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“ヨーロッパ” タグの記事一覧

2022.10.26

世界一のティラミスを再現。食の新時代を拓く最新3Dプリンター

設計データに基づいて3次元の物体を作ることができる3Dプリンター。スペイン・バルセロナを拠点とするフードテック企業のNatural Machines社は、この先端技術を利用して世界的コンテストで優勝したティラミスを完ぺきに再現しました。『料理の3Dプリント』を極めようとする同社が見据える未来の食卓とは? 見た目、感触、味をすべて忠実に再現 Natural Machines社は昨年、欧州連合(EU)の支援を受けて、イタリアで偉業を成し遂げました。同社の看板商品の3Dフードプリンター「Foodini(フーディニ)」を使い、ティラミスの世界大会「ティラミス・ワールドカップ」で優勝したティラミスを、見た目、感触、味においてすべて忠実に再現したのです。これは、料理の世界に3Dプリントが完全に対応し、理想のレシピを誰もが作れる世界を示してくれました。 フーディニは、43cm×45cmという大きさで、価格6000ドルで調理家電として販売されています。ユーザーフレンドリーな設計で、操作は非常にシンプルです。まず、タッチパネルを操作し、作りたい物のデザインや形状などを選択します。次に、専用のスチール製カプセルに素材となる具材を詰めれば、準備は完了。あとは機械がソフトクリームのようにノズルから食材を押し出し、1層ずつ積み上げるように仕上げます。 具材を入れるカプセルは最大5つ収容でき、必要に応じて自動で切り替えて複雑なレシピを再現することができます。スマートフォンなどの端末と連動するFoodini専用アプリに自分のとっておきのレシピを保存して、繰り返し作ることも可能です。 Natural Machines社は今回、ティラミス・ワールドカップ優勝者のパティシエと協力し、さまざまな配合で試作を重ねた末、完ぺきなコピーを完成させました。 3Dプリンターで人々の食卓を変える フーディニは、機械に収まるサイズであれば、何でも複製できるため、ピザやパスタなどの料理はもちろん、ケーキや皿にチョコレートでデコレーションを施すことが可能です。付属する部品は、食器洗い機やオーブンに対応しています。完成した料理を焼いたり冷凍させたりと、加工することもできます。 既に一部の一流レストランでフーディニはその地位を確立しつつあり、ゆくゆくは学校や病院、福祉施設など、利用される場が増えていくことでしょう。Natural Machines社は、保存料や添加物で食品の賞味期限を長引かせるより、新鮮な食材をその場で加工して作る料理の方が健康的であると考えます。 家庭の台所で、料理が3Dプリントされる日が来るのも、そう遠くないのかもしれません。
世界一のティラミスを再現。食の新時代を拓く最新3Dプリンター
2022.09.28

自社商品への情熱ゆえ?環境配慮のマーケティングに潜むリスク

スウェーデンに拠点を置き、20か国で植物性ミルクを販売する大手企業「Oatly(オートリー)」。環境配慮をアピールする同社の広告表現が誇張されており、消費者に誤解を招きかねない内容だとして、イギリス広告基準局(ASA)が禁止措置を講じました。環境への取り組みをマーケティングに利用する企業が増える中、果たしてそれがエビデンスに基づくふさわしい内容なのか、環境意識の高い欧州で問題視されるようになっています。その背景には、日本でも浸透している「サステナブル」などの言葉の定義のあいまいさがあるようです。 植物性ミルクの最大手、100件以上の苦情が殺到 ASAは2021年9月、根拠がなく誤解を招くような環境に関する主張を宣伝する企業に対して、以前より厳しく取り締まる姿勢を明らかにしました。そうした中、自社の植物性ミルクが一般的な牛乳より優れており、肉や乳製品を摂取することが環境に悪いと訴えたオートリーの翌年1月の広告に対し、自社製品を有利にしようと環境配慮を誇張しているのではないかと、市民や団体などから100件以上の苦情が寄せられました。 イギリスの広告分野における独立規制機関であるASAは、オートリーの広告は内容を裏付けるだけの十分な根拠を示しておらず、消費者の誤解を招くものであったとし、苦情の大半を支持し、同社に対して広告の禁止を言い渡したのです。 オートリーは、この経緯を全面的に受け入れ、より科学的な根拠に基づいた分かりやすい表現を心掛けるべきだったとして、禁止を受けた広告を削除しました。ただし、苦情が寄せられた広告すべてに環境配慮を誇張した表現があった訳ではありませんでした。一部については、客観的に実証された内容であり苦情の内容に当たらないと、ASAから掲載の継続を認められています。 環境配慮を装う「グリーンウォッシュ」が問題に 気候変動対策が迫られる今、企業がマーケティングにおいて「サスティナブル」や「環境に良い」といった言葉を使う機会は急増しています。そうした中で顕在化してきた問題が、自社のブランドが「環境に優しい」ことを強調し、消費者の関心を引くやり方です。 中には環境意識の高い消費者をあざむく悪質なものもあり、「グリーン=環境に配慮した」と「ホワイトウォッシング=都合のいいようにごまかす」を合わせた造語で、「グリーンウォッシュ(グリーンウォッシング)」と呼ばれています。 うそやでまかせが横行すれば、消費者が環境配慮をうたう企業を信用しなくなるばかりか、きちんと環境問題と向き合う誠実な企業まで疑われる皮肉な状況が生まれます。実際には悪意がなくとも、商品のメリットを熱心に訴えたいがあまりに、グリーンウォッシュと捉えられてしまうケースもあります。このような事態を避けるには、情報発信の際は裏付けとなる客観的なデータに基づき、あいまいな表現は控えなければなりません。 企業側が真摯な姿勢を示すことはもちろん、消費者側が冷静に判断することも求められます。「サスティナブル」などの言葉を巧みに利用して、感情に訴えかけるグリーンウォッシュには注意が必要です。
自社商品への情熱ゆえ?環境配慮のマーケティングに潜むリスク
2022.09.14

