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NEW 2022.11.24

知らないとまずい?!タンパク質危機。20XX年までに肉や魚が足りなくなる?

地球の人口増加や環境問題により、食肉などのタンパク質が不足するのが「タンパク質危機」です。私たちの食卓に影響するかもしれない世界規模での課題であるにもかかわらず、一般にはそれほど広く認知されていません。こちらの記事では、タンパク質危機とはどのような問題かを解説すると共に、タンパク質危機を避けるための4つの選択肢について説明します。タンパク質危機という問題が生じている理由から取りうる対応策までを紹介し、プラントベースフードなどがにわかに注目を浴びている背景をお伝えしていきます。 タンパク質危機(タンパク質クライシス)とは タンパク質危機は、世界人口の急速な増加に由来する問題です。まずはその背景的な事情からみていきましょう。 少子化真っ只中の日本。でも世界の人口は? 日本では、出生率の低下に伴い若年層の人口が減少する「少子化」が急速に進んでいます。そのためあまり実感がわきませんが、一方で世界の人口は増え続けている状況です。国連の調査によれば、世界の人口は現在約80億人であるところ、2030年には約85億人、2050年には約98億人、2100年には約112億人になると推定されています。 2030年までにタンパク源が足りなくなる恐れ 世界規模での人口増加に伴って、近い将来、牛や豚、鶏などの畜産によるタンパク質が不足すると予測されています。この予測は「タンパク質危機」と呼ばれていて、欧米諸国を中心に話題になっています。現状のままだと早ければ2025年から2030年ごろまでに需要と供給のバランスが崩れ始めると言われています。 人間の身体を構成するのは、水分が約60%、タンパク質が約15~20%とされています。つまり、タンパク質は水分を除いて体の重量の約半分を構成する、生きていく上で大切な栄養素です。欧米では「プロテインチャレンジ2040」と題したコンソーシアムが立ち上がり、その中から複数のプロジェクトが始動しています。タンパク質危機をどう乗り越えていくのかは、人類が生きていく上で極めて重要な課題です。 タンパク質危機を避けるための4つの選択肢 タンパク質危機を回避するために、世界中でさまざまな検討が行われています。ここでは、その中から代替肉と培養肉、昆虫食、藻類という4つの選択肢について解説します。 代替肉 代替肉とは、牛肉や豚肉、鶏肉などの動物の肉の代わりに、植物性原料で作られた「肉のような食材」のことです。欧米諸国を中心とした健康への意識の高まりがきっかけで広がったとされていて、別名「プラントベースミート」と呼ばれることもあります。 代替肉の素材として最も有名なものは、大豆が主原料の「大豆ミート」でしょう。有名ハンバーガー店やコーヒーチェーンでも大豆ミートを使ったメニューが登場し、話題になっています。このほか、ひよこ豆、レンズ豆といった豆類も、代替肉の素材として注目されています。最近では、エノキタケを使った新しい代替肉「エノキート」も登場するなど、さまざまな研究・開発が進められています。 培養肉 培養肉は、牛などの動物から取った少量の細胞を、再生医療の技術により体外で増やして作られます。プラントベースの代替肉とは異なり「本物の肉を使った代用品」です。従来の食肉の生産方法と比べて、飼育・繁殖する過程における動物へのストレスや環境への負荷が少ないとされています。こうした特徴から、別名「クリーンミート」と呼ばれることもあります。 培養肉は、2013年にオランダの研究者が培養ミンチ肉を作ったのがその始まりです。日本でも培養肉の研究が進められていて、2019年には世界で初めてサイコロステーキ状の培養肉を作ることに成功しました。大きな肉を作るための技術の開発など乗り越えなくてはならないハードルが多いものの、持続可能な食材という意味で期待が寄せられています。 昆虫食 昆虫食とは、コオロギなどの昆虫を原料にした食品のことです。大豆ミートなどのプラントベースフードは植物性のタンパク質しか得られないのに対して、昆虫食の場合、肉や魚と同様、必須アミノ酸である動物性タンパク質を得ることができます、また、昆虫食は飼育・加工に必要なスペースや資源が最小限で済み、環境負荷が低いというメリットもあります。 日本にも貴重なタンパク源として昆虫を食べる地域の文化が残っていますが、世界で食べられている昆虫は1900種類にも及ぶとされ、アジアやアフリカ、中南米を中心に昆虫を食べる食文化が見られます。昆虫食には食品の安全性や見た目への抵抗感といった課題があるものの、環境負荷の少ないサステナブルな食材として注目を集めています。 藻類 細胞分裂をして増殖する藻類はタンパク質含有量が50~75%であり、新たなタンパク質源としての可能性を持っています。藻類は良質なタンパク質だけでなく、炭水化物や脂質、ビタミン、ミネラルなども豊富に含まれています。現在市場に流通しているのはタンパク質が豊富に含まれるクロレラやスピルリナで、藻類をそのまま乾燥させて粉末状にしたものが主流です。 藻類は栄養価が豊富であるものの、藻類を乾燥した粉末は独特の匂いがあることや、藻類バイオマスの生産コストが肉や大豆に比べて価格が高いことなどから、タンパク質源としてはこれまで積極的に利用されていませんでした。しかし、近い将来に訪れるとされるタンパク質危機を前に、藻類の利活用が見直され始めています。 まとめ 世界の人口増加に伴って、近い将来訪れると言われているタンパク質危機。この記事では、タンパク質危機を回避するために私たちが取りうる選択肢として、代替肉、培養肉、昆虫食、藻類の4つを紹介しました。食品としての安全性や抵抗感、生産コストなど、それぞれに乗り越えるべき障壁はありますが、タンパク質危機を避けるために、世界中でさまざまな研究・開発が行われています。これまでの常識にとらわれない、新しい食の選択肢が求められていると言えそうです。
知らないとまずい?!タンパク質危機。20XX年までに肉や魚が足りなくなる?
NEW 2022.11.22

昆虫食のメリットと注目の背景を深堀り!こんなにも話題になる理由とは?

