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事業系の食品ロス原因をランキング形式で紹介、メリットと事例も解説

世界には満足な食事ができずに困っている人がいる一方、毎日のように大量に食品が廃棄されている現状があることをご存知でしょうか。この状況を打開するためには、フードロスが発生する原因を正しく把握し、消費者だけではなく食品関連企業も含めて、削減に向けて取り組む必要があります。

今回は、食品ロスが家庭系と事業系の2種類に大別されることを解説した上で、事業系食品ロス原因のランキングや、フードロスの削減に取り組むメリット、日本における企業の取り組み事例も紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

食品ロス(フードロス)とは

食品ロス(フードロス)とは、売り残しや食べ残しなど、「食べられる状態であるにもかかわらず、食品が捨てられてしまうこと」を意味します。

食品ロスが発生すると、運搬や焼却で余分な二酸化炭素を排出することになり、地球温暖化を招きかねません。そのため、「環境問題の解決」という観点から、フードロスを削減することは重要です。

なお、全世界を見渡すと「10人に1人が栄養不足である」という現実があり、「倫理的な観点」からもフードロスの削減が求められています。

加えて、日本国内では「食料自給率が低い」という問題があります。廃棄される食品が減少すれば、その分、海外からの輸入量を少なくすることが可能です。食料安全保障の観点からも、食品ロスの削減に向けた取り組みが望まれます。

2種類の食品ロス|家庭系と事業系

食品ロスは、各家庭から発生する「家庭系食品ロス」と、事業活動に伴って発生する「事業系食品ロス」に大別されます。なお、割合としては事業系がやや多いものの、家庭系と事業系がおおよそ半分ずつです。

ここからわかることは、消費者が家庭で食品ロス削減に向けて取り組むことは重要ですが、それだけでは問題は解決しづらいということです。食品を取り扱う企業も解決に向けて取り組まなければ、食品ロスをトータルで削減することは困難といえるでしょう。

事業系食品ロス原因のランキング



事業系食品ロス原因(発生量が多い業種)を、ランキング形式で表にまとめました(単位は「万トン」で、数値は2021年度の推計)。

順位 業種 不可食部分などを含む「事業系食品廃棄物」の総量 本来食べることが可能であるにもかかわらず廃棄される「食品ロス」(売れ残り、規格外品、返品、食べ残し)
※カッコ内の数値は、食品ロス全体に占める各項目の割合
1位 食品製造業 1,386 125(約45%)
2位 外食産業 148 80(約29%)
3位 食品小売業 114 62(約22%)
4位 食品卸売業 22 13(約5%)
全業種合計 1,670 279(約5%)

上表を見ると、食品製造業(約45%)や外食産業(約29%)、食品小売業(約22%)における食品ロスが、大部分を占めていることが分かります。

※参考:農林水産省「食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢<令和5年11月時点版>

食品ロス削減に取り組むメリット



販売の過程で売れ残りなどが発生した場合、廃棄するのではなく、その分を困っている人に無償または割安な価格で提供すれば、飢餓の撲滅、栄養不良の解消に貢献できます。

近年、日本において「フードバンク」や「子ども食堂」といった取り組みが拡大しています。余った食品を単に廃棄するのではなく、運営団体に寄付すれば金銭面で困難を抱える家庭の生活の質が改善されるでしょう。

また、食品ロスが少なくなれば、ゴミを運搬するプロセスや廃棄物処理施設において二酸化炭素の排出量が減少するため、気候変動問題の対策としても有効です。各種天然資源の持続的な利用も可能になります。

フードロス削減は、社会・経済・環境の諸問題の解決につながります。そのため、各企業は行政機関やNPO団体などと連携しながら食品ロスの削減に取り組む姿勢が求められています。

食品業界の現状|日本における企業の取り組み事例

日本では以前から、小売店への納品期限を「賞味期間の3分の1まで」とする商習慣があります。しかし、期限を過ぎると廃棄処分せざるを得なくなり、食品ロス増加の原因になっているため、現在見直しが進行しています。

たとえば、コープデリ生活協同組合連合会では、賞味期間180⽇以上の加⼯⾷品を対象に納品期限を緩和し、メーカー・卸売段階における⾷品ロス削減に貢献しています(※1)。

また、アサヒ飲料株式会社(※2)や味の素株式会社(※3)も、賞味期限延長などの施策を講じ、食品ロスの発生リスクが低減されました。

そのほか、総合スーパーやコンビニエンスストアにおいても、販売期限や納品期限が緩和される傾向が見受けられます。しかし、依然として一部の小売業者が、製造業者に厳しい納品期限を課していることも事実です。