欧米が注目する「第3の代替肉」。植物性でも動物性でもない新素材

目に見えない菌類を主原料とする​​​​新しい代替肉が欧米で注目されています。代替肉にはさまざまなカテゴリーがありますが、キノコ由来の微生物を培養して作る「第3の代替肉」は、美味しさや汎用性の高さに加え、環境への負荷が少ないのが特徴です。地球環境を守るという点において最も優れた代替肉と言えるかもしれません。  キノコ由来の菌類をベースに生成 環境への負担に配慮して作られる代替肉は、これまで大きく2種類に分けることができました。大豆などを原料とした植物由来(プラントベース)のものと、研究室で細胞を培養する動物由来のもの(培養肉)です。しかし欧米では今、これまでとは全く違う形で作られる「第3の代替肉」に注目が集まっています。それが、菌類などの微生物から作られる代替肉です。 菌類を含む微生物は、私たちの食生活にとって、とても身近な存在です。とりわけ日本はその結びつきが強く、味噌や納豆、日本酒といった発酵食品は伝統的な食文化となっています。また、ビールやパンも同じように、微生物による発酵の作用で作られる食品です。 「第3の代替肉」は、例えるなら、キノコとバイオテクノロジーを掛け合わせて製造するというようなイメージです。主な原料となるのは、キノコの根っこの部分に当たる菌糸体です。糸状菌の集合体である菌糸体は、動物の筋肉組織に非常に似ているため、応用力に優れています。好きな形状、質感、風味で調理することができ、赤身の肉と同じくらいジューシーで柔らかく美味しいという三拍子そろった逸材です。 加えて、タンパク質、鉄分、ビタミン、ミネラルといった栄養素が豊富に含まれている点も、大切なポイントです。糸状菌の集合体である菌糸体は食物繊維も豊富で、食後に満腹感が得られやすく、食事量の調節や体重管理にも向いており、健康食品としても優秀です。 最も環境にやさしい代替肉 近年、地球環境を意識してベジタリアンになる人が増えています。とはいえ、そうした流れを飲み込むような猛烈な勢いで、世界人口が増えているのも揺るぎない事実です。 第3の代替肉の原料になる微生物は、糖分をえさとして培養液の中で育ちます。この微生物と同量のタンパク質を得るには、牛であれば放牧や飼料生産のための広大な農地を必要とします。微生物のえさとなる砂糖を生産するためのコストを考慮したとしても、微生物由来の代替肉は、畜産よりもはるかに省スペースかつ省エネルギーで効率よく製造できます。 ドイツとスウェーデンの研究チームは、2050年までに人が食べる牛肉の20%を菌類由来の代替品に置き換えると、森林破壊を50%も削減できることを明らかにしています。菌類由来の代替肉を増やして、肉牛の数を減らせば、森林伐採を食い止めるだけでなく、牛が排出するメタンガスなどの温室効果ガスを削減できます。 地球環境が危ぶまれる時代に、大きな環境負荷をかけずとも、優れた栄養・食感・味を持つ自然食品を提供してくれる微生物のポテンシャルは底しれません。この新しい代替肉は、私たちの食のシステムを変えていくための重要な足掛かりになるでしょう。
欧米が注目する「第3の代替肉」。植物性でも動物性でもない新素材
2022.07.27

海藻が世界を救う?ヨーロッパで養殖産業化の流れ

アジアでは食べ物としてなじみ深い海藻ですが、ヨーロッパでは日常的に海藻を食べる習慣はありませんでした。しかしながら、健康志向の高まりや食生活の変化を受けて、栄養豊富な海藻がヨーロッパの食卓に広まりつつあります。気候変動により地球上の資源がますます逼迫していくことが懸念される中、ヨーロッパでは養殖産業化の機運が高まっています。 ヨーロッパで高まる海藻ニーズ ヨーロッパの海藻の売上は今、急成長しており、欧州連合(EU)や国連食糧農業機関(FAO)でも、世界の食糧安全保障のために海藻を含む海産物の重要性が唱えられています。今後、ヨーロッパでの海藻の売上高は2030年までに20億ユーロから30億ユーロにまで増加するという見込みもあります。 平均余命が伸び続ける中、消費者は年齢を重ねながらも健康を維持するための方法を求めています。ヨーロッパでこうした健康志向が高まると共に、サプリメントなどの栄養補助食品の需要が増加。今あらためて、海藻の栄養価の高さが注目されています。海藻は、ビタミン、ミネラル、抗酸化物質、タンパク質などの必須栄養素を豊富に含むことから、それを使ったサプリメントがヨーロッパの消費者に浸透しつつあります。 ヨーロッパでの海藻需要の高まりは、肉食からタンパク質代替への転換という流れも、大きく後押ししています。現在、ヨーロッパのビーガンと菜食主義者は推定7500万人とされ、ここ数年での世界の代替肉のおよそ4割がヨーロッパで消費されています。環境への負担が大きい肉食を避けたいヨーロッパの人々にとって、栄養も豊富で環境に優しい海藻がヨーロッパの日常の食生活になじむのにそう時間はかからないでしょう。 また、海藻は人の食料だけにとどまらず、家畜や養殖魚のえさ、化粧品や医薬品、バイオ包装、バイオ燃料、繊維、洗剤、建材にも活用されます。海藻産業が環境への負担を減らす効果は大きく期待されており、海藻製品の活用により、ヨーロッパの人々の年間最大80万人分の温室効果ガス排出を相殺できるとする報告もあります。 採取から養殖へ:持続可能な海藻産業へのシフト 世界の海藻生産量の99%がアジアで生産されており、ヨーロッパは全体の1%程度というのが現状です。しかも、そのほとんどが天然海藻の採取によるもので、持続可能な収穫量は限界を迎えつつあります。そこで、将来を見据えた海藻の養殖への移行が、ヨーロッパの海藻産業には求められています。 冷たくて栄養豊富なヨーロッパの海水は、実は海藻にとって理想的な生育条件であり、ヨーロッパの海藻産業は今後成長する可能性が大いにあります。投資、生産技術、政策などをうまく組み合わせることで、ヨーロッパの海藻生産は現在の約30万トンから10年以内に約800万トンにまで拡大すると言われています。 ヨーロッパでの持続可能な海藻養殖が普及すれば、これまでの採取とは違って海洋環境に害を与えずに、海藻の生産量を増やすことができます。海藻は魚のえさになり住みかにもなるので、海藻養殖は海の生態系をより理想的なものにします。 また、海藻は植物と同じように大気中の二酸化炭素を吸収します。主に太陽光と海水があれば育つ海藻の養殖は、陸での農業と違い、広大な開墾された農地や水といった限りある資源を過剰に必要としません。ポルトガルの3倍の広さの海藻栽培で、世界のタンパク質需要がまかなえるとの話もあるほどです。 今後ますます懸念される気候変動と人口増加による土地と水の不足、そこから引き起こされる食糧不足という脅威が差し迫る中、持続可能な海藻の養殖はこれらの問題解決にも一役買うのではと期待が高まっているのです。
海藻が世界を救う?ヨーロッパで養殖産業化の流れ
2022.04.27