コオロギなどの昆虫を原料にした食品「昆虫食」。日本にも、貴重なタンパク源として昆虫を食べる地域の文化が残っていますが、多くの人にとってはなじみの薄いものでしょう。しかし今、環境負荷の少ないサステナブルな食料として、世界が昆虫食に注目しています。 一体なぜ、これほどまで昆虫食が話題になるのか。この記事では、昆虫食が期待される背景を解説した上で、栄養価の高さなど注目の理由を解説します。他方で、「本当に安全性に問題はないの?」「昆虫を食べるリスクは」といった疑問や不安の声にもお答えします。 昆虫食が注目を集める背景 無印良品で話題となった「コオロギせんべい」をはじめ、日本では勢いのあるベンチャー企業が、昆虫食ビジネスを盛り上げています。そうした流れに至るまでに、どのような背景があったのでしょう。 増える世界人口、ひっ迫するタンパク源 日本は少子化に直面していますが、世界全体では人口は増加し続けています。このまま行けば、2050年に世界人口は100億人に達すると言われています。 近い将来、牛や豚、鶏などの畜産によるタンパク質が不足する恐れがあると言われています。「タンパク質危機(タンパク質クライシス)」を避けるために、大豆ミートをはじめとしたプラントベースフードの開発が進みました。しかし、植物由来の食べ物からは、植物性のタンパク質しか得られません。そこで、注目されたのが「昆虫食」。なぜなら昆虫は、肉や魚と同様、必須アミノ酸である動物性タンパク質を得ることができるからです。 転機の国連食糧農業機関(FAO)報告 2013年、国際連合食糧農業機関(FAO)が「ある報告書」を発表しました。それは、世界の食糧危機への対策として昆虫食を推奨するというもの。この報告書を契機とし、世界各地で昆虫食の研究・開発が加速しました。昆虫を食べる習慣のなかった欧州でも、2018年、欧州連合(EU)が昆虫を新規の食品として域内で販売することを認めました。 昆虫食を選ぶメリット さぁここから、他にはない昆虫食のメリットを深掘りしていきます。 非常に優れた環境負荷の低さ 狭いスペースで飼育・加工ができる 昆虫は牛や豚、鶏などの家畜よりも狭い場所で飼育できます。コオロギ1キロを生産するのに必要な農地は、鶏肉や豚肉の約3分の1、牛肉なら約13分の1しか必要としません。また、出荷用にパウダーなどに加工する場合でも、小規模な施設で行えます。飼育・加工に場所を取らないということは、それだけ効率的に生産できるということです。 飼育に必要な資源が少ない 昆虫の生産は、家畜に比べて少量の水や飼料で可能です。牛肉を1キロ生産するためにはおよそ8キロのえさを必要とするのに対し、昆虫1キロの生産には約2キロのえさを使うだけで済みます。生産に必要な水についても同様で、コオロギの生産に必要な水は、牛肉の場合の約2500分の1で済んでしまいます。 温室効果ガスの排出量が少ない 牛1頭がげっぷなどで出すメタンガスは1日160リットル以上で、地球温暖化を促進していると言われています。しかし、昆虫の飼育に伴う温室効果ガスの排出量はその10分の1以下。昆虫食は、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの削減にも効果があるというわけです。 丸ごと食べられて、食品ロスにも貢献 昆虫食は食品ロスの削減にも貢献します。牛1頭の可食部はおよそ4割ですが、昆虫はそのほとんどが食べられるので無駄がありません。また昆虫のえさには、残飯など本来なら捨てられてしまうものを利用できます。焼却コストのかかる生ごみの量が減り、一方で、貴重なタンパク質源になるというのですから、昆虫食の利点が際立ちます。 牛や豚に負けない栄養価の高さ それで終わらないのが、昆虫食のすごさです。ガやハチの幼虫の場合、体重の50%がタンパク質と言われています。牛や豚が1〜3%ですから、それに比べると非常に高い含有率です。昆虫は、良質なタンパク質だけでなく、食物繊維や、カルシウム、銅、鉄、亜鉛などのミネラルも豊富に含む上に、脂肪分は少ないという健康に良い食品です。 昆虫食のデメリット 栄養価が高く、環境にも良い昆虫食。その一方で、なじみの薄い昆虫食に対するネガティブな考えも少なくありません。今度は、考えられる昆虫食のデメリットを見ていきましょう。 安全面でのリスクは? 専門家の助言なしに、自然採集した虫を食べるのは、危険を伴う行為です。なぜなら、野生の昆虫には、毒を持つものや、寄生虫や病原菌を媒介するものもいるからです。一方で、管理された環境下で生産されたものは、昆虫とはいえ、他の食材と同様に安全です。 安心を担保する「コオロギ生産ガイドライン」 消費者により安心してもらえる環境を整えようと、2022年8月、民間団体が「コオロギ生産ガイドライン」をまとめました。研究機関や企業などでつくる「昆虫ビジネス研究開発プラットフォーム(iBPF)」が、コオロギの生産過程の衛生管理を中心に行動指針を決めました。公的なルール整備がない中で、民間主導で一定のルールを示すことで信頼性を高め、昆虫食のさらなる普及につながることを期待しています。 アレルギーリスクについて 昆虫食は、食物アレルギーを持つ人には注意が必要です。昆虫には、エビやカニなど同様の甲殻類アレルギーの原因となる「トロポミオシン」という成分が含まれているからです。昆虫に限らずすべての食材に言えることですが、これまで口にしたことのない食材を食べる時には、これまでアレルギーの自覚症状がなかった人でも、慎重を期すようにしましょう。 見た目への抵抗感 多くの人にとって、昆虫を食べることに対して、心理的なハードルがあります。初めて口にするものに対して拒絶反応が出るのは、動物的な本能として当たり前のことです。もしかしたら、これが昆虫食にとっての最大の問題かもしれません。日本でも昆虫食品の開発は大変盛んで、さまざまな商品ラインナップがあります。まずは、昆虫の姿を連想しづらいパウダー入りの菓子やパンなどから試してみるのがいいかもしれません。 そして、「まずいものをわざわざ食べたくない」というのが、大半の人の率直な気持ちだと思います。実際のところ、昆虫の味は実に多種多様で、思いきって食べてみると、おいしく感じるものもたくさんあります。バッタはエビやカニに似た食感、タガメは洋ナシや青リンゴのようなフルーティな香りだとか。セミに至っては、幼虫だとナッツのようなクリーミーな風味で、成虫になるとエビのような風味が楽しめます。 昆虫食とは 1900種類の食べられる昆虫 世界で食べられている昆虫は1900種類にも及ぶとされ、アジアやアフリカ、中南米を中心に昆虫を食べる食文化が見られます。昆虫学者である三橋淳氏の書いた『虫を食べる人びと』(平凡社ライブラリー)によれば、世界ではハチやイナゴに加えて、カブトムシ、カミキリムシなども食べられているそうです。 世界の昆虫食  タイ 昆虫食が住民生活に浸透しているタイでは、スーパーマーケットの食材コーナーに昆虫のサナギや幼虫が並んでいたり、昆虫の佃煮を売る屋台を目にしたりすることも珍しくありません。特に人気があるのはコオロギで、盛んに養殖されています。最近では、コオロギのスナック菓子やコオロギパウダー、コオロギオイルなど、コオロギを原材料にしたさまざまな加工食品が登場しています。特にコオロギパウダーは輸出用としての需要が高く、国もその動きを後押ししています。 ケニア アフリカ東部のケニアで最もよく食べられている虫は、シロアリです。日本でシロアリと言えば、住宅の床下で暮らすアリ(職蟻)を意味することが多いですが、現地で食べられているのは別の種類のアリ(羽蟻)です。このシロアリを使った「クンビクンビ(kumbikumbi)」という伝統料理があり、栄養失調を改善する効果があると言われています。実際、シロアリには、良質な動物性たんぱく質や脂質のほか、カルシウム、鉄分、アミノ酸などが豊富に含まれています。ケニアのシロアリはインターネット通販などでも販売されています。 日本の昆虫食 長野県に根付く昆虫食文化 日本で昆虫食文化が盛んな地域といえば、長野県です。信州でよく食べられている昆虫といえば、ハチノコやイナゴ、カイコ、ザザムシがあります。これら4種類を総称して「信州四大珍味」と呼ばれているそうです。 ハチノコはスズメバチの幼虫やさなぎ、イナゴは稲作の害虫とされるバッタのことです。長野県はかつて養蚕が盛んで、カイコは生糸の生産のために飼育されていた虫です。ザザムシは水生昆虫で、ヒゲナガカワトビケラなどの幼虫のことを指し、主に天竜川で採集できます。長野県の伊那谷地域で食べられていますが、世界的には食べる習慣がほとんどありません。イナゴやカイコは、稲作や養蚕を営む過程で副産物として発生するもので、昆虫食は、自然と共生する地域の暮らしに深く結びついていたのでしょう。 まとめ 昆虫食のメリットとデメリットを押さえてきましたが、環境負荷が低くて栄養価も高いという特徴を踏まえると、昆虫食がこれだけ話題になっていることもうなずけると思います。昆虫を食べるという行為に対して抵抗感はあるかもしれませんが、以前は「生で魚を食べるなんてありえない」と言っていた欧米人が、「Sushi(寿司)」を高級料理としてもてはやしているのを見ると、さほど大きな問題でないようにも思えます。先入観だけで昆虫食という選択肢を排除せず、機会があったらぜひともチャレンジしてみてください。
昆虫食のメリットと注目の背景を深堀り!こんなにも話題になる理由とは?
NEW 2022.11.11

SDGsって何の略?知ればその意味や目標がわかる!企業やNPOの取り組み事例も解説

近年、SDGs(エス・ディー・ジーズ)という言葉が多くの場面で使われるようになり、食品業界ではさまざまな取り組みが推進されています。一方で、何となく言葉は知っていても、正確な意味や目指す姿がわからないという声も少なくありません。 そこでこの記事では、SDGsが掲げる17の目標や169のターゲットについて説明し、さらには企業やNPO/NGOの取り組み事例を知っていただくことで、SDGsの目指す姿を解説していこうと思います。 SDGsは持続可能な開発目標のこと SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称であり、2015年9月の国連サミットにおいて決められた世界共通の目標です。2016年から2030年までの15年間の開発の指針として「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され、その中心となる開発目標をSDGsと呼んでいます。 ちなみに、SDGsの前身である「MDGs(エムディージーズ)」では、2015年までの開発目標として8つのゴールを掲げていました。この目標が達成期限を迎えたことを受けて、次に決定されたのがSDGsです。 SDGsの17の目標とは SDGsでは、17の大きな目標が設定されています。その目標とは、「1.貧困をなくそう」「2.飢餓をゼロに」「3.すべての人に健康と福祉を」「4.質の高い教育をみんなに」「5.ジェンダー平等を実現しよう」「6.安全な水とトイレを世界中に」「7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに」「8.働きがいも経済成長も」「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」「10.人や国の不平等をなくそう」「11.住み続けられるまちづくりを」「12.つくる責任 つかう責任」「13.気候変動に具体的な対策を」「14.海の豊かさを守ろう」「15.陸の豊かさも守ろう」「16.平和と公正をすべての人に」「17.パートナーシップで目標を達成しよう」です。 貧困や飢餓といえば「開発途上国が対象」というイメージがあるかもしれませんが、日本の子どもの「7人に1人が貧困」とも言われていて、日本においても重要なテーマとなっています。17の目標の特徴は、開発途上国だけでなく先進国も対象にしていることです。気候変動や働きがい、経済成長など多岐に渡るテーマが盛り込まれています。 SDGsの169のターゲットとは 17の目標を達成するために設定されているのが、169のターゲットです。すべてのターゲットは、農林水産省のサイトから確認できます。一つの目標に対して平均して10個程度のターゲットが存在する計算になります。 ターゲットの内容としては、具体的な指標を示しているものもあれば、漠然とした表現のものもあります。そこで、169のターゲットをより具体化して数値目標を盛り込んだ232の指標が策定されました。SDGsの全体像として、17の目標、169のターゲット、232の指標で構成されています。 SDGsの大きな特徴は、目標を掲げるだけでなく達成状況を定期的にモニタリングすることにあります。「国連ハイレベル政治フォーラム」という枠組みを使って、毎年7月ごろに各国の進捗状況を共有しています。 食品企業が取り組む事例 SDGsの17の目標は食品業界食品業界に関わるものも多く、さまざまな取り組みが推進されています。たとえば、「2.飢餓をゼロに」では、アジアやアフリカを中心に深刻化している飢餓や栄養不良といった問題解決に取り組む企業や、「12.つくる責任 つかう責任」では、従来の大量生産・大量消費から持続可能な仕組みへと変化していく企業の姿もあります。「4.質の高い教育をみんなに」では、大手食品産業を中心に食育や環境教育が実践されています。 ここでは、食品業界における「企業が取り組むSDGs」として、いくつか事例をご紹介します。 ハナマルキ ハナマルキ株式会社は、イオンアグリ創造株式会社とのコラボレーションで「液体塩こうじ×青いトマトプロジェクト」を2022年7月にスタートさせました。食品ロスの削減につながるだけでなく、「青いトマトがおいしく変身する」と多方面から注目を集めています。 このプロジェクトは、これまで廃棄処分されてきた青いトマトを液体塩こうじと組み合わせて、青いトマトの特徴を生かしたおいしい料理に変身させるというもの。イオン農場ECサイトにて、液体塩こうじと青いトマト、ミニレシピリーフレット付のセット販売を行っています(1セットにつき液体塩こうじ1本と青いトマト6個入りで税込1000円、送料別)。 関連記事: https://reports.shareshima.com/2335/ 森永乳業 森永乳業株式会社では「笑顔を未来につなぐプロジェクト」と題して、サステナブルな社会の実現に向けて、さまざまなプロジェクトを展開しています。プロジェクトの紹介サイトでは、クイズやゲーム、漫画などのコーナーがあり、SDGsの意味や森永乳業の取り組みを子どもから大人まで楽しく理解できます。 同社の商品では、2020年度から「認証カカオ豆」を使用し、カカオ豆を生産する農家の支援や貧困問題、地球温暖化などの解決に取り組んでいます。また商品の包装には、FSC認証紙や再生紙、環境に配慮した紙を使用し、森林資源の保護を目指しています。この他、お菓子の原材料となるパーム油や印刷に使うインキなども環境にやさしいものを使うよう配慮しています。 敷島製パン 敷島製パン株式会社(Pasco)では「ゆめちから栽培研究プログラム」を行っています。このプログラムは、中学・高校生が自ら国産小麦を育て、収穫した小麦でパンを作ることにより、日々食べているものや人とのつながりに対する意識や関心を高めることを目指しています。 日本の小麦の食料自給率は約15%とされ、特にパン用小麦は、そのほとんどを輸入に頼っています。こうした状況を改善すべく開発されたのが「ゆめちから」という品種で、日本の高温多湿な環境でも栽培しやすいという特徴があります。本プログラムには、日本の小麦の生産量を増やして日本の小麦で作ったパンを広めるという想いも込められています。 NPO/NGOが取り組む事例 SDGsに取り組んでいるのは、企業だけではありません。ここではNPO/NGOの取り組みとして、TABLE FOR TWOの事例を紹介します。 TABLE FOR TWO NPO法人「TABLE FOR TWO」は、飢餓と飽食という世界規模で起きている食の不均衡を解決することをミッションにした団体です。2007年に日本で設立して以来、先進国で健康的な食生活を提供しながら、開発途上国の子どもたちに学校給食を届ける活動を行っています。 「TFTプログラム」は、先進国で食事やサービスを受け取ると、その売上の一部が寄付金となって、開発途上国の学校給食になるというものです。この仕組みは大企業の社員食堂などにも採用され、設立から15年間で学校給食数は累計9,000万食以上も届けられています。 まとめ 食品業界では、多様な視点からSDGsの取り組みが行われています。取り組み事例を見ていると、食の分野には、貧困や飢餓、健康状態の改善だけでなく、環境保全やまちづくり、教育の質の向上、パートナーシップなどさまざまな可能性があると感じました。 実は、国連サミットで193ヵ国が全会一致で採択した文書の正式名称は、SDGsではなく「Transforming Our World(我々の世界を変革する)」とされています。SDGsは、この文書の一部に書いてあったものです。 SDGsの本質を考えたとき、「食には世界を変革するための大きな可能性がある」と言っても、過言ではないでしょう。食に関わる者として、あらゆる主体が自ら考え、取り組んでいくことが大切なのかもしれません。
SDGsって何の略?知ればその意味や目標がわかる!企業やNPOの取り組み事例も解説
NEW 2022.11.09

