネラルも多く含有しています。 大豆ミートは代替肉の定番であり商品の数も多く、最近はスーパーマーケットやコンビニエンスストアで見かける機会も増えました。 大豆ミートは水やお湯などで戻してから利用する「乾燥タイプ」が主流ですが、すぐに使える「レトルトタイプ」や「冷凍タイプ」もあります。また、形状は主に「ミンチタイプ」「フィレタイプ」「ブロックタイプ」という3種類で、用途に応じて使い分けできます。 あの有名ハンバーガー店やコーヒーチェーンでも 大豆ミートの需要の高まりを受けて、大豆ミートをメニューに導入する飲食店も増えています。大手ハンバーガーチェーン「モスバーガー」では「ソイパティシリーズ」と題して、大豆ミートを使ったハンバーガーのラインアップが登場しています。 また、大手コーヒーチェーン「スターバックス」はサマーシーズン第2弾として“Yori Dori Midori”をテーマにして、プラントベースという選択肢を提案。新しく加わったメニューのひとつ「スピナッチコーン&ソイパティ イングリッシュマフィン」では、肉の代わりに大豆を使ったソイパティを使用しています。 ひよこ豆の代替肉:味のクセが少なく使いやすい ひよこ豆とは ひよこ豆は大豆と同じくらいの大きさの丸い豆です。アジア西部が原産で、インドや欧米諸国、中近東などでは一般的によく流通しています。タンパク質が多く食物繊維が豊富で脂肪分が少ないことから、少し前から食肉に代わるヘルシーな食材として話題を集めています。 ひよこ豆は日本では馴染みの薄い豆ですが、味にクセが少ないため食べやすいのが特徴です。乾燥した状態の豆は水で戻して煮る必要がありますが、水煮されたレトルトタイプを使えば、手軽に利用できます。 使用例:カレーや揚げ物、おやつにも ひよこ豆の生産量はインドが世界一で、ベジタリアンの多いインドではカレーの具材に使われることも多く、日常的に食べられています。インドでは、ひよこ豆の外側の皮を取り除いて割った豆を「ダール」と呼び、カレーにもよく利用されています。また、ひよこ豆を粉末にした「ベサン粉」は、インド風天ぷら「パコラ」をはじめ、おやつや軽食にも用いられています。 この他にひよこ豆を使った料理としては、ひよこ豆のペースト「フムス」やひよこ豆のコロッケ「ファラフェル」も有名です。 レンズ豆の代替肉:ひき肉代わりとして使える レンズ豆とは レンズ豆は、レンズのように平たい形状をしています。レンズ豆には緑色やオレンジ色、褐色などさまざまな色があり、3~6ミリ程度と非常に小さいことも特徴です。日本ではあまり知られていない豆ですが、欧州などでは日常的に利用されていて、特にヴィーガンやベジタリアンの人たちに親しまれています。 レンズ豆は「世界五大健康食品」の一つに数えられていて、ビタミンB群やタンパク質、鉄分、食物繊維を多く含有しています。特に、皮付きの茶色のレンズ豆には100グラム中に9.4ミリグラムの鉄分が含まれていて、これは大豆の含有量よりも多いと言われています。 使用例:カレーや煮込み料理、サラダに レンズ豆はインドやネパールではカレーの具材として、イタリアやフランスなどの国では煮込み料理やサラダなどによく使われています。代替肉としての使い方として、レンズ豆は粒が小さいので、ひき肉のような感覚で利用することができます。例えば、ハンバーグを作る際にレンズ豆で代用する方法があります。 レンズ豆には特有の匂いがあるので、気になる場合は、スパイスを加えたり濃い味付けをしたりするのがおすすめです。レンズ豆は水を吸収しやすいため、あらかじめ水で戻す必要がなく、料理にそのまま使うことができるのも魅力です。 エノキート:キノコの旨味でおいしさ追求 エノキートとは エノキートとは、エノキタケとミートを組み合わせた名前です。エノキートはエノキタケを主原料として作られた代替肉で、農業法人である株式会社小池えのき(以下、小池えのき)によって開発されました。小池えのきの本社がある長野県中野市は、日本最大のきのこの生産地として知られ、エノキタケの生産量は全国の約4割を占めます。地元の食材を使った、新しいタイプの代替肉として注目を集めています。 エノキートには、発芽大豆から作られた大豆ミート「ミラクルミート(DAIZ)」を使用しています。ミラクルミートには、大豆独特のくさみがほとんどありません。ミラクルミートにはうまみ成分「グルタミン酸」が含まれていて、エノキタケのグアニル酸を組み合わせることでうまみが格段にアップし、動物の肉に劣らない独特のうまみが実現できます。 使用例:ハンバーグ エノキートを使った代表的な料理は、ハンバーグです。原材料は、エノキタケとタマネギ、大豆ミート、パン粉、調味料。原材料の半分以上が、エノキタケとタマネギです。