映画で学ぶ食の課題、おすすめドキュメンタリー3選

食の未来を考える機運が高まる中、大阪や名古屋、九州など各地で「オーガニック映画祭」が開催されているのをご存知でしょうか? 例えば「なごや国際オーガニック映画祭」は、有機農業の意義を伝え、より多くの人に関心を持ってもらうことを目的に活動しています。有機農業に関わる有志により、2011年に実行委員会が設立されました。以来、2012年2月、2014年2月、2016年4月に計3回の映画祭が開催され、多くの人に食の未来を考えるきっかけを提供してきました。 食の安全・安心への関心は年々高まっており、こうした映画の与える影響は大きいです。そこで今回は、映画祭などで話題になったものを中心に、食の未来を考えるためには必見のドキュメンタリー映画3本をご紹介します。   1.未来の食卓 南フランスの小さな村で実際に起こった1年間の物語をつづっています。子どもの未来を守るために「学校の給食と高齢者の宅配給食をオーガニックにする」という村長の提案に挑戦!最初は戸惑っていた村民たちでしたが、子どもの味覚から始まって、小さな村が少しずつ変化していきます。この映画の公開後、フランスでは一大オーガニックブームが起き、多くの人が自身の食生活を見直すようになったと言われています。   2.フードインク 食品業界の裏側に潜入し、食の安全について疑問を投げ掛ける米国のドキュメンタリーです。サブタイトルは「ごはんがあぶない」。値段は高いけれど安全でおいしいオーガニック食品と、スーパーに並んでいる安価な食材を比較し、その価格差の背景にあるさまざまな状況を明らかにします。大規模工場で飼育される食肉産業の実態や、飛行機で大量に農薬を散布する様子なども映し出されています。「第82回アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門」にノミネートされ、米国では映画公開後に大反響を巻き起こした映画です。   3.ありあまるごちそう 世界で生産されている食料は120億人分あるにもかかわらず、飢餓に苦しんでいる人は10億人もいると言われています。この「食の不均衡」をテーマにしたオーストリアの映画です。大量のパンが毎日捨てられているウィーンと、小麦を輸出していながら2億人もの人が食料に飢えているインド。食品を扱う世界最大級の企業や、漁師・農家・家畜業者といった生産者へのインタビューを通して、飢餓が生まれるメカニズムをまとめています。   食の未来に向けて、私たちは何をすればいいのか。そのことを考えるきっかけとして、まずは映画を鑑賞してみては?
映画で学ぶ食の課題、おすすめドキュメンタリー3選
2022.02.14

本場フランスのクレープ事情

日本でクレープと言えばフルーツや生クリームにチョコソースをかけてクレープ生地に包んだものをイメージしますが、実はこれは日本独自のクレープです。 クレープはフランス北西部、ブルターニュ地方の郷土料理です。フランスのクレープは私達が食べている日本のクレープとは少し違っているのです。 <庶民の食事から宮廷料理へ> クレープと言えば小麦粉と卵の優しい薄黄色をした生地が定番ですが、大元をたどるとそば粉のガレットに行きつきます。ブルターニュ地方は土地がやせていて雨が多く冷涼な気候のため、小麦が育たないため、古くからそばを常食としていました。そば粥やそばがきといった調理法で食べられていたのが、偶然フライパン代わりの焼けた石の上にこぼれたそば粥がうまく焼けて薄いパンケーキ状になり、ガレットと呼ばれるようになりました。 やがて17世紀ごろにガレットは宮廷料理に取り入れられ、ベースはそば粉から小麦粉へと、味も塩味から甘い味に変化していきました。今でもそば粉で出来たガレットと小麦粉がベースのクレープは区別して呼ばれているようです。 伝統的なガレットは薄い塩味であり、肉や魚介、チーズや卵、サラダとともに食事として食べられてきましたが、現在ではジャムやリキュールで甘く味付けしてデザートとされることもあります。クレープはクレープ生地をメインとしてバターや砂糖で味をつけたり、生クリームやフルーツを包んで菓子としたり、ハムやチーズ、野菜などを包んで軽食としたりと、バリエーション豊富です。 <クレープを食べる日「シャンドルール」> フランスではクレープは軽食としてもデザートとしても菓子としても定番で、一年中よく食べられています。それだけでなく、なんと「クレープの日」まであるのです。 クリスマスから40日後にあたる2月2日は「シャンドルール」と呼ばれ、フランス、ベルギー、スイスのフランス語圏の住人はこぞってクレープを食べます。日本では「聖燭祭(せいしょくさい)」と呼ばれるこの日はキリスト教の祝日ですが、なぜこの日とクレープが結びつけられたかには諸説あり、はっきりしません。由来は不明でも、シャンドルールが近くなるとスーパーにはクレープ特設コーナーが設置され、広告はクレープ一色になり、人々は大量にクレープ関連商品を購入するのだと言います。出来上がっているクレープを購入するのではなく、家庭でクレープを作って食べるのが主流のようで、クレープ専用フライパンの普及率もとても高いのだとか。 フランスの家庭で食べるクレープは、手巻き寿司をイメージすると分かりやすいかもしれません。どっさり焼かれたクレープをめいめい皿に取り、砂糖やジャム、チョコソースなど好きなものをつけて次々と食べます。おしゃれに気取って食べるものではなく、素朴な家庭的なお菓子なのです。 日本人は海外のイベントを取り入れ、日本風にアレンジして定着させるのが上手だと言われています。今後クレープの日として「シャンドルール」が知られていくかもしれませんね。
本場フランスのクレープ事情
2022.02.02

寒い季節こそ楽しみたい「ホットワイン」

暑い日に飲むキンキンに冷えたビールは格別です。しかし日本には四季があり、寒さが厳しい冬が巡ってきます。そんな寒い冬に凍えながら飲むビールも乙なものではありますが、やはり温かいアルコールがあると嬉しいですよね。 温かいアルコールといえば日本酒の熱燗・ぬる燗がありますが、日本酒を飲みなれない人にはとっつきにくいかもしれません。普段ビールで乾杯してワインやウィスキーなどの洋酒を好む人には「ホットワイン」がおすすめです。 <スパイシーでほんのり甘いクリスマスの味> ホットワインはワインに香辛料や甘さ、果物を加えて温めた飲み物で、特にヨーロッパでは古くから飲まれています。ちなみにこの「ホットワイン」は和製英語であり、本場ドイツでは「グリューワイン」、アメリカでは「モルドワイン」と呼ばれています。 赤ワインに香辛料や果物を加えた豊潤で風味豊かなものをイメージしがちですが、白ワイン、ロゼワインでもおいしく作れます。白ワインに生姜や柑橘類を加えれば、スッキリとした上品な味わいが楽しめますね。甘い果物やシロップを使えば口当たりよく飲みやすくなるほか、香辛料の風味とともに血行を良くして身体を温めるなどの薬効も期待できます。単にワインを温めて飲むのではなく香辛料を加えるようになったのは、極寒の冬を少しでも温かく過ごす知恵なのかもしれません。 ホットワインはレストランやカフェなどで飲むだけでなく、自宅で気軽に作れます。小さ目の鍋にワインを入れて弱火でゆっくりと温めるか、電子レンジで湯気が立つ程度に温めます。飲み残してしまったワインでもホットワインにすればおいしく飲みきれますし、購入するのであれば数百円から千円程度の手ごろな価格のものでも充分においしくできますので、気軽なものを買ってみましょう。 味を決める香辛料や果物に決まりはありませんので、好みのものを使ってみましょう。一般的に香辛料はシナモンやクローブ、スターアニス、果物は柑橘類やリンゴがポピュラーです。リンゴやイチゴ、ブルーベリーなども加えた果物が主役のホットワインはデザートとして飲んでも良さそうですし、赤ワインにマーマレードジャムを入れただけの簡単ホットワインは驚きの美味しさです。最近では専用の香辛料ミックスも市販されていますので、こういったものを使うと手軽ですし、温めるだけの調味済みワインも多数販売されていますので、楽しく選んでみてください。 ホットワインは厳しい寒さに耐えるだけではなく、冬を楽しむ大人の飲み物と言えそうですね。冬の長い夜、ホットワインを片手に少し照明を落とし、ゆったりと音楽鑑賞や映画鑑賞を楽しんでみてはいかがでしょうか。
寒い季節こそ楽しみたい「ホットワイン」
2021.12.27

アマニオイルやエゴマオイルに続くブームの予感⁉「カメリナオイル」を紹介!