ウイスキーが温暖化を左右する?世界が見習うべきスコッチ業界の誠実さ

泥状の炭が積み重なる湿地帯のことを「泥炭地(でいたんち)」と呼びます。膨大な二酸化炭素を土壌に固定している泥炭地の保全は、地球温暖化対策にとって欠かせない重要な問題です。そこから採取される泥炭(ピート)は、​​伝統的なスコッチウイスキーの製造過程に欠かせない材料の一つでもあります。今、多くのスコッチウイスキー生産者が泥炭地の保全に貢献するため、カーボンニュートラルなウイスキー生産に取り組んでいます。 ピートは使わない、伝統を超える挑戦 ​​スコットランドで何百年も前から蒸溜されてきた「モルトウイスキー」は、原料の麦芽を乾燥させる際にピートをたくことで、芳醇なスモーキーフレーバーを醸します。高熱にさらすと不活性化する麦芽の糖化酵素ですが、ピートはこの酵素の働きを損なわせることなく適度な火力を保つため、伝統的にウイスキー造りの燃料として重宝してきました。 ピートを掘り出す泥炭地は、分解途中の植物が非常に長い時間をかけて堆積して形成されたもので、二酸化炭素の吸収源としてはもちろん、多様な動植物の生息地として貴重な役割を担っています。ウイスキー造りのためにこの貴重な資源を消費すれば、地球に炭素を放出させ、泥炭地の多様な生態系にも影響を及ぼすことになります。 この泥炭地を守るため、ピートを使わない持続可能なウイスキー造りに取り組むウイスキー生産者が増えています。スコットランドで最も古い蒸留所の一つである「フェッターケアン」では、地元のオーク材を使ったたるで熟成するという方法で、ピートを使わずとも香りを損なわない製造方法を試みています。依然としてピートの独特でスモーキーな風味を愛する根強いファンがいるものの、近年はウイスキー愛飲家たちの嗜好が多様化し、ピートを完全に排除したウイスキーが受け入れられやすくなっています。 2050年を見据えたスコッチ業界の選択 ​​スコットランド西海岸で2017年に設立された「ノックニーアン蒸留所」も、ピートを使わない持続可能なウイスキー生産に挑んでいます。創業者の女性、アナベル・トーマスは、スコッチウイスキーの価値観を根本から変えようと、自然に調和したウイスキー造りを明確に打ち出しています。 ノックニーアン蒸留所は、ピートを完全に使わないという選択を始めとし、バイオマス発電を主とした蒸留所の設計など、あらゆる環境に配慮した取り組みに徹し、イギリスの蒸留所として初めてカーボンゼロ認証を獲得しました。 こうした流れの中、2021年にスコットランド・グラスゴーで開催されたCOP26(気候変動枠組条約締約国会議)でも、泥炭地の保全が議題に上がりました。スコッチウイスキー生産量の95%以上を占めるスコッチ・ウイスキー協会(SWA)は、スコットランドの泥炭地を積極的に保全し、2035年までに回復させることを約束しています。SWAでは2009年以降、温室効果ガスの排出量を34%削減。イギリス政府は2050年のカーボンニュートラル達成を掲げていますが、SWAは10年前倒しで目標達成することを目指しています。 スコッチウイスキー業界の誠実な姿勢が、世界中のファンを魅了し続ける、一つの要因になっているのでしょう。 
ウイスキーが温暖化を左右する?世界が見習うべきスコッチ業界の誠実さ
2022.10.25

セブンカフェ、マイボトル利用の実証実験。実店舗導入へ課題探る

セブン-イレブン・ジャパンは2022年9月1日、セブン-イレブン店舗内「セブンカフェ」でのマイボトルの利用促進に向けた実証実験を始めました。同社が推進するサステナビリティ活動の一環として行われていて、参加者からは前向きな感想が寄せられています。同社は実店舗での本格運用を視野に、今回の実験結果を生かしていく方針です。 本部ビルで検証、従業員の意識変革から 実証実験は、東京都内にあるセブン-イレブン・ジャパン本部ビルの5階に、カフェマシン2台とボトル洗浄機を設置して行われました。約500人の従業員が対象で、期間は9月30日までの30日間。社員にリユース可能なボトルを配布し、「金銭的な負荷があるほうが実用化に向けて有効な効果が得やすい」との理由から有料で実施しました。 カフェマシンは、店頭で利用されているセブンカフェ自販機をマイボトルが入るように富士電機が改良しました。コーヒー豆は、味の素AGF社が提供したブラックコーヒーのホットとコールド(それぞれR・Lサイズ)の4種類を使用しました。 主な目的は、従業員の環境への意識向上や紙カップやプラスチックカップなどの産業廃棄物の削減効果を検証することです。マイボトルの底に付けられたタグが読み取り機で認証されることにより、利用頻度などが分かる仕組みになっていて、このデータを基に分析が行われます。 「コーヒーが冷めにくい」と好評の声 社員に配布されたボトルはリユースが可能で、真空断熱構造でコーヒーのおいしさを長時間保温・保冷でき、密閉構造のふたにより持ち運びにも便利な仕様です。 また、パナソニックは、同社が開発したマイボトル専用の高速自動ボトル洗浄機を提供。高温水の高圧水流により、洗浄機にボトルをセットすれば約45秒でボトル内部とふたの洗浄を行うことができます。コーヒーを淹れる前に洗浄機を使えるので、ボトルを清潔に保つことができます。 参加した社員からは「取り組みに参加できて非常にうれしい」「マイボトルだとホットが冷めにくい」「洗浄機とセットになっているのはうれしい」という声が挙がっていて、特に「便利さ」について高い評価が集まっています。 実店舗での運用時期は現時点では未定ですが、将来的な導入に向けて、利用状況を確認しながら課題を抽出していく予定です。
セブンカフェ、マイボトル利用の実証実験。実店舗導入へ課題探る
2022.10.19