農林水産省や経済産業省、消費者庁は、食品製造業者や卸売業者、⼩売業者、外食事業者の業界団体など約200団体に対して「納品期限の緩和」や「賞味期限の延長」「適量仕入れと売り切り」などに向けて取り組むように要望する通知を発出しています。

それに加えて、食品ロス削減推進法(食品ロスの削減の推進に関する法律)に基づく基本方針が2020年3月に閣議決定されました。食品関連事業者に求められる「役割と行動」が政府から明確に示されていて、今後、フードロス削減に取り組む企業の増加が期待されています。

なお、食品ロス削減推進法により、各都道府県・市町村には「食品ロス削減推進計画」を策定する努力義務が課されています。策定済みの自治体が増加しているので、各自治体の公式サイトで詳細をご確認の上、フードロス削減に向けた取り組みの参考にしてみてください。

※1参考:コープデリ生活協同組合連合会「食品ロス削減の取り組み
※2参考:アサヒ飲料株式会社「環境|社会との約束
※3参考:味の素株式会社「フードロスの低減

まとめ

日本政府は「2030年度までに、事業系及び家庭系の食品ロス(フードロス)を2000年度比で半減させる」という目標を掲げています。しかし、「事業系食品ロス原因のランキング」で紹介したように、食品製造業や外食産業では多くのフードロスが発生しているのが現状です。

食品ロス削減には、飢餓の撲滅や二酸化炭素排出量削減など、社会・経済・環境問題の解決につながるというメリットがあります。

一般消費者が家庭でフードロス削減に取り組むことは重要ですが、それだけでは十分ではありません。企業の社会的責任(CSR)が重視される昨今、食品関連企業にも、食品ロス削減に向けた取り組みを進めることが求められています。

執筆者プロフ
シェアシマ編集部

食品業界で働く人たちに向けて、展示会の取材や企業へのインタビュー記事を通して、食品開発・製造に関わる話題のトピックを発信しています。プラントベースフードに興味津々の国際薬膳師、累計記事執筆2,500以上の元新聞記者等々、30〜40代の編集メンバーを中心に運営中

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【イベントレポート】サステナブルな米粉パンを販売【リンネルクリスマスマーケット2023】

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アップサイクルの米粉パンを共同開発、12月の都内イベントで限定販売へ【リンネル監修】

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賞味期限表示に「おいしいめやす」、食品事業者への拡大に期待【権現前営農組合】