カメリナオイルとは 現代人に不足しがちなオメガ3が摂取できることから、昨今人気を集めているアマニオイルやエゴマオイル。オメガ3を手軽に取り入れることができるものの、一般的な商品では「酸化しやすい」「加熱に弱い」という欠点がありました。こうした欠点を克服したのが「カメリナオイル」。数年前に日本に上陸し、人気が少しずつ高まっていることをご存じでしょうか。今回は、カメリナオイルの特徴や使い方を紹介します。 カメリナオイルは、カメリナ・サティバというアブラナ科の植物から採れるオイル。この植物はカナダで栽培されています。カメリナオイルにはオメガ3だけでなくビタミンEやベータカロテンなども豊富に含まれていることや、オメガ3・オメガ6・オメガ9の含有比率のバランスの良さなどから、別名「スーパーオイル」とも呼ばれています。 また、コレステロール値を減少させる効果が期待できる「植物ステロール」も多く含有しています。植物ステロールとは、植物に含まれるファイトケミカルの一種。植物ステロールの含有量は、オメガ3系のオイルのなかで最も多いとされています。 さらに、カメリナオイルの大きな特徴は、「酸化しづらい」「加熱調理が可能」「開封後も常温で保存できる」ということ。調理法を選ばず、いろいろな料理に使いやすいというメリットがあります。こうした点から、カナダだけでなくヨーロッパでも人気を集めています。 カメリナオイルはどうやって使う? カメリナオイルは、味にクセが少なく、ナッツのようなほのかな香りがあります。カメリナオイルが手に入ったら、まずはそのまま少量飲んで味わってみるのもおすすめです。 料理への活用法としては、サラダのドレッシングなどに使うのもおいしいですが、炒めものや揚げものに使うのもよく合います。料理の味を邪魔しないサラリとした油なので、素材の味を生かした一品に仕上げることができます。 じわじわと注目を集めている、カメリナオイル。アマニオイルやエゴマオイルに続いて、新しいブームになるかもしれません。ちなみに、カメリナオイルはインターネット通販や輸入食材店などで購入することができます。気になる人はぜひ試してみてはいかがでしょうか。
アマニオイルやエゴマオイルに続くブームの予感⁉「カメリナオイル」を紹介!
2021.07.28

和風・洋風・中華「だし」の違い

食事に温かいスープがついていると嬉しいものですよね。たとえ具がほとんど入っていなくても、お澄ましやコンソメスープなどだしが効いた汁物はとても心を満足させてくれます。 だしは汁物に限らず、料理の基本です。今回はそんな「だし」についてもっと詳しく知ってみましょう。 <だしの基礎知識> そもそも「だし」とは、魚介や肉・野菜などをつけたり煮出したりした、うま味成分や香りのある汁のことを言います。味の基本である「甘味」「酸味」「塩味」「苦味」「うま味」のうちの一つである「うま味」を引き出すことに特化した汁と言えるでしょう。 このうま味はグルタミン酸(植物に多い成分)やイノシン酸(動物に多い成分)によってもたらされます。 だしのすごいところは、これらのアミノ酸を単独ではなく複合して使っているところです。うま味は足し算ではなく掛け算され、相乗効果により飛躍的に伸びます。 使われる食材や調理法が異なっていても、この相乗効果を狙うのは世界共通。栄養素や味覚についての科学的な研究が行われる前から、人々はおいしさの掛け算を体で知っていたのかもしれませんね。 <和洋中における違い> 和風だしは昆布とかつお節の組み合わせた、キレのあるすっきりとしたうま味のだしです。短時間で作れますが保存性が悪く、味の劣化が早いという特徴があります。 一方、洋風だしは玉ねぎやにんじん、セロリと骨付きの肉や魚介を組み合わせた、濃厚なゼラチン質のうま味が特徴のだしです。和風だしと違って作るのに長時間かかりますが保存性は良いです。調理の直前にだしをとるというよりは、事前にまとめてだしをとり、調理ごとに取り分けて使うイメージですね。 中華だしはネギやショウガなどの香味野菜と鶏ガラや豚肉を組み合わせた、深いコクとうま味が特徴のだしです。中華料理では「湯(タン)」と呼ばれており、上湯(シャンタン)や白湯(パイタン)といった語を目にしたことがあるかもしれませんね。 ちなみに白湯は白濁したスープですが、これは強い火力でぼこぼこと泡が出るくらい煮立てると泡が破裂する際の音波で水と油が乳化するので白濁スープになるのだとか。日本ではラーメンのベースとなる豚骨スープとしてもお馴染みです。 <掛け算をさらに掛け算してみる> うま味に幅があるほど料理はおいしく感じられます。 キレはあっても厚みに欠ける和風だしとキレはないが重厚な厚みがある洋風だし。最近では洋食に和風だしを合わせるレシピも多くありますが、その狙いは旨みの幅を広げることにあります。 種類の違うだしをかけ合わせることでうま味は増しますので、既成概念にとらわれず隠し味に使ってみましょう。思いもかけないおいしさと出会えるかもしれませんね。
和風・洋風・中華「だし」の違い
2021.07.19

コロナ禍の心まで慰める? ローマ名物「マリトッツォ」とは

2021年になって大注目のスイーツ、「マリトッツォ」。ころんとした丸いデニッシュにたっぷりのクリームが入ったその姿はシンプルかつダイナミックでインパクトも充分。目にも舌にも嬉しく、その人気は急上昇を続けています。 タピオカ以来の大トレンドとも言われており、全国のベーカリー、カフェをはじめとしてホテルやコンビニエンスストアでも販売されるマリトッツォに迫ります。   <起源はローマ時代> 古代ローマ時代、ハチミツとドライフルーツを使ったパンが一般的に食べられていたそうです。現在のようにクリームははさまれていませんでしたが、大きく栄養満点で持ち運びしやすい食事だったこのパンがマリトッツォのルーツと言われています。 中世になると、食事用から一歩進んでスイーツに近い甘いパンになったと考えられています。パンの大きさは小さくなり、ナッツやドライフルーツがふんだんに使われていたそうです。特にキリスト教で四旬節と呼ばれるイースター前に肉を控えて粗食にする期間にも食べることができたので、さらに普及したのだとか。 イタリアでもアドリア海側のマルケ州では現在でもクリームを挟まないローマ時代の面影を残すマリトッツォが食べられています。南イタリアのプーリア州では生地を編み込んだような形、そしてローマでは小さな丸いパンの間にたっぷりのクリームを挟んだマリトッツォが知られています。 現在日本でブームになっているのは、ローマ版マリトッツォというわけですね。   <ブームの背景にはコロナ禍も?> インスタグラムで「#マリトッツォ」と検索すると7万件ほどもヒットします。シンプルにクリームがはさんであるもの、美しくフルーツを飾り付けたものなどどれも写真映えしていて見飽きません。 なぜ2021年という年にマリトッツォがブームとなったのか。 その背景にはコロナ禍に少し慣れ、しかし密を避け必要以上に人と交わらずマスク生活を続けなければならない人々の疲れ、閉塞感があるのではないかと考えられます。 かわいらしく食欲をそそるそのフォルムを見て癒され、クリームと甘いデニッシュを嚙み締めその甘味に癒され、食べ終わればその満腹感になんだか安心するという一連の流れは、単に流行りものを食べている以上の満足をもたらしていると感じませんか。 ストレートに甘く口の中でとろけるクリームパンを無心で頬張るそのときだけはコロナ禍を一瞬忘れ、幸せの波に身を任せていると言ったら言い過ぎでしょうか。 テイクアウトしやすく、店ごとに様々なラインナップが揃うマリトッツォがコロナ禍にブームになったのは偶然ではないように感じるのです。 もちろん飲食店の苦境、経済活動の落ち込みがすべてマリトッツォで挽回できるわけではありませんが、見栄えのする食べ物が大ブームとなること自体が明るい話題として歓迎されているのは間違いありません。 ワクチン接種も始まりましたが、コロナ禍の終息までにはまだもう少し時間がかかりそうな気配です。マリトッツォは息の長いブームになるのか、それとも定着するのか。今後とも注目していきます。
コロナ禍の心まで慰める? ローマ名物「マリトッツォ」とは