バナナの皮をバイオ燃料に。廃棄物利用で脱炭素社会目指す

動物や植物などから生まれた有機性資源の「バイオマス」。具体的には森林の間伐材や食品廃棄物などから得られるバイオマスエネルギーは、カーボンニュートラルかつ再生可能であるという点から、気候変動対策への効果が期待されています。そうした中、スイスの研究者たちが、バナナの皮から再生可能なバイオマス燃料を抽出する方法を発見しました。本来なら廃棄されてしまう物を利用して再生可能エネルギーを生み出すという画期的な方法です。 光の照射でバナナの皮から水素を取り出す 2022年1月、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)に拠点を置く科学者チームは、バイオマスエネルギーの画期的な抽出法を発表しました。それは、乾燥したバナナの皮の粉末から、水素やバイオ炭などの資源を抽出するというものです。乾燥バナナの皮1kgから約100リットルの水素と330gのバイオ炭が生成されます。 特に水素は、使用過程で二酸化炭素を排出せず、多様な資源から得られるという供給源の安定性から、脱炭素社会の鍵とされるエネルギーです。研究チームが発表した水素抽出法は、実にシンプルなものです。まず、炭素、水素、酸素など有機物をたくさん含むバナナの皮を、105度で24時間乾燥させ、粉末にします。これを不活性ガスで満たしたステンレス製の容器に入れて光を照射。わずか数ミリ秒という速さで分解は完了します。 ポイントは、写真撮影のフラッシュにも使われている「キセノン閃光ランプ」で照射することです。極めて短時間に明るく照らすこの白い光は、強力なエネルギーで物質の化学反応を促進します。光と熱で一瞬にして1000℃以上という高温に達することで強力なエネルギー変換が起き、これまでなかった水素抽出法が実現しました。 真のカーボンニュートラル、画期性が評価 欧州連合(EU)は、2050年までに二酸化炭素の排出量と除去量を差し引きゼロにする脱炭素化(カーボンニュートラル)の施策を強化しています。ただ現実には、バイオエネルギーの生産工程で、二酸化炭素が排出されるケースは珍しくありません。それは、高温の加熱処理をしてエネルギーを分解・抽出する場合、大量の化石燃料が必要となるからです。 生産工程に生じるこの矛盾は、バイオマスエネルギーの生産にとってのネックでした。しかし、光を照射してバナナの皮から水素を抽出する方法は、この問題をクリアーした画期的な方法です。それどころか、水素と共に得られる副産物のバイオ炭は、二酸化炭素を吸収して閉じ込める「炭素貯留効果」があります。バイオ炭は、酸化した土地を中性化するなど土壌改善効果も確認されていて、農業資材としての活用も期待されています。 原料のバイオマスはバナナの皮以外に、トウモロコシの芯、オレンジの皮、コーヒー豆、ココナッツの殻なども応用できる見込みがあると言われています。将来的には、タイヤなどの産業廃棄物を利用するなど、さらなる発展の可能性も秘めています。
バナナの皮をバイオ燃料に。廃棄物利用で脱炭素社会目指す
2022.10.12

中国で人気の「ゼロカーボン食品」、グローバル企業で開発進む

昨今の中国では、野菜や牛乳などさまざまな種類の「ゼロカーボン食品」が登場し、注目を集めています。温室効果ガス削減への効果も期待され、グローバル企業ではゼロカーボン食品を開発する動きも進んでいます。この記事では、ゼロカーボン食品の魅力と共に、グローバル企業の取り組み事例について紹介します。 温室効果ガスをゼロに抑えた食品 ゼロカーボン食品とは、食品を生産する過程で発生する温室効果ガスの排出量をマイナスまたはゼロに抑えたもののこと。温室効果ガスは、食品の研究開発の段階から原料の栽培・収穫(飼育・養殖)、加工、流通、小売、貯蔵などさまざまな工程で排出されます。 国連グローバル・コンパクト(UNGC)が2021年に発表した研究報告書「企業のカーボンニュートラルルートマップ」では、人口増加や肉食の増加などに伴い、これから数十年間で農業と食品業界のCO2排出削減のハードルが大幅に上がると示されています。 こうした状況の中、中国のスーパーマーケットでは、ゼロカーボン牛乳やゼロカーボンヨーグルト、ゼロカーボン野菜などが販売されるようになりました。食品が食卓に上るまでの一連の過程でゼロカーボンを実現。こうした食品を食べることで、CO2の排出量を減らすことができます。 中国で開発を主導するグローバル企業 中国に30年以上進出している大手食品メーカー「ネスレ」では、低炭素と環境保護を意識したコーヒー製品を展開しています。サステナブルな製品やパッケージを採用したり、コーヒーマシンに再生できる原材料の使用割合を増やしたりする取り組みを進めています。 また、フランスの食品企業「ダノン」では、2022年4月に中国の生産工場でカーボンニュートラルを実現。さらに、二酸化炭素貯留技術を持つランザテック社と提携して、化石燃料によるパッケージを徐々に減らす方針を示しました。 ゼロカーボンを推進するためにはいくつもの試練があり、ゼロカーボン食品を導入することは簡単なことではありません。その一方で、こうした転機を「チャンス」と捉えて新しい取り組みを始める企業が出てきています。
中国で人気の「ゼロカーボン食品」、グローバル企業で開発進む
2022.09.30

青いトマトがおいしく大変身!液体塩こうじでつくる食品ロスのない社会〜醸造の奥深さを知るみそメーカーだからできるSDGsプロジェクト〜

昨今、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けて食品業界ではさまざまな取り組みが行われています。2022年7月、ハナマルキ株式会社とイオンアグリ創造株式会社のコラボレーションによる「液体塩こうじ×青いトマトプロジェクト」がスタート。食品ロスの削減につながるだけでなく、「青いトマトがおいしく変身する」と多方面から注目を集めています。 そこで今回は、ハナマルキのマーケティング部長の平田伸行(ひらた・のぶゆき)さんとマーケティング部営業推進室でレシピ開発担当の松田有加(まつだ・ゆうか)さんへの取材から、プロジェクトの魅力や商品開発に至る経緯、目指す未来像についてお伝えします。(取材・構成=松橋かなこ) ハナマルキが食品ロス対策に取り組む理由 1918(大正7)年に長野県で創業し、日本を代表するみそメーカーとして、食卓に欠かせない商品を提供し続けてきたハナマルキ。近年ではSDGs達成や持続可能な社会の実現に向けて、「安心・安全」や「次世代の成長支援」「自然との共生」「多様性の促進」という4つの柱を軸に活動を展開。その一つとして「液体塩こうじを使用することで食品ロス削減」の取り組みを推進しています。 食品ロスとは、本来食べられるにもかかわらず捨てられている食品のこと。農林水産省が公表した2019年度の日本の食品ロスは570万トン。世界には全人口を賄えるだけの十分な食糧がある状態でありながら、8億人が飢餓に苦しんでいると言われています。こうした状況を受けて、行政にとどまらず企業やNGOなどでも食品ロス削減のチャレンジが盛んに行われています。 ハナマルキが取り組む「液体塩こうじ×青いトマトプロジェクト」は、これまで廃棄処分されてきた青いトマトを液体塩こうじと組み合わせて、青いトマトの特徴を生かしたおいしい料理に変身させるというもの。イオン農場ECサイトにて、液体塩こうじと青いトマト、ミニレシピリーフレット付のセット販売を行っています(1セットにつき液体塩こうじ1本と青いトマト6個入りで税込1000円、送料別)。 実は、液体塩こうじを使った食品ロス削減の取り組みは、これが初めてではありません。2019年7月、国連WFP協会主催「Zero Hunger Challenge for AFRICA 食品ロス×飢餓ゼロ」に参画。SNSキャンペーンに、野菜や果物の切れ端や皮などを使った液体塩こうじのレシピ4品を披露しました。ここでの想いや経験が、青いトマトプロジェクトにつながっています。 液体塩こうじと青いトマトの出合い 液体塩こうじと青いトマトは、どのようにして出合ったのでしょうか。平田さんが出張料理人の工藤英良(くどう・えいりょう)さんに「トマトと液体塩こうじを組み合わせたメニューをPRしたい」と相談したのが、その始まりです。工藤さんは、カナダや中国、フランスの大使館で料理人を約10年間務めた経験を持っています。平田さんがおすすめのトマトを尋ねてみると、工藤さんは「イオン農場のトマトが抜群においしい」と推薦。農場に連絡すると「ぜひ見学に来てください」と、話はトントンと進みました。 2021年9月、平田さんは埼玉県久喜市の「イオン埼玉久喜農場」を訪問しました。そこで目にしたのは、山積みにされた青いトマト。これは一体どういうことだろうと思い、農場長の髙橋寛(たかはし・ひろし)さんに質問しました。 トマトは花が咲いて実を付けると、緑色から赤色に変化します。農場ではトマトを一定期間育てた後新しい苗に植え替えますが、その時にまだ緑色のトマトは出荷することができません。平田さんは、髙橋さんとのやりとりの中で「かなりの量の青いトマトが廃棄されている」という現状を知りました。 青いトマトは市場に出回りませんが、実際に目にした光景はショッキングなものでした。そして、トマト栽培に情熱を注いでいる髙橋さんにとって、「青いトマトも真心込めて育てた大切な存在に変わりない」という言葉にも心を動かされました。 平田さんの頭に、あるアイデアが浮かびました。それは、青いトマトを液体塩こうじと組み合わせて、セット販売するという企画です。その場で髙橋さんに持ちかけてみると、 「それはいいアイデアですね!」と前向きな返答が。二人は意気投合し、具体的な検討へと進んでいきました。 醸造の「プロ」の力でおいしい新商品に ハナマルキでは液体塩こうじと赤いトマトを組み合わせたメニューをそれまでにも開発していました。しかし、青いトマトと液体塩こうじの組み合わせは実際に試したことがありませんでした。 このプロジェクトを成功させるには「おいしいレシピ」が必要でした。社内に持ち帰って相談したのが、液体塩こうじのレシピ開発を担当している松田さんです。 平田さんから相談された時のことを松田さんはこう語ります。「青いトマトが食べられるということは知っていたものの、実際に扱うのは初めてでした。不安な気持ちがなかったわけではありませんが、液体塩こうじで『青いトマトでもきっとおいしくできるだろう』と思ってはいました」。 試しに、松田さんが青いトマトを刻んで液体塩こうじに漬けてみたところ、独特の青臭さが消えて、想像以上においしく食べられることを確認。それだけでなく、青いトマトだからこそ出せる「爽やかな酸味」を発見しました。青いトマトならではの強みを最大限生かすべく、液体塩こうじに漬けた青いトマトを使って、繰り返し料理の試作に取り組みました。 イオンアグリ創造側を交えて2021年11月に開催した試食会では、「確かにこれはおいしい」「ぜひ商品化しましょう」と大好評。「さわやかトマトキーマカレー」「シャキシャキトマトピクルス」など5つの料理を厳選し、レシピをまとめたリーフレットの制作を進めて、2022年7月から商品の販売が始まりました。 「青いトマトは赤いものに比べて硬さがあって水分が少ないです。通常の液体塩こうじのレシピであれば30分~1時間漬け込みますが、青いトマトは漬け込み時間をそれより長い一晩に設定しました。家庭でも手軽に実践しやすく、しかも青いトマトの特徴を生かした絶品料理が作れるようにと工夫を凝らしました」と、松田さんはレシピ集のポイントを話していました。 レシピを基に調理、実食してみると 今回の記事制作に際して、私自身も青いトマトと液体塩こうじを組み合わせた料理を試作して、食べ比べてみました。調理に使ったのは、イオン農場SHOPで販売されている液体塩こうじと青いトマトがセットになった商品です。まずは、写真左上から時計回りに「1.そのままの青いトマト」「2.青いトマトを液体塩こうじに漬けたもの」「3.2を加熱したもの」「4.2を刻んで加熱したドライカレー」と4種類を用意して、味を確かめてみました。生食ではやはり青臭さが気になるものの、液体塩こうじに半日程度浸けるとその香りが軽減し、別物に変わります。加熱すると、酸味がよりマイルドになり、ほのかな甘味が出るのが印象的でした。 松田さん考案のレシピを基に、他の具材と調味料を加えて作ったキーマカレーは、後味として青いトマトの爽やかな香りとシャキシャキとした食感が楽しめました。まさに、「青いトマトならではの一品」です。家族全員で試食しましたが、「おいしい」「キーマカレーは青いトマトで作ってほしい」という思った以上の人気ぶりでした。 青いトマトプロジェクトが目指す未来 いろいろな人との出会いと情熱によって育まれてきた青いトマトプロジェクト。最後に、この取り組みの先にどのような未来を描いているのかを平田さんと松田さんに尋ねました。 「農場を訪れた時、食品ロスの現状を目の当たりにして、食品ロスへの取り組みの必要性を強く感じました。今回のこの液体塩こうじと青いトマトの取り組みを知っていただくことで、食品ロスへ取り組む方がさらに増えていくとうれしいですね。」(平田さん) 「青いトマトは、ハナマルキと一般消費者とのコミュニケーションにも役立っています。青いトマトに限らず、食べられるのに捨てられている食材がたくさんあります。そうした食材をおいしく食べる方法を、これからも提案していきたいです」(松田さん) 実際、ハナマルキの公式Twitterアカウントで今回のプロジェクトについて投稿した時に、家庭菜園でトマトを育てている人から「青いトマトの使い方が分からずに困っていた」というリアクションがあったそうです。 実はわが家でも、「どうして今日は青いトマトなの?」と子供から尋ねられ、トマト栽培や食品ロス、食の多様性についての話になりました。「おいしい」という食体験から、家族みんなで食のあり方について考えるーー。青いトマトはそうした貴重な時間を提供してくれる、とても心強い存在です。  
青いトマトがおいしく大変身!液体塩こうじでつくる食品ロスのない社会〜醸造の奥深さを知るみそメーカーだからできる…
2022.09.06