食品パッケージにおいて、期限表示の意味を消費者に正しく伝えることは、食品ロス削減のための有効な手立てです。三重県松阪市嬉野で「旬前耕房ごん豆」を運営する株式会社権現前営農組合では、このほど、製造・販売する一部の商品の賞味期限表示に「おいしいめやすです」という言葉を併記し、食品ロス削減の一歩に繋げる取り組みを始めました。後述するニュースレター「パル通信」の記事を読んだことが表示改善に繋がったとのこと。同社にお勤めで、活動の中心となった管理栄養士の松井順子さんに、賞味期限表記の変更までの背景とその想いについてお聞きしました。食品ロス削減のための誰かの一歩に株式会社権現前営農組合では2023年10月、賞味期限の正しい意味を一般消費者により理解しやすく伝える工夫として、2023年9月に製造した「嬉野大豆のピクルス」一種において、商品ラベルの賞味期限表示に「おいしいめやすです」を併記しました。取り組みにあたっては、消費者庁の食品表示基準Q&A(※1)の情報を基に、保健所や県の担当者にも表示を見てもらうなど、周囲の理解も得ながら計画的に進めました。その上で、10月には、当月が食品ロス削減月間であることと共に、活動の経緯やラベル改変に込めた想いを書いたプレスリリースを作成するなど、広く情報発信することにも努めていらっしゃいます。松井さんは、かねてより、店のお客様が棚の奥の商品(賞味期限の長い)に手を伸ばしたり、賞味期限に敏感になるあまり食品ロスが生じてしまう現状に課題を感じていました。2021年頃からは、国が提案する「てまえどり」を促すPOPや、地域のキャラクターを添えた手描きPOPなどを使って消費者に食品ロス削減を呼びかけてきました。しかし、思うような反応は得られなかったそうです。その一因として、消費者の期限表示に関する正しい理解が進んでいないこと、また、それが食品ロスに繋がっているということを学ぶ機会がないためではないかと考えました。松井さんは、「この取り組みが、賞味期限の正しい理解に導く一助となってほしい。そして、食品ロス削減のための誰かの一歩に繋がれば嬉しい」と話します。※1:食品表示基準Q&A売り場で食品ロス削減を積極的に呼びかけている(ごん豆のインスタグラムより)「おいしいめやす」を選んだわけプレスリリースにもあるように、「おいしいめやす」は、2020年に消費者庁が実施した「賞味期限の愛称・通称コンテスト」で最優秀賞に選ばれた言葉です。松井さんは、賞味期限に併記する言葉にこれを選んだ理由について、次のポイントを挙げています。短い言葉でわかりやすい、伝わりやすいこと消費者庁が選んだ言葉ならば、間違った理解に繋がりにくいと思ったこと枠内にすっきりと収まる言葉であること買い物をする時には、裏面までじっくりと見てもらえることは少なく、長い文章を添えてもかえって伝わるハードルを上げてしまうと考え、賞味期限の横にすっきりと収まるこの言葉を選んだそうです。消費者庁では、期限表示の意味を正しく理解してもらうことを目的に、「おいしいめやす」を活用した普及啓発キャンペーンを2021年に実施しています(※2)。松井さんが参考にされた消費者庁の「食品表示基準Q&A」でも、消費期限や賞味期限の意味について分かりやすく表示することを推奨しています。しかし、未だ普及には至っていません。こうした状況の中、松井さんの取り組みは、食品事業者が実践できる賞味期限表記の具体的な事例を示してくれています。松井さんが参考にされた「食品表示基準Q&A」。プレスリリースより※2 参考:https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_education_cms201_210129_01.pdfもっと多くの事業者に広がってほしい権現前集落の村づくりの拠点ともなっている「旬前耕房ごん豆」では、その土地の恵みを無駄なく美味しく食べてもらえるように商品化して販売しています。松井さんは、食品の生産から販売までに携わる立場として、自らが担う責任の重要性を感じています。「私たちは、生産者と消費者の橋渡しをし、消費者と直接コミュニケーションを取れる立場にあります。消費者に対して、実生活で取り組めるような提案をしていきたい。そういう役割が食品事業者にはあると思っています。食品ロスが環境問題につながっていること、目先のことだけでなくその先のことにも目を向けられる人が増えたらいい。このような取り組みがもっと多くの事業者に広がっていくことを願っています」(松井さん)食品ロス削減のための消費者啓発は、食品事業者に求められている重要な役割です。自社の商品でも期限表記の工夫を取り入れたいとお考えの方は、松井さんも参考にされた消費者庁の「食品表示基準Q&A」が役立ちます。ぜひ、一緒に取り組みを広めていきませんか。デンマークでは、5年間で25%もの食品ロスを削減松井さんは取材の中で、今回の取り組みのきっかけとなった、井出留美さんの『パル通信』の記事についても紹介してくれました。記事では、デンマークでの取り組みを例に、牛乳パックの側面に、「賞味期限はめやす」であること、「目で見て、鼻でにおいを嗅いで、舌で味わって、大丈夫なら飲食可能」であることが表記されていること、賞味期限表示の横に「過ぎてもたいていの場合は飲食可能」と書かれていることなどを取り上げています。そして、このような取り組みを含めさまざまな施策により、5年間で25%もの食品ロスを減らしていることを伝えています。井出留美さんの「パル通信」では、ごん豆の事例も紹介しています「賞味期限の工夫!食品企業が見習うべき事例とは」シェアシマが松井さんへ取材をするきっかけとなった記事です。こちらも、ぜひご覧ください。井出留美さんの「パル通信」とは世界180カ国で展開するグローバル食品企業と日本初のフードバンクの双方で広報責任者として勤務し、独立したジャーナリストの井出留美さんが、食品ロスや食関連のSDGs・サステナビリティに関する世界の最新情報から本質的なものを選りすぐり、本や映画も含めたここだけの情報をお伝えするニュースレターです。<おすすめのポイント>食品ロスの正しい知識がつくサステナビリティ情報も配信中過去の記事も読み放題毎週届き、いつでも配信停止可能読みやすいデザイン井出さんには、シェアシマの活動も応援していただいています。ご興味のある方は、以下のURLより他の記事もご覧ください。https://iderumi.theletter.jp/

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