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NEW 2022.11.24

知らないとまずい?!タンパク質危機。20XX年までに肉や魚が足りなくなる?

地球の人口増加や環境問題により、食肉などのタンパク質が不足するのが「タンパク質危機」です。私たちの食卓に影響するかもしれない世界規模での課題であるにもかかわらず、一般にはそれほど広く認知されていません。こちらの記事では、タンパク質危機とはどのような問題かを解説すると共に、タンパク質危機を避けるための4つの選択肢について説明します。タンパク質危機という問題が生じている理由から取りうる対応策までを紹介し、プラントベースフードなどがにわかに注目を浴びている背景をお伝えしていきます。 タンパク質危機(タンパク質クライシス)とは タンパク質危機は、世界人口の急速な増加に由来する問題です。まずはその背景的な事情からみていきましょう。 少子化真っ只中の日本。でも世界の人口は? 日本では、出生率の低下に伴い若年層の人口が減少する「少子化」が急速に進んでいます。そのためあまり実感がわきませんが、一方で世界の人口は増え続けている状況です。国連の調査によれば、世界の人口は現在約80億人であるところ、2030年には約85億人、2050年には約98億人、2100年には約112億人になると推定されています。 2030年までにタンパク源が足りなくなる恐れ 世界規模での人口増加に伴って、近い将来、牛や豚、鶏などの畜産によるタンパク質が不足すると予測されています。この予測は「タンパク質危機」と呼ばれていて、欧米諸国を中心に話題になっています。現状のままだと早ければ2025年から2030年ごろまでに需要と供給のバランスが崩れ始めると言われています。 人間の身体を構成するのは、水分が約60%、タンパク質が約15~20%とされています。つまり、タンパク質は水分を除いて体の重量の約半分を構成する、生きていく上で大切な栄養素です。欧米では「プロテインチャレンジ2040」と題したコンソーシアムが立ち上がり、その中から複数のプロジェクトが始動しています。タンパク質危機をどう乗り越えていくのかは、人類が生きていく上で極めて重要な課題です。 タンパク質危機を避けるための4つの選択肢 タンパク質危機を回避するために、世界中でさまざまな検討が行われています。ここでは、その中から代替肉と培養肉、昆虫食、藻類という4つの選択肢について解説します。 代替肉 代替肉とは、牛肉や豚肉、鶏肉などの動物の肉の代わりに、植物性原料で作られた「肉のような食材」のことです。欧米諸国を中心とした健康への意識の高まりがきっかけで広がったとされていて、別名「プラントベースミート」と呼ばれることもあります。 代替肉の素材として最も有名なものは、大豆が主原料の「大豆ミート」でしょう。有名ハンバーガー店やコーヒーチェーンでも大豆ミートを使ったメニューが登場し、話題になっています。このほか、ひよこ豆、レンズ豆といった豆類も、代替肉の素材として注目されています。最近では、エノキタケを使った新しい代替肉「エノキート」も登場するなど、さまざまな研究・開発が進められています。 培養肉 培養肉は、牛などの動物から取った少量の細胞を、再生医療の技術により体外で増やして作られます。プラントベースの代替肉とは異なり「本物の肉を使った代用品」です。従来の食肉の生産方法と比べて、飼育・繁殖する過程における動物へのストレスや環境への負荷が少ないとされています。こうした特徴から、別名「クリーンミート」と呼ばれることもあります。 培養肉は、2013年にオランダの研究者が培養ミンチ肉を作ったのがその始まりです。日本でも培養肉の研究が進められていて、2019年には世界で初めてサイコロステーキ状の培養肉を作ることに成功しました。大きな肉を作るための技術の開発など乗り越えなくてはならないハードルが多いものの、持続可能な食材という意味で期待が寄せられています。 昆虫食 昆虫食とは、コオロギなどの昆虫を原料にした食品のことです。大豆ミートなどのプラントベースフードは植物性のタンパク質しか得られないのに対して、昆虫食の場合、肉や魚と同様、必須アミノ酸である動物性タンパク質を得ることができます、また、昆虫食は飼育・加工に必要なスペースや資源が最小限で済み、環境負荷が低いというメリットもあります。 日本にも貴重なタンパク源として昆虫を食べる地域の文化が残っていますが、世界で食べられている昆虫は1900種類にも及ぶとされ、アジアやアフリカ、中南米を中心に昆虫を食べる食文化が見られます。昆虫食には食品の安全性や見た目への抵抗感といった課題があるものの、環境負荷の少ないサステナブルな食材として注目を集めています。 藻類 細胞分裂をして増殖する藻類はタンパク質含有量が50~75%であり、新たなタンパク質源としての可能性を持っています。藻類は良質なタンパク質だけでなく、炭水化物や脂質、ビタミン、ミネラルなども豊富に含まれています。現在市場に流通しているのはタンパク質が豊富に含まれるクロレラやスピルリナで、藻類をそのまま乾燥させて粉末状にしたものが主流です。 藻類は栄養価が豊富であるものの、藻類を乾燥した粉末は独特の匂いがあることや、藻類バイオマスの生産コストが肉や大豆に比べて価格が高いことなどから、タンパク質源としてはこれまで積極的に利用されていませんでした。しかし、近い将来に訪れるとされるタンパク質危機を前に、藻類の利活用が見直され始めています。 まとめ 世界の人口増加に伴って、近い将来訪れると言われているタンパク質危機。この記事では、タンパク質危機を回避するために私たちが取りうる選択肢として、代替肉、培養肉、昆虫食、藻類の4つを紹介しました。食品としての安全性や抵抗感、生産コストなど、それぞれに乗り越えるべき障壁はありますが、タンパク質危機を避けるために、世界中でさまざまな研究・開発が行われています。これまでの常識にとらわれない、新しい食の選択肢が求められていると言えそうです。
知らないとまずい?!タンパク質危機。20XX年までに肉や魚が足りなくなる?
NEW 2022.11.22

昆虫食のメリットと注目の背景を深堀り!こんなにも話題になる理由とは?