植物由来のえびが話題に。肉から魚に拡大する代替食品

2021年10月、スイス食品大手ネスレがエビ代替食品を開発したことを発表し、一躍注目を集めました。植物由来の原料で肉を代替するプラントベース商品は魚介類にも広がり、ますます勢いを増しています。今回の記事では、植物由来のエビの原材料や特徴と共に、各国で開発が盛んに行われているプラントベースフードの現況を紹介します。 ネスレが植物由来のエビを開発 ネスレはエビの代替食品を開発し、スイスとドイツの一部店舗でテスト販売を開始すると発表しました。同社では植物由来食品の開発に力を入れていて、すでに肉や魚、牛肉の代替品を販売しています。シーフードについては商品ラインナップの拡充を進めている段階で、エビだけでなくヴィーガン用ツナ缶の販売をスタートしました。 今回開発された植物由来のエビは、海藻やえんどう豆、こんにゃくなどの原材料から作られています。エビ独特のジューシーな食感と風味を再現するべく、原材料の選定や加工を行いました。植物由来のエビの利用シーンとして、サラダやパスタ、ピザなどへの展開が想定されています。 30年で100倍に拡大するマーケット 植物由来の代替食材に対する需要は年々高まっていて、世界中で新商品が登場しています。金融大手クレディ・スイスが2021年6月に実施した調査によれば、世界の肉類や乳製品の代替食品の市場規模は2050年までに1兆4000億ドルにも上ると言われています。2021年時点での市場規模は140億ドルなので、約30年間で100倍の規模に拡大するという計算になります。 現時点では代替シーフードの売り上げは少ないものの、植物由来食品の人気は、魚介類にも今後広がっていくと予想されています。こうした流れを受けて、ネスレだけでなく、他の企業も植物由来のシーフードの開発に着手しています。 世界最大規模のタイのシーフード食品加工会社「Thai Union Group」では、「植物由来のエビで天ぷらを提供する」と発表。同社では、カニのハンバーグや点心などをすでに発売していて、今後の展開に注目が集まります。 この他、数々のヴィーガン商品を手掛けてきた「Upton’s Naturals」では、バナナの花を使った魚肉の代替食品を発表する予定。バナナの花は、東南アジアやインドなどでは食材として用いられることも多く、料理すると魚によく似た食感になります。また、米大手スーパー「Trader Joe's」では、プラントベースのシーフードの入荷を検討するなど、シーフードの代替食材の市場規模は確実に拡大しつつあります。
植物由来のえびが話題に。肉から魚に拡大する代替食品
2022.08.24

食品産業排水を代替小麦粉へアップサイクル。米フードテック企業の成功例

​​​​廃棄されるはずのものを、価値ある新しい商品として生まれ変わらせる「アップサイクル」。このアップサイクルにより、アメリカのフードテック企業が、グルテンフリーで栄養豊富な代替小麦粉の生産を成功させました。地球温暖化対策に資する、カーボンニュートラルな製造法も話題となっています。 食品工場で廃棄される砂糖水に着目 米国のフードテック企業ハイフェフーズは、食品工場で排出される砂糖水を利用して、菌糸体由来の代替小麦粉を生産しています。これを原料とするパスタ「ハイフェパスタ」は、高タンパク、低炭水化物、アレルゲンフリーな代替小麦粉になると注目を集めています。 ハイフェフーズ共同創業者の1人、ミシェル・ルイズ氏は、アメリカの大手石油会社で化学技術者としての勤務経験があります。同氏が働いていた廃水処理施設では、有機物を食べて水を浄化する微生物のえさが常に不足しており、過剰になった大量の微生物が日々捨てられてメタンガス発生の原因となっていました。無駄な微生物の廃棄を止めれば、地球の温室効果ガス削減に貢献することもできます。同氏は、この飢えた微生物のえさを効率的に得る方法を探しました。 ルイズ氏が着目したのは、毎日数百万リットルもの排水を出す、ビールなどの大規模な醸造所、トウモロコシの製粉所や缶詰工場です。実はこの食品産業排水は、製造過程で濃縮されており、糖分を多く含んでいて栄養豊富です。しかしながら、企業は費用を払って廃棄物としてこれらを処理していました。糖分を含んだ排水は、ルイズ氏を悩ませていた廃水処理施設の微生物のえさとして利用できます。 さらに同氏は、この排水を代替小麦の原料として再利用し、価値あるものに生まれ変わらせることを考えました。微生物を扱うプロであり、排水の隠れた価値を知っていた同氏だからこそ、微生物による発酵作用で作るハイフェパスタを完成させることができました。 アップサイクルが食料問題解決の糸口に バイオテクノロジーで開発された代替小麦粉によるハイフェパスタは、1人前で鶏のむね肉1枚分ものタンパク質を含み、食物繊維も豊富です。豆類やナッツ類から成る代替小麦粉は、炭水化物以外の栄養素に欠けるという点がネックでしたが、ハイフェパスタなら、健康を損なわずに、小麦に限りなく近い食事のメニューを楽しむことができます。 一般的な小麦粉製品とは違って「グルテンフリー」であることも特筆すべき点です。 同時に、ハイフェフーズは止まらない食品値上げへの具体的対策も提示しています。通常、米国の食品メーカーは、工場で排出される砂糖水を浄化するために課徴金を支払っています。同社は課徴金よりも低い料金で、砂糖水を食品として再利用することを可能にします。食品メーカーはその分、コストを節約することができるため、最終商品の価格として消費者に還元できるというロジックです。 ハイフェパスタは、世界中あらゆる場所で入手可能な食品産業排水を原料としています。栄養価の高い食品を確実に各地へと供給できるハイフェフーズの代替小麦粉は、今後深刻化すると言われている食料問題を解決する糸口になるかもしれません。
食品産業排水を代替小麦粉へアップサイクル。米フードテック企業の成功例
2022.06.22