5ミリ程度のみじん切りにしたエノキタケを使用することで、肉によく似た食感が生まれます。エノキタケは加熱すると独特のぬめりが出るため、つなぎの代わりになるという点からハンバーグに使うのに適しています。 エノキートのハンバーグは合いびき肉を使った通常のものに比べて、脂質やカロリーが少なく食物繊維が多いとされています。大豆ミートを使用しているため、タンパク質の量は通常のハンバーグとほとんど変わりません。ヘルシーでありながらタンパク質がしっかり摂取できるので、ベジタリアンやヴィーガンの人たちだけでなく、健康への意識が高い人にも支持されています。 まとめ 世界中で需要が高まっている、代替肉。代替肉と一口に言ってもその種類は多く、今回紹介した4種類以外にもさまざまなタイプがあります。 代替肉には私たちの健康維持や地球の環境保全につながるメリットがある一方で、原材料の調達や製造プロセス次第では、環境に負荷を与える可能性もあると言われています。今後、こうしたデメリットにどのように対応していくのかが課題でしょう。代替肉の分野は成長過程にあり、これからの展開に注目したいです。
代替肉とはどんな肉?大豆やきのこなど、原材料別に特徴を解説
NEW 2022.11.16

AI搭載のゴミ箱で分別。環境大国オーストラリアが行くリサイクル最前線

ゴミとして捨てられるプラスチックの多くが、適切に分別されないことにより、再利用の道が閉ざされているという嘆かわしい現実があります。この問題を高度なIT(情報技術)で乗り越えようと、オーストラリアの研究チームが動きました。飲料容器の分別を自動的に行うことができる「スマートビン技術」を搭載した画期的なゴミ箱を開発しました。 ITでゴミを自動分別、リサイクル率を向上 ​​オーストラリア最大の都市・シドニーがあるニューサウスウェールズ州では、年間80万トン出るプラスチックゴミのうち、リサイクルされているのはわずか10%だそう。これは、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の調べで分かりました。 プラスチックのリサイクルのプロセスは非常に複雑です。適切に分別がされないと、こうした事態に陥ります。リサイクルできない廃棄物の一部が焼却場行きとなれば、その分温室効果ガスの排出量が増えます。これらがきちんとリサイクルに回れば、地球温暖化にも大いに貢献するでしょう。 問題解決に向けて、シドニー工科大学(UTS)の共同研究チームは、ゴミの中から自動的に飲料容器を選り分ける機能を搭載したゴミ箱を開発しました。その名は「スマートビン技術」。これにより、最も多い廃棄物のひとつである飲料容器のリサイクル率を向上させることができます。 人工知能(AI)、ロボット工学、画像の認識技術などを組み合わせた先端テクノロジーが搭載されたこのゴミ箱は、ガラスや金属、プラスチックなど素材別に仕分けしてくれます。さらに、ペットボトルの素材となるポリエチレンテレフタレート(PET)や、シャンプーボトルに使われる高密度ポリエチレン(HDPE)など、プラスチックをさらに細かい種類別に分けることができます。 方法としては、まずゴミをカメラで撮影し、AIアルゴリズムを実行して、膨大なデータを処理・分析することにより分類します。そしてIoT(モノのインターネット)を含む最新のロボット技術により、重さや物質、素材を感知してゴミを分別するという仕組みです。 スマートビン技術の社会実装の日は近い 今後、あらゆる地域でスマートビン技術搭載のゴミ箱が利用されるようになれば、プラスチックゴミのリサイクル率は飛躍的に向上し、業者による回収作業もより素早く正確になります。研究チームは、このゴミ箱を管理するシステムの開発を進めています。システムが実用化されれば、ゴミ箱の所有者が、ゴミ箱の充填具合などの状態を遠隔で監視、点検できるようになります。ゴミ箱が満杯になった時、ゴミ箱を空にする必要があることを知らせる通知が表示されるという仕組みです。また、地域の人々にとっては、自分がどれだけリサイクル活動に貢献しているかがアプリに記録され、そのことを通知として受け取ることができます。 この実証実験は、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の研究プログラムの一環として行われています。同機構は2030年までに、オーストラリアで排出されるプラスチック廃棄物を80%削減することを目指しています。スマートビン技術はまだ試作段階ですが、いずれはショッピングセンター、学校、映画館、カフェ、企業、空港などにスマートビン技術搭載のゴミ箱が設置される予定です。
AI搭載のゴミ箱で分別。環境大国オーストラリアが行くリサイクル最前線