コオロギなどの昆虫を原料にした食品「昆虫食」。日本にも、貴重なタンパク源として昆虫を食べる地域の文化が残っていますが、多くの人にとってはなじみの薄いものでしょう。しかし今、環境負荷の少ないサステナブルな食料として、世界が昆虫食に注目しています。 一体なぜ、これほどまで昆虫食が話題になるのか。この記事では、昆虫食が期待される背景を解説した上で、栄養価の高さなど注目の理由を解説します。他方で、「本当に安全性に問題はないの?」「昆虫を食べるリスクは」といった疑問や不安の声にもお答えします。 昆虫食が注目を集める背景 無印良品で話題となった「コオロギせんべい」をはじめ、日本では勢いのあるベンチャー企業が、昆虫食ビジネスを盛り上げています。そうした流れに至るまでに、どのような背景があったのでしょう。 増える世界人口、ひっ迫するタンパク源 日本は少子化に直面していますが、世界全体では人口は増加し続けています。このまま行けば、2050年に世界人口は100億人に達すると言われています。 近い将来、牛や豚、鶏などの畜産によるタンパク質が不足する恐れがあると言われています。「タンパク質危機(タンパク質クライシス)」を避けるために、大豆ミートをはじめとしたプラントベースフードの開発が進みました。しかし、植物由来の食べ物からは、植物性のタンパク質しか得られません。そこで、注目されたのが「昆虫食」。なぜなら昆虫は、肉や魚と同様、必須アミノ酸である動物性タンパク質を得ることができるからです。 転機の国連食糧農業機関(FAO)報告 2013年、国際連合食糧農業機関(FAO)が「ある報告書」を発表しました。それは、世界の食糧危機への対策として昆虫食を推奨するというもの。この報告書を契機とし、世界各地で昆虫食の研究・開発が加速しました。昆虫を食べる習慣のなかった欧州でも、2018年、欧州連合(EU)が昆虫を新規の食品として域内で販売することを認めました。 昆虫食を選ぶメリット さぁここから、他にはない昆虫食のメリットを深掘りしていきます。 非常に優れた環境負荷の低さ 狭いスペースで飼育・加工ができる 昆虫は牛や豚、鶏などの家畜よりも狭い場所で飼育できます。コオロギ1キロを生産するのに必要な農地は、鶏肉や豚肉の約3分の1、牛肉なら約13分の1しか必要としません。また、出荷用にパウダーなどに加工する場合でも、小規模な施設で行えます。飼育・加工に場所を取らないということは、それだけ効率的に生産できるということです。 飼育に必要な資源が少ない 昆虫の生産は、家畜に比べて少量の水や飼料で可能です。牛肉を1キロ生産するためにはおよそ8キロのえさを必要とするのに対し、昆虫1キロの生産には約2キロのえさを使うだけで済みます。生産に必要な水についても同様で、コオロギの生産に必要な水は、牛肉の場合の約2500分の1で済んでしまいます。 温室効果ガスの排出量が少ない 牛1頭がげっぷなどで出すメタンガスは1日160リットル以上で、地球温暖化を促進していると言われています。しかし、昆虫の飼育に伴う温室効果ガスの排出量はその10分の1以下。昆虫食は、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの削減にも効果があるというわけです。 丸ごと食べられて、食品ロスにも貢献 昆虫食は食品ロスの削減にも貢献します。牛1頭の可食部はおよそ4割ですが、昆虫はそのほとんどが食べられるので無駄がありません。また昆虫のえさには、残飯など本来なら捨てられてしまうものを利用できます。焼却コストのかかる生ごみの量が減り、一方で、貴重なタンパク質源になるというのですから、昆虫食の利点が際立ちます。 牛や豚に負けない栄養価の高さ それで終わらないのが、昆虫食のすごさです。ガやハチの幼虫の場合、体重の50%がタンパク質と言われています。牛や豚が1〜3%ですから、それに比べると非常に高い含有率です。昆虫は、良質なタンパク質だけでなく、食物繊維や、カルシウム、銅、鉄、亜鉛などのミネラルも豊富に含む上に、脂肪分は少ないという健康に良い食品です。 昆虫食のデメリット 栄養価が高く、環境にも良い昆虫食。その一方で、なじみの薄い昆虫食に対するネガティブな考えも少なくありません。今度は、考えられる昆虫食のデメリットを見ていきましょう。 安全面でのリスクは? 専門家の助言なしに、自然採集した虫を食べるのは、危険を伴う行為です。なぜなら、野生の昆虫には、毒を持つものや、寄生虫や病原菌を媒介するものもいるからです。一方で、管理された環境下で生産されたものは、昆虫とはいえ、他の食材と同様に安全です。 安心を担保する「コオロギ生産ガイドライン」 消費者により安心してもらえる環境を整えようと、2022年8月、民間団体が「コオロギ生産ガイドライン」をまとめました。研究機関や企業などでつくる「昆虫ビジネス研究開発プラットフォーム(iBPF)」が、コオロギの生産過程の衛生管理を中心に行動指針を決めました。公的なルール整備がない中で、民間主導で一定のルールを示すことで信頼性を高め、昆虫食のさらなる普及につながることを期待しています。 アレルギーリスクについて 昆虫食は、食物アレルギーを持つ人には注意が必要です。昆虫には、エビやカニなど同様の甲殻類アレルギーの原因となる「トロポミオシン」という成分が含まれているからです。昆虫に限らずすべての食材に言えることですが、これまで口にしたことのない食材を食べる時には、これまでアレルギーの自覚症状がなかった人でも、慎重を期すようにしましょう。 見た目への抵抗感 多くの人にとって、昆虫を食べることに対して、心理的なハードルがあります。初めて口にするものに対して拒絶反応が出るのは、動物的な本能として当たり前のことです。もしかしたら、これが昆虫食にとっての最大の問題かもしれません。日本でも昆虫食品の開発は大変盛んで、さまざまな商品ラインナップがあります。まずは、昆虫の姿を連想しづらいパウダー入りの菓子やパンなどから試してみるのがいいかもしれません。 そして、「まずいものをわざわざ食べたくない」というのが、大半の人の率直な気持ちだと思います。実際のところ、昆虫の味は実に多種多様で、思いきって食べてみると、おいしく感じるものもたくさんあります。バッタはエビやカニに似た食感、タガメは洋ナシや青リンゴのようなフルーティな香りだとか。セミに至っては、幼虫だとナッツのようなクリーミーな風味で、成虫になるとエビのような風味が楽しめます。 昆虫食とは 1900種類の食べられる昆虫 世界で食べられている昆虫は1900種類にも及ぶとされ、アジアやアフリカ、中南米を中心に昆虫を食べる食文化が見られます。昆虫学者である三橋淳氏の書いた『虫を食べる人びと』(平凡社ライブラリー)によれば、世界ではハチやイナゴに加えて、カブトムシ、カミキリムシなども食べられているそうです。 世界の昆虫食  タイ 昆虫食が住民生活に浸透しているタイでは、スーパーマーケットの食材コーナーに昆虫のサナギや幼虫が並んでいたり、昆虫の佃煮を売る屋台を目にしたりすることも珍しくありません。特に人気があるのはコオロギで、盛んに養殖されています。最近では、コオロギのスナック菓子やコオロギパウダー、コオロギオイルなど、コオロギを原材料にしたさまざまな加工食品が登場しています。特にコオロギパウダーは輸出用としての需要が高く、国もその動きを後押ししています。 ケニア アフリカ東部のケニアで最もよく食べられている虫は、シロアリです。日本でシロアリと言えば、住宅の床下で暮らすアリ(職蟻)を意味することが多いですが、現地で食べられているのは別の種類のアリ(羽蟻)です。このシロアリを使った「クンビクンビ(kumbikumbi)」という伝統料理があり、栄養失調を改善する効果があると言われています。実際、シロアリには、良質な動物性たんぱく質や脂質のほか、カルシウム、鉄分、アミノ酸などが豊富に含まれています。ケニアのシロアリはインターネット通販などでも販売されています。 日本の昆虫食 長野県に根付く昆虫食文化 日本で昆虫食文化が盛んな地域といえば、長野県です。信州でよく食べられている昆虫といえば、ハチノコやイナゴ、カイコ、ザザムシがあります。これら4種類を総称して「信州四大珍味」と呼ばれているそうです。 ハチノコはスズメバチの幼虫やさなぎ、イナゴは稲作の害虫とされるバッタのことです。長野県はかつて養蚕が盛んで、カイコは生糸の生産のために飼育されていた虫です。ザザムシは水生昆虫で、ヒゲナガカワトビケラなどの幼虫のことを指し、主に天竜川で採集できます。長野県の伊那谷地域で食べられていますが、世界的には食べる習慣がほとんどありません。イナゴやカイコは、稲作や養蚕を営む過程で副産物として発生するもので、昆虫食は、自然と共生する地域の暮らしに深く結びついていたのでしょう。 まとめ 昆虫食のメリットとデメリットを押さえてきましたが、環境負荷が低くて栄養価も高いという特徴を踏まえると、昆虫食がこれだけ話題になっていることもうなずけると思います。昆虫を食べるという行為に対して抵抗感はあるかもしれませんが、以前は「生で魚を食べるなんてありえない」と言っていた欧米人が、「Sushi(寿司)」を高級料理としてもてはやしているのを見ると、さほど大きな問題でないようにも思えます。先入観だけで昆虫食という選択肢を排除せず、機会があったらぜひともチャレンジしてみてください。
昆虫食のメリットと注目の背景を深堀り!こんなにも話題になる理由とは?
NEW 2022.11.17