世界最大規模の米トウモロコシが危機に。気候変動のはらむリスクとは

アメリカ中西部で東西へとベルト状に広がるトウモロコシの農業地帯は「コーンベルト」と呼ばれています。ここでのトウモロコシ生産高は米国全体でのおよそ8割を占め、世界総生産高の3分の1に達します。米エモリー大学の新たな研究によると、​​​​気候変動による気温の上昇により、2100年までにアメリカのコーンベルトはトウモロコシ栽培にそぐわなくなる可能性があると報告されました。食だけにとどまらない、私たちの暮らしに及ぶ影響とは─。 19世紀から続く大産地に変化の兆し 大規模農業が盛んなアメリカでは、​​​​本土の3分の2が農作物の栽培に利用されており、農地のおよそ8割は、トウモロコシ、大豆、小麦、綿花、牧草、アルファルファの6つの商品作物の耕作に占められています。 エモリー大学の研究では、特に産業活動による人為的な温室効果ガスに焦点を当て、農地と人間の介入に関するデータを分析し、主要な作物の栽培への影響を予測しました。その結果、3段階のうち中程度の排出シナリオ(​​人間活動に伴う温室効果ガス等の大気中の濃度が、将来どの程度になるかを想定したもの​​)であっても、トウモロコシ、大豆、アルファルファ、小麦の理想的な栽培条件はいずれも北に移動するということでした。 この研究により、2100年までに中西部のコーンベルトがトウモロコシの栽培に適さなくなることが示唆されました。1800年代から肥沃な土壌と技術革新に支えられ、安定した穀物生産を可能にしてきたアメリカ農業の主戦場のひとつが近い将来危機にさらされるという衝撃的な事態です。トウモロコシは他の作物に比べてもなお影響が大きく、生産場所が国境を越えてカナダに移ってしまうことになります。 様々な分野で活用されるトウモロコシ アメリカで生産されるトウモロコシのうち、ポップコーンなどの形で直接消費されるのは10分の1以下です。食用で使われるうちの多くは甘味料の原料となっていて、例えば世界の甘味料市場の9%を占める高果糖コーンシロップなどに加工されています。肥満の原因とされる甘味料のひとつですが、コカコーラなどをはじめとした世界中で販売される多くのソフトドリンクに使用されています。 また、アメリカのトウモロコシの4割は、乳牛、鶏や豚といった家畜の飼料に使用されています。それはつまり、牛乳や乳製品、卵、ソーセージなど、日々の食卓に並ぶ多くの食料品にトウモロコシが間接的に関係しているということです。他にも、サケなど養殖魚の餌の主原料にもトウモロコシが使われています。 これだけ見ても、私たちの食生活に与える影響の大きさは計り知れません。さらには日用品でも、歯磨き粉の主成分であるソルビトールはコーンシロップに由来していますし、コーンスターチは汗を吸収するデオドラント剤に使われる成分のひとつなのです。 バイオマス燃料への期待が増す昨今。トウモロコシは燃料としても活躍の場を広げています。石油燃料の削減のため、米政府は原油価格が高騰した2000年代初頭からコーンエタノールの開発に力を入れてきました。現在、国内生産量のうちの4割がこのエタノール燃料に回っています。 日本は世界トップクラスのトウモロコシ輸入国で、年間消費量1500万トンのうち3分の2に当たる1000万トンをアメリカから輸入しています。この事実から言えるのは、私たち日本人も、気候変動のはらむリスクに目を向けるべき当事者だということです。  
世界最大規模の米トウモロコシが危機に。気候変動のはらむリスクとは

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NEW 2022.11.24

知らないとまずい?!タンパク質危機。20XX年までに肉や魚が足りなくなる?

地球の人口増加や環境問題により、食肉などのタンパク質が不足するのが「タンパク質危機」です。私たちの食卓に影響するかもしれない世界規模での課題であるにもかかわらず、一般にはそれほど広く認知されていません。こちらの記事では、タンパク質危機とはどのような問題かを解説すると共に、タンパク質危機を避けるための4つの選択肢について説明します。タンパク質危機という問題が生じている理由から取りうる対応策までを紹介し、プラントベースフードなどがにわかに注目を浴びている背景をお伝えしていきます。 タンパク質危機(タンパク質クライシス)とは タンパク質危機は、世界人口の急速な増加に由来する問題です。まずはその背景的な事情からみていきましょう。 少子化真っ只中の日本。でも世界の人口は? 日本では、出生率の低下に伴い若年層の人口が減少する「少子化」が急速に進んでいます。そのためあまり実感がわきませんが、一方で世界の人口は増え続けている状況です。国連の調査によれば、世界の人口は現在約80億人であるところ、2030年には約85億人、2050年には約98億人、2100年には約112億人になると推定されています。 2030年までにタンパク源が足りなくなる恐れ 世界規模での人口増加に伴って、近い将来、牛や豚、鶏などの畜産によるタンパク質が不足すると予測されています。この予測は「タンパク質危機」と呼ばれていて、欧米諸国を中心に話題になっています。現状のままだと早ければ2025年から2030年ごろまでに需要と供給のバランスが崩れ始めると言われています。 人間の身体を構成するのは、水分が約60%、タンパク質が約15~20%とされています。つまり、タンパク質は水分を除いて体の重量の約半分を構成する、生きていく上で大切な栄養素です。欧米では「プロテインチャレンジ2040」と題したコンソーシアムが立ち上がり、その中から複数のプロジェクトが始動しています。タンパク質危機をどう乗り越えていくのかは、人類が生きていく上で極めて重要な課題です。 タンパク質危機を避けるための4つの選択肢 タンパク質危機を回避するために、世界中でさまざまな検討が行われています。ここでは、その中から代替肉と培養肉、昆虫食、藻類という4つの選択肢について解説します。 代替肉 代替肉とは、牛肉や豚肉、鶏肉などの動物の肉の代わりに、植物性原料で作られた「肉のような食材」のことです。欧米諸国を中心とした健康への意識の高まりがきっかけで広がったとされていて、別名「プラントベースミート」と呼ばれることもあります。 代替肉の素材として最も有名なものは、大豆が主原料の「大豆ミート」でしょう。有名ハンバーガー店やコーヒーチェーンでも大豆ミートを使ったメニューが登場し、話題になっています。このほか、ひよこ豆、レンズ豆といった豆類も、代替肉の素材として注目されています。最近では、エノキタケを使った新しい代替肉「エノキート」も登場するなど、さまざまな研究・開発が進められています。 培養肉 培養肉は、牛などの動物から取った少量の細胞を、再生医療の技術により体外で増やして作られます。プラントベースの代替肉とは異なり「本物の肉を使った代用品」です。従来の食肉の生産方法と比べて、飼育・繁殖する過程における動物へのストレスや環境への負荷が少ないとされています。こうした特徴から、別名「クリーンミート」と呼ばれることもあります。 培養肉は、2013年にオランダの研究者が培養ミンチ肉を作ったのがその始まりです。日本でも培養肉の研究が進められていて、2019年には世界で初めてサイコロステーキ状の培養肉を作ることに成功しました。大きな肉を作るための技術の開発など乗り越えなくてはならないハードルが多いものの、持続可能な食材という意味で期待が寄せられています。 昆虫食 昆虫食とは、コオロギなどの昆虫を原料にした食品のことです。大豆ミートなどのプラントベースフードは植物性のタンパク質しか得られないのに対して、昆虫食の場合、肉や魚と同様、必須アミノ酸である動物性タンパク質を得ることができます、また、昆虫食は飼育・加工に必要なスペースや資源が最小限で済み、環境負荷が低いというメリットもあります。 日本にも貴重なタンパク源として昆虫を食べる地域の文化が残っていますが、世界で食べられている昆虫は1900種類にも及ぶとされ、アジアやアフリカ、中南米を中心に昆虫を食べる食文化が見られます。昆虫食には食品の安全性や見た目への抵抗感といった課題があるものの、環境負荷の少ないサステナブルな食材として注目を集めています。 藻類 細胞分裂をして増殖する藻類はタンパク質含有量が50~75%であり、新たなタンパク質源としての可能性を持っています。藻類は良質なタンパク質だけでなく、炭水化物や脂質、ビタミン、ミネラルなども豊富に含まれています。現在市場に流通しているのはタンパク質が豊富に含まれるクロレラやスピルリナで、藻類をそのまま乾燥させて粉末状にしたものが主流です。 藻類は栄養価が豊富であるものの、藻類を乾燥した粉末は独特の匂いがあることや、藻類バイオマスの生産コストが肉や大豆に比べて価格が高いことなどから、タンパク質源としてはこれまで積極的に利用されていませんでした。しかし、近い将来に訪れるとされるタンパク質危機を前に、藻類の利活用が見直され始めています。 まとめ 世界の人口増加に伴って、近い将来訪れると言われているタンパク質危機。この記事では、タンパク質危機を回避するために私たちが取りうる選択肢として、代替肉、培養肉、昆虫食、藻類の4つを紹介しました。食品としての安全性や抵抗感、生産コストなど、それぞれに乗り越えるべき障壁はありますが、タンパク質危機を避けるために、世界中でさまざまな研究・開発が行われています。これまでの常識にとらわれない、新しい食の選択肢が求められていると言えそうです。
知らないとまずい?!タンパク質危機。20XX年までに肉や魚が足りなくなる?
NEW 2022.11.22

昆虫食のメリットと注目の背景を深堀り!こんなにも話題になる理由とは?

