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食用昆虫文化を生かして 食の多様性を確保するための取り組み 【昆虫食普及ネットワーク・ニュースレターVol.6】

2022.12.14

はじめまして、NPO法人 ISAPH(アイサップ)ラオス事務所の石塚です。私たち、ISAPHはマラウイ(アフリカ)とラオス(東南アジア)で地域母子保健支援活動を実施しているNGO団体です。今回、ラオスでの取り組みのひとつである食用昆虫に関わる活動をご紹介させてください。

どうしてラオスで食用昆虫養殖の活動を?

私たちの活動地であるラオスの農村部の子どもたちは、栄養バランスを欠いた食生活から発育阻害という問題を抱えています。発育阻害とは、日常的に栄養を十分に取れずに慢性栄養不良に陥り、年齢相応の身長まで成長せず、脳の認知能力を十分に発達させることもできないという問題です。健康な身体を獲得するためには、日頃から適切な頻度・量の栄養を摂取する食生活がとても大切です。しかしながら、住民の食生活は、自分たちで育てたお米や、野菜や果物、魚を森や川など自然から採って食べることが基本です。お腹を満たすことはできますが、栄養バランスに着目するとそれだけでは不十分で、牛乳や豚・牛のお肉など、商店や市場で購入しなければアクセスし難い食品もあります。けれども、住民はわずかな現金収入しかなく、日頃から栄養に考慮した食品に充てるためのお金はありません。そこで、私たちは昆虫食文化に注目しました。ラオスでは、昆虫を食べることは当たり前です。また、市場では、他食材と比較し同等またはより高額な価格で取引がされています。そのため、住民が食用昆虫を養殖し販売すれば、安定した収入源になるのではないか、と考え取り組み始めました。たとえ、売れなくとも昆虫そのものを世帯内消費することで不足している栄養素を補うこともできます。JICA草の根「農村部住民の食糧事情向上を目指した昆虫養殖技術普及事業」として、NPO法人食用昆虫科学研究会の佐伯専門家とともに実施しており、2022年11月現在約70世帯の住民がすでに養殖を開始しています。

住民が食用昆虫養殖から安定した収入を得るようにするためには、技術普及だけでは不十分です。住民が住んでいる地域は、都市部から車で2時間程度と離れており、育てた昆虫をそのまま売る販売先を簡単に見つけることは、彼ら自身では非常に困難だからです。私たちは、AINプログラム ※ 「ラオスの美味しい昆虫食普及プロジェクト~養殖昆虫のフードシステム構築~」として、住民が育てた食用昆虫の需要をより喚起し、安定して消費者のもとへ届けるために「保存加工・市場開拓・新レシピ」の開発・研究も実施しています。より美味しい食べ方を開発・提案するためにNPO法人昆虫食普及ネットワークの内山理事長とともに挑戦しています。

他にもたくさんの活動にチャレンジしています。もし、この記事をご覧いただきISAPHに興味をお持ちいただけましたら、ぜひぜひ当団体SNSやメールアドレスでご気軽にお問い合わせください。それではお邪魔いたしました。

(石塚貴章/ISAPH ラオス事務所長)

※ 公益財団法人味の素ファンデーションの助成プログラム


得られた収入で適切な食品を購入するために栄養教育

プロジェクト後も持続的に活動を継続するために住民同士で養殖技術を教え合う

昆虫を食べて見えてくるもの<上>

ある高校生たちが雑誌制作をテーマにした授業で昆虫食を取り上げたいという。私は、取材に訪れた彼らと近くの河原でピョンピョン飛び跳ねるバッタを追った。とりわけトノサマバッタは捕るのが難しく、その分、手中に収めたときの喜びはひとしおで、狩猟本能を満たしてくれる。昆虫はサバイバル食でもある。採集技術を身につけておくと災害時に役に立つのだ。

彼らの好奇の眼差しに囲まれながらバッタを熱した油に入れると、エビのように淡いピンクに染まっていく。「いい匂い!」「赤くなるんだ!」。サックリ揚げて皿に移すと、次々と手が伸びてくる。「わぁ、意外と美味しいかも!」など、驚きの声が沸き立つ。私が昆虫食に目覚めたきっかけとなったのもバッタだった。一九九八年に東京都日野市にある多摩動物公園で食用昆虫展が開かれ、いまでも世界中でたくさんの昆虫が食べられているのを知って驚いた。自然豊かな山国・長野県出身ということもあり、思い立ってトノサマバッタを捕って揚げて食べたところ、その香ばしい匂いはどこか懐かしく、不思議と心安らぐ味に魅了された。「きっと他にも美味しい昆虫がいるはずだ!」との無根拠で本能的な確信が研究活動のきっかけとなった。

バッタを捕って食べる行為は「生命をいただくプロセス」を体験できる貴重な〈食育〉の場でもある。世界に存在する昆虫は、食物連鎖の頂点に立つ人類の日常食として、古来、「自然の巨大なレストラン」の常備食だった。私たちはいただいた様々な「いのち」によって生かされていることを、昆虫という教材を通して学ぶことができる。
<次号に続く>

(内山昭一/昆虫食普及ネットワーク理事長)

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