代替肉とはどんな肉?大豆やきのこなど、原材料別に特徴を解説

世界中で「代替肉」のブームが到来しています。代替肉とは、その名前の示す通り、牛肉や豚肉、鶏肉などの動物の肉の代わりに、植物性原料で作られた「まるで肉のような食材」のことです。 では実際に、代替肉はどのような素材から作られ、どのように利用されているのでしょうか。この記事では、代替肉の定義を確認した上で、代替肉の原材料や原材料別の使用例について解説します。この記事を読むことで、代替肉の全体像を把握し、代替肉は具体的にどのようなものであるかを理解していただけます。 プラントベースミートと呼ばれることも 代替肉は、欧米諸国を中心とした健康への意識の高まりがきっかけで広がったとされています。代替肉は地球が抱える環境問題の解決や世界の人口増加に対する食料不足への対策、食の多様性への対応という側面においても大きな意味を持つと言われています。 代替肉の素材として最も有名なものは、大豆が主原料の「大豆ミート」でしょう。このほか、ひよこ豆、レンズ豆といった豆類も、代替肉の素材として注目されています。最近では、エノキタケを使った新しい代替肉「エノキート」も登場しました。いずれも「植物由来の肉」であることから、英語ではプラントベースミートと呼ばれています。 フェイクミート、オルタナティブミートとはどう違う? 代替肉はプラントベースミート以外に、フェイク(偽物の)ミートやオルタナティブ(代替の)ミートと訳されることもあります。呼び方はそれぞれ異なるものの、いずれも動物の肉に見た目や風味を似せた、植物性原料から作られた食材を意味しています。代替肉のどのような特徴を強調したいのかによって、フェイクミートやオルタナティブミート、プラントベースミートという言葉が使い分けされているようです。 大豆ミート:代替肉の定番でバリエーション豊富 大豆ミートとは 大豆ミートは、その名前の通り大豆で作られた代替肉のことです。ソイミートや大豆肉と呼ばれることもあります。大豆は別名「畑の肉」と呼ばれるほど栄養が豊富で、良質なタンパク質をはじめ、ビタミンやミネラルも多く含有しています。 大豆ミートは代替肉の定番であり商品の数も多く、最近はスーパーマーケットやコンビニエンスストアで見かける機会も増えました。 大豆ミートは水やお湯などで戻してから利用する「乾燥タイプ」が主流ですが、すぐに使える「レトルトタイプ」や「冷凍タイプ」もあります。また、形状は主に「ミンチタイプ」「フィレタイプ」「ブロックタイプ」という3種類で、用途に応じて使い分けできます。 あの有名ハンバーガー店やコーヒーチェーンでも 大豆ミートの需要の高まりを受けて、大豆ミートをメニューに導入する飲食店も増えています。大手ハンバーガーチェーン「モスバーガー」では「ソイパティシリーズ」と題して、大豆ミートを使ったハンバーガーのラインアップが登場しています。 また、大手コーヒーチェーン「スターバックス」はサマーシーズン第2弾として“Yori Dori Midori”をテーマにして、プラントベースという選択肢を提案。新しく加わったメニューのひとつ「スピナッチコーン&ソイパティ イングリッシュマフィン」では、肉の代わりに大豆を使ったソイパティを使用しています。 ひよこ豆の代替肉:味のクセが少なく使いやすい ひよこ豆とは ひよこ豆は大豆と同じくらいの大きさの丸い豆です。アジア西部が原産で、インドや欧米諸国、中近東などでは一般的によく流通しています。タンパク質が多く食物繊維が豊富で脂肪分が少ないことから、少し前から食肉に代わるヘルシーな食材として話題を集めています。 ひよこ豆は日本では馴染みの薄い豆ですが、味にクセが少ないため食べやすいのが特徴です。乾燥した状態の豆は水で戻して煮る必要がありますが、水煮されたレトルトタイプを使えば、手軽に利用できます。 使用例:カレーや揚げ物、おやつにも ひよこ豆の生産量はインドが世界一で、ベジタリアンの多いインドではカレーの具材に使われることも多く、日常的に食べられています。インドでは、ひよこ豆の外側の皮を取り除いて割った豆を「ダール」と呼び、カレーにもよく利用されています。また、ひよこ豆を粉末にした「ベサン粉」は、インド風天ぷら「パコラ」をはじめ、おやつや軽食にも用いられています。 この他にひよこ豆を使った料理としては、ひよこ豆のペースト「フムス」やひよこ豆のコロッケ「ファラフェル」も有名です。 レンズ豆の代替肉:ひき肉代わりとして使える レンズ豆とは レンズ豆は、レンズのように平たい形状をしています。レンズ豆には緑色やオレンジ色、褐色などさまざまな色があり、3~6ミリ程度と非常に小さいことも特徴です。日本ではあまり知られていない豆ですが、欧州などでは日常的に利用されていて、特にヴィーガンやベジタリアンの人たちに親しまれています。 レンズ豆は「世界五大健康食品」の一つに数えられていて、ビタミンB群やタンパク質、鉄分、食物繊維を多く含有しています。特に、皮付きの茶色のレンズ豆には100グラム中に9.4ミリグラムの鉄分が含まれていて、これは大豆の含有量よりも多いと言われています。 使用例:カレーや煮込み料理、サラダに レンズ豆はインドやネパールではカレーの具材として、イタリアやフランスなどの国では煮込み料理やサラダなどによく使われています。代替肉としての使い方として、レンズ豆は粒が小さいので、ひき肉のような感覚で利用することができます。例えば、ハンバーグを作る際にレンズ豆で代用する方法があります。 レンズ豆には特有の匂いがあるので、気になる場合は、スパイスを加えたり濃い味付けをしたりするのがおすすめです。レンズ豆は水を吸収しやすいため、あらかじめ水で戻す必要がなく、料理にそのまま使うことができるのも魅力です。 エノキート:キノコの旨味でおいしさ追求 エノキートとは エノキートとは、エノキタケとミートを組み合わせた名前です。エノキートはエノキタケを主原料として作られた代替肉で、農業法人である株式会社小池えのき(以下、小池えのき)によって開発されました。小池えのきの本社がある長野県中野市は、日本最大のきのこの生産地として知られ、エノキタケの生産量は全国の約4割を占めます。地元の食材を使った、新しいタイプの代替肉として注目を集めています。 エノキートには、発芽大豆から作られた大豆ミート「ミラクルミート(DAIZ)」を使用しています。ミラクルミートには、大豆独特のくさみがほとんどありません。ミラクルミートにはうまみ成分「グルタミン酸」が含まれていて、エノキタケのグアニル酸を組み合わせることでうまみが格段にアップし、動物の肉に劣らない独特のうまみが実現できます。 使用例:ハンバーグ エノキートを使った代表的な料理は、ハンバーグです。原材料は、エノキタケとタマネギ、大豆ミート、パン粉、調味料。原材料の半分以上が、エノキタケとタマネギです。5ミリ程度のみじん切りにしたエノキタケを使用することで、肉によく似た食感が生まれます。エノキタケは加熱すると独特のぬめりが出るため、つなぎの代わりになるという点からハンバーグに使うのに適しています。 エノキートのハンバーグは合いびき肉を使った通常のものに比べて、脂質やカロリーが少なく食物繊維が多いとされています。大豆ミートを使用しているため、タンパク質の量は通常のハンバーグとほとんど変わりません。ヘルシーでありながらタンパク質がしっかり摂取できるので、ベジタリアンやヴィーガンの人たちだけでなく、健康への意識が高い人にも支持されています。 まとめ 世界中で需要が高まっている、代替肉。代替肉と一口に言ってもその種類は多く、今回紹介した4種類以外にもさまざまなタイプがあります。 代替肉には私たちの健康維持や地球の環境保全につながるメリットがある一方で、原材料の調達や製造プロセス次第では、環境に負荷を与える可能性もあると言われています。今後、こうしたデメリットにどのように対応していくのかが課題でしょう。代替肉の分野は成長過程にあり、これからの展開に注目したいです。
代替肉とはどんな肉?大豆やきのこなど、原材料別に特徴を解説
NEW 2022.11.16