コオロギなどの昆虫を原料にした食品「昆虫食」。日本にも、貴重なタンパク源として昆虫を食べる地域の文化が残っていますが、多くの人にとってはなじみの薄いものでしょう。しかし今、環境負荷の少ないサステナブルな食料として、世界が昆虫食に注目しています。 一体なぜ、これほどまで昆虫食が話題になるのか。この記事では、昆虫食が期待される背景を解説した上で、栄養価の高さなど注目の理由を解説します。他方で、「本当に安全性に問題はないの?」「昆虫を食べるリスクは」といった疑問や不安の声にもお答えします。 昆虫食が注目を集める背景 無印良品で話題となった「コオロギせんべい」をはじめ、日本では勢いのあるベンチャー企業が、昆虫食ビジネスを盛り上げています。そうした流れに至るまでに、どのような背景があったのでしょう。 増える世界人口、ひっ迫するタンパク源 日本は少子化に直面していますが、世界全体では人口は増加し続けています。このまま行けば、2050年に世界人口は100億人に達すると言われています。 近い将来、牛や豚、鶏などの畜産によるタンパク質が不足する恐れがあると言われています。「タンパク質危機(タンパク質クライシス)」を避けるために、大豆ミートをはじめとしたプラントベースフードの開発が進みました。しかし、植物由来の食べ物からは、植物性のタンパク質しか得られません。そこで、注目されたのが「昆虫食」。なぜなら昆虫は、肉や魚と同様、必須アミノ酸である動物性タンパク質を得ることができるからです。 転機の国連食糧農業機関(FAO)報告 2013年、国際連合食糧農業機関(FAO)が「ある報告書」を発表しました。それは、世界の食糧危機への対策として昆虫食を推奨するというもの。この報告書を契機とし、世界各地で昆虫食の研究・開発が加速しました。昆虫を食べる習慣のなかった欧州でも、2018年、欧州連合(EU)が昆虫を新規の食品として域内で販売することを認めました。 昆虫食を選ぶメリット さぁここから、他にはない昆虫食のメリットを深掘りしていきます。 非常に優れた環境負荷の低さ 狭いスペースで飼育・加工ができる 昆虫は牛や豚、鶏などの家畜よりも狭い場所で飼育できます。コオロギ1キロを生産するのに必要な農地は、鶏肉や豚肉の約3分の1、牛肉なら約13分の1しか必要としません。また、出荷用にパウダーなどに加工する場合でも、小規模な施設で行えます。飼育・加工に場所を取らないということは、それだけ効率的に生産できるということです。 飼育に必要な資源が少ない 昆虫の生産は、家畜に比べて少量の水や飼料で可能です。牛肉を1キロ生産するためにはおよそ8キロのえさを必要とするのに対し、昆虫1キロの生産には約2キロのえさを使うだけで済みます。生産に必要な水についても同様で、コオロギの生産に必要な水は、牛肉の場合の約2500分の1で済んでしまいます。 温室効果ガスの排出量が少ない 牛1頭がげっぷなどで出すメタンガスは1日160リットル以上で、地球温暖化を促進していると言われています。しかし、昆虫の飼育に伴う温室効果ガスの排出量はその10分の1以下。昆虫食は、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの削減にも効果があるというわけです。 丸ごと食べられて、食品ロスにも貢献 昆虫食は食品ロスの削減にも貢献します。牛1頭の可食部はおよそ4割ですが、昆虫はそのほとんどが食べられるので無駄がありません。また昆虫のえさには、残飯など本来なら捨てられてしまうものを利用できます。焼却コストのかかる生ごみの量が減り、一方で、貴重なタンパク質源になるというのですから、昆虫食の利点が際立ちます。 牛や豚に負けない栄養価の高さ それで終わらないのが、昆虫食のすごさです。ガやハチの幼虫の場合、体重の50%がタンパク質と言われています。牛や豚が1〜3%ですから、それに比べると非常に高い含有率です。昆虫は、良質なタンパク質だけでなく、食物繊維や、カルシウム、銅、鉄、亜鉛などのミネラルも豊富に含む上に、脂肪分は少ないという健康に良い食品です。 昆虫食のデメリット 栄養価が高く、環境にも良い昆虫食。その一方で、なじみの薄い昆虫食に対するネガティブな考えも少なくありません。今度は、考えられる昆虫食のデメリットを見ていきましょう。 安全面でのリスクは? 専門家の助言なしに、自然採集した虫を食べるのは、危険を伴う行為です。なぜなら、野生の昆虫には、毒を持つものや、寄生虫や病原菌を媒介するものもいるからです。一方で、管理された環境下で生産されたものは、昆虫とはいえ、他の食材と同様に安全です。 安心を担保する「コオロギ生産ガイドライン」 消費者により安心してもらえる環境を整えようと、2022年8月、民間団体が「コオロギ生産ガイドライン」をまとめました。研究機関や企業などでつくる「昆虫ビジネス研究開発プラットフォーム(iBPF)」が、コオロギの生産過程の衛生管理を中心に行動指針を決めました。公的なルール整備がない中で、民間主導で一定のルールを示すことで信頼性を高め、昆虫食のさらなる普及につながることを期待しています。 アレルギーリスクについて 昆虫食は、食物アレルギーを持つ人には注意が必要です。昆虫には、エビやカニなど同様の甲殻類アレルギーの原因となる「トロポミオシン」という成分が含まれているからです。昆虫に限らずすべての食材に言えることですが、これまで口にしたことのない食材を食べる時には、これまでアレルギーの自覚症状がなかった人でも、慎重を期すようにしましょう。 見た目への抵抗感 多くの人にとって、昆虫を食べることに対して、心理的なハードルがあります。初めて口にするものに対して拒絶反応が出るのは、動物的な本能として当たり前のことです。もしかしたら、これが昆虫食にとっての最大の問題かもしれません。日本でも昆虫食品の開発は大変盛んで、さまざまな商品ラインナップがあります。まずは、昆虫の姿を連想しづらいパウダー入りの菓子やパンなどから試してみるのがいいかもしれません。 そして、「まずいものをわざわざ食べたくない」というのが、大半の人の率直な気持ちだと思います。実際のところ、昆虫の味は実に多種多様で、思いきって食べてみると、おいしく感じるものもたくさんあります。バッタはエビやカニに似た食感、タガメは洋ナシや青リンゴのようなフルーティな香りだとか。セミに至っては、幼虫だとナッツのようなクリーミーな風味で、成虫になるとエビのような風味が楽しめます。 昆虫食とは 1900種類の食べられる昆虫 世界で食べられている昆虫は1900種類にも及ぶとされ、アジアやアフリカ、中南米を中心に昆虫を食べる食文化が見られます。昆虫学者である三橋淳氏の書いた『虫を食べる人びと』(平凡社ライブラリー)によれば、世界ではハチやイナゴに加えて、カブトムシ、カミキリムシなども食べられているそうです。 世界の昆虫食  タイ 昆虫食が住民生活に浸透しているタイでは、スーパーマーケットの食材コーナーに昆虫のサナギや幼虫が並んでいたり、昆虫の佃煮を売る屋台を目にしたりすることも珍しくありません。特に人気があるのはコオロギで、盛んに養殖されています。最近では、コオロギのスナック菓子やコオロギパウダー、コオロギオイルなど、コオロギを原材料にしたさまざまな加工食品が登場しています。特にコオロギパウダーは輸出用としての需要が高く、国もその動きを後押ししています。 ケニア アフリカ東部のケニアで最もよく食べられている虫は、シロアリです。日本でシロアリと言えば、住宅の床下で暮らすアリ(職蟻)を意味することが多いですが、現地で食べられているのは別の種類のアリ(羽蟻)です。このシロアリを使った「クンビクンビ(kumbikumbi)」という伝統料理があり、栄養失調を改善する効果があると言われています。実際、シロアリには、良質な動物性たんぱく質や脂質のほか、カルシウム、鉄分、アミノ酸などが豊富に含まれています。ケニアのシロアリはインターネット通販などでも販売されています。 日本の昆虫食 長野県に根付く昆虫食文化 日本で昆虫食文化が盛んな地域といえば、長野県です。信州でよく食べられている昆虫といえば、ハチノコやイナゴ、カイコ、ザザムシがあります。これら4種類を総称して「信州四大珍味」と呼ばれているそうです。 ハチノコはスズメバチの幼虫やさなぎ、イナゴは稲作の害虫とされるバッタのことです。長野県はかつて養蚕が盛んで、カイコは生糸の生産のために飼育されていた虫です。ザザムシは水生昆虫で、ヒゲナガカワトビケラなどの幼虫のことを指し、主に天竜川で採集できます。長野県の伊那谷地域で食べられていますが、世界的には食べる習慣がほとんどありません。イナゴやカイコは、稲作や養蚕を営む過程で副産物として発生するもので、昆虫食は、自然と共生する地域の暮らしに深く結びついていたのでしょう。 まとめ 昆虫食のメリットとデメリットを押さえてきましたが、環境負荷が低くて栄養価も高いという特徴を踏まえると、昆虫食がこれだけ話題になっていることもうなずけると思います。昆虫を食べるという行為に対して抵抗感はあるかもしれませんが、以前は「生で魚を食べるなんてありえない」と言っていた欧米人が、「Sushi(寿司)」を高級料理としてもてはやしているのを見ると、さほど大きな問題でないようにも思えます。先入観だけで昆虫食という選択肢を排除せず、機会があったらぜひともチャレンジしてみてください。
昆虫食のメリットと注目の背景を深堀り!こんなにも話題になる理由とは?
NEW 2022.11.17

代替肉とはどんな肉?大豆やきのこなど、原材料別に特徴を解説

世界中で「代替肉」のブームが到来しています。代替肉とは、その名前の示す通り、牛肉や豚肉、鶏肉などの動物の肉の代わりに、植物性原料で作られた「まるで肉のような食材」のことです。 では実際に、代替肉はどのような素材から作られ、どのように利用されているのでしょうか。この記事では、代替肉の定義を確認した上で、代替肉の原材料や原材料別の使用例について解説します。この記事を読むことで、代替肉の全体像を把握し、代替肉は具体的にどのようなものであるかを理解していただけます。 プラントベースミートと呼ばれることも 代替肉は、欧米諸国を中心とした健康への意識の高まりがきっかけで広がったとされています。代替肉は地球が抱える環境問題の解決や世界の人口増加に対する食料不足への対策、食の多様性への対応という側面においても大きな意味を持つと言われています。 代替肉の素材として最も有名なものは、大豆が主原料の「大豆ミート」でしょう。このほか、ひよこ豆、レンズ豆といった豆類も、代替肉の素材として注目されています。最近では、エノキタケを使った新しい代替肉「エノキート」も登場しました。いずれも「植物由来の肉」であることから、英語ではプラントベースミートと呼ばれています。 フェイクミート、オルタナティブミートとはどう違う? 代替肉はプラントベースミート以外に、フェイク(偽物の)ミートやオルタナティブ(代替の)ミートと訳されることもあります。呼び方はそれぞれ異なるものの、いずれも動物の肉に見た目や風味を似せた、植物性原料から作られた食材を意味しています。代替肉のどのような特徴を強調したいのかによって、フェイクミートやオルタナティブミート、プラントベースミートという言葉が使い分けされているようです。 大豆ミート:代替肉の定番でバリエーション豊富 大豆ミートとは 大豆ミートは、その名前の通り大豆で作られた代替肉のことです。ソイミートや大豆肉と呼ばれることもあります。大豆は別名「畑の肉」と呼ばれるほど栄養が豊富で、良質なタンパク質をはじめ、ビタミンやミネラルも多く含有しています。 大豆ミートは代替肉の定番であり商品の数も多く、最近はスーパーマーケットやコンビニエンスストアで見かける機会も増えました。 大豆ミートは水やお湯などで戻してから利用する「乾燥タイプ」が主流ですが、すぐに使える「レトルトタイプ」や「冷凍タイプ」もあります。また、形状は主に「ミンチタイプ」「フィレタイプ」「ブロックタイプ」という3種類で、用途に応じて使い分けできます。 あの有名ハンバーガー店やコーヒーチェーンでも 大豆ミートの需要の高まりを受けて、大豆ミートをメニューに導入する飲食店も増えています。大手ハンバーガーチェーン「モスバーガー」では「ソイパティシリーズ」と題して、大豆ミートを使ったハンバーガーのラインアップが登場しています。 また、大手コーヒーチェーン「スターバックス」はサマーシーズン第2弾として“Yori Dori Midori”をテーマにして、プラントベースという選択肢を提案。新しく加わったメニューのひとつ「スピナッチコーン&ソイパティ イングリッシュマフィン」では、肉の代わりに大豆を使ったソイパティを使用しています。 ひよこ豆の代替肉:味のクセが少なく使いやすい ひよこ豆とは ひよこ豆は大豆と同じくらいの大きさの丸い豆です。アジア西部が原産で、インドや欧米諸国、中近東などでは一般的によく流通しています。タンパク質が多く食物繊維が豊富で脂肪分が少ないことから、少し前から食肉に代わるヘルシーな食材として話題を集めています。 ひよこ豆は日本では馴染みの薄い豆ですが、味にクセが少ないため食べやすいのが特徴です。乾燥した状態の豆は水で戻して煮る必要がありますが、水煮されたレトルトタイプを使えば、手軽に利用できます。 使用例:カレーや揚げ物、おやつにも ひよこ豆の生産量はインドが世界一で、ベジタリアンの多いインドではカレーの具材に使われることも多く、日常的に食べられています。インドでは、ひよこ豆の外側の皮を取り除いて割った豆を「ダール」と呼び、カレーにもよく利用されています。また、ひよこ豆を粉末にした「ベサン粉」は、インド風天ぷら「パコラ」をはじめ、おやつや軽食にも用いられています。 この他にひよこ豆を使った料理としては、ひよこ豆のペースト「フムス」やひよこ豆のコロッケ「ファラフェル」も有名です。 レンズ豆の代替肉:ひき肉代わりとして使える レンズ豆とは レンズ豆は、レンズのように平たい形状をしています。レンズ豆には緑色やオレンジ色、褐色などさまざまな色があり、3~6ミリ程度と非常に小さいことも特徴です。日本ではあまり知られていない豆ですが、欧州などでは日常的に利用されていて、特にヴィーガンやベジタリアンの人たちに親しまれています。 レンズ豆は「世界五大健康食品」の一つに数えられていて、ビタミンB群やタンパク質、鉄分、食物繊維を多く含有しています。特に、皮付きの茶色のレンズ豆には100グラム中に9.4ミリグラムの鉄分が含まれていて、これは大豆の含有量よりも多いと言われています。 使用例:カレーや煮込み料理、サラダに レンズ豆はインドやネパールではカレーの具材として、イタリアやフランスなどの国では煮込み料理やサラダなどによく使われています。代替肉としての使い方として、レンズ豆は粒が小さいので、ひき肉のような感覚で利用することができます。例えば、ハンバーグを作る際にレンズ豆で代用する方法があります。 レンズ豆には特有の匂いがあるので、気になる場合は、スパイスを加えたり濃い味付けをしたりするのがおすすめです。レンズ豆は水を吸収しやすいため、あらかじめ水で戻す必要がなく、料理にそのまま使うことができるのも魅力です。 エノキート:キノコの旨味でおいしさ追求 エノキートとは エノキートとは、エノキタケとミートを組み合わせた名前です。エノキートはエノキタケを主原料として作られた代替肉で、農業法人である株式会社小池えのき(以下、小池えのき)によって開発されました。小池えのきの本社がある長野県中野市は、日本最大のきのこの生産地として知られ、エノキタケの生産量は全国の約4割を占めます。地元の食材を使った、新しいタイプの代替肉として注目を集めています。 エノキートには、発芽大豆から作られた大豆ミート「ミラクルミート(DAIZ)」を使用しています。ミラクルミートには、大豆独特のくさみがほとんどありません。ミラクルミートにはうまみ成分「グルタミン酸」が含まれていて、エノキタケのグアニル酸を組み合わせることでうまみが格段にアップし、動物の肉に劣らない独特のうまみが実現できます。 使用例:ハンバーグ エノキートを使った代表的な料理は、ハンバーグです。原材料は、エノキタケとタマネギ、大豆ミート、パン粉、調味料。原材料の半分以上が、エノキタケとタマネギです。5ミリ程度のみじん切りにしたエノキタケを使用することで、肉によく似た食感が生まれます。エノキタケは加熱すると独特のぬめりが出るため、つなぎの代わりになるという点からハンバーグに使うのに適しています。 エノキートのハンバーグは合いびき肉を使った通常のものに比べて、脂質やカロリーが少なく食物繊維が多いとされています。大豆ミートを使用しているため、タンパク質の量は通常のハンバーグとほとんど変わりません。ヘルシーでありながらタンパク質がしっかり摂取できるので、ベジタリアンやヴィーガンの人たちだけでなく、健康への意識が高い人にも支持されています。 まとめ 世界中で需要が高まっている、代替肉。代替肉と一口に言ってもその種類は多く、今回紹介した4種類以外にもさまざまなタイプがあります。 代替肉には私たちの健康維持や地球の環境保全につながるメリットがある一方で、原材料の調達や製造プロセス次第では、環境に負荷を与える可能性もあると言われています。今後、こうしたデメリットにどのように対応していくのかが課題でしょう。代替肉の分野は成長過程にあり、これからの展開に注目したいです。
代替肉とはどんな肉?大豆やきのこなど、原材料別に特徴を解説
NEW 2022.11.16

AI搭載のゴミ箱で分別。環境大国オーストラリアが行くリサイクル最前線

ゴミとして捨てられるプラスチックの多くが、適切に分別されないことにより、再利用の道が閉ざされているという嘆かわしい現実があります。この問題を高度なIT(情報技術)で乗り越えようと、オーストラリアの研究チームが動きました。飲料容器の分別を自動的に行うことができる「スマートビン技術」を搭載した画期的なゴミ箱を開発しました。 ITでゴミを自動分別、リサイクル率を向上 ​​オーストラリア最大の都市・シドニーがあるニューサウスウェールズ州では、年間80万トン出るプラスチックゴミのうち、リサイクルされているのはわずか10%だそう。これは、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の調べで分かりました。 プラスチックのリサイクルのプロセスは非常に複雑です。適切に分別がされないと、こうした事態に陥ります。リサイクルできない廃棄物の一部が焼却場行きとなれば、その分温室効果ガスの排出量が増えます。これらがきちんとリサイクルに回れば、地球温暖化にも大いに貢献するでしょう。 問題解決に向けて、シドニー工科大学(UTS)の共同研究チームは、ゴミの中から自動的に飲料容器を選り分ける機能を搭載したゴミ箱を開発しました。その名は「スマートビン技術」。これにより、最も多い廃棄物のひとつである飲料容器のリサイクル率を向上させることができます。 人工知能(AI)、ロボット工学、画像の認識技術などを組み合わせた先端テクノロジーが搭載されたこのゴミ箱は、ガラスや金属、プラスチックなど素材別に仕分けしてくれます。さらに、ペットボトルの素材となるポリエチレンテレフタレート(PET)や、シャンプーボトルに使われる高密度ポリエチレン(HDPE)など、プラスチックをさらに細かい種類別に分けることができます。 方法としては、まずゴミをカメラで撮影し、AIアルゴリズムを実行して、膨大なデータを処理・分析することにより分類します。そしてIoT(モノのインターネット)を含む最新のロボット技術により、重さや物質、素材を感知してゴミを分別するという仕組みです。 スマートビン技術の社会実装の日は近い 今後、あらゆる地域でスマートビン技術搭載のゴミ箱が利用されるようになれば、プラスチックゴミのリサイクル率は飛躍的に向上し、業者による回収作業もより素早く正確になります。研究チームは、このゴミ箱を管理するシステムの開発を進めています。システムが実用化されれば、ゴミ箱の所有者が、ゴミ箱の充填具合などの状態を遠隔で監視、点検できるようになります。ゴミ箱が満杯になった時、ゴミ箱を空にする必要があることを知らせる通知が表示されるという仕組みです。また、地域の人々にとっては、自分がどれだけリサイクル活動に貢献しているかがアプリに記録され、そのことを通知として受け取ることができます。 この実証実験は、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の研究プログラムの一環として行われています。同機構は2030年までに、オーストラリアで排出されるプラスチック廃棄物を80%削減することを目指しています。スマートビン技術はまだ試作段階ですが、いずれはショッピングセンター、学校、映画館、カフェ、企業、空港などにスマートビン技術搭載のゴミ箱が設置される予定です。
AI搭載のゴミ箱で分別。環境大国オーストラリアが行くリサイクル最前線