AI搭載のゴミ箱で分別。環境大国オーストラリアが行くリサイクル最前線

ゴミとして捨てられるプラスチックの多くが、適切に分別されないことにより、再利用の道が閉ざされているという嘆かわしい現実があります。この問題を高度なIT(情報技術)で乗り越えようと、オーストラリアの研究チームが動きました。飲料容器の分別を自動的に行うことができる「スマートビン技術」を搭載した画期的なゴミ箱を開発しました。 ITでゴミを自動分別、リサイクル率を向上 ​​オーストラリア最大の都市・シドニーがあるニューサウスウェールズ州では、年間80万トン出るプラスチックゴミのうち、リサイクルされているのはわずか10%だそう。これは、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の調べで分かりました。 プラスチックのリサイクルのプロセスは非常に複雑です。適切に分別がされないと、こうした事態に陥ります。リサイクルできない廃棄物の一部が焼却場行きとなれば、その分温室効果ガスの排出量が増えます。これらがきちんとリサイクルに回れば、地球温暖化にも大いに貢献するでしょう。 問題解決に向けて、シドニー工科大学(UTS)の共同研究チームは、ゴミの中から自動的に飲料容器を選り分ける機能を搭載したゴミ箱を開発しました。その名は「スマートビン技術」。これにより、最も多い廃棄物のひとつである飲料容器のリサイクル率を向上させることができます。 人工知能(AI)、ロボット工学、画像の認識技術などを組み合わせた先端テクノロジーが搭載されたこのゴミ箱は、ガラスや金属、プラスチックなど素材別に仕分けしてくれます。さらに、ペットボトルの素材となるポリエチレンテレフタレート(PET)や、シャンプーボトルに使われる高密度ポリエチレン(HDPE)など、プラスチックをさらに細かい種類別に分けることができます。 方法としては、まずゴミをカメラで撮影し、AIアルゴリズムを実行して、膨大なデータを処理・分析することにより分類します。そしてIoT(モノのインターネット)を含む最新のロボット技術により、重さや物質、素材を感知してゴミを分別するという仕組みです。 スマートビン技術の社会実装の日は近い 今後、あらゆる地域でスマートビン技術搭載のゴミ箱が利用されるようになれば、プラスチックゴミのリサイクル率は飛躍的に向上し、業者による回収作業もより素早く正確になります。研究チームは、このゴミ箱を管理するシステムの開発を進めています。システムが実用化されれば、ゴミ箱の所有者が、ゴミ箱の充填具合などの状態を遠隔で監視、点検できるようになります。ゴミ箱が満杯になった時、ゴミ箱を空にする必要があることを知らせる通知が表示されるという仕組みです。また、地域の人々にとっては、自分がどれだけリサイクル活動に貢献しているかがアプリに記録され、そのことを通知として受け取ることができます。 この実証実験は、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の研究プログラムの一環として行われています。同機構は2030年までに、オーストラリアで排出されるプラスチック廃棄物を80%削減することを目指しています。スマートビン技術はまだ試作段階ですが、いずれはショッピングセンター、学校、映画館、カフェ、企業、空港などにスマートビン技術搭載のゴミ箱が設置される予定です。
AI搭載のゴミ箱で分別。環境大国オーストラリアが行くリサイクル最前線